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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第2章:1週間が経ちました
55/96

第055話:キャンプイベント(後編)……の(前編)

 東郷(とうごう)時雨(しぐれ):東郷家公爵家長女にしてシナリオのラスボス。母親は東郷美々(東郷源十郎の娘)だが東郷家の子供として扱われている。

 斎藤(さいとう)静流(しずる):時雨の侍女。


 宮古(みやこ):天皇の直孫、生徒会長。ヒロインの1人。

 山下(やました)清美(きよみ):宮古直属の部下、西城家派閥の侯爵家4女。筋肉愛好家。

 河中(かわなか)(あおい):宮古直属の部下、北条公爵家分家の長女。


 愛宮由美(まなみやゆみ):双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:4

 愛宮沙耶(まなみやさや):双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:4


 村田(むらた)空馬(くうま):特待生、五十嵐が気に食わない。レベル6:称号【???】

 犬山(いぬやま)信二(しんじ):かませ犬君、攻略対象の1人。レベル5【シーフ見習い】

 沢渡(さわたり)麗華(れいか):鵺の一員

 根岸(ねぎし)黒羽(くろは):鵺の一員


 ■戦場主義:資源主義:


 ダンジョンは放置すれば瘴気をまき散らし人が住めない場所にする、これを侵略とし排除すべきとするのが戦場主義。


 モンスターを間引けば瘴気は抑えられる、ダンジョンに眠る資源を金にすべきというのが資源主義。



 ■コボルト:


 ダンジョン6層に出現する犬面人型のモンスター、棍棒と共にウッドシールドを持っている。


 盾で防御してくるためゴブリンと同じ感覚で闘うと痛い目を見るので注意が必要。



 6層のコボルトは6層エリア全体を3~5匹のパーティで徘徊している。犬面しているだけあって鼻が利くが追跡くらいしか発揮されることは無い。


 しかし、追跡は一流で一度目を付けられると隠れていても探し当ててくるので注意が必要。

 3グループが3班に別れ、それぞれの班が別のルートで3つのセーフルームを目指す。


 1班が直線的に目指し、他の2班が弓なりのルートで左右(もしくは上下)に別れて目指すの各行軍ルートだ。


 そのため直線的に進むルートだけは距離が短くなる。このルートを割り当てられるのは雛乃班のように爵位が男爵以下の低い貴族達が率いる班がそれを担う。



 理由としてはまず戦力が低いことだ、基本的に成長値は爵位に比例する。それに伴いレベルも低くなる。


 当然持久力といったパラメーターも低くなるため疲労の溜まり具合が違ってくる。


 それに未来の探索者を潰すことが目的ではないため楽なルートが割り当てられる。


 さらに子爵以上にならないと後ろ盾となる寄り親がいない。そのためもし移動中に貴族同士のトラブルが起きたときに対処が出来なくなる。



 寄り親が居ると、爵位が低くても寄り親が調停に入り事を納める。大抵は寄り親立ち合いの元決闘カードを使っての戦闘でカタを付ける。


 尤も最近はそれが娯楽となりつつあるのは悪い習慣だ、ちょっと気に食わないと因縁をつけ決闘を挑むのである。



 決闘カードは10層以下のモンスターであれば一定確率でドロップする。年々下層への攻略者が増加にある現状、決闘カードを余らせている貴族が増えつつあるのだ。


 そのため貴族達が決闘カードを持て余し、戦場主義に言わせれば「あまりにもくだらないこと」に使われ始めるのだ。


 最近では一部の貴族によってショーのように一般探索者同士を戦わせたり、内輪トーナメントまで計画されている始末だ。


 (おおやけ)な賭け事まで発展するのも時間の問題だろう。


 実際瑠璃子が美々に信濃を嗾けたのも決闘カードについて見てみたかったという目的もある。




 逆に寄り親が居ない場合、もしくは派閥が別の場合問題になる、どちらも自身の正当性を曲げず爵位的にも格が同等の場合、最悪貴族同士の抗争になりかねない。


 DRD世界の貴族同士の抗争は金と人を浪費するだけで得る物などお互いに無い。


 勝ったところで中世のように相手の領地を奪うにも現世では領地の代わりに会社に社員だ、奪うことなど出来ない。



 価値観も中世とはかけ離れているのだ。将軍(貴族)を人質にして保釈金をせしめるなどしようものなら日本からも叩き上げられる。


 資金を日本から調達しているのだからイメージが致命的に悪化することは出来ない。しかも、ダンジョンの危険度を上昇させるおまけ付きだ。


 いくら資源主義の貴族達でもそれは容認できない。それらの理由から、直進ルートを進む班は余った1年、2年のF組や男爵、士爵達で構成される。



 戦力が相対的に低いため距離が短くても大抵同じ時間くらいに付くはずなのだが、今回は加藤達や五十嵐、柳といったF組の中でも異常な戦力が入っているため一番乗りを果たした。


