第093話:テスト終了
一条雛乃:2年D組 男爵家の一人娘にして長女 【火魔術】
町田紬:雛乃の侍女、南雲家配下の伯爵家から派遣された。
愛宮由美:双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5
愛宮沙耶:双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5
日陰忍:ヒロインの1人、目隠れ美少女、千鶴と同室 レベル:5
水無瀬伊織:元小麦肌少女。モブキャラ、小町の同室 レベル:5
平岡昭義:F組担任
村田空馬:特待生、五十嵐が気に食わない。レベル8:【狂戦士】
■瘴気:
ダンジョンのモンスターを一定数倒さないと瘴気がダンジョン周辺に発生する。瘴気を吸い込むと気力が失われ、最終的に立ち上がる気力もなくなり食事も取らずに衰弱死してしまう。
瘴気を発生する期間が長引くと段々完全無気力になるまでの時間が速くなり、範囲も広がる。最終的に500kmまでが広がることが判明している。
探索者は無気力までの耐性があるが、それでも長時間居ると一般人同様無気力状態になってしまう。
モンスターをどれだけ間引かないといけないかは、周囲の人口密度に依存するらしい。また小ダンジョンは人口密度に関係なく期間内に討伐しないと瘴気が発生する。
「これでやっとテスト勉強に集中できるな」(黒田)
「一条様はどうだったんだい? 1年のテストは?」(白雪)
「私ですか……その、あんまり芳しくなかったです」(雛乃)
「ランクは~?」(白雪)
「Cランクですね」(雛乃)
「華族の皆さまはBランクを受けなければならない! みたいな決まりは無いんですか?」(加藤)
「男爵なのであまりそういったのは無いですが、やはり長男長女みたいな立場の方になるとBランクを受ける方がほとんどです」(雛乃)
「あ~家督を継ぐ方は大変ですね」(加藤)
「……私は家督を継げるのでしょうか?」(雛乃)
「あ……」(加藤)
「ああ、いえ気にしないでください。加藤さん達と知り合わなかったら、レベルもあのままだったでしょうから」(雛乃)
「まーまーいいじゃないか、今は次のテストに集中しようぜ」(白雪)
「そうですね」(雛乃)
「Aランク選んだくせに余裕だな」(加藤)
「ええええAランクって」(雛乃)
「はっはっは。大丈夫大丈夫」(白雪)
「くやしいが赤点取って泣きを見る白雪が想像できない」(加藤)
「確かに……」(雛乃)
………………………
テストは各ランク毎に教室を分けて行われる。Cランクは受講者が最も多いため、入学式のときの大教室が使われた。Dランクも同様の教室で行われている。
「懐かしいな」(加藤)
「……そうだね」(五十嵐)
「そんな感慨にふけるような場所か?」(風音)
「さっさと行こうぜ」(皆川)
…………………………
白雪がAランクテストの指定教室に行くと、教室内はガランとしていた。初老の先生1人と、監視者2名の3人だけで他にテストを受ける人はいないようだ。
初老の先生は白雪を一目見るとあからさまに溜め息をはいた。監視員の2人はなんだこいつと馬鹿にした目をしている。
監視員2人はバイトでありテストのランクごとに雇われる。そのため受検者が集中するC、Dランクが最も多い。
この監視官の人数はテストのランク決め前から決まるため、Aランクの監視官は大抵なにもせずにアルバイト料だけ貰える美味しい仕事となる。
受検者がいないのだからそれこそ教室にいる必要もない。
(マジだりー。Aランクが当たったときはラッキーって思ったんだけどな、うんだよなんちゃって受検なんてしやがって)
(なんだあの格好は、ふざけているのか?)
