第075話:組島銀醸
芹澤隆司:五十嵐の父親と同じパーティだった人物。五十嵐の父母失踪の秘密を知っている?
斎藤静流:東郷時雨の侍女。東郷源十郎の弟子の1人にして最後の弟子。
■人狼ゲーム:
村人と人狼、2つの陣営に別れ自分の所属する陣営を勝利に導くことが目的のテーブルゲーム、村人陣営は人狼を全滅させること、人狼陣営は村人陣営を人狼と同じ数まで減らすことが勝利条件となる。
ゲームの流れは1日を朝・昼・夜のパートで繰り返しどちらかの陣営の目的を達成するまで繰り返す。1日目の夜からゲームは開始される。朝:人狼に食い殺された人が発表、昼:議論、投票して誰か1人を処刑。夜:職業次第。
人狼は日中は人に化け村人に紛れ込み、夜は人狼となって村人を1人食い殺す。村人は議論によって人狼と思わしき人を探り、昼の最後に人狼と思わしき人に投票する。最も票を集めた人が処刑される。
村人達には職業が割り当てられるが基本自分でしか判らない。
村人:村人陣営。何の能力も無い村人、逆に役職がないため人狼のターゲットにもなりにくく、議論の主役になる。
人狼:人狼陣営。夜に人狼となり村人陣営から1人を食い殺す。昼は人狼以外の人を処刑させるために議論を誘導させることが目的。他の人狼が解り、夜人狼同士で会話できる。
狂人:人狼陣営。村人でありながら人狼陣営を勝利させることが目的。村人なので誰が人狼か判らないし、人狼に食い殺されることもある。
占い師:村人陣営。夜に村人1人を占うことが出来る。占われた人は村人なら白、人狼なら黒と結果が返りどちらかの陣営か分かる。狂人は村人なので占っても白。
霊媒師:村人陣営。処刑された人が村人か人狼かわかる。
狩人:夜に誰か1人を護衛できる。護衛された人は人狼に襲われても食われない。自分を護ることはできない。
CO:カミングアウト。自分の職業を開示すること。嘘をついて別の職業を開示できる、例えば人狼であればだれが人狼か解るので、占い師や霊媒師は騙りやすい。
『チートスキル:【宝玉パリィン】を獲得しました』
「……本当に白雪はダンジョンマスターじゃないんだよな?」(加藤)
「やだね、私がそんな【宝玉パリィン】だなんてギャグみたいなスキルを作るわけ…………ありそうだな」(白雪)
「そっすね……」(陽子)
「白雪なら作るにゃ」(ミーナ)
「作るなぁ」(皆川)
変な方向に信頼のある白雪だ。
「みんな酷いね、この目が嘘をつく人の目に見えるかい?」
「……ガスマスクだな」(黒田)
「……ガスマスクネー」(メリッサ)
「それがなんの証明になるんだ?」(加藤)
「ではこのポーズを見たまえ、嘘つきがこんなポーズをできるかね?」(白雪)
某ライダーの変身ポーズをする白雪。
「初代だね」(七森)
「初代っすね」(陽子)
「それがなんの証明になるんだ?」(加藤)
「ではローラーを希望しよう。私を吊ってもいいけど、村が続いたら浩平を吊ってくれたまえ」(白雪)
「まきぞえにするな!」(加藤)
「なんか人狼始まったんだけど」(皆川)
「私は人狼得意だよ」(白雪)
「人狼COとかふざけまねする奴に得意とか。いやあれは得意なのか?」(加藤)
「あったねぇ」(白雪)
「どうゆう状況っすか」(陽子)
「白雪(村)、狂人、人狼で残った時人狼COして狂人だまして人狼吊った」(加藤)
「うわぁ」(陽子)
「狂人がばればれムーブかましてて助かったよ」(白雪)
「狂人の人が「さぁ人狼さんやっちゃいましょう」って言った時に、お互いがワンワン言いだすんだもんなぁ狂人の人すごい顔してたよ」(加藤)
「酷い話もあったもんだ」(長谷川)
「どちらが人狼かをかけての殴り合いとか見たくないな」(皆川)
「人狼日記とかいうパワーワードを聞いたのは後にも先にもあの時だけだった」(加藤)
「それは普通ゲーム終了後の反省会フェーズでやることっすね……」(陽子)
「とりあえずは、ダンジョンマスターの意図としては俺達を妨害したいのかな?」(加藤)
「それにしては微妙じゃないか? こういうのもなんだが手ぬるい」(黒田)
「だよね。それこそ俺達だけ宝玉を手に入れられないようにすればいいし」(皆川)
「矛盾してないっすか? 私達を転生させといて邪魔したいっておかしくないっすか?」(陽子)
「確かに妙にゃ」(ミーナ)
「ダンジョンとは別の勢力がいるとか?」(白雪)
「ダンジョンは静かに暮らしたかったのに無理やり地球と繋げたひとがいるとか?」(皆川)
「それはなんかおかしくない? ダンジョンは人を招き入れたいんでしょ?」(長谷川)
