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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第3章:一ヶ月が経ちました
78/102

第078話:美々・小町10.5層へ

 野々村(ののむら):第38話の弁当屋。

 バイト君(ぼくあるばいとぉ):野々村の弁当屋のアルバイト。別にバールを振り回したりしない

 杏子(あんず):リーダー、姐さん、野々村の元パーティメンバーの一員

 リーダー(名前はまだない):杏子のパーティのリーダー。杏子の叔父。

 姐さん(名前はまだない):リーダーの妻

 |野々村の知り合いの探索者ながい:野々村と元同じパーティメンバーだった。


 ■通常転移柱:①~④まで4つの転移柱があった場合、①からは②③④どこへでも移動できる転移柱。


 ■特定転移柱:①~④まで4つの転移柱があった場合、①からは②と③へしか移動できず、②からは④のみと転移先に制限がかかる柱。ただし①②④を登録していると①から④へ直接移動できるようになる。


 ■一方転移柱:上2つは相互に移動できるが、こちらは①から④へは移動できるが、④から①へは転移出来ない一方通行の転移柱。ボス部屋の手前にある場合が多い。



 ■フィジカル:物理的存在、いわば通常の人


 ■マジカル:魔力的存在、水や土のようにフィジカル的に見える場合もある。


 ■フィジカル+マジカル:人間に魔力を加えたもの。いわゆる探索者


 ■マジカル+フィジカル:魔力に物理を加えた物。ダンジョンのモンスター




「なぁ、バイト君、今からってわけじゃないけど11層行ける人で募集かけたら、人集まるかなぁ?」(野々村)


「無理っすね。ぼくも行けませんし、周りの友達も行ける人いなっすよ。みんな8層あたりでうろちょろしてますよ」(バイト)



「だよね」


「売れ行き悪くなりましたもんね」


「そうなんだよねー、みんなお腹が減ったら1層へ帰ってご飯食べてまた戻って感じのスタイルになっちゃって」


「弁当続けるなら9層ですかね。僕もまだ8層走破できてないですけど」



「オークでレベル上げの人多いって聞くし、6層へ戻るのはしんどいからね」


「ですねー、あとは今はやりの料理人称号ですかね」


「あー……グロイの苦手なんだよね……」


「いや、探索者が何言ってるんすか」


「それはそれ、これはこれ!」

 大ダンジョン8層、多くの探索者から嫌われる層だ。8層のテーマはメイズガーデン。成人男性の腰くらいの丈で切りそろえられた低木で迷路が形成されたマップだ。


 厄介なことにセーフルーム前には小さな砦があり、コボルト、ゴブリン・アーチャー、ソルジャーの混成部隊が陣取っている。当然、3層、6層の個体よりも強い。



 迷路を徘徊するコボルトも少数ながら存在する。砦に陣取る彼等は大型の個体だが、徘徊する個体はゴブリン並みに小さい。メイズを仕切る壁よりもだ。


 つまり8層はいつ接敵するかもわからない迷路を散々歩かせて、精神的に摩耗したところを砦で迎え撃つというコンセプトだ。



 8層を見た研究者たちは困惑した、他と毛色が違うからである。1~7層は何というか『自由』なのだ。言い換えれば『自然』。


 灰と消えるモンスターのどこが自然かと問われればみな閉口するしかないが、すくなくともサファリパークから動物園並みの自然さはあった。



 1~7層や小ダンジョンは、コンセプトとしてモンスターという動物が自然に暮らす中に迷い込んだ探索者が見て取れる。


 しかし、8層は明確な意思を持った作りのダンジョンに感じられる。迷路で疲れさせてセーフルームの前でモンスターに襲わせる。明確なコンセプトが見て取れた。

 


 また、それを裏付けるようなギミックがあり、行き止まりに配置された宝箱。イベント部屋なども用意されている。


 また転移柱は特定転移柱であり、必ず順番にセーフルームを開放しなければならない。砦のモンスターが復活していた場合、今度は裏から砦を襲撃する形になる。


 

「さて、いくかの」(美々)


「うん。美々さんのあとついて行けばいいんだよね?」(小町)


「うむ、何があってもわしの前を走らぬようにな」(美々)



 8層の開始位置はすこし高くなった高台の上にある。セーフルーム及び、9層への階段も高台の上にあるため迷路の構造と方向は見て解る。


 マップは存在するが、当然1から買うとなればかなり高額になる。買えるのは貴族だけだろう。


 

