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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第1章:転生者が多すぎる
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第044話:公爵家会議

 村田(むらた)空馬(くうま):特待生、五十嵐が気に食わない。レベル7:称号【戦士】

 WSA:世界探索者協会、ダンジョンや探索者の情報を共有しましょうねという組織。


 ■FDSアーカイブ8:


「紀子ちゃんおはよー。早いねー、私かい、私は元気だよ。なぜなら寝てないからね! いやFDS(この空間)は常時寝てるようなものか。寝ているのに寝ていないとは訳分からないね、はっはっは」(白雪)


「え、ええおはよう」(吉野紀子:白雪専属看護師)



 あの事件(第021話)以来白雪は変わった。もはや昔の白雪の姿は欠片(かけら)も残っていない。



「どうしたの紀子ちゃん?」



 白雪との出会いは彼女が3歳の時だった、そのときには既に彼女の頭は切り開かれていた。


 口から上は完全に切り取られ、ごつごつした物体で覆われ頭が奇妙な物体と化し、死んだように寝台に横たわる姿とは別に、モニターの中の白雪楽しそうに走り回っていた。



 それから数年、自身の状態を自覚し、一時不安定な頃もあったが、話し相手になり、紀子自身もFDSに入り(最初は腕一本動かすのもままならなかった)世話をする内に落ち着きを取り戻した。


 しかし、学習実験が始まり内向的だった性格がより酷くなり、ほぼ喋らなくなってしまった。



「どうしたの? あれかい今夜は寝かさないぜベイビーって旦那を襲ったのかい?」


「してないわよ!」



 今回の事件での変化は劇的だ、まるで生まれ変わるがごとく今の状態に様変わりしてしまった。たった1日でだ、あり得ない。



(本当に生まれ変わったのかもしれないわね……あのとき彼女に脳波は完全に止まっていた……)



 彼女のバイタルモニターに目をむけるが、脳波は異常なしを示している。


 だがVRモニタの中、はしゃぐ彼女の後ろには事件以来変わらず崩壊した吉祥寺の街並みが写っていた。


 彼女はそんな中まるで奥の街並みなど見えないがごとく振舞っていた。



 あの事件以降白雪を取り巻く環境は大きく変わった。研究の主任となる竜造寺玲子は行方不明、日本政府はFDS研究の中止を発表。


 残った研究班は此処(ここ)をどうするかで揉めている。あまり話たくない人物であるが、玲子氏に帰ってきてもらいたい。


 性格はあれであってもなんとか白雪のことは救おうとしてくれるはずだから。



「大丈夫だよ」


「えっ!?」



 ふいに白雪の声が聞こえて振り返るが、モニターの中の白雪はいつも通りだった。

 1人の男性が会議室のような部屋にいる。ディスプレイは13個あるが部屋に居るのは男性1人だ。着物を着た彼は腕を組み目を閉じている。やがて、ディスプレイに様々な人が映りだす。


 音声は通じているはずだが誰も一言も話さない。やがてモニター全てに顔が映ると上座の初老の男性が厳かに話始める。



「急な招集にも関わらず皆揃ってくれたことを嬉しく思う。これより公爵家緊急会議の開催を宣言する」


 

 男性の言葉に拍手が鳴り響く。この部屋に集ったのは日華に居る公爵11人、それに加えて天皇家代理人、陸上自衛隊幕僚長の13人だ。


 

「今回の議題は2つ、皆の意見を聞きたい。最初の議題は階層エレベーターについてだ」


「テレビ局は探索予約のキャンセルやら予定変更の連絡がひっきりなしに来て、てんてこ舞いだそうだよ」


「まぁ当然だな」



「侯爵達はみなスケジュール調整に忙しそうだね。今回はすでに家主になっている人間すら再びダンジョンに潜ると言い出して大変だよ」


「寄り子ならいいじゃない、うちなんか長男が騒いでるわよ。最悪だわ、さっさと会社の引き継ぎに移ってもらいたのに」(西城公爵)

 

「君の家は手を広げ過ぎだよ、2、3事業から手を引いたらどうだね?」


「ふんっ嫌に決まってるでしょ」



「ま、大変そうだが、私は静観かな、そのうち落ち着くでしょう」


「私もだ」



 階層エレベーターの発見は確かに偉業とも言える。しかし、これ自体が何か利益を生むことはない。


 むしろこれによりより深い層への侵出が可能になり、今まで二の足を踏んでいた探索者が活性化し、つられて経済も活性化が生まれる可能性がある。誰か一部が利益を享受するのではない。


