第050話:お嬢様大脱出(なお、本人は気絶中)
西城瑠璃子:西城公爵家の次女。姉の他兄が1人、弟が1人いる。主人公と同じく1年。【剣聖】のレア称号持ち。
信濃海斗:瑠璃子付の護衛、信濃伯爵家の4男。表の顔はさえないおっさんだが、かなりの実力者。
冬川真帆 :探索者センター センター長
冬川茜:探索者センター 職員 真帆の娘
村田空馬:特待生、五十嵐が気に食わない。レベル7:称号【戦士】
上沢、下田、中岡:村田の友人、孤児院からの付き合い。
杏子、リーダー、姐さん、知り探:38話で5,6層の紹介のために出て来たパーティ
■はぐれ狼:推定レベル12 危険度A
フォレストウルフをそのまま大きくしたような姿。フォレストウルフを倒していると低確率で出現。
出現するとフォレストウルフの縄張りを無視して林の中を広範囲に移動する。
戦闘が始まると、眷属の狼4匹を呼び出し彼等と一緒に襲い掛かってくる。
眷属狼は残り2匹になった時点で再度4匹召喚してくるのでまず1匹を全力で倒し、残り3匹を全て平均的にダメージを与えて行くのがセオリー。
眷属狼にも経験値が設定されているので、わざと闘いを長引かせてレベル上げに利用することも出来るが、それであれば5層で稼いだ方が効率は良いだろう。
ダメージがLPに達すると眷属召喚をやめ、動き回ってのヒットアンドウェイを行ってくる。
はぐれ狼はその巨体からか周りの木を利用して三角飛びのようなことは出来ないが、この状態の時は【二段ジャンプ】を使用し何もない虚空を蹴り攻撃してくる(ゲームでは無い仕様)。
最初のLP到達の際後ろ脚を骨折レベルで傷つければ倒しやすいが、抵抗値が高いためよほどのことが無ければ厳しいだろう。
ドロップアイテムは狼の毛皮か、はぐれ狼の毛皮、ウルフファング(短剣)。レアドロップで狼の大剣を落とすが特殊能力は無く店売りの大剣とほぼ同じ性能であるため苦労に見合うものではない。
本来は4層に見合う防御力で、後半戦の方が前半より楽とまで言われる強さであったが、某テスターが眷属を召喚する前に、後ろ脚に集中攻撃して速攻無力化をおこなったため、抵抗力が上方修正された経緯がある、犯人は陽子。
階層エレベーターが空き、中からとぼとぼと探索者達が出てくる。
皆着ている防具はどこかくたびれていて武器も手入れはされているが、型落ち感は否めない。大抵の人は民間探索者と考えるだろう。
最後尾を行くおっさんが永遠と愚痴をもらしていた。探索者をおぶっている女性1人と他の2の男は無言で心なしか足早に過ぎ去っていく。
「だからやめようって言ったんですよ……」
「なにがミーノータウロス倒せたから余裕ですか……」
彼らを見る1層に居た探索者は、ある者はせせら笑い、ある者は同情の目を向け、ある者はそもそも興味が無いのかすぐに目を逸らす。
階層エレベーターが開通してからまだ数日しか経っていないのに今のようなパーティが増えた。
移動が便利になって調子に乗った挙句レベルと見合わない階層に手を出して痛い目を見たパーティー達だ。
その過程でロストしたのだろう、愚痴を言いたくなるのも解るがこれもダンジョンの洗礼というやつだ。
生きてるだけでありがたいと思うべきだろう、こういう手合いはロストしたらぐちぐち文句を言うのにロストが明けたらまたすぐに調子に乗る奴が多い。
探索者センターに着いてからも一般棟を足早に彼等は去っていく。
彼等を見て陰口を叩く者、ほくそ笑む者、興味の目を向ける者、過去の自分を思い出して苦い顔をする者、大方の反応は1層に居た探索者と同じだ。
センター内での戦闘行為は警備員に問答無用で殺されるから絡んでこないのがありがたい。
こうして瑠璃子と信濃達は無事自分達のセカンドハウスへと帰り着いた。
華族棟の中には華族専用の地下通路への入り口があり、そこを通ればすぐにセカンドハウスまで辿り着けるのだが通れば他の華族達にばれるため使用できなかった。
