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アリガトウ

 「カゴ一つにまとめて買お。」


 「え? それだと何作るかバレません?」


 「だってあんた、そんな大量のドーナツ持ってたら買い物しづらくない?」


 「あ。」


 UFOキャッチャーに夢中で手にドーナツを持っている事をすっかり忘れていた。


 「でも別に、カートに乗せれば大丈夫じゃないですか?」


 「カートに乗せてたら、振動でドーナツ同士がぶつかり合ってパリパリのチョコが割れちゃうじゃない。 だから一つのカゴにまとめて買お。 私カゴ持つよ。」


 堀さんはツンツンしているが、案外周りに気を遣える良い人だ。 歳の離れた妹を一人で世話してるから尚更だろう。


 「ありがとうございます。 助かります。」


 「その代わりそのドーナツ、絶対に型崩れさせないでよ。 後で私が美味しくいただくんだから。」


 「あ、まさかその為に?」


 「そうそう。 流石にあんた一人じゃその量は食いきれないでしょ。 手伝ってあげる。」


 3秒前の自分を殴りたい。


 「…本当に風の様な人だな。 でもまぁ、俺は話しかけてくれるだけで嬉しいし、本当にありがたい。」


 一人になると気づく、話しかけてくれる人の貴重さや重要さ。 「孤独に生きる人は強い。」ってよく言われるけど、おそらくそれはそれに気づけた人の事を言っている。


 孤独は寂しく、寂しさという穴に物をたくさん詰めて表面上は綺麗に見せても、少し動くと詰めた物がポロポロと落ちる。


 まるで失敗した恵方巻きだ。


 「病気の事もあるし、現実世界と明晰夢の世界を行き来する方法は分かっても、もう来れなくなる事もあるかもしれない。 堀さんに「ありがとう」って伝えとこう。」


 俺は昔から友達などに、俺にとってプラスになる事をしてくたり、俺のために動いてくれたりしたら、すぐさま感謝を伝えていた。


 「やべっ。 めちゃくちゃぼーっと考え事してた。」


 「よーし、会計しに行くよ。」


 「え、もう堀さんが買うもの入れ終わったんですか? ん、っていうか会計?」


 堀さんの持つカゴには、肉、魚、野菜、果物がパンパンに詰められていた。 そして、それらが余裕で入りそうな特大のエコバッグも持っていた。


 「そんなでっかいエコバッグどこにしまってたんですか? どら⚪︎もん?」


 「今の時代、こんな大きいエコバッグも人差し指くらいのサイズまで畳めれるやつもあるのよ。 ってかあんたの分の食材もまとめてカゴに入れたよ。」


 「え? それじゃルールと違くなりません?」


 「まぁいいじゃん、いいじゃん。 色々入れてあるからそこから作る物考えよ。」


 「わ、分かりました。」


 堀さんは物凄く自分勝手だ。 でも、ひとりぼっちな俺にとっては心地のいい迷惑。 俺なら絶対、初対面の人には自分勝手な行動はできない。


 だからこそ感謝する。


 「堀さん!」


 「ん? 何?」


 「ありがとうございます。 色々と。」


 俺は堀さんの大きく綺麗な瞳を、この瞬間を忘れないように、しっかりと目を見て言った。


 「な、なに? 急に。」


 すぐに目線を逸らされた。


 「あんたってすぐ「ありがとう」って言ってない? 別に私何もしてないし、そんな事言わなくていいじゃん。」


 「生物は皆、いつ死ぬか分からないし、いつ大変な目に遭うか分からない。明日会えなくなるかもしれない。だから、伝えたい事はしっかり伝える派の人間なんですよ。」


 「…ふーん。」


 堀さんは逸らしたはずの目線を俺の目に合わせ、何かを考えていた。


 「じゃあ、私もありがとうだね。」


 「? 僕こそ何かしましたっけ?」


 「いいじゃん。 なんでも。」


 「ははっ。 ですね。」


 俺と堀さんは店を出る。


 外にある街灯が、二人の足元を照らしてくれていた。

 「孤独人は目を瞑ると逢える君に良い悪戯をしたい。」を読んでくださり、ありがとうございます。


 更新が遅れてしまい、申し訳ありません…


 第二十一話は、家に帰宅します。(ようやく)


 次の話が掲載され次第、もしよかったら読んでみてください。


 

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