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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第3章:一ヶ月が経ちました
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第095話:第2回公爵家会議(後編)

 冬川(ふゆかわ)真帆(まほ) :探索者センター センター長

 冬川(ふゆかわ)(あかね) :探索者センター 職員 真帆の娘

 東郷(とうごう)平八(へいはち):東郷家公爵家現当主

 東郷(とうごう)時雨(しぐれ):東郷家公爵家長女にしてシナリオのラスボス。母親は東郷美々(東郷源十郎の娘)だが東郷家の子供として扱われている。

 西城(さいじょう)久子(ひさこ):西城家当主。瑠璃子の母親

 

「あの、もしかして裏が無いのではないでしょうか?」(茜)


「はっ、何をそんな」


「ですが実際私は話したことはあるのですが、少なくともとても裏があるようには見えず、なんというか『愉快犯』そんな言葉がしっくりくる人物でした」(茜)


「私も同じ考えです。なんというか頭の良い愉快犯という感じがしました」(真帆)


「君もか……」


「だが、その方が腑に落ちる気がするな」


南雲(なんうん)?」


「我々は公爵だ、それゆえについつい裏を考えてしまうのではないか?」



「「「……」」」


「……確かに……少なくとも私なら紐を付けるなら最低でもE組に行く子に付けるわね」(久子)


「そうだな、E組なら後ろがある分余計なちょっかいを掛けられることも無いでしょうからね」


「どの道学園に潜り込ませる人間に求めるものはアクション(行動)ではなくインフォメーション(情報)だろう」


「そうね」(久子)



「それに今回のような重要なものを持たせるのも納得できませんね」


「そうだな、こんなものをF組の生徒に持たせたりはしない」



「それにAランクで全科目満点の学力など持たせようがないだろう」


「カンニングでもしたの?」(久子)


「カンニングなど意味ないだろう、小論文もあるしBP再分配についての論文まで書いているんだ」



 BPの分配と再分配の論文については、一時騎士団及び自社の研究員に渡して検証をさせている。突拍子のないことであれば一笑に伏すが、満点を取った上のスキルコピー開発者の論文だ切って捨てるなどできない。



「テスト自体も日本で作られたのだろう、予め問題自体取得することも出来ないだろうからね」


「スキルコピーが自力で開発したもの、それを誇示したいのでしょう」(真帆)


「一条男爵令嬢が入れ知恵した可能性は?」


「ないな。少なくともそのような技術を持っているならもっと売り込んでくるはずだ」(南雲)


「そもそも男爵家に目をかけたのかね?」


「言うわけなかろう。少なくとも彼女の知識を買ったわけではない」


「花籠さんが申請した場に彼女も同席していましたが、知識を提供したような雰囲気はありませんでした」(真帆)


「つまりは花籠白雪主体だったと」



「潰しておくかね?」(北条)


「あいかわらず血の毛多いわぁ、いややわぁ東京もんは」


「ちょっと! 北条なんかと一緒にしないでよ」(久子)


「はっ、他人事のように言っているが、いずれ西にも北にも影響出るようなことしでかすぞこいつは」(北条)


「カンかね?」


「カンだ。しかも必ず当たるな」


「はは、占い師にでも転職したらどうだね?」


「言ってろ」



「どのみち難しいだろう、今は注目が集まっている」


「この花籠君とやらは、この共同名義人といつも一緒にいるのかね?」


「はい。一条男爵令嬢はどうかわかりませんが、ログを見る限り大抵12,3人で固まって行動しています」(真帆)



 実際多人数で固まられると手が出せないのは事実だ。当たり前の話、集団でいれば目立つ。つまり目撃証言は得られやすい。


 それにこちらが、少人数で襲撃すれば打ち漏らしが生じる確率が高い。すぐに事が露見するだろう。1人ならもみ消せるだろうが何人もとなると難しい。


 それに返り討ちされる可能性も高くなる。いくら個人としては強くても人間の目は前にしか付いていないし、腕も2本しかない。ゲームだって強力なボス1体より多数の雑魚の方が嫌いというプレイヤーも多いだろう。