彼等の次の関門はどうやって侍女頭に事情を説明するかだが、事実を言うしかないだろう……。
数刻前……
信濃達6層最初のセーフルームを目指して移動していた。ロストをすると血しぶきまで元に戻るため鉢金が使い物にならなくなっただけで信濃の顔も装備も血の染みもない。
「うう、体が重い……」(信濃)
護衛2人も頷いている。身体パラメーターが一気に下降したのだから当然とも言える。
唐突に先頭を歩いていた信濃が立ち止まり、指で3を作って右を指さす。護衛達も急いで右の木陰に隠れる。息を潜めていると、犬の顔をしたコボルトが3体が視界に入る。
瑠璃子が健在であれば、彼女が一瞬で間合いを詰めて頭と首を泣き別れさせていただろう。
だが今は瑠璃子は気絶中、侍女以外は全員はロスト中だ、侍女も一応は戦えるが専門ではないし背負った瑠璃子を手放すことは出来ない、それにいざとなった時に彼女が守るのは瑠璃子の命だ。
瑠璃子を起こせればどうにでもなるだろうが、その選択と取る事は出来ない。
生粋の貴族である彼女が起きれば一般棟を通っての帰還など絶対に許さないだろう。護衛と別々の棟から帰れば何かあったことに気付かれる。
公爵家の彼女は常に観察されていると思わなければならない。
必死で息を殺す中コボルトが通り過ぎて行く。コボルトの恐るべきところは犬面の鼻を使って何処までも追跡してくることだ。
個体の戦闘力で言えばアタックバードより劣るが追跡能力でコボルトの右に出る者は居ないだろう。
裏を返せば見つからなければやり過ごせる。鼻はいいが探索者を嗅ぎ分ける力は低いらしく追われていない限り隠れてやり過ごすことはできる。
(いいぞ……焦るな……見つかったら終わりだ、逃げ切れない)
必死で息を殺す中、「う……」瑠璃子がわずかなうめき声を上げる。その瞬間コボルト3体がピタリと立ち止まった。
(ばかやろーーーーー!! 俺にどんだけ迷惑かければ気が済むんだ!)(信濃)
叫びたくなるを必死でこらえる。そもそも信濃がロストする切っ掛けになったのも元はと言えば瑠璃子のせいだ。
美々の煙管を切り落とそうとしなければ、こんな事にならなかった自分の落ち度を棚に上げて、信濃は瑠璃子に対しての悪態を心の中で叫ぶ。
ゲーム内の信濃の性格も今と一緒である、ストーリーが進むにつれ態度を改め、瑠璃子のために身を挺するような信濃だが、会ったばかりの頃の信濃はこんなキャラだ。
しかも、ゲームで出てくるのは信濃だけだ、侍女も出てこない。公爵家の人事担当の目に異常が無いか確認すべきだろう。
コボルト3匹が立ち止まり。それぞれが鼻を鳴らして周囲を探すような素振りをする。
(どうする? 今不意打ちをすれば1匹ならやれるかも……)
悪魔の囁きに耳を貸しそうになるのを押さえて必死に気配を殺す。しかし、そんな願いも空しくコボルトの1体がこちらに近づいて来た。
護衛と目配せし覚悟を決めようとしたとき、突然コボルトの頭がはじけたように横にぶれる。
その威力に頭と繋がった体が一緒に追随し、横倒しにコボルトが倒れた。原因を目で追うと探索者らしき4人がコボルトに向かって行っていた。
「やったー、当たりぃ」(杏子)
「おーすごい、すごい」
「こらっ、喜ぶのは全部倒してからにしろ!」
その声にコボルト2匹が反応し、吠えながら向かっていく。倒れたコボルトも矢が頭に当たったのに何事も無いように探索者達に向かっていった。
4人は危なげ無くコボルトを殲滅すると、信濃に気付くことなく道を戻って行った。
「ねーねーもう6層へ行こうよ」(杏子)
「いや、しかしだなぁ」(リーダー)
「火喰い鳥が出たんじゃ、他にやりようが無いじゃない」(杏子)
「そろそろいいんじゃないかしら? もうコボルトだって危なげ無く倒せてるじゃない。それに階層エレベーターが開通して移動も楽になったでしょ」(姐さん)
