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第6話:推しと、ご飯の約束

推しと、連絡先を交換しただけでも奇跡なのに、さらに「ご飯に行こう」という約束まで取り付けてしまった俺。


 (いや、待て待て……こんなの普通のオタク人生ではありえないぞ……)


 推しと食事――そんな夢のような展開が本当に訪れてしまったわけだが、問題はここからだった。


 (ど、どこに行けばいいんだ……!?)


 場所選び、これがめちゃくちゃ重要だ。あまりにも庶民的すぎると「こんな店でいいの?」となるかもしれないし、かといって高級すぎる店を選んでも「気を遣わせちゃう」と思われるかもしれない。


 (そもそも、天音さんはどんな食べ物が好きなんだ……!?)


 考えてみれば、推しの好きな食べ物は知っていても、実際にどんな店が好みなのかまでは分からない。ファンとして応援しているだけでは得られない情報だった。


 悩みながらスマホを開くと、ふと天音さんとのトーク画面に目が行く。


 (よし、ここは思い切って聞いてみるしかない!)


 俺は震える指でメッセージを打ち込んだ。


 『何か食べたいものとかありますか? それに合わせてお店を探そうと思うんですが……!』


 送信した瞬間、心臓が跳ねる。返信が来るまでの時間がやけに長く感じる。


 そして、数分後――。


 『えー、どうしよう(笑) せっかくだし、私の行ったことないお店がいいな! でも、あんまり気を遣わなくていい感じのところがいいかも!』


 ……よかった、変に構えなくてもいいらしい。


 (でも「行ったことのないお店」って、かなり難しくないか!?)


 推しの行動範囲なんて分かるはずがないし、下手に「ここ、天音さん行ったことあります?」なんて聞くわけにもいかない。


 (……ここは、ある程度の予想で絞るしかないか)


 天音しおりさんは売れっ子声優。仕事が忙しいだろうし、食事も外食ばかりではないはず。となると、普段なかなか行けないような「ゆっくりできるお店」が狙い目か?


 考えた末、俺はおしゃれすぎず、それでいて落ち着けるカジュアルなビストロを選んだ。


 『じゃあ、こんな感じのお店はどうですか? ゆっくりできそうなところなんですが……!』


 店のリンクを貼って送る。すると――。


 『わぁ、素敵! こういうお店行ったことないかも! いいね、楽しみ!』


 即答でOKが出た。


 (よし……! これは、ちゃんと考えた甲斐があったかもしれない)


 思わずガッツポーズを取りかけて、我に返る。


 (いや、まだ気を抜くな。むしろ本番はこれからだ……!)


 推しと食事に行く――これはただのファンの夢物語じゃない。実際に訪れる未来なのだ。


 そう思うと、俺はまた心臓がドクンと鳴るのを感じた。


 (ちゃんと会話、できるかな……!?)


 期待と不安を抱えながら、俺はそっとスマホを握りしめたのだった。

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