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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第2章:1週間が経ちました
58/96

第058話:キャンプ終了。その午後

 村田(むらた)空馬(くうま):特待生、五十嵐が気に食わない。レベル7:【狂戦士】

 犬山(いぬやま)信二(しんじ):かませ犬君、攻略対象の1人。レベル6:【シーフ】

 愛宮由美(まなみやゆみ):双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 愛宮沙耶(まなみやさや):双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 日陰忍(ひかげしのぶ):ヒロインの1人、目隠れ美少女、千鶴と同室 レベル:4


 ■弁当百貨店・武井:


 ダンジョン手前にある地下2階、地上6階からなる建物、弁当百貨店の名前は伊達(だて)ではなく、全て売られているのは弁当ばかりだ。


 サンドイッチから幕ノ内、駅弁まで販売されている。ごはんと梅干だけの元祖「日の丸弁当」まで販売されている。


 5層の景観はほぼ4層と同じだ。4層との大きな違いは中央エリア一杯に広がる立体迷路を内包する岩山だろう。


 岩山には3箇所穴が開いている、距離に差はあれど全てはゴール側へと通じている。ただし5層の転移柱は転移先のセーフルームが決まっているため、順番にセーフルームを訪れる必要がある。


 開放への道順を覚えているメリッサに従い一番南側の穴から入る。採掘目的ならば北側からの方が採掘ポイントは多いが、5層の薬草および、5.5層へ一番近いセーフルームを登録する目標もあるためだ。


 道中白雪の頼みでボーンラットを小町に解体してもらう。ボーンラットはDRDでは闇の魔石を落とす初めてのアンデッドモンスターとなる。

 


「うん、やはり私の狙いは正しかったようだね」(白雪)


「何が?」(加藤)


「見たまえ」


 

 ボーンラットの骨と骨の間、いわば間接を開いて見せる。その間には黒いゴムのような物で繋がっていた。

 


「なにこれ?」(加藤)


「う~ん」(白雪)


 

 返答せずに頭蓋骨、背骨、骨盤等を前後から観察する。


 

「こまっちゃん、この頭蓋骨砕いてくれんかね?」(白雪)


「ほいほい」(小町)


 

 鉈の(むね)を頭蓋骨に打ちつけ砕いてく。

 

 中からは、関節とおなじゴム状の何かが垂れてくる。真っ黒一色というわけではなく赤い線が入っている。

 

 「ほっ」と軽い掛け声からそれを切り開く。元々弾力があるが切り開かれた所から赤黒い体液が漏れ出す。


 

「うえ~なんか気持ち悪る」(皆川)


「う~ん寄生虫、いや寄生生物かな、イカ、いやタコやヒルに近いかな?」(白雪)


「寄生生物?」(加藤)


「映画なんかで腹食い破ってくる?」(皆川)


「ゲームとかで、頭撃ち抜くとぶわって出てくる?」(長谷川)



「そうだね、DRDじゃアンデッドだけど、現実でゾンビやスケルトンみたいなモンスターは成り立たないからね、何らかの生物と睨んでいたのだよ。多分骨の中で育つことで外敵から身を守っているのかね?」(白雪)


「宿主が盾であり食料であると?」(加藤)


「だと思う」(白雪)



「ミーナはこういうのは平気なの?」(七森)


「平気にゃん、そういうゲームやってたの健兄ぃも見てたにゃん」(ミーナ)


「そういえばそうだった」(七森)

 

「謎も解けたことだし、探索を続けようか」(白雪)



 その後順調に採掘ポイントを見つけ、つるはしをそこに向かって突き立てる。数回突き立てると、何故か壁面はそのままなのにごろりと鉱石が転がり出てきた。


 

「なんだこのゲーム的なものは」(長谷川)


「も、元々ゲームだし」(七森)


「これ、剣で削れねーのかな?」(黒田)


「試してみれば?」(加藤)


 

 次の採掘ポイントで実際に剣を突き立てて見たがなにも出ることはなかった。


 

「だめだったよ」(黒田)


「うん、何で判別してるか謎だけどだめみたいだな」(加藤)


「モンスターにつるはしは逆に効くのか?」(黒田)


「試してみるか」(加藤)


 

