デスゲームの作り方4 最後まで入念な準備を(3)
「ついにこの日が来たね」
己龍はいつもと違ってラフな服装をしている。
ただ、サングラスに帽子と、いかにも芸能人らしい恰好をしていた。
「……逆に怪しまれませんか?」
「大丈夫だよ、ヒカル君。何かあったら、つくし君に対処してもらうからね」
そいつは笑みを浮かべる。
はい。と、つくしさんも元気な様子で指を鳴らした。
……全然、大丈夫じゃあないんすけど。
声には出さなかった。
声に出した瞬間、最初に対処されるのは知らない人でなくてあたしになるだろう。
「ゲーム開始まで残り1週間だ。少し期限を延ばすから、今日の経験を参考により良いゲームになることを期待しているよ」
「……はい」
あたしはメモ帳とシャーペンを持ってきたバックにしまう。
そしてそのバックからICカードを取り出した。
☆★☆★☆
「あの、ルールを作るために旅館にお邪魔するってことなんですよね?」
あたしたちは電車に乗っていた。
万が一のことを考慮してなのか、己龍とあたしの間にはつくしさんが入っている。
己龍に大声で聞くのは周りに声が漏れて大変なことになる可能性もあったので、小声でつくしさんに聞くことにした。
「はい、今日は貸し切りにしていますので問題ありません。本日はスタッフの方々もいらっしゃるようですが、ゲーム当日は私たちだけのようです」
「え、……え⁉」
「ヒカルさん。静かにしてください」
周りの乗客から冷たい視線を浴びる。
気まずい雰囲気が流れたまま、あたしたちは旅館へと向かう。
☆★☆★☆
舞台となる旅館は、都市の外れにある森の中だった。
部屋は己龍が言っていたように33室。そのほかにも、食事亭や観賞用の庭、露天風呂まである。
あたしたち3人はそれを確認すると、宿泊部屋の一室へと進んだ。
宿泊部屋に入ろうとする。
「……あれ?」
しかし、ドアを引こうにもびくともしなかった。
「ヒカル君。それは常識がなっていないんじゃないかな」
己龍には苦笑いを、つくしさんにはスタッフの方が周りにいなかったか確認された。
「こう見えて、実は鍵がかかってるんだ」
彼はそう言いながら一つの物を取り出す。それは、カバーに「9」と書かれたスマホだ。
これをどうするのだろうかと思っていたとき、己龍はそれを押す。
ガチャ。という音が鳴った。普通に考えて、鍵が開いたということだろう。
ドアは「スマホ式」になっていた。
「今はどの公共事業でもスマホ式の鍵を付けることが法律で義務づけられているんだよ」
「……そうなんですね」
「もっとも、それを決めたのは私なのだが」
…………ですよね‼
心の中で大声を出した後、何もなかったかのようにそのまま部屋に入る。
全員が入ったとき、再びドアに変化が起こったことを知らせる音が鳴った。
「あのー」
たとえ旅館だといえ、大声で話したら他の人――スタッフの人たちにデスゲームのことを聞かれかねないから、修学旅行のテンションにならないように細心の注意を払いながら話を始める。
「その鍵って、どんなシステムなんですか?」
「ボタンを押すと鍵を開ける、閉めるというプログラミングが施されているんです。プログラミングがなければ、ゲームもアプリも、AIだって存在しないのですよ」
珍しく、つくしさんが説明をする。
「ありがとうございます……!」
デスゲームとは全くの無関係だが勉強になったので何かが満たされる思いだった。
☆★☆★☆
宿泊部屋は町の外れにある森のようだった。
まるでこの旅館が小さくなったみたいだ。
こげ茶色のタンスに畳。墨で描かれたような絵が入ったふすま。そこには座布団と毛布が畳んである。
部屋の中心には、荷物を置いてくださいと言わんばかりの小さな机が置いてあった。
今の家の造りとは全く違う。
「最終案は見せてもらうが、行うのは誤字脱字や言葉の修正だけにしておくよ。ところで、下見はこれで最後になるのだが、何か質問はあるかい?」
「いえ。今のところありません。何かあったら連絡させてください」
それが最後だった。
舞台の下見は終わりを迎えた。