 次に到達したのが東郷班、言うまでもなく美々のせいである。誰よりも早く敵を察知し、1人で秒殺するのだ。


 たとえ枝の上に隠れていようとも敏感に気配を察して【壁走り】で幹を登り叩き落とす。恐ろしいことに正答率は100%で間違えることも無い。



 それでも2位になったのは早い段階で時雨(しぐれ)が美々を止めて他のF組生徒達に戦闘経験を回したからだ。


 最後に到着したのは宮古班となった。尚、瑠璃子、皆川、長谷川の班は別グループで目的地となるセーフルームもこことは異なるためここにはいない。


 到達した班から昼食の準備をしていく、とはいえ昼は大抵お弁当だ。貴族達はお茶の準備を始めている。


 キャンプイベントがあることは告知されていて、このセーフルームを使用することも探索者センターの人達から知らされているため部外者は居ない。


 また、低層であるためトイレも完備されている。こちらも貴族と平民できっちり分けられている。さすがに長蛇の列に貴族を並ばせるなど出来ないからだ。



「狼肉食べる人いる~?」(小町)



 美々はすでに煙管を取り出し火をつけている。楓は喜々としてお弁当を広げている。最近小町に任せきりで久々に腕を振るえる機会に朝から頑張ったのだ。



「わしは【料理人】無しで頼む」(美々)


「お、お姉さま……私のお弁当は?」(楓)


「無論そちらも食うぞ」


「はい!!」


「はーい。セーフルーム以外でON、OFF切り替えれたらいいのにね」(小町)


「出来ないのか?」(宮古)


「「「……出来るの!?」」」(小町・愛宮姉妹)


 

…………………………



「「ちっ、あいつどうするつもりだよ」」


「……?」


「……?」



 時を同じくしてここでも顔を見合わせる人が2人。片方は上沢、村田の友人であり本日参加していない村田を思ってのことだった。


 最近は特に様子がおかしく余計に心配である。



 同様に同じ言葉を発したのは矢野、犬山信二と同室の探索者だ。既にパーティは解消されているが残念ながら別室にはなれずにいた。


 残念ながら部屋を変わってくれる人は居ないかったようだ。




 その犬山だが今朝起きたときには部屋におらず、そのまま行方知らずのまま集合時間になってもセーフルームに現れなかった。

 

 村田はもっとひどく昨日の戦闘訓練の授業が始まる前から行方をくらましたままだ。


 今回のキャンプオリエンテーションには単位が割り当てられている。


 ダンジョン学園に留年は存在せず学費さえ納められていれば単位が足りなくても進級は出来る。


 しかし卒業時に単位が足りなければ卒業証書が送られない。E、F組の探索者にとっては卒業証書が贈られなければ卒業後の扱いは悪いものになるだろう。


 さらに通常の単位とは異なり研修旅行のような特殊な単位だ、補填する方法は限られる。



 いくらパーティを解消したからといっても同室だった人間がそうなればやはり気になるものだ。


 同時刻、倉庫街偽装廃倉庫にて。



「困ったわね」(麗華)


「ええ、今の時間になっても昏睡したままとは思わなかったわ」(黒羽)


「あなたがあんなこと言うから……」


「私のせいにしないでよ」


「さすがに学校行事まで休まれると困るわ、数年前ならいざ知らず、今は関係が無くても監視されるでしょうね」


「まったく郭公(かっこう)の連中にも困ったものね、必要以上に厳しくなったの絶対あいつらのせいよ。は~、こいつは捨てるしかないわね、せっかく優秀だったのに……上手く行かないものね」


「あ~じゃぁあれ打ってみない?」


「この間博士が開発したってあれ? そうね実験結果も求められていたし、どうせ破棄するんだしいっか」


「……あら?」



 モニターのアラームランプが点滅していた。



「どうしたの?」(麗華)


