表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第3章:一ヶ月が経ちました
79/96

第079話:雛乃来襲

 一条(いちじょう)雛乃(ひなの):2年D組 男爵家の一人娘にして長女 【火魔術】

 愛宮由美(まなみやゆみ):双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 愛宮沙耶(まなみやさや):双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 日陰忍(ひかげしのぶ):ヒロインの1人、目隠れ美少女、千鶴と同室 レベル:5


 ■アメリカ合衆国

 1州に1つでダンジョンが存在する。最も多くのダンジョンを保有する国。とはいえ資源としては微々たるものであまり役に立っていない。


 ハイスクールの一部にダンジョン科が存在する。ダンジョンに入るためにはインストラクターによる50時間以上の訓練が必要。


 探索者と通常の人との住み分けはなく同じ生活圏内にある。殆どの建物は魔灰による強化がなされており、州によって魔灰コンクリートやガラスの使用が義務ずけられている州もある。


 かなり早期にダンジョンに関わる訴訟は全て受け付けないと法律で決定された。特に日本以上に麻薬が蔓延しており大きな問題になっている。

 一条雛乃は侍女を連れF組の寮へ来ていた、白雪から連絡が来たからだ。


 「やぁ一条様ようこそ」(白雪)

 「こんにちは、一条様」(加藤)

 「こんにちは、一条様」(黒田)

 

 「な、なんか様付けで呼ばれるとむずむずしますね……」(雛乃)

 「そうかい!? それはつまり女車掌ひでぶ!」(白雪)

 「やめろ」(加藤)


 加藤のチョップが白雪の頭にさく裂する


 「まだ何も言っていないのだが!?」(白雪)

 「言わなくても解るから」(加藤)


 「ごめんね、今度は浩平の邪魔が入らないように頑張るから期待してて!」(白雪)

 「いえ、そういったことは止めていただけると……」(雛乃)

 

 先日は熊さんパンツのせいで白雪以外は話を覚えていなかったが、雛乃の話は魔術について協力して欲しいということ。


 DRDでは『熊さんパンツ事件』は無かったが(熊さんパンツ自体は、例のキャンプの覗きイベントで確認できる)、魔術について協力して欲しいというのが雛乃ストーリーの主軸となる。



 DRDの世界感では現実程魔術に対する疎外感はない。というよりそういった時代考証は甘い。ここら辺はゲームシステムやシナリオにあまり絡まない部分なのだから仕方ないといえるが。


 一条雛乃は貧弱な体に生まれる、嵐山の妹程ではないが、陸な訓練など出来ないまま10歳を迎えてしまった。


 DRDのパラメーターは探索者になったときに決まる。その後のパラメーターの成長もその時のパラメーターを全体的に伸ばすように成長していく。


 本人の身体能力と性格を鑑みればきっちりと体作りが終わってから探索者になった方が良いのだが、家の都合や学園などもあり10歳で探索者にならざるを得なかった。


 探索者はダンジョンでの活躍時間が次世代の成長値に関わるため貴族は10歳以降で探索者になる者等いないのも関係している。



 雛乃の父親はあまり貴族になることを望んでいなかった。男爵や士族は子供に受け継がれない、そのため本来なら彼も平民に戻るはずだった。


 しかし、父(雛乃の祖父)が苦労して男爵に陞爵したことを知っていたし、それを彼に引き継がせるために苦労していたことも知っていた。


 彼自身、モンスターと命がけで戦うなどまっぴらごめんで貴族はおろか探索者になんかなりたくなかった。


 しかし、一人っ子で代わりに家を継いでくれる兄弟もおらず、彼になんとか爵位を継がせようと頑張る父をみて「探索者になりたくない!」などと口が裂けてもいえず、結局ずるずるとダンジョン学園に入学してしまった。



 さらに、何の因果かたまたま席が近くで、たまたまパーティを組んだ女の子が南雲公爵家縁の侯爵の子供だった。


 しかも、何故か気に入られてしまい。いや、そのとき流行っていたダンジョンスレイヤーズで強いヒロインのピンチを彼女より弱い男の子が救うというシチュエーションがありたまたまそれと同じ状況のようなことが起きた。


 そのせいで妙に意識されてしまい、付き合うことになってしまった。何せ相手は公爵の親戚だ、男爵の彼に断れる度胸はなかった。


 本来なら結婚したときに子爵は約束されるはずだが、やはり4女とはいえ侯爵家の娘が男爵家と結婚するはどうかと反発があり、村田による事件もありかなりピリピリしていた。



 そうした中雛乃は生まれた。彼女の貧弱な体を見たときに父親となった彼は安堵の息を吐いた、貧弱を理由に日本に出し日本の子供として生きてもらおうと思ったからだ。

 