「今の妨害もおかしいよね。意図としては俺らがお金を一気に稼ぐのを快く思っていないんだろうけど、それって宝玉が暴騰していること認知していないとおかしい」(加藤)
「人間社会の今の状態を知っていないとできないよなぁ」(長谷川)
「ダンジョンに知能があって観察している」(皆川)
「ダンジョン人的な人を派遣してるとか?」(加藤)
「そこまでリスク高いことするっすかね」(陽子)
「ダンジョンマスターならダンジョンの会話を盗み聴きできるんじゃないでしょうか?」(千鶴)
「あーなるほど」(加藤)
…………………………
「火事と喧嘩は江戸の華、組島銀醸の喧嘩屋チャンネル~~」
カメラを構える人に軽快な調子で映像の開始を宣言する男性。名前を前田という。その後ろでは明らかに困惑する男性が映っている。
「本日の対戦カードは、芹澤隆司~なんと彼はあの2017年18層を生き抜いたという噂の人。対するは我がチームの四天王、岩山だー」
■組島銀醸:
組島侯爵家の3男であり、DRDにおける攻略対象の1人。東郷源十郎の一番弟子であった組島与平の孫に当たる。
東郷源十郎は東郷流の始祖でありながら自らをしても未完成としている。彼の弟子は多かれど東郷流を託せるような者は誰も居なかった。
一番弟子である与平も最後の弟子である静流も東郷流を名乗ってはいない、一番付き合いの長い与平も源十郎の弟子にして友であったからこそ名乗ることは許されないと思っている。
組島銀醸は父や兄弟と同じように子供の頃から与平の知る東郷流を叩き込まれた。その中で最も見所があったのが銀醸だった。
しかし、東郷流など名乗らせるわけにはいかず、代わりに組島流としての免許皆伝を与えた。これが銀醸を己の力に溺れさせる原因となった。
最初は良かった、モンスター相手ならいくらでも力を試せる。とはいえ強いモンスターと戦うためには、奥深く潜らなければならない。だがただ強いだけでは深くまで潜ることはできない。
いつしか銀醸の目線は探索者へと向いていった。
だが、こちらも邪魔が入る、彼の侯爵家という肩書だ。強い探索者は貴族だ、他の派閥の人間と戦うわけにも行かないし、自身の派閥の貴族はまともに戦ってもくれない。
そこで彼が目をつけたのが決闘カードだ、まだ戦場派のせいで押さえられているがいずれこれを使っての闘技大会は逸る。
彼は特に目をかけていた平民達のなかから4人を選びだし、銀醸四天王を結成した。平民同士であればまだ貴族も目くじらを立てない。
だが当然ながらいきなり決闘としても参加してくれる探索者はいない。無理やり対戦カードをくみ、闇討ちのような形で決闘を申し込むのだ。
さらに対戦相手も吟味する。徹底的に調べ上げ虚実織り交ぜて強さを作り上げ戦闘を盛り上げさせるのだ。戦いを挑まれる方はたまったものではないが。
いずれは賭け試合を成立させ集めた資金でアリーナを経営し、爵位もなにも関係ない力だけのコロシアムを作り上げる。それが彼の望みだ。
岩山と芹澤が激しい戦いを繰り広げている。
それを見ながら前田、四天王の3人と話す。前田は強くはないが元から個人で配信をしていた人間だ、そこそこの人気があったが最近頭打ちであった。
個人でやっていただけあって調査能力や司会能力が高くそれに目を付けた組島がこの喧嘩屋チャンネルに誘ったのだ。
「それで赤毛のチビはどうなった?」(組島)
「とりあえず名前は遠藤美々、1年F組。赤毛のチビのとおり身長は小柄ですね、150くらいです」(前田)
「うなこたぁどうだっていい、強ええのかどうかだ」(組島)
「F組相手にそれを問います?」(前田)
「今の時期だとD組とかC組がちょっかいけてるんじゃ?」(雫)
「へたすりゃ潰されてるぜ」(天海)
「……」(立花)
雫、天海、立花は四天王の3人で、雫だけが唯一の女性だ。
「御託はいい、実際どうなんだよ?」(組島)
「ちらほらと噂が飛び交ってますよ。ゴブリンソルジャー隊を1人で瞬殺した、フォレストウルフ4匹を1人でなぶり殺して皮を剥いだ、ミーノータウロスを圧倒した。火喰い鳥を毟り殺した、ゴールドシープから毛を刈った」(前田)
「なんだそれは、都市伝説でももっとまともだぞ」(天海)
「よくもまーそこまで盛ったものね」(雫)
「レベル詐称してんのか?」(天海)
「成長値20みたいですよ」(前田)
「はぁぁぁ?」(雫)
「嘘だろ」(天海)
「ギネス申請されてますから確かです。まぁ取得できるかは微妙ですが」(前田)
「で、そんなんで上の噂が成り立つのかよ?」(天海)
「う~ん、黄金羊の皮、ミーノータウロスはかなり信ぴょう性が高いですね。目撃者がかなりいます」(前田)