 また、階層エレベーター自体話すことがないのだ、どこかがこれを独占し「使いたければ通行料を払え」など言うのであれば彼等も動いただろう。


 しかし、それは不可能だ。そんなことをしようものなら全ての貴族家を敵に回すも同然だ、徹底的に排除されるだろう。


 ポーションが一般の人に効果があることが判明したときはもっと酷かった。3層のポーション部屋を巡り大きな抗争が発生し、貴族総出でなんとか抑えた。


 以降3層のポーション部屋は公爵家が占有し、各派閥がどれだけポーションを取得するかを取り締まっている。


 空くのは4月にダンジョンにある各施設のメンテナンスをする2日間だけである。毎年どの貴族がどれだけ取得する交渉合戦が発生する。


 公爵家の分配で揉め、そのあと派閥ごとの侯爵家同士で揉め、さらに伯爵家、子爵家で揉める。


 各派閥が専属のネゴシエーターが交渉に出るがそんな彼等にしても全員胃薬が手放せない地獄の会議だ(探索者にとって薬品は不要であるが、それでも皆胃薬を求める)。


 ここで手に入ったポーションがそれぞれの貴族が経営する日本の病院に送られることになる。


 それに比べ階層エレベーターは話し合うことも、研究する要素もほぼ無い、『宝玉がなんのための存在が分かった』言ってしまえばそれだけだ。


 これ以上なくシンプルな答えであり探索者全員がその恩恵を拝受(はいじゅ)することが出来る。


 ボス部屋が混雑するだろうが、そもそもインスタンスエリアが形成されるので揉め事も最小限だろう。


  今後6層まで攻略した人と攻略してない人が同時に乗ったらどうなるのか? 他の階層はどうなのか? そういった実験はなされるだろうが、ダンジョンだけでクローズしてしまう問題だ。



世界探索者協会(WSA)への報告はどうする?」


「もう手遅れだろう?」


「生放送な上、目撃者も多数いる。伝えるまでもなく世界中に知れ渡っているだろう」



「はい、WSAには既にセンターの方から伝えてあります。詳細を寄こすよう催促が来ましたが自分で調べろと返答しました」(天皇家代理人)


「当然だな、そんなにすぐ詳細が解るならダンジョンの全てを解明しておるわ」


「ですわね」



「まぁ、これで少しは危険度の方も盛り返すだろう」(自衛隊幕僚長)


「そうだな、まだ顕著に表れる前でよかった」(大島)


「ああ」


「逆に無理して死者が増えないことを願うよ、ひひひ」



 北海道にある大ダンジョンは自衛隊専用のダンジョンだ、一般探索者が入れないため自衛隊のレベリングを主体とし、それ以外にも様々な活用がなされている。


 その中の一つに高解析能力を持ったカメラによるダンジョン花の色の観察がある。



 一部の上級貴族にしか知らされていない情報ではあるが、瘴気の危険度は50年後には完全に0になるというのは嘘だ。


 思った以上に危険度の下降速度が鈍化し、後10年もしない内に逆転すると推測がなされた。当然こんな情報を公開すればどうなるか? パニックが起きること間違いなしだ。


 瘴気の危険度の上昇率は、周囲の人口によって変わるのは周知の事実だ。


 周囲というのがどれくらいの範囲かは分からないが、少なくとも本土はほぼ全て範囲内だろう。


 「じゃぁ周りの人間を減らそう」そう考える人間が出てくるのはまず間違い無い。



 事実中東では人類の浄化を掲げた組織が発足(ほっそく)し、「モンスターと戦わない怠惰な人間を間引く」と無差別テロが発生し、社会問題となっている。


 無論探索者ルールがあるため、実際にテロを起こすのは彼等のいう『怠惰な人間』である一般人だ、『怠惰な人間』が『怠惰な人間』を殺すという自己矛盾を抱えている。



「これで最近のたるんだ雰囲気も一新されることを願うばかりだ」(大島)



 これもまた嘘ではない、瘴気噴出が始まるレベルまで到達してから攻略がはじまり約70年、瘴気の噴出は止まり、危険度も減少した。


 初めの頃のモンスターとの戦況は良くは無かったが、状況は良かった。貴族達も皆がダンジョンの脅威に立ち向かうべく一丸となっていた。

 


