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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第3章:一ヶ月が経ちました
86/96

第086話:リベンジマッチ

 ■FDSアーカイブ:


 『鋼拳』


 ボルテクスアーケドで発表された格闘ゲーム、後にバーチャルリンクにも移植された。FDS初の格闘ゲームであり従来と同様特定のキャラクターから選択する方式。


 脳波操作による初の格闘ゲームであったが問題も多く、ジャンプしたときの空中攻撃が上手く動かない、必殺技が出ないという問題が多発していた。


 最初は物理演算そのままで入れているのに、ジャンプ力は上げていたため空中でバランスを崩しやすく飛んだら終わりとまで揶揄されていた。


 必殺技はDRDのものに似せて作っていたが、木人によるデモンストレーションが無かったためどのように動けばいいのか解らないという難点があった。


 後のバージョンアップで必殺技に関しては修正されたが、空中操作については修正を入れても操作性がおもうように上がらず、後に6回もの修正が入ったが残念ながらあまり改善には繋がらなかった。

「え~っと、とりあえずE組のみなさんに相談がありま~す。なんとかしない? 今いるだけでE組全員じゃないでしょ?」(白雪)


「他の人が同じことしたら君達のクラス皆殺しになるかもよ」(白雪)


「……」(E組)


「うん? 今回は一応須藤さんのおかげで一応最悪の事態は避けれただろ? なら明日も……は流石に無理か」(加藤)


「うん、流石に2度目はないよ。それに美々さんが面倒だからE組を全滅させて元栓を閉めるって思考になるという可能性が無いといえるかい?」(白雪)


「あー……」(加藤)


「あ~」(黒田)


「やばいじゃん」(皆川)


「やばいね、ついでに多分五十嵐君と須藤君も死にます」(白雪)


「えっ(ほく)?」(五十嵐)


「例えE組でも人が死ぬのを君は黙って見過ごせないでしょ? 今日と同じことすれば敵認定されるよ」(白雪)


「う……」(五十嵐)



 須藤もまた加害者のE組の生徒の介抱を止めて俯く。ミーナはなんとか止めることが出来る、でも美々となるとどうにもならない。強さの差もさることながら性格の問題が大きい。


 正面から戦っても負けるのに、彼女が完全に邪魔ものを排除しようとスイッチが入ったら終わりだ。話し合いは隙としか見なさないだろう。



 現在ダンジョン学園1年生の生徒は以下のとおり。


 A組:数名

 B組:16名 クラスはA組合同。

 C組:約30名

 D組:約35名

 E組:約50名

 F組:約60名


 今F組に居るのは10数名程度、全てのE組がこれに加担しているとは考えられないが、未参加の生徒は多数いると思われる。



「それとも何もせずに美々さんがそういう思考にならないって可能性に賭ける?」(白雪)



 少なくとも今日と同じことがあれば、確実に明日死者が出る。



「まってくれ、さすがにそれはまずいのは解ってる。あの人素でああいう性格なの?」(E組)


「冗談でロストさせたとしたら、どのみちヤバイ人だよ」(長谷川)


「クラスメートでしょ? なんとか出来ないの?」(E組)


「無理、そこの2人みたでしょ」(加藤)


「それに君らの奴隷になるために、君らの役にたつことすると思うかい?」(白雪)


「……嵐山さんに言えば」(E組)


「嵐山さんに言いつけても自分でなんとかしろって言われるだけじゃないかな? 私ら最低ランクのF組だよ。そんなことで泣きつくようなら見捨てられると思うよ」(白雪)


「それに実際君達のことなんて嵐山君にメリットないでしょ?」(白雪)


「う……」(E組)



 そもそも今回の件はレベル上げに時間が取れないE組のために、2年生が1年のD組の中から協力者をつのりF組の一番強いやつと戦わせる。


 そいつをなるべく無様に打ち倒し、F組連中の心を折らせる。あとは名目上おまえらを一人前にしてやると鍛える名目でE組の雑用をさせる算段だ。


 協力者はDやE組から選ばれる、あまりに戦力がかけ離れていると、彼等に負けるのは当たり前と今一(いまいち)効果が薄い。自分達と近い彼等ともこんなに差があるのかと絶望させなければ従順にならない。