 つるはしを片手に荒い息をする黒田、そのよこでモンスターが灰となり消えていく。


 

「やっちまった……こいつが、こいつが悪いんだ! いきなり襲い掛かって来るから!」(黒田)


「言い訳は署で聞く」(加藤)


「うぅ……昼はカツ丼で頼む」(黒田)


「警察をレストランにするな」(加藤)

 

「う~む、木はつるはしで切れるのかなぁ?」(皆川)


「木は切株とかどうなるんだろう? 草は抜けた後とかあったっけ?」(長谷川)


「そこまで注目していなかったっす」(陽子)


「まずはここを抜けて5層の草を引っこ抜こうか」(白雪)


「雑草みたいに言わないでほしいっす」(陽子)



…………………………



「うん、採集もやっぱり抜いたあとが無くなってる」(加藤)


「そだね、根っこもついてるのか」(長谷川)


「土もついてないっすね、根が土色なだけっす。なんなんすかこれは」(陽子)


「根も使うの?」(皆川)


「ゲームだと乾燥させて粉末にして必要数を水にとかすだけっすね」(陽子)


「つまり何処を使うか分からないと」(皆川)


「そうなるっす」(陽子)


「次は伐採か、4層はどっちが近い?」(加藤)


「5.5層がわデース」(メリッサ)



「ミーノータウロスはどうする?」(皆川)


「さすがに今日は無理だな」(加藤)


「多分、はぐれ狼並みに耐性あるだろうし、鍛冶で武器が揃ってからだろうね」(白雪)



「美々さんとやったときはそれ程苦戦しなかったけど?」(小町)


「あれは別物」(加藤)


「比べちゃだめっす」(陽子)


「最悪素手という手もあるかにゃ」(ミーナ)


「私は何百発撃ち込んでも倒せる気はしないな」(白雪)


「魔術使えよ……」(加藤) 



…………………………



 木を切った経験のある須藤が、斧を当てる位置を指示し、そこに千鶴が斧を喰い込ませていく。



「なかなか同じ場所に当てるの難しいですね」(千鶴)


「ですが、通常の木よりも柔らかいようにかんじますね」(須藤)


「パラメーターが上がったからの気もする」(加藤)


「伐採ポイント以外の木はだめだな、傷一つつかねぇ」(黒田)


「そろそろ倒れます、気を付けてください」(須藤)


 

 ある程度の切れ込みが入ると、音を立てて木は倒れる、倒れた木のあった場所に寸分たがわず、同じ木が存在していた。



「……ナニコレ?」(白雪)


「木が分裂している……だと」(加藤)


「倒れた木も倒れる前と種類違わない?」(長谷川)


「枝は付いてるんだ」(皆川)



「剣はどうだった?」(加藤)


「やっぱりだめだったよ」(黒田)


「時間もあれだし一本で一旦帰るか」(加藤)


「ほい」(白雪)



…………………………



『行くぜゴラァ!』


 

 大剣を持ち、一気に狼の頭へと振り下ろす、渾身の力を込めて振り下ろされたそれはBPごと狼の頭蓋骨を砕いた。即死である。



『ハッハァ~こいつあいい、ワンパンだぜワンパン』



 狼の腹を蹴り上げる。五十嵐をよろけさせるような重さがあるのにまるで中に綿でも入っているかのごとく軽々と蹴り飛ばす。



『ハハハハ、縫いぐるみみてーだなおいっ』



 彼は犬山信二、織姫をナンパして五十嵐、加藤達に止められた1年E組の生徒である。彼はご機嫌に笑いながら、後ろに剣を横に薙ぎ払う。こっそり忍びよっていた狼が木に叩きつけられ力なくずり落ちる。



『気付いてんだよバーカ』



 だが笑ってういた顔がだんだんと曇っていく。



『てめぇなに生きてんだ、死ねよ、死ね死ね死ね死ね!』



 何度も何度も脚を叩きつけ原型が無くなるまで踏みつけると狼は灰のように消えていく。



『ハハハハハ、そうだ、それだ! てめぇにはその姿がお似合いだ!』



 もはやここまで力の差があると連携も何もない。残った1匹をもて遊ぶようにくびり殺すとゲラゲラと下品に笑う。その顔は昂然(こうぜん)とし、その目は全てを見下しているようだった。



