第090話:期末テスト
愛宮由美:双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5
愛宮沙耶:双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5
「そういやさっき言っていた公開ってなんのことだ?」(加藤)
「前言ったじゃないか、これらの研究は公開していく予定だと」(白雪)
「……あぁ~言ってたような」(加藤)
「言ってたよ。ずいぶん前に感じられるけど」(皆川)
「あれから音沙汰なかったけど、どうなったの?」(長谷川)
「サイトは既に作ってあるよ」(白雪)
そこには平成初期の頃のHPが流行り出した頃のようなホームページがあった。
「……」(加藤)
そして来訪者カウンターは2桁だった。
「来訪者カウンターとか見たの何年ぶりだろう……」(長谷川)
「そういや見なくなったなー」(黒田)
「重要なのは中身ではないか」(白雪)
中身をみると今までの研究と実験、その内容が書かれていた。内容は報告書といわんばかりの表やらグラフやらが並んでいた。
「あれ、なんだろう、突然眠くなってきたぞ」(加藤)
「俺は頭痛がしてきた」(黒田)
「目が滑るって体験あるよね。文字を読んでるはずなのに内容が全然入ってこない」(皆川)
当然掲示板には何の書き込みもない、「いいね!」も「嘘乙」もない。読む人が純粋に居ないのだろう。
「これは公開する意味があるのか?」(黒田)
「普通の研究ノートとというか」(加藤)
「研究ノートなら普通に突けてるよ。ノート4冊目に突入したところさ」(白雪)
「そういうところは、昔からマメだよな」(加藤)
「趣味でもあるからね」(白雪)
「でもこの称号取得方法とかは需要あると思うっす」(陽子)
「ここに至るまでに脱落してるんじゃないだろうか?」(長谷川)
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学食、本日メニューは羊肉のハンバーグだ。
「というわけで、手は尽くしているのだが、スキルのコピーという結果までしか出て無くてね。これが2人の悩みの解決にどう繋がるかはまだわからないんだ」(白雪)
「そっかぁ、でもそこまで出来たのはすごいでごわす」(由美)
「成果はでなくても頑張ってくれるのが凄く嬉しいぽよん」(沙耶)
色々と紆余曲折しているが、元々は愛宮姉妹の以心伝心のために、お互いのアイデンティティが破壊されているため、それをどうにかしようとしているのが事の発端だし、最終目標だ。
レアスキルを消すか、常に自動で起動しているパークスキルを任意に発動させるアクションスキルへと変える方法を探すかのどちらかだ。
今の所どちらもその影すら……
「でもまぁ「いやいやいや! それが本当なら世界初の成果だぞ、なんだよスキルのコピーって!」」(白雪・柳)
「スキルのコピーはコピーだよ、試してみるかい?」(白雪)
白雪は壁走りの魔法陣を描いた羊皮紙を渡してくる。
「覚え方は他のスキルスクロールと同じだよ。ダンジョンカードに入れればいい」(白雪)
「あ、ああ、いや僕は」(柳)
白雪の性格からして多分言っていることは本当だろう、ただ自分はレアスキル持ちだ。もし本当に覚えられたとして他人にも見せて説明するのは憚られた。
「じゃぁ僕が「はいはーい、私がやってみたーい」」(五十嵐・伊織)
「いーよー」(白雪)
柳からコピースクロールを受け取った伊織が自分のダンジョンカードに近づける。すると
「すっご! まじで覚えられたんですけど! まじやば!!」(伊織)
「まじで!?」(モブ)
全員が伊織のダンジョンカードをみて騒いでいる。
「なぁ、これ俺にも作ってくれよ」(モブ)
「それは出来ないね、そんなことしてたら自分の時間が無くなるではないか」(白雪)
「そっか、そうだよね……」(モブ)
つい口をついで出てしまった言葉だが、断られたらあっさりと引き下がるしかない。加藤達のパーティはいまやF組の最大勢力となっている。
人数もさることながら、戦力も先日のE組との戦いで証明されている。今もよく加藤や黒田、皆川なんかからモンスターとの戦い方でアドバイスをもらっている。
さすがに喧嘩は出来ないし、ここの学食の小町さんも加藤パーティの一員だ。もうコンビニ食には戻れない。それだけでなく、ポーションの販売、武器の販売、全部加藤達のパーティだ。
「まぁ今後、やり方は整理して好評するから待っててくれたまえ」(白雪)
「あ、ああ」(モブ)
(加藤達のパーティは単純な戦力としてだけでなく、技術的にもかなりおかしい。これも裏についている組織のおかげなのか……)(柳)
いや、だとしてもおかしすぎる、調理師の称号くらいならわかる。だが今回のこれはおかしい、やばすぎる。探索者達に激震が走るような内容だ。
実用性は置いておくとしてもこんな技術を持っていたとしても公開なんかするだろうか? 白雪達のような大して期待できない駒になんか渡すだろうか?