 ではこちらが多数で襲撃……勿論論外だ、襲撃側が自分から目立ってどうする。実行に移す前に根本から考え直した方がいいだろう。



「ふむ……なるほどな」


「どうした? 南雲」



 南雲の画面に黄金の毛皮が映る。


 その輝きは見る物を黙らせる。


 通常の黄金とは違うまた別の、見る物を魅了する黄金。


 かつてのエリザベス女王のみが袖を通すことを許された黄金のコートと同じ黄金の毛皮があった。



「先日分家経由で一条から送られてきた貢物だ」



 レアモンスター、ユニークモンスターは非常に強力だ、そして彼等は48時間程度で消えてしまう。特に黄金羊のような防御型のモンスターは、充分な火力を揃えたつもりでも逃げられることが多い。



「それを狩ったのが花籠達だと」


「多分な」



 毛皮自体の価値は希少性というだけであまりないが、戦闘ログの方は価値がある。雛乃及び、その侍女視点のものだけだが、この毛皮以上の価値はあると言い切れる。



「そういえば、もう一人気になる子が」(真帆)


「誰だね?」


「遠藤美々という少女です」



 画面に遠藤美々の写真が写される。



(美々……)(東郷)



 偶然だろうが、久しぶりに姪の名を聞いた。その名から弟、源十郎を連想する。



(結局源十郎とも、姪の美々ともわかり合うことはなかったな)(東郷)



 元々東郷家は爵位を返還する前から東郷百貨店を経営していた。それゆえか父親が再度叙爵(じょしゃく)したときも、ダンジョンに挑まなければならなかったときも平八の目線は商人だった。


 既に平八が生まれたときからダンジョンは存在していた。ダンジョンを使ってなにか金儲けができるか? しかし、ダンジョンについて学ぶほど出てきた答えは、「致命的な程ダンジョンは金儲けには向いていない」だった。


 中にはモンスターがいるため落ち着いて採取することもできない、魔石も称号以外には使えない。仮になんらかの用途が見つかったとしてもモンスターと戦わないと取得できない以上安定供給はできないだろう。


 珍しい道具が出てきた、結局それを買うのは好事家(こうずか)ぐらいだ、金額は大きいだろうが経営者が事業としてやるものでは無い。



 そのため早々に平八はダンジョンに見切りをつけていた。父親に聞かれたときも、日本での百貨店経営を続けさせるべきだと意見した。父親もやはり同じ考えであったらしくこれがダンジョン資源主義の元となった。


 ダンジョン資源主義は元が真逆の思想から生じていたのだ。



 しかし、弟である源十郎は違った。あいつは最初からダンジョンで己がちからを試すことしか考えていなかったつまりはダンジョン戦場主義側の人間だった。なのに不思議とカリスマにあふれていた。


 そして娘の美々もまた源十郎の気質を色濃く継いでいた。



「随分小さいな」


「そうですね、小学生並みだな」


「どこかで聞いたことがあるような……」


「あれだろう、成長値が低すぎるでギネスに乗りそうになった女性だろう」(東郷)


「あぁあったな。特に何かしたわけではないから却下されたのだっけ」



「で、彼女が何かしたのかね」


「先日11層に到達しました」(真帆)


「早いな」


「たった2人で」(真帆)


「はぁ!?」


「何かの間違いでは?」


「こっちの方がギネスではないか!」



「で、2人で11層へ到達したという証拠は?」


「ログを見る限り彼女と同時刻に10層に到達し、11層へ至ったのは間宮小町だけです」(真帆)


