32話:すれ違いが始まる?
新年が明けてしばらく経ち、日常が完全に戻ってきた。
俺も仕事が忙しくなり、しおりも仕事のスケジュールが詰まってきているようだった。
最近、メッセージのやり取りはしているものの、実際に会えていない。
電話も短くなり、なんとなく物足りなさを感じるようになっていた。
『今日もお疲れ!忙しい?』
昼休みに送ったメッセージへの返信は、仕事が終わる夜になってからだった。
『お疲れ!今日はバタバタしてて、やっと落ち着いたよ~』
『そっか、大変だったな』
『うん。でも楽しいよ!また落ち着いたら会おうね』
その言葉に、「ああ、やっぱり忙しいんだな」と実感する。
夜、スマホが鳴る。
しおりからの電話だった。
「はじめ、今大丈夫?」
「もちろん。久しぶりに声聞いた気がする」
「ふふ、ごめんね。ちょっと立て込んでて…」
しおりの声は相変わらず元気そうで、ホッとする。
「最近、忙しそうだな」
「うん。新年は収録が多いから、バタバタしちゃうんだよね」
「無理しすぎるなよ?」
「ありがとう。でも、はじめこそ仕事忙しくない?」
「まあ、そこそこな。でも、しおりほどじゃないかな」
しおりは少し笑って、「そっか」と言った。
なんとなく、会話が途切れる。
「…なんか、ちょっと寂しいな」
ふと、口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。
しおりも驚いたようで、少しの間、電話の向こうが静かになる。
「…ごめんね、なかなか会えなくて」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。ただ、しおりの声を聞くと安心するんだよ」
電話越しに、小さく笑う声が聞こえた。
「はじめって、意外と甘えんぼだよね」
「……そうかもな」
自分でも意外だったけど、しおりにそう言われると悪い気はしなかった。
「じゃあ、今度の休み、久しぶりにちゃんとデートしよう?」
「本当に?」
「うん。はじめと会いたいもん」
その言葉に、胸が温かくなる。
「じゃあ、楽しみにしてる」
「私も!」
電話を切ったあとも、しおりの声が耳に残っていた。
本日投稿遅くなりました。




