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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第3章:一ヶ月が経ちました
89/96

第089話:近藤昭彦

 山下(やました)清美(きよみ):宮古直属の部下、西城家派閥の侯爵家4女。筋肉愛好家。

 近藤(こんどう)昭彦(あきひこ):前世の須藤の親友であり木下清美の幼馴染。今世では清美の婚約者でもある。

 一条(いちじょう)雛乃(ひなの):2年D組 男爵家の一人娘にして長女 【火魔術】

 町田(まちだ)(つむぎ):雛乃の侍女、南雲家配下の伯爵家から派遣された。


 ■革細工師 


 称号の1つ。開放条件は皮素材を自身で取得すること、ダンジョン産の皮素材の何かを装備すること。


 【革細工】


 皮・革を使用した装備品等を作製するときに付与効果を付与する。



 【パッチワーク】


 同じ素材を接合して1つの大きな物にする。


「……そうか、住之江さんも、清美も……」


「はい……」



「こっちではどうだ? その制服はダンジョン学園だよな、上手くやって行けているか?」(近藤)



………



「そうか……須藤もこちらで苦労しているのだな」(近藤)



 こちらの世界でも歳の差は変わらず近藤や清美の方が年齢は1歳上だ。だが身長は相変わらず首藤の方が大きい。


 それでもこちらの須藤の方が小さく見える。



…………………………



 須藤との出会いは高校2年になって、新入生の入学式の日だった。俺と清美達在校生は新入生を入学式の会場へと案内していた。



「昭彦、広背筋(こうはいきん)についてどう思いますかー?」(清美)


「……何も」(近藤)


「なんで!? 体幹の基礎であり、腕の自由を支える重要な筋肉ですよ! なんで何も想わないんですかー!?」(清美)


「想うわけないだろう! 周りの皆にも聞いて見ろ」(近藤)



 清美が振り向くと周りが目線を逸らす。



「わーすごーい、あれは筋肉ではなく山脈だよなー。足で踏んでそのぬくもりを楽しみたいなー。そんな声が聞こえてきますねー」(清美)



 皆が首を横に振っている。



「耳鼻科に行ってこい」(近藤)



 清美は幼馴染の近藤から見てもかわいい女の子だ、だがあの動物園でゴリラを見てから変わってしまった。告白して来た男子は全て断っている、断る理由は全て筋肉が足りないだ。



「どこかに良い筋肉落ちて無いですかねー」(清美)


「落ちてるわけないだろう」(近藤)



「むっはー! 良い筋肉発見!!」(清美)


「待て! 清美!!」(近藤)



 須藤に抱き着き離さんとばかりに締める清美。さらには色々な所をべたべた触っている。



「すごい! すごいです! なんですかこの大胸筋は! 上腕二頭筋は! ハムストリングスは!」(清美)


「あ、あの……これはいったい」(須藤)


「おいっ! 人に迷惑をかけるな!」(近藤)


「あいたっ。酷い! 殴らなくてもいいじゃないですかー」(清美)


「そりゃ殴るに決まってんだろうが」(近藤)


「あの……」(須藤)


「筋肉!」(清美)


「はあ……」(須藤)


「素晴らしい筋肉だと思います!!」(清美)


「え、えと、ありがとうございます?」(須藤)


「すまない、こちつは変態なだけだ」(近藤)


「変態ではないですよー、私は木下清美、何よりも筋肉を愛する高校2年生先輩です!」(清美)


「先輩でしたか、自分は須藤晃と申します。今日からこの高校に通わせてもらいます。よろしくお願いします」(近藤)



 きっちりとした挨拶返す須藤。


 近藤は戦慄した、清美はなんといった? 「むっはー良い筋肉発見」だぞ「むっはー」だぞ「むっはー」。それに対してよろしくお願いしますと返すか!? こいつ正気か!?



