36話:もう一度、会いたくて
デートの翌日。
しおりは収録の合間、スマホを手に取ってはじめとのトーク画面を眺めていた。
『俺も楽しかった。また遊ぼうな』
昨日の夜にもらったメッセージを何度も見返してしまう。
──また遊ぼうな。
それだけの言葉なのに、どうしようもなく嬉しかった。
次に会う約束なんてまだしていないのに、もう次が待ち遠しくて仕方がない。
「……はぁ」
ため息まじりにスマホを置いて、台本に目を落とす。
今日はアニメのアフレコ。しっかり切り替えなきゃいけないのに、どうしても気持ちがそわそわしてしまう。
「しおりちゃん?」
「えっ?」
共演の先輩声優に声をかけられ、慌てて顔を上げる。
「なんか、いいことあった?」
「えっ、ど、どうしてですか?」
「ふふ、なんか楽しそうな顔してたから」
図星を突かれて、思わず頬が熱くなる。
「そ、そんなことないです!」
「そっかー? まあ、いいことがあるのはいいことだよ」
先輩は笑って肩をぽんと叩き、マイクの前に向かっていった。
しおりはバレないように深呼吸して、マイクの前に立つ。
でも──
「……やっぱり、気になるなぁ」
マイクの前ではプロの自分でいられるけど、気持ちの切り替えがうまくできない。
はじめと、また会いたい。
でも、自分から誘うのはなんだか恥ずかしい。
何か自然な理由があればいいのに
仕事を終えて、帰り道のカフェに立ち寄ったときのことだった。
「……あれ?」
メニューを眺めていると、期間限定の新作ドリンクが目に入る。
──そういえば、はじめがこの前「期間限定のやつ、気になるけど一人じゃ頼みにくいんだよな」って言ってたな……。
「……」
スマホを手に取り、迷う。
──これなら自然に誘える……?
何度か打ちかけては消し、ようやく送信ボタンを押した。
『この前言ってた期間限定のドリンク、もうすぐ終わっちゃうみたいだよ』
送ってすぐ、心臓がドキドキし始める。
『マジか、飲んでみたいな』
すぐに返信がきて、さらに心臓が跳ねる。
勇気を出して、もう一言送った。
『一緒に行く?』
送った瞬間、スマホを握りしめる。
ドキドキしすぎて、すぐに画面を見る勇気が出ない。
──もし、断られたら?
でも、すぐにスマホが震えた。
『いいね! じゃあ、明日の夕方とかどう?』
「……やった」
ほっとしたのと同時に、嬉しさが込み上げる。
また、会える。




