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第12話:少しの勇気、そして前進

あれから、天音さんと再び会う約束をしてから、数日が経った。毎日が少しずつ心待ちの時間で埋められて、気づけばその日がもうすぐだと気づく。


 (今日は、どうしようかな……)


 カフェで会うということに決めたものの、いつも通りに過ごすだけでは物足りなくなってきていた。彼女に会うための準備をしている自分が、どこか浮き足立っているのがわかる。


 「服、どうしようかな……?」


 急に考え始めたその瞬間、ふと一つのことが頭に浮かんだ。天音さんとの関係が、少しずつお互いに慣れてきたとはいえ、まだ少しお互いに気を使っている部分がある。それでも、今日は少しだけ、もっと自然体の自分を見せたい。


 だから、普段の自分らしい、カジュアルで少しリラックスした服装を選んだ。


 (でも、少しだけおしゃれを意識して……)


 鏡の前で何度も確認しながら、俺は最終的に自信を持って外出する準備を整えた。


 ***


 待ち合わせの時間。カフェに到着すると、すでに天音さんが来ていた。


 「こんにちは!」


 「お疲れ様、今日も元気そうだね」


 天音さんのいつも通りの優しい笑顔に、自然と安心感を覚える。


 「うん、元気だよ!天音さんも、すごく元気そうだね」


 「ありがとう、最近ちょっと忙しくて、でもあなたと会うことでリフレッシュできるよ」


 その一言に、俺は心が温かくなるのを感じた。彼女はいつも、何気ない言葉でも優しさを感じさせてくれる。


 「それは良かった!今日はどんな話をしようかな?」


 天音さんが少し笑いながら言うと、俺も思わず笑顔を返した。


 「そうだね、最近どうしてる?」


 「仕事がちょっと忙しくて、でもそれも楽しみながらやってるよ。あ、そうだ、あなたは最近何か面白いことあった?」


 「うーん、実はね、最近友達と一緒に映画を観に行ったんだ。それがすごく面白くて!」


 「映画か! どんな映画だったの?」


 俺が話す内容に、天音さんは興味津々で聞いてくれた。その姿を見て、なんだかますます緊張がほぐれていくのが分かった。


 「それでね、映画の中でちょっと考えさせられるようなシーンがあってさ……」


 俺は映画の話を続けながら、気づけば天音さんと過ごす時間がどんどん楽しくなっていった。お互いに少しずつ心を開いていく感覚が、今まで以上に自然に感じられた。


食事を終えた後、カフェの外に出て、少し散歩しようということになった。


 「少し歩こうか?」


 「うん、いいね」


 二人で並んで歩きながら、周りの風景を眺めていると、ふと空を見上げた天音さんが言った。


 「最近、忙しくて外に出る機会が減ってたんだけど、こうやって外を歩くのもいいね」


 「うん、たまにはゆっくりするのも大事だよね」


 「そうだね」


 歩きながら、少しずつ心の距離が縮まっていくのを感じる。天音さんがこうして自然に会話をしてくれることに、改めて嬉しさが込み上げてくる。


 「ねぇ、さっきから思ってたんだけど」


 天音さんが突然、少し照れくさそうに言った。


 「ん? 何?」


 「やっぱり、君って面白いし、話してると楽しいね」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は少し照れてしまった。


 「え、そうかな?」


 「うん、なんかすごく居心地が良いというか、自然に話せる感じがする」


 その言葉を聞いて、俺は心の中で嬉しさが溢れた。それは、どこか新しい関係が始まったような、そんな確信を感じさせる言葉だった。


 「俺も、天音さんと話してると、すごくリラックスできるし楽しい」


 「それ、嬉しいな」


 その後、少しだけ沈黙が流れた。けれど、その沈黙も不自然ではなく、心地よい空気が二人を包んでいた。


 ふと、天音さんが顔を少し赤くして言った。


 「……ねぇ、そろそろ、君のこと『名前』で呼んでもいい?」


 その突然の提案に、俺は思わず驚いた。


 「え? あ、もちろん!」


 「じゃあ、これからは『あなた』じゃなくて、名前で呼ぶね」

その一言が、俺の心に大きな変化をもたらした気がした。


 「じゃあ、俺も……」


 「うん、どうぞ」


 俺は少し照れくさそうに呼びかける。


 「しおり……さん?」


 その呼び方に、しおりさんは照れたように笑った。


 「うん、いいよ。これからはもっとお互いに、リラックスして呼び合おうね」


 その言葉を受けて、少し勇気を出して、俺は続けた。


 「じゃあ……しおり?」


 その一言に、しおりさんは目を丸くして驚いた。けれど、すぐに柔らかな笑顔を浮かべて、嬉しそうに言った。


 「……うん、いいよ。私も、あなたのこと、もっと気軽に呼びたいから一くんって呼ぶね」


 その瞬間、何かが少しだけ変わった気がした。今までの距離感が、少しずつ縮まって、今よりもっと近く感じられるようになったような気がした。


 「ありがとう、しおり」


 「うん、私もありがとう」


 その後、少し歩いてから立ち止まった時、しおりさんがふと立ち止まり、俺を見上げて言った。


 「ねえ、一くん、今日は本当に楽しかったよ」


 その言葉に、思わず胸が高鳴る。


 「俺も楽しかったよ、しおり」


 しおりさんは、少し照れくさそうに微笑みながら、俺を見つめた。


 「じゃあ、また今度、一緒にどこか行こうね」


 「うん、絶対行こう」


 その約束が、二人の関係をまた一歩進めたような気がした。

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