 美々がトップスピードで真っすぐ(・・・・)に迷路を突っ切り、9層への階段目がけて走る。


 成人男性の腰くらいの丈の低木も、美々小町にとっては肩より少し下くらいの大きさだ。


 しかし、彼女達のパラメーターそして、小町もずっと世界の山々を巡ってきた猛者だ。飛び越えることなど訳ない。



 小町も元々食材を求めて山も川も当然のように移動してきた人間だ。足腰の基礎は出来ている。その脚力に任せ強引に飛び越えていく。


 だが、このようなことが許されるなら迷路の意味などなく、他の探索者も当然同様のことをするだろう。だがやらない、やれない。



 美々が無理やり飛び越える度に闇の渦が生じていき、そこからモンスターがはい出してくる。ペナルティモンスターのレッサーデーモンだ。


 体形的にはミーノータウロスに近く、牛の代わりに雄ヤギの頭を持った人型のモンスターだ。ただ、両手は蹄であり天然のナックルになっている。どのように食事をしているか興味は尽きない。


 また飛行能力は持たないが背中に蝙蝠を思わせる羽が生えている。大きさ的にはデーモンの体に見合った羽根ではある。


 しかし、体は筋肉質で重く、飛ぶだけの揚力を得られるようには見えない。さらに体に水平に生えているのだから、滑空をするにしても地面に対して体を水平にしなければ意味をなさない。



 しかし、ここでも現実は牙をむく。背中から生えているのだから羽根を固定する構造がない。


 本来鳥の羽根は腕に生えている。そのため背中に向かって逸らせる力が働いても背中側に向かって折れない。


 だが、背中から生えた場合背中に向かう力、揚力に逆らえず閉じてしまう。同様の構造の昆虫はしきりに上下させて体を支えているが、背骨近くに生えているため背中が邪魔して羽ばたけない。


 一体何のために生えているのか、どのような進化の過程があり残っているのか非常に謎である。



 閑話休題。




 美々は最終的に20ものレッサーデーモンを引き連れて9層への階段がある高台の手前に到達する。そんなものを引き連れてくれば当然高台にいる探索者からは丸見えになる。



「な! あの馬鹿なにやってるのよ!」(杏子) 



 文句を言いながらも降りようとする杏子の肩を持ちリーダーが止める。



「馬鹿、あれだけの数だ止めに行くだけ無駄だ、死ぬ気か!」(リーダー)


「あの数だ、どうやったって無駄だ。こっちがとばっちり喰らわないようにした方がいい」(弁当屋の知り合い探索者改め嶋中(しまなか)


「でも!」(杏子)


「諦めなさい、ダンジョンはそういうところじゃないって解ってるでしょう、自己責任よ」(姐さん)



 彼女はただ見ていることしか出来なかった……レッサーデーモンが吹飛ばされる(・・・)のを。



「「「……」」」


「……何あれ……」(杏子)



「ねー、私は見てるだけでいい!?」(小町)


「かまわん」(美々)



 20という数に囲まれているが、外側のデーモンは内側のデーモンの体が邪魔になり、実際に攻撃できるのは数匹である。


 代わりに四方八方から攻撃されるというデメリットはあるが、見ずとも敵の位置や動きまで感知できる美々にとっては大した問題にはならない。



 人間に比べてモンスターは殺気が少ない分多少感知しにくくはあるが、ここまで至近距離で闘っていればそれは誤差にもならないレベルだ。


 デーモンが突き出してきた蹄によるパンチに対して水平になるように上半身を動かして回避すると同時に脚が上がり回し蹴りのカウンターが入る。



 そのままの姿勢で重心を後ろに倒し、蹴りに放っていた右足が戻ると瞬時に地面を蹴り鉄山靠(てつざんこう)を後ろにいるデーモンの鳩尾に叩き込みよろめかせる。


 その攻撃で空いた隙間に体を滑り込ませるとさっきまで美々のいた場所にデーモンの蹄が殺到した。九死に一生を得たのだが、美々の表情は変わらない。まるでそうなることを知っていたかのようだ。


 

