デスゲームが出来たなら2 信じない者に恐怖を(1)
あたしは正式にコールタイムの開始を宣言すると、すぐに電話を切った。
電話がなくても、ゲームには生き残れるかもしれない。
ただ、命の行く先が運だけで決まってしまうのは絶対に避けたかった。
話して推理して、生き残れるように一生懸命努力してほしい。
己龍の顔を伺いすぎたり、あいつを倒そうとしたりしてこんなことをしてしまっているあたしだけど、参加者には生きてほしい気持ちもあった。
――こんなゲームだけど、絶対に諦めないでほしい。
(……いやいや)
いつあたしはこんな風に考えるようになった? これではただのクソ野郎だ。
(あーあ、己龍の癖が移った)
どう責任を取ってくれるのだろうか。
責任など取ってはくれないか。
(まあ、責任どうこう以前の話か)
あたしは一番のハッピーエンドを想像する。
それはいつも考えている内容と全く同じだった。
(よろしく頼んだよ、月見)
本当は彼女であってほしくない。けれど、あたしが頼れるのは彼女を含めた参加者しかいなかった。
ここで人に頼ってしまうことに、後ろめたさは感じてしまうけれど。
(いや、ルールを作ったのはあたしだ。これがなければ、己龍を仕留める機会なんて一切なかった)
最低な言い訳なのはわかっている。
ただ、自己肯定感を高めなければあたし自身が壊れてしまいそうで。
結局、「あたしは最低だ」という結論で考えるのをやめた。
☆★☆★☆
適当に木琴で叩いたかのようなメロディと、机の上に置いてあるからこその振動が、静かなこの部屋の雰囲気を打ち壊した。
タブレットが震えている。
(だれですか……)
多少いらいらしながらも電話に出ると、一人の女の子の声がした。
それも、一度聞いたことのある声だった。
あの女だ。
それは、嫌いな人に強制的に連れていかれた先が興味のない映画だったぐらいの絶望感だった。
必ず『応答』しなければいけないゲームマスターという立場なので逃げることも許されないのが余計腹立たしい。
『あら哀れな女よ。ご機嫌麗しゅう?』
「色々あって機嫌はまったく良くないね。……で? 要件を早く教えてくれない?」
『この遊びの話よ。先ほども言ったが、これはデタラメなのだろう? 皆の恐怖心を煽るでない。早く安全なものだと申せ』
……さすがにあり得ないわ。
あたしは特大なため息をついた。
今、このタイミングで命懸けかどうかの再確認かよ。
確かに、まだ誰も犠牲者は出ていない。だから100パーセント信用できる人はいないと思う。
ただ、この最中に堂々と確認できる度胸と、全く信じないその姿勢がある意味で素晴らしいと感じた。
あんなに脅したのに。これだったら己龍を最初に出しとけばよかった。
愚痴を終えて、あたしは深呼吸をする。
まだどん底の気分だったが、そのまま説明を始めた。
「だーかーらー、何度言えばわかるわけ? これは本当のデスゲームなんだよねー。
で、あなたみたいな人のせいで本当に質問したい人が電話できないんですよ。それでその子がルールの把握不足で始末判定されたらどうしてくれるの?」
『どうしろも何もないでしょう? あなたがゲームマスターなら、その証拠を見せろと言っているんです』
「現状、その証拠がないからこうやって説得してるんですよ。あなたが言っていることはアレでしょ? 『本当に人が始末されるのか』。『本当にこれは己龍が首謀者なのか』。『本当にこれがデスゲームなのか』……であってるよね?」
『えぇ、そうよ』
(……やっぱり、己龍の顔を出すのが正解だったんじゃん)
強引にでも顔を出させておけばよかった。
そうでもした方が信じる人が多くなりそうだ。
それに、こういう人も参加者にいたと知った今だから、それをより強く思ってしまう。
ただ、それはできないのだ。
だったら、あたしが彼女に提案できるのは1つだけ。
脅しなのはわかっている。
「……じゃあ、禁止事項でも破って始末されたらどうかな? あたしの手でやってあげるよ」
『あら、本気で言っているので? このデタラメに始末とかいう物騒な機能など存在しないくせに』
「何回本当だって言ったらわかってくれるのかなー? 別にあなたが始末されてもあたしからしたデメリットってないし、むしろ世界のためになるからどちらにとっても悪い話ではないんだよ。
あなたにとてはゲームを放棄できる。あたしにとってはクリア条件に近づく。……ね? あなたが始末されることに悪いと感じる人の方が少数派だ」
『苦し紛れの言い訳を言うでないわ』
「そう思うなら今すぐに始末されたらて言ってんの。わかる?」
『では、家に帰らせていただきます。あとでピーピー喚くがよい』
「それはこっちのセリフだね。信じなかったことを後悔するといいよ」
そして、電話を切られた。
(……)
あたしは黙りこんだ。
今は何も考えたくないし、動きたくもない。
あたしは目を瞑った。
疲れが波のようにどっと押し寄せてくる。




