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第9話 高度に発展した……えっと、なんだっけ? 教えて! クラークさん!

 そして、これからが大事な話。

 『石の中』に飛んだキャラは即死するんだけど、すると死んだキャラはどうなるか?

 それは、ダンジョンの入口に吐き出されるんだよね。

 そう言う仕様だから理由なんて知らないけど、まぁ石の中に居たら復活も出来ないんだから救済措置みたいなものなんだろう。

 そして、放置された死体は通りすがりの別のプレーヤーに蘇生魔法をかけてもらうか、街の教会まで連れて行って貰うまでその場に残り続ける……追い剥ぎプレーヤーに所持品パクられることも有るから、即フレンドにチャット飛ばして回収してもらうけどね。


「あくまで予想ですが、その死体が石の中に飛ばされた人なんだと思いますよ」


「そ、そうなんですか? じゃあ私は……このまま死ぬのでしょうか?」


 リアさんの悲しそうな顔に、また少し違和感。

 いや、違和感と言うより腑に落ちた感じ?

 恐らくリアさんはプレーヤーではなく、NPCなんではないだろうか?


 NPCが出てくるゲームには大きく分けて2つ存在する。


 一つは無敵タイプ。

 どれだけ攻撃しようがHPは減らなかったり、勝手に復活したり、攻撃対象にすらならないと言うのもそれらに含まれる。


 そして、もう一つが死んだら終わりの消滅タイプ。

 シナリオ進行上で死ぬ展開は別として、モンスターだけじゃなくプレーヤーの攻撃でも容赦無く死ぬし、一度死ぬと魔法やアイテムでも蘇生は出来ず、そのゲーム中二度と登場しなくなると言う凶悪な仕様だ。

 キャラによっては、その後のイベントまで完全消滅するので、ネットゲームではあまり採用されていない……


 ……んだけど、俺がやってるゲームは採用されてるんだよな。


 以前、狂ったユーザーが、イベント独占のため一つの村を絶滅させ、永久的にそのイベントが消失した事件が発生した事が有る。

 その時も運営は、なんの救済もしなかった。

 言い分は『ユーザー全ての行為が自由なのがウリなので、全ては自己責任。私共は一切干渉しません』だって。


 NPC視点では死んだら終わり、蘇生なんて存在しない。

 だから、リアさんは生きているか死んでいるか分からない今の状況を焦っているのだろう。


「落ち着いて考かんがえてみて下さい。普通石の中に入ったら死んじゃいませんか?」


「それどころじゃありませんよ。石の中に転移ですよ? 石と同位相に別の物質が同時に存在する状態だと光崩壊の恐れも……そうなったら莫大なエネルギーが発生して迷宮全体に影響がぁぁぁ……」


 なんか深刻な顔して難しい事を言い出したけど、これも魔法の理論なのかな?

 ……高校時代に聞いたことが有ったかもだけど、選択科目が違うからよく分からないや。

 そう言えば『高度に発展した? なんとか? は魔法がどうとか』?

 そんな言葉が有った気がするなぁ~、多分それだよ。


「恐らくですが、そうならないように迷宮自体が石の中の人を吐き出すのかも知れませんね」


 思考が停止したのでそれっぽいこと言ってみた。

 こちとら運営が決めた仕様以上な事は分かんないんだって。


「なるほど、迷宮自体が吐き出す……ですか。それは興味深い話ですね。最新の研究では迷宮は一つの意思を持った存在だと唱える学者も大勢います。それよりタモツ様はすごいです。何も知らないと仰いながら、ものすごい見識をお持ちなんですね」


 あれ? 適当に言った仕様の言い訳を納得されてしまった。

 しかも、褒められてしまったよ。

 ただ単にゲームの知識を披露しただけなのに。

 どちらかと言うと、そんな難しい事をツラツラ言えるリアさんの方が凄いですよ。

 俺の17歳の頃なんて遊んでばかりだったしな。


「そんなに褒めないで下さい。明確な根拠が有った訳じゃないんですから。それより次が問題です」


 あまり褒められてもムズムズする。

 謙遜する振りをして話を進めることにした。

 いや、本当にずっとリアさんと話していたいんだけどね。


「問題……ですか?」


「えぇ、リアさんの能力板によると『石の中』にいる事になっているようですが、死亡扱いではないんですよね?」


 実はこれは既に確認済み。

 状態:健康だったし、HP/MPに関してはリアさんしか比較対象が無いので多いのか少ないのか分からないけど、死んでいるには程遠い数値だった。

 だから彼女は今『石の中にいるが死んでいない』と言う矛盾した状態なわけ。

 そして、そこが問題なんだよな。


「はい、仰る通りです。も、もしかして石の中に転移した者は皆ここに来ているのでしょうか? そして戻る際に死んでしまう……?」


「それはないと思います。他にもこんな風に異世界人がやって来るなんて事件が起こってたら、俺の世界でももっと知られているんじゃないかな? 少なくとも俺はそんな事例知らないですし、違うと思いますね」


「だと良いんですが……」


「で、問題の内容なんですが、この『死んでいる筈なのに生きている』と言う矛盾した状況は、どうすれば解決するのか?」


「どうすれば……ゴクリ」


 俺の言葉に真剣な顔して息を呑むリアさん。

 ここまで引っ張りながらごめんなさい。

 即解決! なんて事は出来ません。

 俺が言えることは……。


「その時を待つしか有りませんね」


「え~なんですかそれ~」


 俺の回答にがっかりするリアさん。

 本当にごめん。

 でもいい加減な回答じゃないんだよ。


「そんなにがっかりしないで下さいってば。まず、リアさんは神聖魔術師なので転移魔法は使えませんよね? そもそもここと転移先で相互の接続指定もしないといけませんし、転移魔法が使えても難しいと思います」


「そ、その通り! なんでそんな事まで知っているんですか? 実はここは異世界じゃなくてタモツ様も私達の世界の住人じゃないんですか?」


「違いますって」


 ただのゲームの知識だからです。

 このゲームのワープってめんどくさい仕様なんだよ。

 対応する触媒アイテム同士を、繋げたい地点同士に配置して接続設定をしないといけないんだよね。




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