「敷地内に反応、侵入者よ」(黒羽)


「……誰かしら? 彼等にここを突き止められるとは思えないのだけれど」



 侵入者が入ったというのに2人は焦った様子もない、それは能力に裏打ちされた確かな実力から来る自信の表れか、自戒機能の付いた逃走路が用意されているからなのか。


 しかし、モニターに映し出されたのは犬山だった……。


「……だれ?」(麗華)


「きっと、さぼった学生ね、毎年いるのよね単位のこと理解してない子」(黒羽)


「なにそのくだらない結末、小説みたいにドキドキの展開用意してくれてもいいでしょうに、ほっておく?」(麗華)


「いえ、せっかくだから彼にも協力してもらいましょ」


「おっけ♪ そのまえに楽しませてあげなくちゃ」


「いいわねー」


 

…………………………



 小町、愛宮姉妹は本人以外からも被った声に顔を見合わせる。



「いや、モンスターを捌いた上【料理人】なんてスキルを得たのだから、そういった事も出来るのかと思ってな」(宮古)


「……そういえば、そうね。なんかそう聞いたからそういうものだと思ってしまっていたわね」(小町)


「でも色々試してみたけど」(由美)


「出来なかったね」(沙耶)



 愛宮姉妹以外にも双子の探索者はいるが、なかなか【以心伝心】の副作用については知られていない。


 元々双子は少なく(1%程度、内1卵生は4%)、それらが全て探索者になるわけではない。


 さらにアイデンティティが破壊されるほどレベルが上がる(深刻になる)前に両方共生存している確率はほぼ無いからだ。



「そういえば、2人は何でそんなことしようとしてるの?」(小町)


「あ、ううん、気にしないで」(由美)


「ちょっと興味本位で?」(沙耶)


「そう? 料理でもしてるのかと思った」(小町)


「それで生徒会長様だっけ? 食べる?」(小町)


「そうだな、貰おう」(宮古)


「宮古様!?」(葵)


「問題ないだろう」(宮古)



 探索者は人間に効くような毒は効かない、それに日華は日本とは隔たれている場所だ、チェックも厳しく毒物の流入すら難しい。


 しかし、食べるのはモンスターの肉だ、どのような悪影響が出るかは解らない。


 

「私も貰っていいか?」(時雨)


「時雨様!?」(静流) 



 時雨から声が掛ったとき一瞬宮古と時雨の視線が交差する、それは暖かい物では無くどちらかといえば冷ややかなものだ。



「こんにちは、宮古様、道中何もありませんでしたか?」(時雨)



 立ち上がり礼をする時雨。



「ああ、大事(だいじ)無く辿り着けた。そちらも息災で何よりだ」(宮古)


「いいわよー」(小町)



 食糧庫を出すと、周囲から驚きの声が出る。アイテムボックス効果のあるスキル自体珍しいので当然だろう。


 もっとも食材のみ、かつ20リットル制限のため余り役立つものではないが。


 先日から熟成させていた狼肉を取り出し、今度は先程狩った狼肉を代わりに入れる。



「魔術っていえば、【ファイアショット】とかで火とかつけれないの?」(小町)


「それは残念ながら出来ないんですね。見ててください」(雛乃)



 いつの間にか近くに来ていた雛乃はなんの変哲もない紙を取り出すと、誰も居ない方向に紙を向けそれに手をかざして【ファイアーボール】を放つ。


 しかし、火の玉は命中し、その炎に包まれたはずなのに燃えないばかりか焦げ跡1つ無い。



「こんな感じで火の玉自体は凄いんですけど、モンスター以外にはあまり効果を及ぼさないんです。触ってみてください」(雛乃)


「あ、ちょっと暖かい」(小町)


「はい、このような感じで多少は効果があるんですけどね」(雛乃)


「不便ねー」(小町)


「その分余計な被害がいかずに助かるんですけどね」(雛乃)



 その後、自前で持ってきていたバーベキューコンロを取り出し、手慣れた様子で肉を切り塩と胡椒を振って焼いていく。



「料理人スキルは食事に効果が付くらしいが、これはどんな効果があるんだ?」(時雨)


「さぁ?」(小町)


「知らないのか? 本人なのに」(時雨)


「なんだっけ? あの効果がみれる虫眼鏡みたいなやつ」(小町)