 大島公爵は元日本の将校だった、華族の再叙爵(じょしゃく)とはいっても全ての華族が元に戻ったわけではない、補助金が出るとはいえ、とてもではないが騎士達を養えるほどの財産の無い華族もいた。



 特に東北地方では困窮していた華族が多く、大島もそんな公爵から話を受け年端もいかぬ娘を、それも姪に当たる娘を嫁にして家を引き継ぐことになった。


 仕方無かったとは今でも嫁には頭を上げれない。



 今の華族は2つの考え方の違いがある、ダンジョンを資源と見た「資源主義」と、日本侵略する外敵とみなしダンジョンを戦場と見る「戦場主義」の2つだ。


 ダンジョンが現れた当初は戦場主義一色だった。



 だが、時が立つにつれ人がダンジョンに慣れ始めると資源主義の貴族が増える事となった。


 ダンジョンで活躍する人を英雄視する思考が増えるにつれ、彼等をアイドル化し広告塔として商売を初めるようになった。


 彼等のダンジョンを遊戯か何かと勘違いさせるような考え方に、当然戦場主義は白い目をするが、ダンジョンはとかく金がかかる。


 それに日本を護るために戦っているのだ、称賛の声の1つや2つを求めるのは当然の欲求だろう。



 やがて戦場主義だった貴族達も1人、また1人と資源主義へと変わっていった。瘴気の危険度も減少し低い位置で停滞していたのも影響が大きい、早々に危険度が低下し平和な時間が長すぎたのも彼等の台頭(たいとう)を許した一因だろう。

 

 だが資源主義も悪い事では無い、資金が増えれば人も装備の増強に繋がりモンスターを倒すことは結果危険度の減少を維持し平和の持続に繋がることになる。



「最終的に皆さんの方向性は静観でよろしいでしょうか?」


 

 全員から賛同の声が上がる。公爵家の会議は基本的な日華共和国の方針を決定づける会議だ、名目上日本属国であるため、天皇陛下が了承することで決まる(天皇陛下が直接出るわけではなく代理となるが)。



「次は料理人見習、そして薬師見習の称号の件だ」


「語弊があるね、生産系の称号の話だろう」


「問題はこちらだな、あのインタビュー映像はどうなっている?」


「私の判断で1週間は公開しないように差し止めました」(天皇家)


「良い判断だ」



「WSAは?」


「薬師は大丈夫です、早々に抑えられたのが幸いでした。料理人は無理ですね」


「そうか、まぁしょうがあるまい」


「口止めします?」


「なぜそう血の気が多いのか、やめておけ、無駄だろう」



 物騒だが、自衛隊も天皇家も何もいわない。これは他国(日華)の問題だ、属国とはいえ日本が作ったとはいえ日華は他国なのだ、口を挟む権利は無い。



「冗談よ、さすがにそこまで短慮じゃないわ」


「君の所の者じゃないだろうね?」


「確かに手広くやらせてもらってるけど、さすがにこんなことしないわよ。やるなら漏れないよう私の家で完全に囲い込むわよ」

 

「南雲さん、これは君のところのだろう? なにか申し開きはあるかね?」


「申し開きもなにも、皆目見当もつきませぬな」



 「しかしだね、君の孫娘の廸子(ゆずこ)君だっけ? 早期に探索者を引退、11層という深い層にレストラン建設、オーナー就任、しかも都合のいいことに階層エレベーターの発見。そして料理人の称号、どんな偶然かね?」


「ほっほっほ。毎日読経している効果でしょうかな?」


「ちっ、狸めが」



 それ以上の追及はない。追及のしようがないことをお互いに解っているからだ。



「とりあえずは今後の方向性だな、私としては料理人以外、薬師や生産性の称号部分は全てカットだ、当然WSAにも報告しない」


「まぁそうだな、知れた所で混乱するだけだ」


「私もそれで構わないわ」



 他の公爵家からも賛成の声がでる。



「大公家も自衛隊もそれで構わないかね?」


「問題ありません、大公様にもそのように伝えておきましょう」


「問題ない。モンスターが食材になるからといった所で何も変わらんだろうからな」(自衛隊)