 レッサーデーモンは当たり前だが弱いモンスターではない。弱ければペナルティモンスターにはならない。本来であれば18層で遭遇するモンスターだ。


 スキルは1つも使えないが、その分パラメーター、BPが高く設定されている。つまり完全にフィジカルで()してくるモンスターだ、存在はマジカルだが。



 8層でずるをして痛いめを見た探索者が18層で出会ってがくぶるする……とはならない。8層でそんなことをする探索者が18層まで到達できないから。



 何度攻撃を喰らってもデーモンは引き下がらず、何度倒れても立ち上がって向かっていく。頑張るデーモンも大概だが、対する美々も表情一つ崩さず、冷や汗一つかいていない。



 1発でも当たれば即死が確定な相手、それを20匹相手にたった1人で立ち向かわなければならないと言うのに、その顔は絶望に染まる事もなく淡々と着実に攻撃を当てている。


 何度目かの美々の攻撃が当たったときだった、何かが折れる異質な音が聞こえた。それとともに胸が陥没したデーモン1匹が倒れ伏し、すぐに灰になり始める。


 それからは速かった、1匹また1匹と灰と化していく。手あたり次第に攻撃していればいずれ限界に達するデーモンが現れるのは自明の理である。



 レッサーデーモンはペナルティモンスターである。故にアイテムは魔石1つ落とさない。ただし経験値はある程度得ることができる。



「ではいくかの」


「うん」


「ちょっと! 危ないじゃない! なんであんなことしたの!?」(杏子)


「ちょっ、杏子ちゃん」(嶋中)


「あんなこと?……あのヤギ頭のことか?」(美々)


「そうよ危ないでしょ!?」(杏子)



 杏子に喰って掛かられても美々は不思議そうにするばかりだ。



「危険? わしは見ての通り無傷じゃが? 傷一つ負うこともないのに危険と言われてもの」(美々)


「私達が見てて危なっかしいって言っているのよ!」(杏子)


「何故わしがお主に気を使わなければならぬ?」



「何って……常識でしょ!?」


「おぬしの常識で語られてものう。それともお主は全世界の常識なのかの?」


「そういうわけじゃないけど……あーもうとにかくあんな危ないまね止めなさい!」



「わしの問いに何一つまともに返せないくせに、とにかくと言われてもの」


「こ、このっ」


「杏子!」(リーダー)


「おじさん……」


「やめなさい」


「で、でも」



 杏子を止めるように肩をつかむ。



「ここは日本じゃないんだ、向こうの常識は通じないんだ」


「……」



 杏子もリーダー達も元々日本で育った成人探索者組だ、杏子の忠告というより注意は日本で危ないことをする子供に対して発せられる注意に類するものだ。


 例えば車道で子供がボール遊びをしていたら注意するだろう「そんなところで遊ぶんじゃありません」と。


 美々も小町も下手をすれば小学生にも見える身長だ、それが猶更注意喚起をさせる気にさせていた。

 


「勝手に自分の基準で他人に口出しするな、あほう」


「なっ……」


「……」



 尚も何かを言いたげな杏子だったが彼女は口を閉じざるを得なかった。美々から尋常ならざる殺気が発せられていたからだ。



「ひっ」



 日本であれば躾として必要なこともダンジョンでは、意味をなさない。戦場主義がい言うように元々ダンジョンとは日本を瘴気で侵略せんとする敵でありダンジョンは戦場だ。


 戦場では日本のルールなど意味をなさない。



(……危険だ、こいつはヤバイ)


 

 今更ながらに気が付く。杏子が誰相手に喧嘩を吹っかけているが、見た通り目の前の少女は無傷でペナルティモンスターを大量に殺せるような人間だ、スキル1つ使わずに。


 ここは日本ではない、見た目などなんの判断基準にもならない。自分達が束になっても、いや何百と集めても勝てない相手。その力をこちらに向けられれば最後、待つのは死だ。


 何も自分を守ってはくれない、日本の常識も、法律も仲間も……



「失礼した、先に行ってくれ」


「……」



 彼女は煙管を取り出し、紫煙を揺らしながら9層へと消えて行った。彼女達が見えなくなったあとリーダー夫妻は盛大に溜め息をつくのだった。



「どうして通したのよ」


「杏子、お前はあのデーモンと戦えるか?」


「18層のモンスターでしょ、知ってるから注意したんじゃない」


「じゃぁ何十匹と群がるそれを倒せる相手は何なんだ?」


「…………」



「お前、化け物に喧嘩売ってたんだぞ」


「考えてみるとあの子何だったんですかね?」


「冷静な人でよかったわね……」



 9層マップ南西にオークが生息する洞窟がある。通称ブタ箱。小町の目当はこれだが、ひとまず無視して10層へ、そのまま10層の転移柱を無視して10.5層タイニートロール部屋と到達した。



「今回も私は自由に攻撃してもいいの?」


「うむ」



 ミーノータウロスのときは互いに大宝玉を取る事を目標としていたが、考えてみれば小町が取得するのは小宝玉2個でも構わない。どうせ2週するなら初めから美々が大宝玉狙いでいけばよい。


 

 美々が片膝をついているタイニートロールとの距離を一気に詰める。棍棒を振るってくるが、そのときには既に肉薄している。



 勢いをまったく損なうことのない回し蹴りがトロールに撃ち込まれる。無表情なはずのトロールの顔がわずかに歪んだ。

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