 しかし、雛乃はそれを見て、自分のせいで父親を落胆させてしまったと勘違いした。そして雛乃から相談を受けた母親も奮起した、してしまった。


 半ば駆け落ち同然で結婚したため、半勘当同然だった実家に頭を下げ復縁し魔術師としての支援を取り付けた。


 そして雛乃も父親の心など知らず魔導士として認められようと奮起するのだった。父親もそんな彼女を見て何も言えなくなった。内心「どうしてこうなった!?」と頭を抱えていたが。


 余談だが、雛乃の父親の彼はヒロインの恋人属性のためスキル:【女心を解らない(KY)】を体得している。高校生な雛乃に熊さんパンツを送ったりしている。


 母親もこれには自分も苦労したなと思いながらくそデカ溜め息しかでない。雛乃も雛乃で父親に勝手に負い目を抱いているため受け取るしかなかった。



 彼女が白雪を見たときは衝撃だった。自分よりも後輩で、自分よりも貧弱なパラメーター、さらに平民であるにも関わらずパーティメンバーの魔術師としての立ち回りをこなしているのだから。



 「それで本題なんだけど、校内写生をしたくてね」(白雪)

 「はぁ校内写生ですか?」(雛乃)


 「いま、エロい方に考えたね!?」

 「はい?」


 「なっ、考えて無いだと……」

 「あれがピュアな反応だよな」(皆川)

 「だなぁ」(長谷川)


 「つまり皆川君と、長谷川君は知っていると。うんうん」(白雪)

 「「ぐはぁっ」」(皆川・長谷川)


 「何の話をしているかわからないでごわす」(由実)

 「激しく同意ぽよん」(沙耶)


 「う……うん」((しのぶ)


 白雪が(しのぶ)をじっと見つめる。(しのぶ)は目線を逸らした。つかつかと逸らした視線の先に移動して見つめる白雪。再び反対方向に視線をそらす(しのぶ)、移動しようとする白雪の肩を掴む千鶴。


 「……」(白雪)

 「……」(千鶴)


 「馬鹿やってないで始めるぞ~~」(加藤)


 「ひっ」(雛乃)

 「どうかしたかい?」(白雪)

 「い、いえ、あの建物の影から一瞬人が覗いてたような……?」(雛乃)


 Replay


 「ひっ」(雛乃)

 「どうかしたかい?」(白雪)

 「い、いえ、あの建物の影から一瞬人が覗いてたような……?」(雛乃)

 

 お気づきいただけただろうか……?


 鍛冶室と名付けられた建物の影からじっと彼女を見つめる人のような影……これは夢半ばでダンジョンで死んだ学生の霊なのだろうか?


 「逃げたな……」(ミーナ)



 ……


 「凄いですね……これ全部魔術スキルの魔法陣ですよね?」(雛乃)


 魔法陣のスケッチをペラペラ捲りながら雛乃が素直な感想を漏らす。


 魔法陣のスケッチを試みるのは白雪が初めてというわけではない。魔術を使う時に輝いて見えるのだから当然だ。


 「これ、どうやって描き留めたんですか? 動画とか撮れないですよね?」(雛乃)


 「手書き」

 「目コピー」

 「大変だった」


 しかし、当然ながら公開する国、団体は存在しない。魔法陣が光るのは一瞬だしカメラ等光学装置を利用した物を通してみることは出来ない。望遠鏡や眼鏡くらいだ。



 最初から使える魔術の魔法陣は先日皆で苦労して描いた。


 「本当に大変だった」

 「二度とやりたくねぇ。目がチカチカする」


 「いや、これからやるんじゃん」(加藤)

 「はい? これからですか?」(雛乃)


 「これからです」(黒田)

 「これからだよ」(皆川)

 「大丈夫、大丈夫」(長谷川)


 「……これからっす」(陽子)

 「これからでごわす」(由実)

 「これからだぽよん」(沙耶)


 「え、えっと、じゃぁいきます【ファイアボール】」(雛乃)


 雛乃が手を構えて【ファイアボール】を撃ちだす。一瞬見えた魔法陣は【ファイアショット】よりも複雑だった。


 「もう一発お願い」(白雪)

 「は、はい」(雛乃)


 再び雛乃から【ファイアボール】が撃ちだされる。反動で転ばないように背中にはマットが立てかけられそこに体を預けている。腕の下にも台が添えられ手がぶれないようになっている。


 「もう一発」(白雪)

 「はい」(雛乃)


 見える魔法陣は一瞬だ、瞬きする間に終わってしまう。写真、動画どちらにも映らない魔法の輝き。


 「もう一発」(白雪)

