第21話:優しさに包まれて
映画が公開された。しおりさんが出演している大作映画、ずっと楽しみにしていたその瞬間がついに訪れたのだ。
公開初日、しおりさんからメッセージが届く。映画の舞台挨拶に参加しているとき、彼女は「今日は本当に緊張しているけれど、観てくれる皆さんに感謝の気持ちを伝えたい」と、ファンへの感謝の気持ちを伝えていた。テレビやSNSを通じてその様子を見るたびに、俺は誇らしくて、嬉しい気持ちでいっぱいだった。
「しおり、頑張ってるな…」
公開された映画も、期待通り大ヒットとなり、その後、しおりさんは忙しいスケジュールをこなしていた。それでも、約束していた映画を一緒に観に行くという予定は変わらないと、しおりさんは言っていた。
ある日、しおりさんと電話をしていると、彼女がふと話を切り出した。
「ねえ、一くん。映画、観に行く約束覚えてるよね?」
「もちろん覚えてるよ。公開初日に行けなくて残念だったけど、しおりと一緒に観る日を楽しみにしてたんだ」
「うん、私もすごく楽しみ!今度は絶対に一緒に行こうね。約束だよ」
その約束を交わしたとき、俺はとても嬉しくて、早くその日が来るのを待ちきれない気持ちだった。
けれど、その数日後、突然体調を崩してしまった。暑さと、少し無理をしていたせいだろうか。風邪を引いたのか、頭が重く、発熱もしていた。寝ても休んでもなかなか良くならず、どうしてもその約束を守りたくて、映画の日程を何とか調整できないかと考えていた。
「うーん…今日はちょっとしんどいな…」
俺はベッドの上でうつ伏せになりながら、少しだけ無理をして起き上がろうとした。そのとき、再びしおりさんからのメッセージが届く。
『映画、今度行く時が楽しみだね!早く元気になってね!一緒に観ようね』
そのメッセージを見た瞬間、胸が締め付けられるような気持ちが湧き上がった。しおりさんに何も言わずに、この約束を破るわけにはいかない。だけど、こんな状態で映画に行けるはずがない。
その時、俺は決心して、しおりさんに連絡をすることにした。
「しおり、ちょっと体調が悪くて、映画に行けそうにないかもしれない」
しおりさんからすぐに電話がかかってきた。
「一くん、どうしたの?元気ないじゃん、大丈夫?」
「うん、ちょっと風邪みたいで…熱もあるし、今日はちょっと無理そうだ」
「そうなんだ…でも無理しなくていいよ。体調が悪い時は休んで、無理しないでね」
しおりさんの優しい声に、少し安心する。だけど、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「せっかくの約束なのに、申し訳ない。しおりと一緒に映画を観るのをすごく楽しみにしてたから、できるだけ早く元気になるようにするよ」
しおりさんは少し黙った後、ふっと笑った。
「大丈夫だよ、一くん。無理しないで。私もあなたのことを気にかけてるから、早く元気になってね」
その言葉に、俺は胸が温かくなった。そして、しおりさんは続けた。
「でも、絶対にまた一緒に観に行こうね。その時は無理せず、元気な一くんと一緒に行きたいから」
「うん、約束するよ。今度こそ絶対に行こう」
その約束をして、俺はしおりさんに感謝の気持ちを伝え、電話を切った。
しおりさんが言ったように、無理をせず、体調をしっかりと回復させることが最優先だ。そう決意して、再びベッドに横たわった。その時、ふと心の中で、しおりさんと一緒に映画を観る日を心から楽しみにしている自分がいた。
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