ありえない。では彼等は本当に自力でこれらを見つけたことになる……
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翌週の学園で予想通りテストの予定が語られた。
「今から2週間後には期末テストがある。ダンジョン学園のテストについては知っている人も多いと思うが一応説明しておく」(平岡)
「まず、受ける科目は、国語、英語、数学、化学、物理、ダンジョン学の6科目だ。これは今後全てにおいて行われるテストも全て同様だ」
「探索者において、あまり頭の良さは関係ないように思うかもしれない。だが知識・知恵は持っておいて損はないだろう」
ダンジョン学園にも、5教科の授業はある。日本から一般人の先生に来てもらって授業をしてもらっている。内容も一般的な高校レベルだ、低くも高くもない。
「ダンジョン学園では日華唯一の高校だ、そのため各個人の学力にはばらつきがある。そのため期末テストはランクの選択をしてもらっている、A~Eの5段階だ」
とはいえそこまで大きなばらつきは無い。だが頭の良さが関係するクラスがある、E組だ。彼等はいずれ華族の家臣として働くことが義務付けられている。
彼等は華族の持つ会社経営を手伝うことになる。例え経営で手伝う技能と学問は違うとはいえ、さすがに中卒レベルでは舐められることになる。
一部の人は頭脳労働とは関係ない騎士団務めもいるが大半がデスクワーク組である。
「Aが一番難しく、言ってしまえば一流大学レベルの問題が出ると思ってくれ。まぁ力試しや記念だな、内申点の関係ない3年生の最後に受けてみたりするものだ。君達は間違っても受けないように」
「Bランクはがくんとレベルが下がる。とはいえAランクと比べてであって通常の授業だけでは太刀打ちできない問題だからな」
「Cランクは授業をしっかりと受けていればそこそこいい点は取れるだろう」
「Dランク、Eランクは自信のない人むけだな」
「では期末テストがなぜこのようにランク分けされ、点数がどのように関わるか説明しよう」
「ランク分けの理由だが、探索者は毎回判断を求められる、判断や見通しが甘かったばかりに痛い目を見た人も居るのではないだろうか?」
過去ゴブリンソルジャーに痛い目をみた五十嵐達に苦い物が走る。
「己のレベルと相手のレベル、比較し受けたダメージがあとにどのように影響するか? 勝てたけれど重傷を負って帰れませんでは話にならないからな」
「テストもそれと同じだな、自分の実力と見合うものを受けるというのがランク分けの理由だ」
「さて、では良い点を取ると良いことがあるのかと言えばある。学費に対して奨学金が入る」
「当然高いランクで良い成績を上げればその分報奨金は高くなる。だが低い成績であれば報奨金は無しだ」
「見の丈に合わないランクに手をださずに手堅くランクで良い成績を取った方が良いということだな」
期末テストイベントはDRDでもあったイベントだ。学力を上げるアイテムとして通信教育と塾があり通信教育はお金だけで時間は取られず、塾は週に1日時間を取られる他お金も勿論かかる。
塾の方が効果は高いが通信教育も一緒に行うことが出来るため秀才キャラを目指すなら両方使うといい。
但し、どちらにしてもお金が掛かるため奨学金は相殺されてしまうことになる。基本的にテストはダンジョンに関するクイズの正当数に塾と通信の効果が加算される。純粋に奨学金狙いならクイズだけで狙えばよい。
通信教育や塾を受けているとヒロイン(男性攻略対象)に勉強を教えるというイベントが発生するため好感度稼ぎが出来る。
「とりあえず用紙を配るから希望するランクを書いてくれ。一応テスト1週間前までは変えられるから変えたい場合は申告してくれ」
Eランク:美々、小町
「もう1つくらい上げて見ないか?」(平岡)
「無理じゃ、自分の学力はわかっておる」(美々)
「私、料理以外馬鹿だし」(小町)
「そうか……」
Dランク:黒田、七森、ミーナ、伊織、陽子、風音
「黒田はどのランク選んだ?」
「俺はDだな」
「なんだ、リアル大学生だったのにひよってんのか? 俺はCだぜ」(加藤)
「うるせっ、大学に入ったあと勉強する奴なんかいねぇよ。お前こそCとか似たようなもんじゃねぇか」(黒田)
Cランク:加藤、楓、千鶴、五十嵐、織姫、愛宮姉妹、忍、長谷川、皆川、メリッサ、須藤
「ね、優君、昔みたいに勉強会しない?」(織姫)
「いいよ。みんなも誘おうか」(五十嵐)
「……う、うんそうだよね。そうしよう」
Bランク:柳
「伸はどのランク受けるんだ?」(五十嵐)
「悩んだけどBランクにしたよ」(柳)
「すごいな」
「最初のテストだからね、学費も10万だし、すこしくらい冒険してみようかなってね」
「なるほど」
Aランク:白雪
「花籠君」(平岡)
「はいはい」(白雪)
「話聞いてた?」
「聞いてたよ」
「……今なら変えられるけど?」
「変えないよ」
「そうか……」




