34話:夜景の下で
カフェや公園を巡りながら過ごしたデートも、気づけば夕方になっていた。
「久しぶりに会えたし、もう少し一緒にいたいな」
しおりがそう言って、俺の袖を軽く引っ張る。
その仕草がなんだか可愛くて、俺は小さく笑った。
「じゃあ、どこか夜景が綺麗な場所にでも行くか?」
「うん!はじめ、いいとこ知ってる?」
「まあな。そんなに遠くないし、ちょっと歩くけど行ってみるか」
駅から少し歩いたところに、小高い丘の展望スポットがある。
派手な観光地ではないが、街の灯りが一望できて、静かに過ごすにはちょうどいい場所だった。
「わぁ……綺麗……!」
しおりは感動したように、目を輝かせながら街の光を見つめる。
「こんな素敵な場所、よく知ってたね」
「まあ、たまたま散歩してたときに見つけたんだ」
「ふふ、はじめって意外とロマンチスト?」
「どうだろな」
照れ隠しに夜景へと視線を向ける。
しおりは寒さに震えながらも、景色を楽しんでいるようだった。
ふと、その様子が気になって、俺はポケットから手を出す。
「……しおり、手、冷たいんじゃないか?」
そう言うと、しおりは俺を見て、少し驚いた顔をした。
「え……いいの?」
「当たり前だろ。風邪引いたら大変だしな」
しおりは一瞬ためらったあと、そっと俺の手を握る。
「……はじめの手、あったかい」
握った手からじんわりとした温もりが伝わってきて、俺は少し意識してしまう。
しおりも意識しているのか、少しだけ頬が赤い。
「……こんなに綺麗な景色を、大好きな人と一緒に見られるなんて、幸せだな」
しおりがポツリと呟く。
その言葉に、胸がドキリと鳴った。
「……俺も、しおりと一緒に見れてよかった」
しおりが小さく微笑む。
「また、来ようね」
「……ああ」
静かな夜景の中、俺たちはしばらく手を繋いだまま、ゆっくりと景色を眺めていた。
夜景を堪能したあと、駅までの道を二人並んで歩く。
「今日はすごく楽しかったな」
「俺も」
しおりは歩きながら、俺の手をまだ握っていた。
離そうとはしない。
「……ずっとこうしてたくなっちゃうな」
冗談っぽく言ったのかもしれないけど、その声はどこか寂しそうだった。
「またすぐ会えるだろ?」
「……うん。でも、やっぱりちょっと寂しい」
駅に着くと、名残惜しそうに俺を見上げるしおり。
「はじめ、今日付き合ってくれてありがとう」
「こっちこそ。楽しかった」
「……もう少しこうしてたいけど、今日はここまでだね」
しおりは俺の手を名残惜しそうに離し、ふわりと笑った。
「気をつけて帰れよ」
「はじめもね」
そう言って、俺たちはそれぞれの帰路についた。