 それからすぐに晃と付き合うことになったと清美から連絡があった。



「晃! お前正気か!? まさか無理やりなんかされたとか無いだろうな!?」(近藤)


「い、いえそんなことは無いです」(須藤)



 始めは疑っていたが、どうやら須藤もあまり嫌がっているようには見えないし、であれば見守ろうと思った。



……………………………………………………



「晃、自衛隊に来ないか?」



 前世では清美につられる形で自衛隊に入隊した須藤だったが、今度は近藤から誘われた。



 こちらの自衛隊はモンスター専門の戦闘集団となっている。一般人の自衛隊員も一応いるが大抵は探索者だ。


 ダンジョンができ、探索者ルールが敷かれて戦争というものが発生しずらくなった。探索者は強いが一般人に手を出せば自分にダメージが返って来る。


 そして彼等の想定敵国は日華だ。



「昭彦、俺は……」(須藤)


「晃、お前は災害が起きたときどうする? 災害と戦うか、一般人を助けるか?」(近藤)


「一般人を助けます」


「そうだ、それは逃げだと思うか?」


「いいえ」


「そういうことだ、理由は解らないがこの世界はこう変わってしまった」


「俺はダンジョンは災害だと思っている、そして一般人は日本国民を指す。では探索者は一般人か? 文字通り人間離れした力をもち、スキルという常識では説明できない力を操る。これは守るべき一般人になるか?」


「それは……」


「晃、ダンジョンは災害なんだ打ち倒すものじゃない、俺達が救うのは戦士ではなく民間人なんだ」


「昭彦……」


「日華ではどうやっても、華族達の思惑が入ってしまう。そんなところに居るよりは、例えいい思い出が無いとしても自衛隊の方がいいぞ。それに俺の例えに間髪いれず民間人を助けると答えたんだ、お前は立派な自衛隊員だよ」



……………………………………………………



「というわけで、革細工師の称号を取得しました~」(白雪)



 黒ローブにガスマスク、さらにその上に羊の毛皮のマントを羽織った白雪が宣言する。



「いつも以上に変な格好っす」(陽子)


「いやぁ街中では注目の的だったよ」(白雪)


「そりゃそうだ」(加藤)


「皮1枚だから丈も足りねーし」(黒田)


「あ、そうそう一条様お金ありがとね」(白雪)


「あ、いえ」(雛乃)


「健兄も喜んでいたにゃん」(ミーナ)



 一条家からもらった200万は中古品のプレス機と旋盤に全額消えた。しかし、七森は大喜びだ。



「はい……」(雛乃)


「おや、なにか思い詰めているね」(白雪)


「いえ、そんなことは」(雛乃)


「あの日かい?」(白雪)


「違います!」(雛乃)


「じゃぁあれだね、南雲さんが私達に会ってみたいとか言い出したかな?」(白雪)


「な、なんでわかるんですか!?」(雛乃)



 黄金羊の討伐からすでに2週間経っている。



「謎は全てとけてめでたしめでたし。というわけでこちらが革細工師になって作製した羊皮紙です。太郎君も羊皮紙と言ってくれています」(白雪)


「小町ちゃんの鑑定眼鏡である太郎君を掲げながら私は言うよ」(白雪)



 鑑定眼鏡にはダンジョン関連のものであると認識されない限り表示されない。



「どころの誰に向かって何を言っているんだ」(加藤)


「太郎君のことを知らない一条様にだけど」(白雪)


「……」(加藤)


「あの、南雲さんが来るかもというのにそんな反応なんですか」(雛乃)


「不思議なことを言うね、じゃぁどんな反応見せれば雛乃ちゃんは満足するんだい?」(白雪)


「うぅ」(雛乃)



「よし出来た。それじゃぁ一条様頼むよ」(白雪)



 【ウォーターボール】のスキル発動時の魔法陣を羊皮紙に書き写したものを雛乃に渡す。



「……はい」(雛乃)



 恐る恐る雛乃が丸めた複製スキルスクロールをダンジョンカードに近づけていく、するとなんの抵抗もなく、スルスルと吸い込まれるように消えていき……



「と、登録されました……」(雛乃)


「おおおお」(長谷川)


「すごいっす」(陽子)


「まじか……」(黒田)


「本当に出来るとは……」(加藤)



 加藤達が驚くのも無理もない。なにせゲームでも出来なかったことが出来たのだ。



「これ……まずいですよね」(雛乃)



 スキルの複製、それができればスキルスクロールの値段が一気に値崩れを起こすのではないかと、雛乃は懸念している。



「やぁ、これは大変だね。まぁ公開するけど」(白雪)


「いやいやいやいや、これ戦争発生しまっすて」(雛乃)


「大丈夫、私は毛ほども気にしない!」(白雪)


「いやいやまじでやばいですって」(雛乃)



「まぁ考えてみなって、これが解ったところで、原盤が無ければどうにもならないだろう?」(白雪)


「……それは、まぁ」(雛乃)


「つまりみな原盤を大事にしだすんだよ」(白雪)


「でもコピーをばらまかれたら……」(雛乃)