「鑑定眼鏡か?」


「それそれ、それがないと解らないみたいなのよね」


「なるほど……」



 鑑定眼鏡もなかなか手に入れにくいものだ。過去全くないとは言わないが、F組の人間が取得したという報告はほとんど無い。



「はい、どうぞ」


「お待ちください、せめて毒見くらいさせてください」(静流)


「まったく心配性だな、そうだ、ついでに鑑定眼鏡も使ってみてくれ」(時雨)



 静流だけでなく、葵、清美の方も毒見をするらしい。



「狼のステーキ 筋力+1%、体幹+1%と見えますね……効果時間は4時間」(静流)


「私の方も同じですね……」(葵)



 その声にその場にいた全ての人にさらにどよめきが起きえる、装備以外で効果が付くのだ階層エレベーターについでの革命といってもいいくらいだ。



「この効果って一緒なんですか?」(雛乃)


「アタックバードの肉使っていたときはHPにボーナスが付いてたよ」(白雪)



 一口食べた静流が思わず毒見を忘れて感嘆の声を漏らす。それは葵、清美も同じだった。



 「「「美味しい」」」



 清美等は勢い余って全て食べて知ったほどだ。



「なに普通に食べているんだ」(宮古)


「あーあれです、美味しい物の前に人間は無力です!」(清美)


「力説するな!」(宮古)


「わかるのう……」(美々)


「……」(宮古)


「ちょっ、俺らにも作ってくれ!」



 思わず他の貴族達も寄って来る。



「はいはい、来週の月曜から学食でお弁当販売するからよろしくねー」(小町)



 当然タダで配るだけでなく宣伝をちゃっかりと入れている。暗黙の了解というか聞いても無駄だろうと【料理人】の称号取得方法については誰も聞かない。


 もっとも日曜の夜には1週間差し止めされていた小町と白雪のインタビューが流れ世界中に知られることになるのだが。


 それぞれ昼食も終わりそれぞれ片づけに入っている、今は出発までの約1時間の休息中だ。のんびりと煙管をふかしている美々に近づく影が2つ。



「……あなたは何者だ?」(時雨)


「わしは、わしじゃ。それ以外に答えなどあるまい」(美々)

 

「あの格闘術は誰に習った?」


「それを聞いてどうする?」


「……ここで何をしようとしている」


「何も、わしの寿命が尽きるまでの暇つぶしじゃな」



 美々自身、第二の人生を持て余している。既に源十郎はおらず、前の人生では死を受け入れた。にもかかわらず突然第2の人生を渡された。


 せいぜいダンジョンでモンスター相手に暇つぶしをする程度しか思いつくものが無い。


 時雨と静流というどことなく源十郎を感じさせる2人に会った、まだ闘う姿を見てはないが、体付きも動きも薄い。



「今のような闘い方は危険だぞ、悪目立ちし厄介な人間に目を付けられることになる」(時雨)


「それがどうした? わしは気にせん、貴族だろうが国に目を付けられようが知ったことではない。そうじて喧嘩を売られれば潰すだけじゃ」(美々)


 

 実際こういう人間が一番やりづらい、倒したところでF組の1年をボコボコにしたなど自慢にもならない。


 しかし、逆にF組の1年にやられたなど沽券にかかわる。何もしなくても「ガキ1人にやられて報復もしませんでした」とも言えない。



 西城瑠璃子が恐れているのもそれだ、それゆえ、ばれれば母から追放されると思っている。


 それこそ名が売れるのを待つしかない、「あれなら仕方無い」というくらいに。


 実際に瑠璃子ルートでも久子から「名を上げなさい、あなたなら仕方ないと思われるくらいに」との言葉で許されるシーンが含まれる。



「だいたい探索者とはダンジョンでモンスターと闘うものであろう? わしにかまう暇があればモンスターを倒したらどうじゃ?」



 それはぐぅの根もでない正論だった。


 「確かにうまいな、これは肉が良いのか料理の腕が良いのか」


 「……」(住之江:血涙)



 住之江(すみのえ)譲二(じょうじ):宮古の影、元御庭番忍衆 頭目 レベル28


 話がまとまらなかった……次回、次回でキャンプイベントはちゃんと終わるから……多分


 お読みいただきありがとうございます。拙い文章ですが次話も楽しみにして頂ければ幸いです。よろしければ、ブックマーク、評価、感想なんかもお願いします。

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