第098話:組島銀醸敗北の影響
組島銀醸:東郷派閥の侯爵家の孫。
組島与平:銀醸の祖父であり、組島流の開祖。東郷源十郎の一番弟子だった。
西城久子:西城家当主。瑠璃子の母親
西城翡翠:瑠璃子の姉
西城瑠璃子:西城公爵家の次女。姉の他兄が1人、弟が1人いる。主人公と同じく1年。【剣聖】のレア称号持ち
信濃悦子:西城瑠璃子付メイド長。信濃の祖母
近藤昭彦:前世の須藤の親友であり木下清美の幼馴染。今世では清美の婚約者でもある。
宮古:天皇の直孫、生徒会長。ヒロインの1人
住之江譲二:宮古の影、元御庭番忍衆 頭目 レベル28
山下清美:宮古直属の部下、西城家派閥の侯爵家4女。筋肉愛好家。須藤の前世の婚約者とうり2つ
河中葵:宮古直属の部下、北条公爵家分家の長女。
東郷平八:東郷家公爵家現当主
嵐山悟:D組隋一の実力者、蒔苗という病弱な義妹がいる。
大熊:嵐山の取り巻き。嵐山を裏で操る深谷恭介のスパイだった。
島津:嵐山の取り巻き。戦闘力だけでいえば嵐山以上
朝隈樹:朝隈伯爵家の4男。平民落ちしないために奮闘中、攻略対象の1人
カメラが転がったあとのチャット欄は沸いていた。良くも悪くも組島銀醸は有名である、まず喧嘩屋チャンネルの開設、一番規模の大きい東郷財閥の傘下である組島侯爵家の長男、戦闘スタイルも珍しい格闘タイプ。
格闘術でモンスターと戦うのは組島流と金剛流の2流派しかない。刀や剣では100近い流派が登録されている、続いて槍術、棍術が多い。当然零細流派もあるが。
チャンネルでは四天王の誰かとゲストのバトルが主体で、組島が戦うことはないが、プライベートでは組島と四天王での模擬戦なんかも配信されている。
『なんだよあれ』
『トリックとか使ってんじゃね?』
『ダンジョンでどんなトリック使えるんだよ、そんなもん使えるんだったらモンスター皆殺しにしてるわ』
『はいはい、トリックトリック』
信じられないというもの。
『よく見えなかったけど、組島に一撃いれてなかった?』
『初めの雫様瞬殺してたじゃん』
『なんか銀醸様と戦い方似て無かった?』
『金剛流じゃね?』
『あっちは筋肉達磨ばかりだろ』
『素手以外にも銃とか刀もつかってたじゃん』
『素人なら反動で後ろにぶっ飛ぶからな』
美々の戦闘力に考察するもの。
『土下座してたやつ容赦なく蹴り上げていたぜ』
『しかも躊躇ゼロ』
『なにも喋らないのが余計怖い』
『無言で殺戮マシーンとかどこのターミネーターですか?』
『そういやあれ、ダンジョンからの使者とかいう設定だったな』
『じゃぁあの子も』
『マジかよ』
美々の強さに戦慄するもの。
『いや、普通にダン学通ってるよ。有名だぜ本当に毎日煙管くわえてる』
『まじか、あのガスマスクも実在?』
『本物、まじでずっとガスマスクしている。素顔は絶世の美女とかドブスとか、実験で溶けてるからガスマスクしているとか』
『Aランク満点とかカンニングでもしてるんじゃね』
『いや、試験は最低でも監視が2人つくし、先生も1人いる、そしてAランクを受けたのはあれ1人、あとはわかるな』
『ガスマスクの中に仕込んだんだろ』
『いや、さすがに外させただろ。あんなものしたまま受けさせるわけないじゃんJK』
組島の動画はあっというまに拡散した。侯爵という大貴族の息子をロストさせた。それ自体も問題であるが、そもそも爵位はレベルに比例する。いや、比例しなければならない。
銃を使ったとはいえ、護衛だって低レベルで務まるものではない。それをいともたやすく奪ったばかりか、それで護衛と守られる対象を射殺だ。洒落にならない。
当然各貴族にもその情報は広まる。
■西城家:
「……」(久子)
「……」(翡翠)
「……この子で間違いないわね?」(久子)
「はい」(信濃悦子)
久子も当然顔は知っている、だが小さい背のどこからあんな残虐な戦い方ができるのか。パラメーターがあるため体格と強さが一致しないことは日華では常識だ。
だが、小さい背格好で強いというのは無い。探索者になった時点で筋肉繊維の成長は微々たるものになるため元の体格が貧弱であれば、パラメーターも弱くなる。雛乃などが良い例だろう。