『いいね、イイネ! テンションアガッテキタァァァァ』



 だがその言葉を吐いた後に急に(うつむ)き腕も力が抜けたかのように垂れ下がる。



(おいっ、気が済んだらさっさと解けよ、なんか気持ち悪りぃんだよ)


『ちっわかったよ』


 

 1人だった人影が分裂するかのように2つに分かれていく。



「くそっ、なんか肩凝るな」(村田)


「よっしゃ、4層行くぞ」(犬山)


「俺に命令してんじゃねー」



 村田は、あの()目が覚めとき、見知らぬ廃倉庫の一室で見知らぬ男の隣で寝ていた、たっぷり寝たからなのか頭は妙にすっきりしているが、ここ最近の記憶が曖昧(あいまい)だ。



(五十嵐に負けて……その後どうした? ここは何処だ? こいつは誰だ? 今は何日だ?)



 日付を見ようと探索者カードを取り出す。最後に五十嵐に負けてから10日以上経ってることに顔を青くさせる。


 癖でダンジョンカードにも目を通すと、そちらにも異変があった、何故か【狂戦士】という記憶に無い称号がセットされている。



 いや【狂戦士】という称号自体聞いたことも無い。新称号の可能性もある。


 称号もそうだが、スキルの方にも信じられない変化があった、【ファイナルソード】が【デッドソード】へと進化していた。


 30秒間スキル使い放題という基本性能はそのままだが、撃ったスキルの効果が全て2倍、クールタイム50%減少の効果が付いている。だが使用後スキルが使えなくなる効果も5日に伸びている。



 噂レベルの話だがスキルアッパーというものを聞いたことがある、新しいスキルへと目覚める伝説の薬だ。


 レアスキルを持たない奴が作り上げたくだらないうわさかと思ったが いつの間に飲んだのだろうか? 飲んだから記憶があやふやなのか? 村田には判断が付かなかった。


 疑問は尽きないがそんなことは現状を受け入れて行く内にどうでも良くなった、自然と顔がにやけてくる。自分は今まさに伝説の体現者になっている。


 隠しようの無い笑みを浮かべていると隣で寝ていた人が呻き声と共に目を覚ました。


 しばらく寝ぼけまなこで周囲を見回していたが、村田と目が合うと一気に覚醒した。



「なんだてめぇ! 俺をどうするつもりだ!? 言っとくが俺は扶桑(ふそう)の一員だぞ」(犬山)


「何言ってんだてめぇ、おれは公爵の一員になる男だぞ!」(村田)


「なに夢みたいなこと言ってやがる」


「おまえこそ!」

 


「……なぁ、それよりダンジョン行かねーか?」


「は……なんでだよ……行くか」



 明らかに話の繋がらない誘い、唐突すぎる勧誘だが、何故か村田もダンジョンで闘わないといけない気がしてくる。意味が分からないが行かなければならない。



「うぉ、なんだこれスキルが変わってる」


「なんだよ、お前もかよ」



 俺だけじゃないのは残念だったが何故か親近感が湧いてくる。どうやらこいつのスキルはヒュージョンというらしい。


 英語で意味は解らなかったが、それを素直に伝えるのも癪なため乗った結果が今のだった。同意した瞬間急に引っ張られるような感覚があったと思ったら2人で1人になっていた。



 だが溢れるような全能感、軽々と吹っ飛ぶ狼達、はっきり言って最高だった。


 しかし、自分の中に別の自分がいるという感覚は時間が経つにつれ凄まじい違和感が襲ってくる。


 自分と相手の境界が無くなるような自分が溶けるような感覚は言いようの無い気持ち悪さだ、心なしか頭痛もするような気がする。



「さっさといくぞ村田空馬(・・・・)


「だから命令するな犬山信二(・・・・)



…………………………


 

「「「重い……」」」


「大きさ的に300kgくらいでしょうか?」(須藤)



 須藤、黒田、加藤、長谷川、皆川が分担してもつ、身長順でも須藤が一番重そうである。



「コロがいるかな」(白雪)


「さすがに原木用のコロは売っていないと思うのですが」(須藤)