 問題はこの協力者だ、はっきり言って旨味がない。自分の下僕にしたところでダンジョンに連れていくにしても差がありすぎると足手まといにしかならないのだ。


 荷物持ちが真っ先にモンスターに潰されてしまっては結局自分で運ばなければならなくなる。肉盾にするにしても同様だ、モンスターに一蹴されるような盾には意味がない。


 しかも、5層毎にボスモンスターがいるのだ。実際E組もF組を利用するのはミーノータウロスをクリアするまでだ。大抵この協力者は5層はクリアしている人が選ばれるためますます利用する意味がない。




 E組もその辺の事情は分かっている。あまり探索の時間は取れない自分達のために上級生の誰かが嵐山に依頼した。報酬で募ったが弱みを握ったか解らないが嵐山が再び協力してくれる可能性は低い。


 少なくとも嵐山が負けていたらこの話は無かったことになったのだから、アフターサービスは何もないだろう。



「それにE組全員が飼い主になりたいってわけじゃないでしょ?」(白雪)


「飼い主って……」(加藤)


「言い方」(黒田)


「まぁその通りだ」(E組)



 E組も人間も少なくとも小ダンジョンの経験はある者達だ。経営の手伝いが充分足りていれば最初から騎士団入りを宣告されている人も居る。


 もしくは仕える家が力ある貴族であれば彼等のレベル上げを手伝うために護衛を出してレベル上げを手伝ってくれる所もあるだろう。


 実際、白雪によってウネエリアが発見されたことで、E組も前年よりは多少はレベルが上がっているようだ。石喰いネズミに変わる場所が提供されたのは大きい。



「とりあえずリベンジマッチをお願いしたら乗ってくれるかい」(白雪)


「反抗心がまだ高いからもう一度叩き潰すといえば乗ってくれると思う。だがどうする? 結局俺達が勝ったら元の木阿弥じゃないか?」



 実際DRDでもリベンジマッチは出来た。但し再び嵐山と戦闘になるはずだったが、こちらでは既に初戦から嵐山との戦闘で無かったし、嵐山に依頼してくれたりもしないだろう。



「大丈夫、大丈夫問題ない」


「?そうか……あの赤毛出すんじゃないだろうな」(E組)


「いやいや出さないよ、てか頼んでも出てくれないから安心して」


「そうか、あとあのでかいのもだめだぞ。あれじゃ納得はしてくれないしな。てかあれ本戦でだせばよかったんじゃないか?」



 須藤を指して言う。



「OKOK、あの人はああ見えて争い事好きじゃないからねー。でたい?」(白雪)


「いえ、自分はあまりそういうことは……」(須藤)


「ということだよ」(白雪)


「解った、ルールは? 言っておくが決闘カードなんて持ってないからな」(E組)



 決闘カードが出るのは11層以降から。



「木刀、木剣の模擬線で良いんじゃない? 3回先に当てた方が勝ちで」(白雪)


「良いだろう」(E組)



 リベンジマッチの話もわりとあることだ、納得できないという生徒はやはり確実にいる。だが所詮はF組、一番強い奴は潰されているので他は雑魚ばかりとなる。



「じゃぁ(ほく)()」(五十嵐)


「おまえはだめだと言っただろう」(E組)


「君は人の話を聞かないね、だめだよ。あと柳君もだね」(白雪)



 E組代表(嵐山)との初戦の対戦相手に選ばれるのは嵐山がきてダンジョンカードを見せろと言った時に最初に盾突いた奴だ。始めから反抗心が高く、F組の頼れる人という認識の人間だからだ。


 実際嵐山が5月まで待っていたのもF組がダンジョン学園の環境に慣れて、クラス内カーストとも言うべきものが確立されるのを待っていたからだ。誰も出てこなければ最初から隷属化となる。


 そういう人間は例え負けても反発心が強いので奴隷からも除外される。リベンジマッチにおいてもだ、強い奴を出させたりはしない。



「3人で最初に2勝した方が勝ちでいいか?」(E組)


「おっけ~」(白雪)


「あと明日だ。問題ないな?」(E組)


「おっけ~」(白雪)


「じゃぁお弁当つくらないとね。有料で」(小町)


「おっけ~」(白雪)



 平日なので放課後に弁当は売れるのだろうか?