 どんなにモンスターが食材になろうとも所詮ダンジョンでの手作業だ。積極的に解体を行う者などほぼいないだろう。


 鶏肉だけを取ってみても1人当たりの年間鶏肉消費量だけで14kgもある、アタックバード1匹20kgとしても2人を1年養うことも出来ない。


 1億人をゆうに超える人口に影響を与えられるわけがない。



「ただし、モンスターの肉が流出しないように検疫の方は厳しくお願いします」


「それは当然だな」


「このガスマスクはどうする?」



「名簿によると花籠白雪という生徒ですね。孤児院出身で、探索者になる前は紫外線アレルギーだったとのことで、写真が黒フードなのもそのためです」


「姿から凄く怪しいが、経歴は?」



「特に怪しい所は無いですね、日本人夫婦の間に生まれるも紫外線アレルギーのせいで3歳の頃には捨てられ、以降孤児院で過ごしています」


「怪しい輩との付き合いはなく、むしろ人との付き合いがほぼ無かったそうです。探索者の志望理由は「自由に外を歩きたいから」とのことです」



「あらやだ健気じゃない」


「ほおっておいて問題あるまい、F組が出来る事などたかが知れている」


「今回の要件は以上だ、特に揉め事もなくスムーズに終われたことに感謝する」



 こうして新学期早々の公爵会議は終了した。



…………………………



 会議が終わり、軽くため息をついた南雲家当主はゆっくりと席を立ち部屋を後にする。部屋の前にいたSPが黙って彼に突き従う。


 糾弾された通り、【料理人見習い】の称号は小町よりも先に発見していたのは事実だ。

 

 南雲はこの情報を九龍(くーろん)の1勢力に売ろうとしていた、商談は纏まりかけあと一歩の所まで着ていた。しかし唐突に彼等がNoを突きつけてきた。


 少なからず労力を使ってきた南雲家にとっても許しがたい行為だった。


 そこに来て今回の料理人発見の報告だ、何者かの作為が働いたとしか思えない。私室につき1人の使用人を呼ぶ。



「で、あの件はどうなった?」


「こちらをご覧ください」


 

 そういって見せられたのは一枚の監視カメラの写真だった。写真の中央よりに写る人物に丸印が付いている。しげしげと見るが心当たりはない。



「誰だ?」


「少々お待ちを」


 

 使用人が操作をすると画面に先ほどの写真が現れ、マークされていた人物に焦点が当てられ、加工され正面を向いた画像に直され、予測された頭蓋骨とその輪郭に沿うようにポイントと線が引かれる。


 その線がコピーされこんどは新しい顔が復元されていく。


 出来上がった顔に南雲は驚きの声を上げる。



「村田!? まさか村田(むらた)新次郎(しんじろう)か!?」


「はい、コンピューターによると95%の確率で村田新次郎とのことでした」


「何故あいつが中国にいる?」


「わかりません」


「しかしこの件に関わっているのは紛れもない事実でしょう」



「その証拠にもう1つ」


「まだあるのか」


「今年のダンジョン学園の生徒名簿にありました」


「村田空馬だと……なぜ奴の息子が日華に、学園に入学している? 百合恵はどうした!? 捨てたと言っていただろう!?」


「それがどうやら特待生制度を利用したそうで……すみません、そちらまでチェックしていませんでした」



 南雲の中で点と点が線で繋がった気がした。つまり新次郎が空馬に指示をだし、空馬が白雪達をそそのかした。これ以外に今回の偶然などあり得ない。



「くそっ! だからわしは特待生制度などやるなと反対したのだ! それをあの北条、東郷が賛同しおって……」


「どうしますか?」


「……しばらく泳がせておけ、もしまた空馬になにかさせようとしているなら接触しようとするはずだ、当然百合恵の方もだ新次郎と空馬を繋ぐとしたらあいつ以外にいまい」


「かしこまりました」

「……薬師」(真帆)


「どおりで探索者に効くはずだわ」(茜)


「なんでこれを公開したのかしら?」


「何も考えていないとか?」


「さすがにそれはないでしょう、あなただってポーションの価値知っているでしょう? 見習いには作れずとも、見習いでなくなったら、薬師のその上があったとしたら。普通だったら独占するはずよ」(真帆)


「WSAからの報奨金(ほうしょうきん)目当てとかは?」(茜)


「独占の方がもっと利益得られるとおもうわ」(真帆)


「でも、ポーションが作れたとして、F組の一生徒(いちせいと)に販路って構築できるの?」


「……………………あ”ーーー」


「もう、お母さん、しっかりしてよ」


「そうよね、売れなければ作ったって仕方ないものね」

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