「でもよダンジョン決定的な瞬間は見て無いんだろ?」(天海)
「協力者がいたんじゃないの?」(雫)
「それについてはなんとも、如何せん学園の情報取得は難しいですからね」(前田)
別に学園が秘密主義というわけではない。単に彼等が卒業してから久しいからだ。
生徒が成人探索者と関わることはほぼ無い。貴族同士は関わることがあるだろうが、語ることはないだろう。
逆に派閥による問題もありブラックボックス化を顕著にさせている。部活での繋がりはあるが、それでもOGがいつまでも部活に顔を出すわけにもいけない。自然と卒業すると内部事情が取得しにくくなる。
「人となりは?」(組島)
「積極的に人と関わらない一匹狼タイプ、たまに同じクラスの間宮小町という少女とつるむ程度でしょうか」(前田)
「で、なんでこんな詐欺野郎を西城が追ってるんだ?」(組島)
「逆じゃねぇのか? 西城に何か作戦があってこいつの噂を盛ってるとか」(天海)
「そう感じますね。とりあえず俺としては態々西城の策略を手伝ってやる理由もないと思いますけど?」(前田)
「まぁそうなんだけどな、じじいまでもこいつについては何もするなって言うんだよ」(組島)
「組島侯爵様が?」(前田)
時雨から美々のビデオを見せられた組島与平にとっても孫の銀醸に言うのはカケだった。何も言わない方が良かったのかもしれない。
しかし、美々はいずれ有名になると与平は思っている、これは武人としてのカンだ。そしてこれを外すことはほぼ無いだろう。
銀醸ならば必ず美々に喧嘩を売るだろう。反発しているが孫は孫だ、何も知らずに当たれば痛い目をみるかもしれない、しかしビデオを直接見せれば確実に喧嘩を売る。
その結果が余計な興味を抱かせてしまった。しかも運悪く西城が探っているときに。
「なるほど、だとするとこれは本物なのかも」(前田)
「なにかあるのか?」(組島)
「えぇ、あまりにも過ぎて偽物だと思ったんですけどね」(前田)
前田が見せたのは新入生紹介のときの小町と美々が映った写真だ。小町が答えるなか、煙草の切れた美々がすこぶる不機嫌でいる。
「これは料理人スキルのときのものよね」(雫)
「そうです、今年の新入生紹介のときのものです。ここに映ってるのが間宮小町で、後ろのが赤毛のチビ、遠藤美々です」
「このガスマスクはなんなのよ」(雫)
「F組の花籠白雪ですね、いつもガスマスク被っているので結構有名ですね。有名で言えば遠藤美々も煙管愛好家だそうです」(前田)
「キセルぅ? また渋いとこきたわね」(雫)
「で! この写真がどうかしたよ」(組島)
「失礼しました、ここです、この武器見てください」(前田)
前田が探索者カードをいじって美々の手元を拡大する。
「随分立派なものね」(雫)
「これは紅雀か……」(立花)
「知ってるの?」(雫)
「6層のレアモンスター火喰い鳥が極々低い確率で落とすものだ。剣聖が入手したことで有名だ」(立花)
「剣聖って西城瑠璃子か」(組島)
「そうです。一部の武器マニアの人が一時期騒いでましたけど、どうせ偽物だろうと一笑に伏されてましたね。華族の方も何も言ってませんでしたし」(前田)
「なるほどな、こいつが持っていた紅雀が今は西条瑠璃子が持っている」(組島)
「そして西城家が嗅ぎまわっている」(天海)
「さらに組島侯爵様も」(雫)
「なるほどなぁ、でこいつの戦闘スタイルは? 剣か?」(組島)
「それが驚くべきことに素手です」(前田)
「ほぉ」(組島)
「へぇ」(雫)
「決めた、前田次のカードでこいつの紹介映像作っとけ」(組島)
「いいんですか? 親父さんにどやされますよ」(前田)
「かまわん。実力が本物か見てやる」(組島)
「わかりました。誰当てます?」(前田)
「私でいいでしょ。最近戦ってないしさ」(雫)
「組島さんもそれでいいでしょうか?」(前田)
「あぁ」(組島)
DRDに置いて組島はシナリオはほとんどない。というのも組島のモデルは有名な格闘家でDRDの宣伝で出演してもらったのだ。
そこでせっかくだからと隠しキャラ的な形で攻略対象となったのが組島だ。一定のレベルになると謎の招待状が届く。
招待状にはダンジョン内の特定のセーフルームが指定されており、そこへ辿り着くとアリーナへの挑戦チケットを取得できる。
アリーナで四天王全てを勝ち抜くと組島と戦うことができる。あとは彼に勝てば卒業時に組島とのハッピーエンドとなる。
無論女性主人公のみであり、男性主人公は篭手と一体化したナックル『カイザーナックル』を取得できる。