だが今年は白雪が受検した、当然バイト2人にも仕事が発生する。
初老の先生は日本の大学教授であり一般人を示す黄色のカードを首から下げている。各教室をローテーションで回るため休む時間がすこし減った程度の損害だ。
(せっかく作製した問題が誰にも解かれずに無駄になるよりはマシと考えるか……)
「花籠君だね」(教授)
「そうだよ~」(白雪)
「その格好はなんだね? ふざけているのかね?」
「私は大真面目だよ」
「脱ぎなさい、それともカンニングペーパーでも仕込んでいるのかね?」
「おっと失礼。探索者になる前は、これがないと外を歩けない程肌に疾患があってね」
実際そういった探索者は0ではない。このまま死ぬくらいなら探索者になって、モンスターと戦った方がマシと考える人達だ。
とはいえ探索者になるためには体力テストもあるため、その全てが探索者になれるわけでは無い。娘のために家族全員で探索者になったような人達もいるらしいが。
白雪は趣味であるため、過去の自分を笠に着た言い訳に過ぎないのがたちが悪い。
白雪がガスマスクを取ると沈黙が教室に降りた。
「「「……」」」
(今日は彼女をじっと見つめていられるのか……)
(これは仕事、仕事だ、じっと見つめていても問題はない、いや、見つめていなければならないんだ)
監視員の2人も熱い手のひら返しだ。
「それで、私はどこの席に座ればいいのかね?」
「「……」」
「あ……ああ、そこの席に」
「はいはい」
ローブも脱ぎ、実に学園初の制服姿になると席につく。配られた問題用紙をざっと読むと、そのまますらすらと解答を書いていく。
考えるそぶりなど全くなく、問題文を見返すこともなかった。
(……やっぱりなんちゃって受検か。可愛いからいいか)
(……)
監視員はあきれているが、先生だけは驚愕していた。解答はよく見えないが適当に書いているようには見えない。
結局開始30分で全て終わらせた白雪は解答用紙を提出したあと、初老の先生と楽しく話していた。話す内容はバイトには全く分からない専門的な話に思える。
話が終わったときには初老の先生の印象はすっかり変わっていた。次の試験はまた別の先生が行うため残念そうにしながら教室から退室していった。
…………………………
テストは6教科、100点で600点満点となる。
■加藤浩平: Cランク:425点
「まずまずか」(加藤)
「評価に困るな」(黒田)
「まぁ浩平だし」(白雪)
「もうちょっとイベント性出した方がいいっすよ」(陽子)
「おい」(加藤)
■黒田竜司: Dランク:426点
「よしっ加藤に勝った」(黒田)
「いやランクみろよ」(加藤)
「知らねぇな」
■遠藤楓 Cランク:472点
「結構いいですね」(千鶴)
「ですがお姉様に、良い点をとらせてあげられませんでした」(楓)
「人に教えるには3倍の頭の良さが必要って言いますし……多分」(千鶴)
■須藤晃 Cランク:405点
「テストを受けてみると学んだことを思った以上に忘れてます」(須藤)
「普段使わないっすからね」(陽子)
「そうですね」(須藤)
■相馬陽子 Dランク:391点
「ふっ。これが私の実力っす」(陽子)
「Dランクだけどな」(黒田)
「そっちこそ話題性ないじゃん」(加藤)
■ミーナ Dランク:334点
「前の高校のときとほぼ同じにゃ」(ミーナ)
「まるで成長していない…………」(七森)
■七森健 Dランク:413点
「健兄ぃも、高校時代と同じにゃ」(ミーナ)
「まるで成長していないから…………」(七森)
■長谷川遥 Cランク:501点
「お、結構良かった」(長谷川)
「長谷やん案外頭良かったんだな」(皆川)
「フルダイブって物理法則とか知ってると案外有利になるからね」(長谷川)
■皆川勝 Cランク:294点
「……」(皆川)
「無理すんなって、お前もDランク来いよ。こっちは住み心地いいぜ」(黒田)
「いらっしゃーい」(陽子)
「よ、ようこそ」(七森)
「ぬあー」(皆川)
■メリッサ・オーランド Cランク:456点
『so that’s all there is to it, huh』(メリッサ)
『いやいや、前世の年齢忘れてる?』(加藤)
『Shut up!(うるさい黙れ)』(メリッサ)
「ふつうに加藤が英語はなしてるのは脳がバグるな」(黒田)
「なんでやねん」(加藤)
■三段崎千鶴 Cランク:575点