「というわけでリベンジマッチ出たい人いる? 居なければうちのチームから出すけど」(白雪)


「私がでよう。看過できん」(風音)


「おっけ~、じゃ残りは浩平と、ミーナでいい?」(白雪)


「まぁいいけど」(加藤)


「わかったにゃ」(ミーナ)


「てかどうするんだ?」(加藤)


「大丈夫、大丈夫、勝つことが目的じゃないから」(白雪)



……………………………………………………



 翌日の放課後、E組とF組が一堂に会した。



「うんだよ、まだ折れてねーのかよ」(E組)


「たりーな」(E組)


「弁当~弁当~♪」(小町)


「それではE組とF組のリベンジマッチを始めたいと思います。司会は私花籠白雪、そして解説柳伸さんにお越し頂きました。柳さん今日はよろしくお願いします」(白雪)


「あ、はい」(柳)





「それではさっそく第一試合をはじめたいと思います。対戦カードは加藤VS伊藤」(白雪)


 加藤と伊藤が向き合う。



「よろしくおねがいしゃーす」(加藤)


「ふざけた挨拶しやがって。一瞬で終わらせてやる」(伊藤)



 開始の合図とともに伊藤が宣言通りに間合いを詰め、スキルなど不要とばかりに鋭い袈裟切を放つ。


 しかし、次の瞬快「パン」という軽い音と共に木刀が弾かれ、伊藤は体勢を崩す。



「ほいっと」(加藤)



 攻撃を弾かれ体勢を崩した伊藤の腹に木刀を突き当てる。



「1本」


「なかなか見事な1撃でしたね」(白雪)


「なんか加藤君は対人慣れしていないか?」(柳)


「さー? 手元の資料にはありませんね、あちらのF組の子も太刀筋は悪くないですね」(白雪)


「はい、かなりの訓練は積んでいますね。フォレストウルフなら一対一でやり合えるのではないでしょうか」(柳)



 伊藤は今回の試合にはあまり乗り気ではなかった。彼は既に騎士団入りが宣告されおりダンジョン学園を卒業後彼が所属する派閥の騎士団専門学校への入学も決まっている。


 ただし、騎士団入りが決まっていても、専門学校入学までに走破階層をなるべく稼がねばならない。入学時の走破階層によって待遇が全然違うからだ。



 そのため剣の訓練には積極的に臨み、剣術道場へも通っている。走破階層も既に5層は突破しておりF組の奴隷など必要なかった。


 今回も同じ派閥の子から頼まれたから嫌々参加していた。さっさと相手を倒して終わろう、犬山と戦った奴と戦うのならばいい腕試しになると思っていたのに相手は何とも凄みの無い奴だった。


 だが、入ったと思った一撃は盾でいなされ、体勢を崩された。止められなかった木刀が地面を叩いたときには、腹に木剣が当たっていた。『当たっていた』だ、明らかに手加減された1撃だった。



 信じられない、こんなやつに手加減された……



(全力で叩きつぶす!)(伊藤)


「お、本気になった?」(加藤)


「ああ」(伊藤)



 先程とは違う本気の打ち下ろし、盾で弾きにくいように右からの攻撃、加藤は剣で撃ち合わずに左に避ける、反撃をしようとする加藤の目に瞬時に横薙ぎに変わった木刀が迫る。



「【バックステップ】」(加藤)



 瞬時に後ろに飛んで木刀を避ける、戻そうとしたときには加藤は【スライディング】で相手の懐に潜り込んでいた。わざとバックステップを発音することで安心させといてからの無言で【スライディング】を行う。



「なっ!」(伊藤)


「【スラッシュ】」(加藤)



 驚く伊藤が反応する間もなく、【スライディング】をキャンセルしてからの【スラッシュ】はがら空きの胴に命中した。



「一本。合わせて二本」


「こいつ……」(伊藤)