 苦労して原木を運んでいると3層で愛宮姉妹、(しのぶ)と偶然出会う。



「やぁ」(白雪)


「「やぁ」」(愛宮姉妹)


「こ、こんにちは」((しのぶ)


「ウネの帰り?」(白雪)


「そだよー」(由実)



「それは生ハム原木~?」(沙耶)


「そだよー」(白雪)


「えっ、そうなんですか!?」((しのぶ)


「そんなわけないでしょう」(千鶴)



「「ついにレベル5になれたよー」」(愛宮姉妹)


「おお、おめでとうー」


「おめでとうございます」



「わ、私もレベル4になれました」((しのぶ)


「あら、凄いじゃない。おめでとう」(千鶴)


「えへへへ」((しのぶ)



「称号は~?」(白雪)


「「まだ考え中ー」」(愛宮姉妹)

 


「ハイホー」(白雪)


「「ハイホー」」(愛宮姉妹)


「ハイホー」(メリッサ)


「ハ……ハイホー」((しのぶ)


「無理して言わなくていいのよ」(千鶴)



「知ってますかー? ハイ・ホーは『仕事が好き』ではなく『仕事は終わりだ、帰ろう』という意味なーのですよー」


「「へー」」(愛宮姉妹)


「はー、やっと1層だ」(加藤)



「……なんだあれ?」


「丸太……だろう?」


「まぁ……そうだな、そうなんだけどさぁ」


「言いたいことは解るが俺が答え持ってると思うなよ」


「そうなんだけどさぁ」



 加藤達が帰った夜に放送された小町、白雪の放送は日本だけでなく世界に激震を走らせた。【料理人】の称号だけでなく【薬師】、【鍛冶師】など生産系の称号があることが示唆された。


 日本も同様で日曜日からつるはし担いだ探索者が5層を目指して移動している。企業勢だけでなく買取価格が上がると見て一般勢もだ。もしここに加藤達が出くわしていたら騒ぎになっただろう。


 寮に帰るとプレハブ小屋をたてるための資材が庭に届いていた。防音ボード、耐熱コンクリートetc。



「おー届いている」(加藤)


「結構大量にあるけどお金足りたの?」(長谷川)


「足が出たよ。ただ美々さんが貸してくれた」(白雪)


「意外」(加藤)


「遠藤さんお金持ってたんだ」(皆川)


「6層いったとき隻腕の貴族が宝玉買ってくれたのよ」(小町)


「あー、朝隈だっけ?」(長谷川)


「そうそう」(皆川)



「誰それ?」(黒田)


「攻略対象の一人」(皆川)


「あぁ、香さんの」(黒田)


「誰?」(皆川)


「朝隈の世話係」(黒田)


「なんでそっち覚えてんの?」(皆川)



「お姉さまは、物作りを見るのが好きなんですよ。よく『〇〇が出来るまで』のような工場系の動画を見てました」(楓)


「あ~なんかわかるっす」(陽子)


「あとでお礼を言っておかないと」(加藤)


「いえ、礼よりも手伝わせる方が喜ばれます」(楓)


「そうなんだ」(加藤)



「どう建てるかは大丈夫なの~?」(由実)


「ふっふっふっ、任せたまえ、私が建築家だ」(長谷川)


「「なんだってー!」」(愛宮姉妹)


「おいっ、おまえら何をしている」



 作ろうとしているのは高炉及び、工作室のある研究・開発用の建物だった。無事に鍛冶と木工の称号を取得した七森や千鶴、薬師の陽子のための施設だ。


 学園には整備をする施設はあるが製作が出来る施設はない。



 勝手に建ててもよいのかと思われるが、各寮の中庭には何を建ててもよいとされている。貴族達が望んだ結果だ。


 ダンジョン学園ができた当初はなにかと貴族優待が疑問視されており、F組も同様に敷地と権利を有しているがそれが使われたことはほぼ無かった。



 加藤達がみつけた水道と下水道の跡はその数少ない例外のその名残である。上の建物は撤去されたのだが配管まではそのままになっていた。


 せっかく建築資格をもっている長谷川に退役後土木業に従事していた須藤がいるのだ。



 その配管跡にあわせて施設を建てることにした。尤もトイレや水道の建設は後になるだろうが予め将来を見越して建てておこうという目論見だ。


 加藤達は大出を振って施設を建築しているわけだが、そこに絡んできたのが2年の先輩元山だ、何故かクラスメートの1年を連れている。



「何ってドスケベ音頭だけど?」(白雪)