「そうそう! あれむちゃくちゃ便利だった」(杏子)
「体力も温存できますしね」(知り探)
「わかったわかった。それじゃ一旦セーフルームへ戻るか」(リーダー)
「やったー!」(杏子)
去って行く探索者を遠目に見送ると、信濃達は隠れていた藪から出てくる。
「危なかった」(信濃)
「そうですね……」(侍女)
「丁度いい、コボルトはグループ毎に間隔を空けているからしばらくここは安全だ」(信濃)
「どうするつもりですか?」(侍女)
「とりあえずこいつを着てくれ、あんたらの装備は目立ちすぎる」(信濃)
信濃は腰の後ろに着けているバックから入口と明らかに大きさの合わない装備を出していく、どれもが古臭いものだ。
「マジックバック?」(侍女)
「備えあればってな、瑠璃子様には内緒で頼む。あっち向いてるからすぐに着けてくれ、早くしないとコボルトだけでなく探索者が来るかもしれない」(信濃)
マジックバックとは通常のバックの見た目をしながら、その大きさと会わない荷物を詰め込めるバックでかなり珍しい品である。
小町の食材庫とは違い、大体重量で制限が掛る。信濃の持つバックは容量50kgまで、重量95%減少のなかなか良い品である。
尤も重量制限一杯まで詰め込むと2.5kgにもなってしまうためあまり詰め込めないが。
「さすがに瑠璃子様を脱がすわけにはいかないから、このコートで隠してくれ」(信濃)
「それじゃいきますよ、6層のセーフルーム付近から俺がぐちぐち文句言って、失敗したパーティ感を醸し出すので、他は俯いてひたすら無言で通してください」(信濃)
「わかりました」(侍女)
…………………………
「はぁ、まったく今年はどうなっているのよ」(真帆)
「その言葉聞き飽きたよ」(茜)
「階層エレベーターの発動に、料理人、薬師、生産職という称号、3層の隠しエリア、紅雀、たった1週間でこれだけのことが起きたのよ! 愚痴の1つや2つ言いたくもなるわよ!」(真帆)
「うん、まぁわかるけどね」(茜)
「全てに関わってると思わしき、遠藤美々という少女……」(真帆)
「私的には、彼女が考え行動したとは思えないんだよね。宮古さんから伝え聞いた話から浮かぶ人物像だと、何か企んで行動するよりも、真正面から一直線に障害を破壊しつくしてきそう」(茜)
「そうね……」(真帆)
「あとは、花籠白雪だったかしら」(真帆)
「うん」(茜)
「探るつもりが探られるだなんて、もっと慎重になりなさいっていつも言ってるでしょう」(真帆)
「うぅ……」(茜)
「それで伸君からの報告は?」(真帆)
「それ程調査が済んでいないと文句言われたけれど、無理言ってまとめて貰ったわ」(茜)
■五十嵐優:
非常に正義感溢れる好青年というのが最初の印象でした、ただし若干喧嘩早い所があります。
探索者に憧れる人にはありえることですが、どちらかというと自身の正義感が暴走したような印象があります。
本人の資質としては善良で、困っている人をほっておけない人だと思われます。カリスマ性があるのか、クラスメートからよく相談されているシーンを見受けます。
女生徒からの相談が多く、幼馴染の吉野織姫がいつも頬を膨らませているシーンも日常茶飯事です。
■加藤浩平:
現在F組最大のパーティーのリーダーですが、どうにも後述する花籠白雪に振り回されている感が高いですね。
一応常識的な人物なので花籠さんを止める役割が多いですが、合わせて悪ノリするときもあります。
■黒田竜司:
加藤のパーティーのサブリーダーです。ただし加藤の下というより良い意味でのライバル的な人物でしょうか。
割と面倒見がいいようで五十嵐に次いでクラスメートから相談されることが多いみたいです、こちらは男子生徒から特に戦闘系のことで相談されるみたいですね。見た目の印象からでしょうか?