「公爵会議でも忠告されるのもわかるわ」(久子)
「相手は本当に組島銀醸ですか?」(翡翠)
「本物でしょう。本物でなければこんなことに、護衛が付き合ったりしないですから」(悦子)
「なるほどね、瑠璃子や海斗が負けるわけね。もう彼女に関わるのはやめましょう、万が一にも味方にとかもだめよ」(久子)
「承知しました」(悦子)
「でもいいんですか、あちらの花籠は惜しいと思うのだけど」(翡翠)
「あっちも、あれはあのままが内の利益になるってカンが告げてるのよね」(久子)
傾きかけていた西城財閥の経営をたった1代で立て直した西城久子のカンであった。
「あの子の提唱していたBPの分配法則についてはどうだったかしら?」(久子)
「はい。ほぼ的中していると結果がでました」(悦子)
「そう。やっぱりやめときましょう」(久子)
「わかりました」(翡翠)
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■組島家:
「馬鹿者めが!」(与平)
「……」(銀醸)
「こいつとは関わるなと言ったではないか!」(与平)
「わるかったよ」(銀醸)
「貴様らもだ! なんのための護衛だ! 銃をやすやすと奪われおって!」(与平)
「「申し訳ありません!」」(銀醸の護衛2人)
「仇討ちはしないでくれ」(銀醸)
「当たり前だ!」(与平)
平民にやられっぱなしは、貴族の沽券にかかわる。そこで仇討ちを考えるような貴族もいるのだが、そんなことできるはずがない。
自分から嫌がる相手に決闘を仕掛けて、負けたら仇討ちなどという恥ずかしいまねは流石にできるわけがない。
問題は銀醸が組島流の免許皆伝であることだ。組島流を馬鹿にされたと勝手に仇討ちを行わないように、与平から緊急に美々に手を出さないように禁止令が出された。無論恥を防ぐ意味もあるが、戦闘力という意味でもだ。
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■東郷家:
東郷平八は無言で画面を見ていた、弟の源十郎が行方不明になって久しいが、それでも美々の動きは弟の動きそのもの、いやそれ以上に洗練されていた。
同時に時雨が与平の元へ向かった理由もわかった。美々が何者かという謎が残ったが、西城も同じ女性のことを調べていた。
もし、重要な何かがあるようなら、公爵会議のときに彼女から言及があったはずだ。彼女を含め公爵家は利益を上げる事には貪欲だが、どこかの家が潰れパワーバランスが崩れる危険性も理解している。
彼女から言及がないのであれば、問題なしか、もしくは何も掴めていないか。どちらにしろ考えるだけ無駄だ。
(花籠白雪についても静観だな)
既にBPの特性については確証を得ている。それに多分階層エレベーターもコイツの指示である可能性が高い。その日に美々と小町が6層にいたこと、宝玉を使っていたことは屋台の店主の話から知っている。
多分花籠の指示の可能性が高い。店主が見ていた様子から小町は何も知らなかったようだし、美々も自らの意志で行っていたようには見えないとのことだった。
…………………………
■宮古:
「……」(宮古)
「こんなやばい人だったんですねー」(清美)
「……これが本気を出した彼女の姿か」(宮古)
「そうですね」(葵)
「いいえ、彼女は常に本気です。だからこそ恐ろしい、こちらが様子見などと悠長なことを言っている間に向こうは本気でこちらを殺すための攻撃を全力で仕掛けてきます」(住之江)
「大人数で囲んでも、彼女は本気で、いいえ、取り囲んでいるという優位に付け込んできます。彼女と事を構えるときは最初から殺すか殺されるかで挑むしかありません。戦闘が始まれば話合いの余地が無くなるのが最悪です」(住之江)
実際今回も美々は、最初の雫を潰したあとは、リーダーである組島を狙い、銃を突きつければ止まるはずという護衛の油断に付け込んでいる。
そしていざ戦闘が始まれば向こうは問答無用で殺しに来る。幸い美々は常識的なので初めから事を構えなければ特に問題を起きることもない。
「今後も関わらない方向でいくぞ」(宮古)