「おおっと無発声スキルだ~、汚い、さすが加藤汚い!」(白雪)


「汚い連呼すんな!」(加藤)


「すごいですね。バックステップを発音することで、無発声は無いと思わせながらのスライディングを途中でキャンセルしてからのスラッシュですか。毎回ですが加藤君のスキルの扱い方は参考になります」(柳)


「凄いな、あんな使い方出来るんだ」(五十嵐)


「うむ、スキルと奥深いものだな」(風音)



「汚ねぇぞ、加藤、正々堂々戦え~」(黒田)


「そうだそうだ」(長谷川)


「がんばれE組の伊藤!」(皆川)


「おまえらどっちの味方だ! 文句があるなら掛ってきやがれ」(加藤)


「「「おっしゃいってやらぁ!!」」」


「おーっと乱闘だー!!」(白雪)


「ええええ」(柳)



 黒田、皆川、長谷川が一斉に飛び出す、伊藤を含めE組、F組すらぽかーんっとなっていたが、段々と全員が青ざめていく。


 3人をさばいている加藤もすごいが、乱入者3人の戦い方もすごい。連携も、個人の技量もどちらもかなりの高い水準だ、全員加藤並みの強さが見て取れる。


 そしてその戦い方は昨日の五十嵐、柳と同じかそれ以上だった。



「反則! 加藤失格!!」


「なにぃ」(加藤)


「ふっ悪は滅びた」(白雪)



 

「それでは第二試合、三島VS西村」(白雪)



 風音と西村が対峙する。が、西村の顔色は悪い。前の試合の加藤の戦いが尾を引いている。実は、前の加藤の乱闘は仕込みだった。


 この試合の勝ち負けは実際関係ないのだ、要はE組のやる気を削げればいい。今回の試合でもE組が勝って隷属が決定的になったとして、五十嵐は実は一番強い人間じゃなかったことが伝わればいいのだ。


 それより強いやつがごろごろいてしかも試合に乱入するくらい気性が荒い人間がいる。その事実が相手に伝わればいい。



「せえいっ」(風音)


「くっ」(西村)



……………

 


 試合は風音が3対1で勝利した。



「第三試合、七森ミーナVS亀田」


 

 亀田が木刀を正眼に構える、本当に日華の探索者は日本刀愛好家が非常に多い。対するミーナは短い木刀を右手は順手、左手は逆手に構えたいつものスタイルだ。



 ミーナが【スライディング】で一気に相手との距離を詰める、しかも通常の【スライディング】ではなくその後動きやすいようにやや立ちあがった姿勢だ。


 それでも距離は同じなのだからスキルというのは存外アドリブが効く。


 あっという間に間合いをつめたミーナは【スライディング】の勢いそのままに回し蹴りを放つ。意表を突かれた亀田は腹にそのまま蹴りを貰った。



「がふっ」(亀田)


「一本」


「つえぇ」(E組)


「まだやるにゃん?」(ミーナ)


「まだだ」(亀田)



 それでも亀田は構える。既に勝負はどうだっていい、というかあんなやつらがいるクラスなんか下僕するのは割りに合わない。地雷原を歩くようなものだ。


 ならば、少しでもこの戦いで学んでおきたい。



「べつに模擬戦くらいならたまに付き合うくらいいいぜ」(加藤)


「えっ? まじで?」(亀田)


「なっ! E組だぞ!」(五十嵐)


「いや別にいいじゃん、俺はE組に恨みとかねーし」(加藤)


「まったく、五十嵐くんは一度敵認定したらずっとそのままなの良くないよ」


「黒田とかもいいよな?」(加藤)


「いいぞ」(黒田)


「いいよ」(皆川)


「まーたまにならいいにゃ」(ミーナ)


「あ、じゃぁいいです。まいりました」(亀田)



 亀田は棄権したようなものだが、責める人間はいなかった。全員気持ちは同じだ。



(((やべぇ、F組やべぇよ)))

 リベンジマッチ前日


 どこからか鍵つけたのか加藤達が寮に帰ると、黛奈々美が、美々にシャッターを切っていた。会社の良いカメラを使って。

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