「間宮小町……あぁ、あの料理人の」



「あぁ、あの子か、確か花籠はあのテレビで生産系称号の解説をやっていたね」


「そういえば、妙なガスマスクがいたな」


「クラスメートだからだろう?」



「報告によると遠藤美々は基本単独行動のようです。一応彼女の義理の姉が花籠さんのグループに所属しているので繋がりはあるようです」



「単独行動ねぇ……で?」


「随分と危険なまねをするものだ」


「それのどこに問題が? 一々ピックアップすることのものでは無いだろう。個人行動したければすればいいし、それで死んだらそれだけだ」


「彼女は東郷流武術の使い手です。叔父が危険視する程」(真帆)


「……元御庭番頭目のお墨付きか」



 基本的に貴族ではない冬川真帆だが東京ダンジョンのセンター長であるため素性は調べられている。叔父が元御庭番頭目住之江譲二であることも当然知っている。そんなことも調べられないような人間は公爵家にはいないだろう。


 東郷源十郎の強さは異常だった。いまでも公爵家の人間が一考する程だ。



「東郷さん、どういうことかな?」


「どうもこうも知らん。源十郎の名自体久しぶりに聞いた。大体、時代的におかしいだろう」(東郷)


「そうだな、年中ドラを鳴らしていたような奴だ、仮に生きていたとしても誰にも気づかれづに今迄生きていることなどできまい」


「源十郎はんが姿をくらましたときは。確か防壁はもうできとったはずでしたなぁ」


「そうだ、ダンジョンの中で姿をくらまして、誰にも気づかれず防壁をぬけて、数十年姿をくらまして年端も行かない少女に技を教えた。あ奴にそんな目的すらわからん裏のあることなどできまい」




「まぁどのみちうちには全く関係のないこと、せいぜい東京でがんばりなはれ」


「東京はイベント盛りだくさんでうらやましいですな」


「全くですな」



 そのまま第二回公爵会議は終わった。


 東郷家当主、東郷平八は脱力したように椅子に全ての体重を預ける。東郷時雨の行動の解答がわかった。あいつもその少女と会ったのだろう、自分の母親と同じ名前なのだ気になりもしよう。


 そして彼女の戦う様を見た。時期的にキャンプイベントだろう。


 西城のときは敢えて静観していたが、何かしら反応したのは組島の小倅(こせがれ)だけだった。そのときは西城も耄碌したかと思ったが……


 目をつぶって今後どうするかを考える。自分の直感では関わるべきではないと感じている。時雨のときは源十郎の残した影響力が強すぎて引き取るしかなかったが、今はどうだろうか。



 

 西城久子もまた美々のことを考えていた。瑠璃子のことは外には漏れていないだろう。どこかしらが釣れるかと考えてあえてばれる方向性で調査させていたが反応は何もなかった。


 唯一反応した組島の反応ももみ消しでも尻尾切でもなかった。西城も調べてるみたいだし俺もって考えが透けて見えるものだった。



 そして今日、予期せぬ方向から予期せぬ情報がもたらされた。御庭番が調べていることを感知できなかった。そもそも瑠璃子の件があるまでF組には全く注目していなかった。紐付きがいたとしてもF組は情報収集が限界と見ていた。というよりそれ以上のことを出来た試しが無かった。



(私もまだまだね)



 これではだめだと考える。御庭番の隠蔽能力は最高級である。それにF組はノーマークだった。しかし、それではだめだ。久子は西城を盛り返したと自負しているが、それに胡坐をかいてはいけない。


 そう思っていたが、御庭番を見逃していた気付けなかった。本人が気付けないことを気付ける、そうでなければだめだと久子は考えていた。



(さて、今後はどう動くべきかしらね)



 ■魔石の安定供給:


 マイクラのモンスタートラップみたいなものがダンジョンで再現できないとね。



 ■お知らせ:


 11月一杯休載します。季節の変わり目はどうしても体調崩すのと、来年「追放聖女は無慈悲に慈悲を施す」長編版を掲載予定のため。

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