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悪役令嬢が婚約破棄を回避したら、ジョブチェンジしまして悪魔令嬢に進化するようです。

作者: hiroe

真面目なツッコミ属性の方にはお勧めできません。

寛大な心でよろしくしてやってください。


体が、めちゃめちゃ熱っぽい。

喉渇いたと思いながら目覚めると、外国風の豪華な部屋で寝ていた。



あれ? 私の住むアパートは1DKの筈で…???

いえ、ここはわたくしの部屋よ! 幼い頃からの寝室だもの!!!



わたくしは、貴族令嬢である自分の中に、別の世界の自分の記憶があることに愕然とした。


残業でへろへろになって帰る途中、目の前に走るトラックがー、って、ぇ?えぇ!?

そこでプツンと記憶が途切れてるんだけど!

ぇ?ナニ?私、死んじゃったの!?



……いや、わたくしは生きている。落ち着け。


これは、そう、テンプレだ。

私が学生時代によく読んでいた異世界転生小説あるあるだ。


高熱で寝込んでいたら、自分じゃない自分の記憶を思い出した。

最期の記憶はトラックに轢かれて、人生終わった?

そして、今のわたくしはクールビューティーと評される貴族令嬢。

しかも政略結婚予定の婚約者様は、この国の王太子殿下だ。


あちゃー。

異世界転生悪役令嬢物にまっしぐらな展開しか思いつかんわ!


王太子殿下とはそれなりにお付き合いしているけど、この先は冷え切った仲になってパーティーで「婚約破棄だ!」と宣言される!?

していなくてもヒロインへのイジメや殺人未遂の罪を捏造されて、処刑されちゃう!?


……破滅を回避せねば。


だけど、同じようなシチュエーションの小説が多かったからか、コレだという小説に思い当たらないよぅ!

具体的な回避策を立てようがないなんて、わたくしピーンチ!!!






考えに考えた結果、わたくしがイジメなんてやらない人間だと、王太子殿下に信じてもらえるように、愚直に真摯に善いことを色々やってみましたっ。



まずはお年寄りを大事に!ということで、高齢者が趣味やスポーツを楽しんだり、興味のあることを学んだり、ボランティア活動もできる敬老会的な組織を支援込みで立ち上げました。

毎月、会員同士のお誕生会もやるのよ。

幾つになっても生き生きとした毎日を送るって、大切よね!

腰が曲がって歩くのも億劫になってたおじいちゃんが「若いモンには負けられん」とか言って活発になったって、ご家族からも感謝されたりしたっけ。



それから、貧しくても利用できる病院を、金にものを言わせて開設しました。

私は前世で医者や薬剤師やってた訳じゃないけど、前世で常識的な範囲の栄養管理や衛生観念を実践させたり、薬の開発と利用を促進することで、死亡率を下げることに成功できましたの。

治療を受けることができた方にもご家族にも、とーっても感謝されたわ!



ついでに、治療を尽くしても亡くなってしまう方もいるから、遺族へのケアも考えてみました。

心温まる葬儀プランの提案と、金銭的に葬儀を行うのが難しいご遺族には葬祭補助を行って、誰でも葬儀が執行されるようにしたのよ。

愛する人との別れは辛いけど、遺族が故人を偲んで思い出を語り合ったり、慰め合ったり。

涙だけではなく、ちゃんと笑顔で見送れる場を提供できたと思うわ!




これらはもちろん我が家門の豊富で優秀な人材の活用あってこそだし、こういう時にまとまったお金を使える家で良かったわー。


さーて、と。

この成果を、王太子殿下に向けてギンギラギンにさり気なくアピールしていかなくっちゃ♡




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







ある日、王太子が婚約者の令嬢と共に、宮殿の東門から出た時のことでございます。


はつらつとした笑顔の老男女たちが、思い思いにやりたいことをして過ごしている場に出くわしました。


「この者たちは老人ではないのか。体や気力の衰えは避けられないものではないのか。」

王太子は、訝しげに問いただします。


「畏れながら、殿下。」

「許す。申せ。」


美しい立礼をして、令嬢は水を得た魚のように申し述べました。

「我が家門の全面支援で、地域のお年寄りたちのハッピーライフアッププロジェクトを立ち上げまして、不肖このわたくしがお年寄りのヘルプアンバサダーとなり、皆さんが活き活きと日々を過ごせるよう、憩いの場づくりや、活動場所や、魅力的なプログラムのご提案をさせていただきました!

そちらのお年寄りの一団は「歩こう会」といって、同好の士で集い、目的の場所へ歩くだけの活動をなさっているのですわ。

定期的に歩くことによって足腰の鍛錬、帰属意識による精神的な安定などなどの良い効果が見込めるのです。

そちらのお年寄りの方々は、休日アーティスト活動として趣味の一芸を通行する方々へ披露しておりますの。

手品や、ジャグリング、楽器演奏、ペットの火の輪くぐり、南京玉すだれ、ど突き漫才とか、多彩な芸を魅せてましてよ。

拍手喝采やらおひねりやらをいただくことによって、達成感および自己肯定感などなどの高揚効果が見込めるのです。

あちらのお年寄りの集団は、ゲートボールチームですわね!

