デスゲームの作り方4 最後まで入念な準備を(4)
――――デスゲーム開始まで残り3日。
学校が終わり、あたしは家で考え事をしていた。
それは、ゲームの醍醐味ともいえるトリックだ。
――あいつをもう、止めないといけない。
その最初のチャンスを握ったのはあたし自身だ。
絶対に失敗は許されない。
あたしは旅館の造りを思い出した。
30以上の宿泊部屋に、食事亭と露天風呂が中心の旅館だ。
鍵は己龍の作った法律によってスマホ式になっており、宿泊部屋はドアの見た目と違って和風になっている。
(……?)
「あの、すみません。朝陽ヒカルです。その――。はい、今すぐお願いします」
あたしは外に出ようとする。
「いきなり外に行くなんて、どうかした⁉」
お母さんに呼び止められる。
「約束があったのを忘れてたの! 夜ごはんの時間には戻ってくるだろうから安心して‼」
上手に嘘をつけたといったら、きっと間違いだ。
それでも親にそれ以上呼び止められなかったのは、それが本当のことでもあったからだと思う。
あたしは家の前でひたすら待ち続けた。
「――遅れました。申し訳ございません」
そこに現れたのは一つの車だった。
☆★☆★☆
「己龍さん‼」
「……なんだい⁉ ヒカル君⁉ 入った瞬間にいきなり大声を上げるからコーヒーを少しこぼしてしまったじゃないか!」
いつも彼と会っていた部屋。
今来るとは予想していなかったのか、コーヒーをこぼしてしまったらしい。可哀想だが、天罰だと思うことにした。
「スマホ式の鍵の件なのですが――」
「――それなら問題ない。AIに完成させておくよう命じておくよ」
「それをすべての宿泊部屋に通じるようにしてください」
「了解した」
――完成だ。
すべてをひっくり返せるトラップが。大逆転できる一手が。
☆★☆★☆
あたしは家に戻った。
これ以上にない笑みを浮かべながら。
ゲームマスターの練習も行い、内容の濃い1日を過ごす。
デスゲームの作り方。
それを模索し続けた日々は、とうとう終わりに近づいていた。
☆★☆★☆
――――デスゲーム開始まで残り2日。
この日も、あたしはゲームマスターとしての「あたし」を練習してから学校に行った。
(やっほ~! あたしはみんなの案内人だよ! よろしくね~‼)
学校でも机に突っ伏して練習を続ける。
「……ヒカルっ!」
「ど、どうした――」
月見はあたしに向かって大声を出す。
そして、あたしはいつも通り彼女の目を見ようとした。
――彼女はいつもより疲れた様子だった。
いいや、気分が沈んでいた。
「大丈夫? 何かあった、月見?」
「…………ううん。なんでもない」
彼女はさほど大丈夫ではなさそうな様子で去っていく。しかし、表情がすべてを語っていた。
きっと、もう手紙が届いたのだろう。
☆★☆★☆
それは、下見が終わって電車に乗っているときまで遡る。
「実は今日から参加者全員に手紙を送り始めている。遅くても開始3日前には届くだろうね」
デスゲームの開始が刻一刻と近づいていることに気づく度に、あたしは忘れようとしていたことがあった。
このゲームには彼女が参加することを。
☆★☆★☆
デスゲーム開始まで残り3日になった。だから、月見は己龍が送った手紙を受け取ったのだろう。
(……)
何か言ってあげた方がいいのかな、と思った。
何か声をかけてあげた方がいいのかな、と思った。
「……」
ただ、あたしは何も言うことができなかった。
あたしが何も知らなければ、話しかけてあげることはできたかもしれない。
あたしと月見の距離はもう遠くまで離れてしまっていたのかもしれない。
直ることもうないほど、近いように見えて遠いところに―――――。
☆★☆★☆
メイクをして、つくしさんに貰った変成器を準備する。
シンプルな着物を着て、最後に緑色のカラーコンタクトをつけた。
そして、あたしは「朝陽ヒカル」ではなくなった。
部屋に行き、グループ通話に加わる。
「やっほ~! あたしはみんなの案内人を務めます。クワハでーす! よろしくね~‼」
最初の一言で、やっぱり「ここはどこなんですか」とか、「あなたはだれなんですか」とか。デスゲームにはよくある質疑応答が勝手に始まってしまう。
空想の世界では当たり前のようにあったことだが、実際になってしまうとは。
「あーもう。うるさいなぁ。クワハはクワハ。ここは旅館。証明は終了」
このままグダグダ続けても意味はないので、早速本題に入る。
「君たちは、『己龍コウ』に呼ばれてここに来た。『何かがある』っていうのは流石にわかってるよねー? その答え発表します!」
あたしは大きく息を吸う。
「楽しいゲームの始まり始まり~!!!」
☆★☆★☆
――――――ついにデスゲームが始まる。