「なんだそれは……ぜってぇちげえだろ」(元山)


「何故だい? 君はドスケベ音頭が何かを知っているのかい?」(白雪)


「……」(元山)


「知らないのになぜ違うと言い切れるんだい?」(白雪)


「……」(ミーナ)



 ミーナが絡んできた先輩をじっと見つめている、好意的なものではなくなにか過去を振り返るような目だ、七森を見た後に、おもむろに建材の中にある鉄パイプを握る。



「おい、こいつどうなってるんだ?」(元山)


「逆に聞きますけど、この格好の女がまともだと?」(加藤)


「……」(元山)



 ガスマスク姿の白雪がふんぞり返る。先輩は黙り込むしかなかった、まともかと聞かれれば答えは断じて否だ。



「で、ドスケベ音頭の先輩が何の用事です?」(白雪)


「まだ続けるんだ?」(加藤)


「あんまふざけたことやってると殴るぞコラ」(元山)


「あんだとごらぁ!」(ミーナ)



 いきなりドスの聞いた返しに振り返った2年の前に猛スピードの鉄パイプが襲いかかる。あまりのスピードに思わず手でガードする。……だがしばらくまっても衝撃はこない。


 恐る恐る腕の隙間から除くと振られた鉄パイプを須藤が抑えていた。



「何止めてんだ、コラ。こいつより先にてめぇやんぞ」(ミーナ)


「いきなりの暴力はやめましょう」(須藤)


「こういう奴ぁいっぺんぶん殴んねーと上下関係わかんねーんだよ」(ミーナ)



 明らかに普段から使い慣れた言葉使い、振られた鉄パイプ、止める筋肉達磨、それでいて平然としている加藤達。元山は理解した、こいつらやばいと。


 元山は村田と同じ特待生の出だ。つまるところ村田と同じように中学校で問題を起こし推薦されて日華へ来た。ゆえにわかる、ミーナは同類だと……いやそうでなくてもわかるか。



 ミーナもまた、親子3代続くアウトロー達の家の出だ、社員もみな彼等の族のメンバーだ。こういうときの対処方法は知っている。


 相手より先に先制で一発かましてイニシアティブ(主導権)を握るのが最も有効だと。


 そしてそれを止めた筋肉達磨(すどう)、貴族達はレベル至上主義の中で生きてきたため須藤の体躯を見た所で威圧されたりはしない。


 ダンジョン、パラメーターの前では意味のないものである事を知っているからだ。



 だが、日本で暮らしていた元山やF組からすればそれは畏怖の対象である。今連れているのは特待生ではないクラスメートだ。


 モンスターより(元山)の方が強いことを見せてクラス内での権威を保持しないといけない。


 とはいえ、所詮はF組、A~E組の貴族やそれに準ずる人から見ればガキ大将でしかない。貴族達は彼等が棒切れ振り回してるころから真剣で戦闘訓練をしているのだから。


 そのF組でしか効力のない権威にしがみついている元山だ、1年の前でヘタってる所は見せられない。それゆえ、寮の庭で好き勝手やってる加藤達に現実を解らせなければいけなかったのだが……


 すでにミーナの振るった鉄パイプにビビッてガードした時点で元山のパーティメンバーの目が変わっている。



「おいこら、逃げようとしてんじゃねぇだろうな?」(ミーナ)


「いえ、ですから暴力は」(須藤)



「よし、じゃぁこうしようぜ、私か須藤か闘いたい方選べ、模擬戦ならいいだろ?」(ミーナ)


「そういうことでしたら」(須藤)

 

「そういうわけだ、選びな。私も須藤も素手だ、おまえは武器使ってもいいぜ」(ミーナ)


「上等だごらぁ、1年なんか2人まとめて相手してやらぁ」(元山)



 既に遅れを取っている以上1年の挑発に負けるわけにはいかない。例え相手があきらかに格闘経験者であっても、同類であっても。だがそこに絶望の一言が。



「「「だったら俺らも」」」

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