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相談

「カルディナ領か」

その日の夕食が終わり、アレックスと一緒に彼の部屋に戻ったシルヴィアはミッチルから届いた手紙を見せて、カルディナ領へ行けないかと相談してみた。

社交シーズンまでまだ時間がある。ミッチル達は仕事で赴いているが、シルヴィアはアレックスと一緒に旅行として行ければと考えていた。

仕事の邪魔をするわけにはいかないので、ミッチル達の空いた時間を利用して顔を出せればと思っていた。

「どうかしら?アレックスの仕事が忙しいようなら諦めるしかないと思っているんだけど」

ディールと一緒に仕事で領地を回っているアレックスが忙しければ当然行くことはできない。シルヴィア1人で行かせるなんてことはリーンハルト公爵家全体で反対されてしまうだろう。

「仕事なら調整すればなんとかなるだろう」

少し考えてからアレックスはじっとシルヴィアを見つめた。

「ずっとどこにも出かけることもできなかったし、本当は領地内をあちこち見せてあげたかったんだけど、その前に隣の領地になりそうだな」

「それって・・・」

一緒に行ってくれるということだろう。

「ありがとうアレックス」

「まだ確定ではないよ。父さん達にも報告しておかないと」

アレックスには仕事があるので勝手にすべてを決めていいわけではない。

そう伝えられても、シルヴィアは嬉しかった。

なによりもシールズに会えることが彼女の中で一番嬉しいことになっていた。ずっと手紙でしか報告ができなかったのだ。直接会える喜びにシルヴィアが考えている以上に心を満たしていたのだ。

「まずはアレックスが一緒に行ってくれないといけなかったでしょう。だからありがとうでいいのよ」

嬉しそうにしているシルヴィアに、アレックスはそれ以上何を言っても無駄だと悟ってしまっていた。

それにシルヴィアが嬉しそうにしていることが何よりだと思ってしまい、自分の単純さにも呆れてしまっていた。

「まずは日程の調整をしないといけないだろう。それに行くならカルディナ伯爵にも連絡をしないといけない。アロエン達にも連絡できるようにしておかないと」

「ミッチルさんには私が手紙を書くわ。先生にも会えるようにしてもらいたいし」

シルヴィアとシールズが知り合いであることをミッチルは知っているようだった。シールズが話しているのだろうが、どこまでの関係を話しているのかわからない。とりあえずシールズとも会えるように手紙に書いておくだけにするつもりだ。

「・・・本当に嬉しそうだな」

色々と考えているとアレックスがぽつりと言った。公爵領に来てからシルヴィアもいろいろと勉強しながら頑張っている姿を見てきた。その中で楽しそうにしている彼女を見ているとアレックスまで幸せな気持ちになってくる。魔法石を作って楽しそうにしている彼女の姿は何度か見ていた。

だが、今のシルヴィアはそんな姿とはまた違うように見えたのだ。

シルヴィアとシールズの関係は知っているが、それほど深いことをアレックスは知らない。シールズ=リッチにアレックス自身会ったことがないのだ。だからこそシルヴィアの様子に羨ましさのようなものがあった。

「アレックスは先生に会ったことがないわよね。私の魔法石の職人としての第一歩を導いてくれた人なのは知っていると思うけど、先生自身のことは話したことがなかったわね」

アレックスの心を読んだかのようにシルヴィアが言う。

「魔法師としても優秀な人なのよ。魔法石にも詳しかったからいろいろと教えてもらったの」

魔力はあっても魔法を使うことができないシルヴィアは魔法師として落ちこぼれとされていた。魔法師としての審査をしてくれたのは2人の魔法師だが、1人は簡単にシルヴィアを見放した。

そんな彼女の魔力を何とか活用できないかとシールズだけはいろいろと考えてシルヴィアに魔法を試させたのだ。

結局魔法は使うことができず、シルヴィア自身も諦めていたところで、魔法石という存在を教えてくれた。

魔法は使えなくても魔法石を作ることができたシルヴィアは、そこから水を得た魚のように生き生きと魔法石作りをしていった。彼女の能力に周囲は心配をしていたが、そんなこと関係なくどんどん新しい魔法石を作り出していった。

半年ほどでシールズはヘイネス男爵家に来なくなった。これ以上一緒にいると魔塔にいろいろと詮索されてしまうからという理由だったが、シルヴィアを守るためだということは幼かったシルヴィアはすぐに理解できなかったことを覚えている。

天才的に魔法石を作ることは、利用される可能性も十分にあったからだ。

シルヴィアは周りに守られながら魔法石の職人として腕を磨いていったのだ。

手紙だけのやり取りになってしまったが、シルヴィアにとってシールズは今でもずっと師である。

「アレックスも会えると思うから楽しみにしていてね」

楽しそうにシルヴィアが言うので、アレックスは苦笑しながら頷いた。

まだ父の許可をもらっていないが、もうすでにカルディナ行きは決まったようなものだなと思っている。

シルヴィアとの旅行なのだと思うと、何としてでも仕事を終わらせて一緒に行かなければと決意するアレックスだった。


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