あのゲームは、


「大義であった、婚約者殿。」

王太子は、まだ言い足りない様子の彼女を微笑ましげに見つめて、礼を述べました。

「老いとは辛いだけだと思っていたが、生き方次第で充実させることもできるのだな。」




また、ある日のことでございます。

王太子は婚約者の令嬢を連れ、宮殿の南門から出たところ、白い巨塔に人々が入っていくのを見かけました。


「あの建物は何か?」

王太子は、訝しげに問いただします。


「畏れながら、殿下。」

「許す。申せ。」


美しい立礼をして、令嬢は水を得た魚のように申し述べました。

「あちらは、我が家門の全面支援で開業しました、貧しい民も診察する地域医療支援病院でございます。」


「それにしては、病で痩せ衰えた者が見当たらぬが。」

「痩せ衰えてしまうほど重篤な患者は一部ですし、そういう方はちゃんと病室で看護してますから、ここら辺に倒れてたりしてませんって。

それにですね、治療は早期発見が基本ですので、地域の民への健康診断と、結果問題がある方への改善フォロープログラムを実行してるんですよ。

まぁ、それ以前に民の意識改革も並行して行っておりまして、健康的な生活習慣の徹底周知や、毎日の歯磨きとラジオ体操などなどの啓発を推進して、


「大義であった、婚約者殿。」

王太子は、まだ言い足りない様子の彼女を微笑ましげに見つめて、礼を述べました。

「病から逃れる術はないと思っていたが、病を遠ざけることを諦めてはいけないのだな。」





また、ある日のこと。

王太子は婚約者の令嬢と共に、宮殿の西門から出たところ、しめやかに棺を運ぶ人々が葬儀場へと向かう様子が見えました。


「亡くなった者は親しい者たちと二度と会うことが叶わず、親しかった者たちも亡くなった者と二度と会えなくなってしまうのだな。」

王太子は避けられぬ死を思い、憂うのでございました。


「畏れながら、殿下。」

「許す。申せ。」


美しい立礼をして、令嬢は水を得た魚のように申し述べました。

「誰しもいつかは死ぬのです。だからこそ、生命は尊く、輝いているのではないでしょうか。

寧ろ、いざ死ぬ時になって人生を振り返った時に、100点とはいかないまでも自分も結構がんばったなーと思えるように日々を過ごしていくのが大切なんじゃないでしょうか。

そう思えば、がんばって人生の卒業を迎えた故人の魂を送る側も、お疲れさまでしたの気持ちでお見送りしなきゃと思う訳で!

そこで、わたくしプロデュースの真心安心葬儀プランです。

こちらは甲乙丙丁の4コースがありまして、ご予算別に無理なく大切な故人をお送りすることができますの。

故人の生前のいい話を、時に涙ながらに、時に笑顔で、語るプロのアナウンスと共に執行する葬儀は、遺族の皆さまが故人を偲んで思い出を語らいつつ和やかに飲食をするというドンチャン騒ぎとセットが売りでして、しんみりだけではなく、浮世からの旅立ちを心から後押しできるような仕掛け満載で、


「大義であった、婚約者殿。」

王太子は、まだ言い足りない様子の彼女を微笑ましげに見つめて、礼を述べました。

「死を避けて絶望するのではなく、心に折り合いをつけることも必要であろう。私たちは、生きていかねばならないのだから。」





そして。

ある日、王太子は婚約者の令嬢と共に宮殿の北門から出た時、式場へ向かう美しい花嫁行列を見たのでございました。


「……婚約者殿。私たちの結婚式も間も無くだな。」

王太子は側に控える令嬢を見遣って、微笑みました。


「畏れながら、殿下。」

「許す。申せ。」


美しい立礼をして、令嬢は水を得た魚のように申し述べました。

「もしかして、わたくしと婚約破棄したいとのお申し出でしょうか!?せめて穏便なただの破棄でお願いしますよ!冤罪をねじ込まれたら、今までの努力が水の泡だし、ヒロインさんが誰だかも未だにわからないけど、イジメやってないですし!!


「言っていることがよくわからぬが、貴女と結婚できるのが楽しみだと伝えたかったのだ。」


「……………はい、ぃ!!?」





後に、その国で最も徳が高いといわれる仙人が、滂沱の涙を流して悲しんだと伝えられます。

「あの王太子殿下は、出家をされれば、人々の苦しみを救う無上の悟りを得る仏陀となられたのだ!悪魔によって殿下の出家の道は閉ざされた。我々が尊い説法を聞く機会は遠ざかってしまったようだ。なんと残念なことか… 」


悪役令嬢は、仏道修行を妨げる悪魔マーラと誹られましたが、「ハッピーエンドだから良いじゃない♡」とどこ吹く風だったとのことでございます。

とっぴんぱらりのぷう。





なんのことやら訳わからん方へ

元ネタを知らないとなんでこうなった!?だと思いますが、お笑いネタを解説すること程切ないことはないので、ご勘弁ください。



うっかり読んでしまった信仰心が高い方へ

なんちゃってな異世界なので、歴史逆行設定ではないです。

だから私たちの世界はちゃんと大丈夫なので、ムカついても石を投げないでください。

怒りの心は滅尽してください。

貪瞋痴の瞋恚を克服してください。

(大切なことなので二度書きました。)


南無釈迦牟尼如来



ぁ、ヒロイン登場してないや。てへ。




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