「それがよろしいかと」(住之江)
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■近藤昭彦:
「晃が頭を抱えるわけだな」(近藤)
須藤はある意味美々の対局にあたる。大きい図体に対して、人との争い事をこのまない。本当にぎりぎりまで追い詰めなければ戦闘はしないだろうし、例え相手がどんなクズであっても生涯引きずるだろう。
■五十嵐優:
美々が、楓と一緒に学食で食事をしていると五十嵐が近寄って来る。
「遠藤さん」(五十嵐)
楓が睨み、美々は顔を向けるが、楓に怯んだ五十嵐が話すのを躊躇すると、すぐに興味を失って食事に戻っていく。
「あ、あの」(五十嵐)
「なんじゃ」(美々)
2度目の呼びかけでやっと答えが返ってきた。
「組島さんのことなんだけど」(五十嵐)
「誰じゃ?」(美々)
「え、えっと組島銀醸さん」(五十嵐)
「知らん」(美々)
知っているが話すことの「知らん」ではなく、まったく心当たりの無い「知らん」だ。
「こ、これの事なんだけど」(五十嵐)
と、件の動画を美々に見せる。うろんげな顔で動画をみたが、やっと思い出したようだ。
「あ、あぁ昼の事か」(美々)
美々にとってはその程度の出来事だった。
「もっとなにか、話し合いとかできないのか!?」(五十嵐)
「おぬしがそういう目にあったらそうしろ。当事者でもないのに口を出すのは筋違いであろう? あと被害者に言うな。それともおぬしは、死体に「もっと死なないようにしろ」とでもいうつもりかの?」(美々)
「……えっと、楓さん」(五十嵐)
楓は立てかけてあった槍を手にとる。鞘を外して刃を光らせる。非常に物騒だ。
「なんでしょうか?」(楓)
「なんで武器をだすの?」(五十嵐)
「お姉さまの味方だからですよ」(楓)
「間違えたことしていたら、止めないと!」(五十嵐)
刹那、楓の刃が五十嵐の頬を掠める。
「何故、私があなたの考えに賛同しなければならないのですか? あなたが『間違えている』と感じても、お姉さまのやることは間違えていません」
「楓」(美々)
「はい! お姉さま!」(楓)
美々の一言でするすると槍が戻っていく。
「よう、頼まれてたもん採ってきたぜ」(???)
「や、悪いね」(白雪)
「なっ! 嵐山!? なんでお前がここにいるんだよ!」(五十嵐)
「私が呼んだからだが?」(白雪)
「なっこいつは敵だぞ!」(五十嵐)
「前も同じこと言ってたね~」(皆川)
「そうだね」(長谷川)
「まるで成長していない」(加藤)
「じゃぁこうしよう、彼は山さんだ! きみの仇の嵐山君と似て非なる存在だよ!」(白雪)
「なんだそれは」(嵐山)
「これがあの天才少女とは思えぬな」(島津)
「馬鹿と天才は紙一重というからな」(大熊)
ちなみに島津の視線は美々に固定されている。わずかに殺気を出しているが美々は無反応だ。
「まだ馬鹿なら救いがあるんだけどな」(加藤)
「というわけで、彼は山さん、嵐山君と見た目も中身も頭脳も同じだけど別人だよ」(白雪)
「そんなわけ通るか!」(五十嵐)
「じゃいいや、例の物は?」(白雪)
「おう、これでいいだろ」(嵐山)
「こまっちゃん、太郎君借りるね~」(白雪)
ちなみに「太郎君」は鑑定眼鏡のことだ。
「はいはい、どうぞー」(小町)
差し出された包みを、鑑定眼鏡で確認する。
「確かに」(白雪)
「おいっ」(五十嵐)
「五十嵐、お前にとっては敵だけど、俺らにとっては敵じゃないんだ」(加藤)
「そうそう、五十嵐は俺が好きな者はお前も好きになれ、嫌いなものはお前も嫌いになれって言うのか?」(黒田)
「そう言うわけじゃないけど……わかった」(五十嵐)
「じゃ、こっちポーションにかんする資料ね」(白雪)
「おう。あぁそうだ弁当たのめるか4人分」(嵐山)
「こまっちゃんできる~?」(白雪)
「いいよ~。とんかつ弁当でいいかい?」(小町)
「おう」(嵐山)
■朝隈樹
「俺、あんなやばい奴と取引したのか……」
■村田空馬:
「は、はん。べつに大したことねーぜ」
(あのとき模擬戦してたらどうなってた)




