デスゲームの作り方1 参加者は公平に(2)
「ヒカル、どうしたの? 今日、なんかおかしい」
「大丈夫だよ、月見……!」
「ふぅん」
月見は、それが本当なのか確かめているかのようだ。
夢見ツキヨ。あたしは「月見」と呼んでいる。
月見は仲のいい友達で、なにかあったときはいつも相談に乗ってくれる優しい子だ。
ただ少し毒舌で、物事をストレートに言う癖があった。
「月見ー?」
あたしは月見に声をかける。
彼女に嫌なことがあると気づいてほしかった。
「己龍のこと、どう思ってる?」
「己龍? 己龍コウのことだよね。あいつのこと、いいやつだと思ってんの?」
「違うわ」
確かに自分から己龍の話をする人はいないけど、デスゲームの依頼をしてくるやつなんて好きになれる訳がない。
あたしが彼の嫌いなところをデスゲームについての話を除いて出てくるだけ吐き出すと、月見の口元は少し緩んだ。
「……そんなに嫌いなんだ」
「当たり前じゃん」
「…………己龍のことは、自己中心的な外道野郎だと思ってるよ。それだけ」
月見は次の授業で使う教科書を取り出す。いつもよりもそっけない口調だった。
(まあ、そうなるよね。嫌いなんだから)
あたしも次の教科の準備を始めた。
☆★☆★☆
そして学校は終わり、あたしは昨日呼び出された己龍の部屋にいた。
「参加者は12歳から18歳の子供30人ほどだと考えているよ」
「……本気なのですね。己龍さん」
「ああ、もちろん」
己龍と秘書の間には見えない火花が散っていた。
「ヒカルくん。それで、要件というのは?」
「……どうして子供にデスゲームを参加させる予定なのでしょうか」
本当に聞きたかったことではない。ただ、己龍が子供にデスゲームを参加させようとしていることに納得がいかなかった。
「君がルールを作るのに同年代の方が考えやすいだろう?」
「バカ言わないでください」
先ほどまで己龍と火花を散らしていた秘書は声を上げる。
「子供にデスゲームを強制させる? 己龍さんは何をおっしゃっているのですか。この国の未来を背負う
人たちです。今回の行動が影響されて、日本が大打撃を受けるかもしれません」
「なぜだい?」
そいつは表情何一つ変えない。
「どうしてそれで国が滅びる。今回のゲームに選ばれた人たちが将来大きな影響力を持つことはないだろう。もし政治を動かすほどの才能があれば、とっくに私が声をかけている」
そんなことわからないじゃないか、とあたしは言いそうになる。
己龍が秘書の意見と人の可能性を踏み潰すかのように否定したからだ。
(……これが己龍)
あたしは月見との会話を思い出す。
これが、独裁者の本当の姿なんだ。
「それでヒカル君。本当に聞きたいのはそれではないだろう?」
「……っ」
ただ、彼がそれが絶対に正しいと思えるのは、今あたしが見破られたように高い観察眼を持っているからなのかもしれない。
「難しいことなのはわかっているんですけど……」
己龍は大きく目を開いた。