■花籠白雪:
つかみどころが無く、問題発言や行動が多いトラベルメーカー気質の人。最近はガスマスクがトレードマークになりつつあります。
しかし、頭はかなり切れるようで計算や考察的な部分では感心するものがあります。
天才肌というのでしょうか? 毎夜自分の部屋でパジャマパーティを開き積極的にクラスメートとの交流を図っているようです。
そのせいなのか、かなり奇抜な人ですがあまり悪く言う人はおらず、花籠さんなら仕方ないかという雰囲気が形成されつつあります。
加藤をリーダーとしたパーティのサブリーダー兼参謀的な位置でしょうか。
■間宮小町:
入学初日からクラスメートたちに料理をふるまい(有料ですがかなりの安値)、以降も朝、夕は学食で料理を作っては販売しています。
料理自体かなり美味で華族御用達の店と比べても遜色無い程です。値段、味ともに胃袋を掴まれている人も多く、悪く言う人は花籠と同じく居ません。
かなり小柄で料理を作っているしぐさは、お母さんの料理を手伝う……僕は何を書いているんだ。
■メリッサ・オーランド:
帰国子女となっていますが、本当でしょうか? 性格的には裏表があるようには見えないですが、あえて白雪達にあわせて表面を誤魔化しているようにも見えます。
■遠藤美々:
間宮と同じく小柄な身長と、老人のような口調をした人物。特徴として暇さえあれば煙管を咥えています。未成年という自覚はあるのでしょうか?
武術の師がいたことは本人口から聞いていますが名前は答えてくれませんでした。
本人の説明によると、各部位で発生した力の流れとタイミングを合わせて体を動かすことで、力のロスの無い一撃を相手に叩き込む武術らしいです。
また、それに合わせて筋肉のリミッターを外し常人の3倍近い力を出すとのことです。
かなりの戦闘力を持っており、本人も強者然としたふるまいですが、思った以上に常識的な人間です。
むやみに暴力を振るったりすることも無く、むしろ争い事を好まないようです。
過去五十嵐が模擬戦を申し込みましたが、「お主からは、信念も覚悟も危機感も感じられぬ。理想はあるようじゃが、それこそ誰もが持ちうるもの。
闘ったところで得られるものなどなかろう」と断られたそうです。
■遠藤楓:
遠藤美々の姉(義姉妹)ですが、彼女のことをお姉さまと慕い心酔しています。それゆえに美々さんに関わる事になると何をするか分からない危うさがあります。
ただ、美々さんが関わらないと常識的です。印象的に美々さんと合うところは無いと思うのですが、何がどうして義姉妹になったのかは不思議です。
■村田空馬:
このクラスに存在する4人の特待生の1人で、彼等のリーダーです。自分本位な性格ではありますが実力は彼等の中で1番高いようです。
どのような関係かは正確には解りませんが、なんとなく古くから続く関係性が窺がえます。
美々さんの成長値が低いことを口実に、無理やり自分のパーティに参加させようとしたときに、五十嵐が止めに入り木刀同士での戦闘となりました。
戦い方は稚拙の一言で力任せ、スキル任せの戦い方です。最初に実力は1番高そうと言いましたが少し自信無くなりました。
追いつめられた際、レアスキルを使用。スキル名は【ファイナルソード】。詳細は解りませんが30秒間スキルがMP無視で使用できるスキルのようです。
使う人が使えば非常に強力ですが、村田であるため使いこなせていませんでした。あのとき五十嵐が止めに入らず、美々さんと戦闘となっていればより悲惨になっていたでしょう。
「他気になった人物は居ないみたいですね」
「う~ん伸のレポートでも遠藤美々は藪をつつかなければ蛇は出なさそうね」
「でも、裏があるのは確実ですよね、私達の調べでは本人の言ってた「師匠」なる人物は会ったという記録は出てきませんし」
「そうね。でもじゃぁ何を考えて入学させたのかしら。なんかちぐはくなのよね」