 「……はい」(雛乃)


 皆逃すまいとじっと見つめている。


 「もう一発」(白雪)

 「…………はい」(雛乃)


 皆逃すまいとじっと見詰めている。

  

 「もう一発」(白雪)

 「~~~~はい」(雛乃)


 皆逃すまいとじっと詰めている。


 「もう一発」(白雪)

 「あのっ!」(雛乃)


 「どうかしたのかい?」

 「近くないですか?」


 皆が雛乃の手をじっと見ていた、至近距離で。


 雛乃の手に皆が集中して目と鼻の先で雛乃の手を観察している。


 「近くないよ」(白雪)

 「もう一発お願いします」(加藤)

 

 「い、いえ、危ないですよ」(雛乃)

 「危なくないです」(皆川)


 「むしろごほうびです」(黒田)

 「はい!?」(雛乃)


 「とにかくもう一発お願いします」(加藤)

 「さぁ!」(白雪)

 「さぁ!」(由実)

 「さぁ~~~!」(沙耶)

 「ひ、ひぃぃ~~~」(雛乃)


 なお、メイドは横で静かに控えていた。顔はすごくニヤニヤ笑っていたが。


 ………

 ……

 …


 何もされたわけではないのだが、酷く汚された気分で雛乃は憔悴していた。


 最初から使える魔法陣を描くときも一緒で白雪の手を全員で至近距離から見つめるという。変態のような状況だった。


 魔術を屋内で使うのは当たり前だが危険が危ない、よって庭でやっていたのだが目撃したクラスの皆との距離が少し空いた気がした。


 「い、いや、さすがにそれは……」(五十嵐)

 「す、すまないが」(柳)

 「いや、すまないが力になれそうにない」(風音)

 「ご、ごめんなさい」(織姫)


 「ふむ……まぁよかろう」(美々)

 「私は無理かな、夕飯の用意あるし」


 なお、見られることについて白雪は特に気にしたいなかった。




 近くでは白雪達が各々が描き留めた魔法陣を付き合わせている。


 「う~ん」(黒田)

 「やっぱり複雑になってるっすね」(陽子)

 「でもやっぱり1重か」(加藤)

 「そうだね」(白雪)


 初期魔術は2重の線が引かれ1つの帯が形成され、その帯の中にスキルスクロールと同じ象形文字ににた文字が浮かんでいた。

 

 「幾何学模様のような線は無かったね」(白雪)

 「そうだな、なんか見えた人いる?」(加藤)


 全員が顔を横に振る。


 「やっぱり個人によって見えるものが違うことはなさそうだね。とりあえずMPが回復してもらったら再会して穴埋めしていこうか」(白雪)


 「えっと、やっぱり白雪さんはすごいですね……」(雛乃)

 「一条様はやらないのかい? 家の人に手伝ってもらったりとか」(白雪)

 「う”……」(雛乃)


 「私は別に構いませんが」(雛乃侍女)

 「え、いいの?」(雛乃)

 「そう、じゃ左下あたりを重点的によろしく」(白雪)


 侍女の大体は母親の実家からの派遣なので、なかなか頼みづらい。 


 「かしこまりました。お嬢様のおててをじっくりと視姦させていただきます」(雛乃侍女)

 「うんうん」(白雪)

 「ひぃ」(雛乃)


 一方の手でもう一方の手を隠すように後退る。


 「そういえば、コピーしたスクロールは使えないのですか?」(雛乃)

 「無理だね」(白雪)

 「ダンジョンカードが受け付けてくれない形だね」(加藤)


 「なんででしょうか?」(雛乃)

 「それは当然では?」(皆川)

 「……」(白雪)


 「う~ん、そうなのですか?」(雛乃)

 「いや、確かにそれはありかも」(白雪)

 「なにが?」(加藤)


 「理由だよ、受け付けてくれない」(白雪)

 「いや、だからそれはコピーしたものだからだろ?」(加藤)


 「いかんね、そこで思考停止したら。魔法陣はまったく同じなのにダメなのは何故なのか?」(白雪)

 「魔法陣以外を見ているってことっすか」(陽子)


 「他に関係ありそーなものだとペーパーORインク?」(メリッサ)

 「インクはわからないっすけど、紙といったら羊皮紙っすかね?」(陽子)


 「羊か……いるね」(白雪)

 「モクタンとかダメでしょーか?」(メリッサ)

 「あ~、それ行けるなら木の皮から紙作るとか」(加藤)


 「さすが一条様、色々研究項目ができたよ」(白雪)

 「あ、はい、どういたしまして」(雛乃)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