「Bランクでもよかったかしら」(千鶴)
「さすがです千鶴さんです!」(忍)
■間宮小町 Eランク:226点
「まぁこんなもんね」(小町)
「将来どうするのって……もう決まってるのよね」(伊織)
■遠藤美々 Eランク:211点
「英語以外は手ごたえがなかったから当然かの。まぁそれでも取れた方か」(美々)
「うう、私がもっとちゃんと教えられたら」(楓)
「目的無き努力など実を結ぶこともあるまい。気に病むな」
■五十嵐優 Cランク:322点
「優君、教えたとこ復習してなかったでしょ」(織姫)
「え、いや、したよ……」(五十嵐)
織姫が五十嵐をじっと見つめる。
「ごめん」
「もう、昔からそういうところ変わってないんだから」
■吉野織姫 Cランク:518点
「織姫はやっぱり頭いいな」(五十嵐)
「そ、そうかな。えへへ」(織姫)
■柳伸 Bランク:295点
「すこし冒険しすぎたか」(柳)
「結構いいんじゃないか?」(五十嵐)
■三島風音 Cランク:398点
「2万円くらいか」(風音)
「平均点も例年通りらしい、それくらいだと思う」(柳)
■愛宮由美 Cランク:532点
■愛宮沙耶 Cランク:532点
「頭よかったんだな」(加藤)
「勉強は境界を保って」(由美)
「通信できる」(沙耶)
「ずる!」(加藤)
「我々はルールの中で出来ることをしたに過ぎないでごわす」(由美)
「勝てばよかろうなのだーぽよん」(沙耶)
「じゃぁもっと上のランクを受ければいいじゃん」(加藤)
「「ちっちっち」」(愛宮姉妹)
「私達の頭のレベルは一緒でごわす」(由美)
「私がわからないことは」(沙耶)
「私もわからない! でごわす」(由美)
「私が覚えられないことは」(由美)
「私も覚えられない! ぽよん」(沙耶)
■水無瀬伊織 Dランク:199点
「うぅ~」(伊織)
「いらっしゃい」(小町)
「いらっしゃい言うなし!」(伊織)
■日陰忍 Cランク:483点
「よかったわね」(千鶴)
「はいっ千鶴さんに教えてもらったおかげです!」(忍)
「元から出来てたわよ」(千鶴)
「えへへへ」(忍)
■村田空馬 Bランク:53点
「ちっ」(村田)
「なにやってんのおまえ」
「そーそー無謀すぎ」
「うるせぇっ」
■花籠白雪 Aランク:600点
「だろうね」(加藤)
「はっはっは」(白雪)
「少しは謙遜したらどうだ?」(加藤)
「私がそんなことするわけないだろう」(白雪)
「だろうな」(加藤)
「まさか本当に満点取るなんてな」(五十嵐)
「いっぱい本読んだからなのかな?」(織姫)
「いやいや、そんなことで済むレベルじゃないだろう。Aランクだぞ!」(柳)
…………………………
テスト終了後、須藤は自衛隊スカウトの件を伝えるために平岡先生の元を訪れていた。進路の相談ということで驚きながらも進路相談室へ通される。
須藤と向かい合って座るとまるで先生の方が生徒のようだ。
「ええと、先生は日本のあき……あ、いえ近藤昭彦様をご存じでしょうか?」(須藤)
「日本の近藤……あ、あぁ! 知っている」(平岡)
「実はそちらの近藤昭彦様に自衛隊に来ないかとスカウトを受けまして」(須藤)
「何!?……そうかおめでとう!」(平岡)
平岡としても驚きを隠せない。F組からスカウトされることなど無い。
確かに須藤はいい体格をしている。だが、日華はステータスが全てな世界だ。体格の良さなど理由にはならない。
特に幼い頃からそれを見ている貴族からすれば、体格が強さを表す指標にならないことは理解しているからだ。
近藤家は軍属の名家だ。だがやっていることは貴族とほぼ変わらない、会社経営も行っており戦車や航空機などの製造を行っている。当然一般への販売はない。
「それで何か手続きとかは必要になるでしょうか?」(須藤)
「ああ、ある。ただ、今はまだ必要無い。いずれ案内が来るはずだからそのまま待っていればいいだろう」
「わかりました」
「推薦によるものならそうそう破棄されることはないはずだが、問題は起こさないようにな」
「……わかりました」
「…………どうしようもない時は言ってくれ。私自身どうにもできないかもしれないが……」
「……わかりました」
とくに今年のF組は色々おかしい。E組と美々のことも先生の耳に入っている。白雪のことも当然耳に入っている。白雪は耳に入る程度では済まないが。
「……諦めるんじゃないぞ」
「……はい」




