Epilogue
「……もったいなかったなぁ」
己龍さん――己龍コウはいつもの部屋でそう呟いた。
「ヒカルさんですよね。いい人でした」
わたし――つくしは率直に自分の考えを述べる。
「それもだが、彼女のお友達もまた素晴らしかった」
わたしは彼の意見に頷いた。
ツキヨさんは、ヒカルさんの親友だった。
彼女が、悪い行いをした親友を断ち切ったのだ。
もちろん、ツキヨさん自身がゲームマスターがヒカルさんだったとは知らなかったと思う。
それでも、彼女が31番を自分の命と引き換えに選んだことが衝撃だった。
あの時の様子を、わたしは監視カメラで覗いていた。
最期の表情と言葉から、彼女は自分も始末されることを理解していながらも行動したのだと解釈している。
「ですが、まさかヒカルさんがそこまで用意していたんなんて驚きましたよ」
「偶然だったとは思うが、我々も危うかった」
わたしは偶然だとは思っていなかった。
ヒカルさんの首を絞めたあのルールは、わたしたちも食らう可能性があったのだから。
なぜなら、わたしたちも『椅子の指定』の時間にアンケートに回答していたから。
もし参加者の誰かが『33番』を選択していたら、今ごろわたしはこの世にいなかっただろう。
あのルールは結局は自分自身に返ってきてしまっただけであって、彼女は貪欲に己龍を倒そうとしていた。
(でも、己龍さんは倒したかったな……)
ゲームの生き残りは9人。
あと4人足らずで己龍さんが勝ち、今回のゲームは幕を閉じた。
ただ、まだ1回目だ。
もう少し手を加えれば、いつか独裁者を始末することができる。
「……そういえば、今日はお客さんを呼んだんだったね」
「はい」
「つくし君が珍しく客を呼びたいと聞いたから少々驚いたが、秘書の頼みだ。叶えてあげようではないか」
彼は知らない。
その選択が、命取りになることを。
ノック音が聞こえた。
「己龍だ。入っていいぞ」
それはゲームの参加者だった。
「……『吉岡ひかる』です。えっと、つくしさんという方に呼ばれて来たんですけど…………」
それは、かのゲームマスターの本当の姿を彷彿とさせる少女だった。
☆★☆★☆
わたしは空を見上げた。
「……今日は新月でしたね」
ひかるさんは戸惑ったように返事をする。
「あぁ、そうだったな……ヒカルくんにデスゲームの制作を頼んだ日を思い出す」
未来の対戦相手である独裁者は、過去を振り返った様子で言った。
(……絶対に、わたしたちがあなたを倒しますからね。覚悟をしておいてください)
彼を倒すために全てを賭けた少女と、悪を裁こうと自分の命を犠牲にしてまで挑んだ少女に次ぐために。
その太陽と月の姿はない。
明かりがついている部屋の中で、わたしは笑みを浮かべた。
〈完〉
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では、またどこかでお会いしましょう‼