「狙いが読めないですね」
「花籠さんも意味不明ね、パジャマパーティ……」(真帆)
「情報収集の一環かな?」(茜)
「わざわざそんなことしないでも、集められると思うのだけど……それにどこでボロが出るかもわからないのに積極的に関わろうとするものかしら?」
「う~ん」
「このメリッサという子は?」(茜)
「アメリカで両親がダンジョンで死亡、身寄りがなく日本の遠い親戚に送られたけど、彼等も余裕が無く孤児院に送られた。確かそんな履歴だったはずよ」
「なるほど……」
…………………………
F組にも階層エレベーターの情報は届いているが、ミーノータウロスを倒せるようになるためには数か月かかるため対岸の火事だ。
それよりも加藤達が公表した3層隠し部屋の方が食いつきは良かった。だがゴブリンと会う可能性も0ではないためまだまだ利用者は少ない。
逆に貴族達はそれどころではない。ダンジョンの深くに潜るためには多くの荷物が必要になる、特に食事には気を付けなければならず、5層のフォレストラプトルには煮え湯を飲まされた経験が多い。
最後の転移柱から階段への移動も馬鹿に出来ず、1層1層は短くとも塵も積もればなんとやらだ。
ちょっとした油断でせっかく持ち込んだ物資が全てダメになることもあるので、それらすべてを無視できるメリットは非常に大きい。
多くの貴族チームが遠征企画をすべてキャンセルし、再計画を練直している。
彼等が目指すのはまずは11層のエレベータ―が動くかどうかの確認だ、開通するだけで2日近い短縮になる。
現在5.5層のミーノータウロス狩りは非常に混雑しており、それに伴いミーノータウロスの落とす武器やアイテムは暴落し、逆に宝玉はどれも大暴騰している。
そして、その影響は加藤達へも影響を及ぼした、宝玉含めミーノータウロスの落とす全ての品の買取の一時休止だ、再開の予定は未定でその発表を聞いた時、皆ハニワのような顔をして顔を見合わせていた。
水曜の夕方加藤達男性陣+五十嵐は談話室でプノに興じていた。
「なー、ちょっといいか?」(上沢)
「おう、どうした? 一緒にやるか?」(加藤)
「いいのか?」(上沢)
「そいつ村田の友達だぞ!」(五十嵐)
「ひでーな、友達であって村田じゃないぞ」(加藤)
「それは、そうなんだが」(五十嵐)
「五十嵐よー、そんな坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだと友達出来ねーぞ」(黒田)
「そんで相談事って? ほいドロツー」(五十嵐)
「あー、その村田の事なんだけどな」(上沢)
「そういやあいつなんか大人しいな」(黒田)
「それなんだよ、なんつーか大人しすぎるっつーか」(上沢)
「心ここにあらずって感じなんだよね」(中岡)
「五十嵐に負けたのがショックだったとか?」(長谷川)
「空馬がそんなことで大人しくなると思うか?」(上沢)
「思わねーな」(黒田)
「ダンジョンはどうなんだよ?」(加藤)
「それがさー、最近一緒に潜ってないんだよ」(下田)
「え、あいつソロで潜ってんの?」(皆川)
「わからない」(中岡)
「それがよ、どうにも女の影がちらつくんだよ」(上沢)
「女ぁ?」(黒田)
「女ねぇ」(加藤)
「ハニトラでも引っかかった?」(皆川)
「いや、いっちゃ悪いけど、村田にそんな価値あるかね?」(加藤)
「あいつあれでも華族の生まれなんだよな」(上沢)
「マジで?」(黒田)
「俺らだって一応華族だぞ、4男や5男ばかりだけど」(中岡)
「マジかよ」(加藤)
「爵位も低いけどね」(下田)
「じゃぁ華族がらみで何かあったとか?」(長谷川)
「いや、全然。村田も俺達も孤児院へ飛ばされたしな」(上沢)
「う~ん、今の時点じゃ何もいえねーな」(黒田)
「だよなー、まー愚痴を言いたかっただけだ」(上沢)