「作るのにこんなに苦労するのに?」(白雪)


「いや、そりゃ最初は苦労するだろうけど、慣れてくればそれ程でもないだろう? 生産系称号取るのが面倒だろうけど」(加藤)



「ひどいね浩平、どっちの味方だい!?」(白雪)


「すくなくとも今は白雪の味方ではない!」(加藤)


「そんな! 信じてたのに……」(白雪)



「だが、まぁ白雪の言う通りこれはそれほど大事にはならないと思うかな」(加藤)


「えっとどうしてです?」(雛乃)


「まず一条様には申し訳ないけど、魔術スキルはそれほど見向きされない」(加藤)


「それは、まぁ残念ですが」(雛乃)



 (やなぎ)のように魔術スキルを使用する人もいるが、結局のところ牽制で使うのが殆どだ。取る人も魔術使い(見習いの1つ上)までがせいぜいだ。



「つまり、魔術スキルを苦労して目でコピーする人はまずいません」(加藤)


「うぅ」(雛乃)



 今の所魔術スキルは発動時の魔法陣を目でコピーするしかない。世の中には絶対記憶者はいるがそこまでしてコピーしたりはしないだろう。



「とすると次に標的となるのは、体術スキルなんですが……」(加藤)


「はい」(雛乃)


「みえませんよね」(加藤)


「……そうですね」(雛乃)


「でも、スキルスクロールがあるじゃないか!」(白雪)



「いや、白雪はどっちの立ち位置なんだよ」(加藤)


「私はどちらかと言えばダブルスタンダードな立ち位置だね」(白雪)


「最悪っすね」(陽子)


「『どちらと言うと』が矛盾している点について」(長谷川)



「それはそれとして、スキルのコピーは個人じゃそうそう行えないよな」(加藤)


「そうだな、薬師用意して、革細工師用意して、木工師用意して、あとは道具作るのに鍛冶師もいるか」(黒田)



「道具は買うにしても生産系3人か」(皆川)


「その時点で儲けは3分の1」(長谷川)


「そのまえにワイルドシープ狩るのも苦労するっす」(陽子)


「「「あーー」」」


「植物紙もできそうだけどね」(白雪)


「どのみち苦労はしますね、品質が悪ければインクが滲んで台無しになると思います」(千鶴)


「そだね」(白雪)



「つまりやるとしたら、子爵くらいは必要?」(加藤)


「いえ、伯爵クラスにならないと人員に余裕はないかと。SKハンズをやっている北小路家など例外はありますが」(紬)


「原盤も取って来る必要があるからな」(黒田)



「それで儲けでるかだよね」(皆川)


「スキルって1回覚えたらずっと使えるし、探索者にしか需要ないし」(長谷川)


「売ったとしてもリピーターは確実に0だからなぁ」(加藤)



「低コストかつ、需要があるもの。商売の基本ですね」(千鶴)


「で、そこまで苦労したものを一般に売る?」(白雪)


「普通に商売してたほうがよっぽど設け出そうっす」(陽子)


「オーダーメイドものは個人ならまだしも、会社ではやらないでしょう」(千鶴)



「しかもスキル毎に需要変わるし」(皆川)


「そういうスキルって低階層ででるもんなの?」(長谷川)


「あー」(加藤)


「思いつのは【強打】くらいか?」(黒田)


「【強打】って言う程低い層で出たっすか?」(陽子)


「16層へ行かないと出なかったよぅな?」(雛乃)


「いえ、13層のコイン部屋から出たという報告があります」(紬)


「コインルームですねー」(メリッサ)


「コインルーム?」(雛乃)


「あれだろ、シーフの鍵開けでいく東の部屋?」(黒田)


「ノン、うぇすと」(メリッサ)


「西か」(黒田)


「そうです、ダンジョンコインを使う部屋です。よくご存知ですね」(紬)


「結構有名じゃないっすか?」(陽子)


「どっちにしろ言う程戦争になんかなるようなことは起きないよ」(白雪)


「なるほど……ってそれより南雲様ですよ、なんか報告しないといけないことも増えたし、どうしましょう?」(雛乃)


「さっきも言ったじゃないかどうしようもないと。私らは誰の家臣でもないから南雲だろうと命令はできないよ」(白雪)


「そうなんですが……」(雛乃)


「もうすぐ期末だから待ってとでも言っておけば?」(白雪)


「あっ!!」(雛乃)


「「「「ああああ!!!」」」


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