第041話:日曜日
村田空馬:特待生、五十嵐が気に食わない。レベル6:称号【戦士】
上沢、中岡、下田:村田の友人で、同じ特待生
■世界探索者協会:
正式名称 World Seeker Association。ダンジョンの解明のために作成された組織。マップやモンスター、称号の開放条件、スキル等各種ダンジョンに関する情報を纏め管理している。
探索者センターとWSAは別の組織であるため協力はするがWSAから命令できるような権限は無い。ただし探索者センター内にWSAの支部が存在する。
基本的に探索者カードで管理されるお金は日本の銀行が管理しているが、困ったことにWSA内にもスイス銀行が母体となった銀行が存在しており探索者が望めばそれを切り替えることができる(アメリカドル)。
このためWSAの口座を通されるとお金の流れを把握できなくなってしまうのが悩みの種。
加盟国は日本(日華)、アメリカ、ヨーロッパ各国、オーストラリア、カナダ、インド等が参加している、アジアではタイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア。
現在国力的に新情報を享受するだけの国が出来てしまい、提供国が不満を募らせている。ダンジョン素材の共同研究部署も存在するがまともに動いているのかも怪しい。
日曜日の朝6時 今日はいつもの面子だけでなく1年F組のほぼ全員が寮の食堂に揃っていた。
「と、いうわけでO・S・O・U・Z・Iの時間です」(白雪)
「男性陣諸君、君達の役割は庭の草毟りです。かなりの雑草が取れると思うので、一番多く草を毟った方には明日のゴミ収集車の人に、
『これくらい普通ですよね』とか
『あれ、ぼく毟りすぎちゃいました?』とか
『ゴミ収集車の人が引いてるのは少なすぎってことだよな?』と
イキる権利を差し上げましょう、全部1人で毟ったことにしていいよ」(白雪)
「「「いらない! 全然いらない!」」」
「そうかい、じゃぁ浩平にあげる」(白雪)
「せんせーゴミ収集車の人に迷惑かけちゃけないと思いまーす」(加藤)
「じゃぁ迷惑かけない方向でイキるように」(白雪)
「イキってる時点で業務妨害なんだよなぁ」(黒田)
「あと美々さん、悪いけど外から登って屋上の扉開けてくれない? なんか用務員室の鍵棚にないんだよね。誰かが持ち出したきり忘れたのかね」(白雪)
「よかろう。ついでに蔦も切り落としてやる。楓も手伝え」(美々)
「はい! もちろんです!」(楓)
一晩寝て昨日のダメージから回復したせいか、昨日の『寄らば切る』から、『ちょっとご機嫌斜め』程度に回復しているように見える。煙草が無いため機嫌は悪いが。
「箒、雑巾、モップ、ゴミ袋はサービスです、ご自由にお使いください。ちなみに大半は小町さんからの資金提供です」(白雪)
「うちの売り上げは100%皆からだからね」(小町)
転生者の中で現在一番金を持っているのは小町、続いて美々、あとは皆似たようなものだ。
男性陣ほとんど全員が庭の草毟りをしている、ここでも結構レベルの差が出ている。
須藤はもちろんのこと加藤達もそれ程力を込めていないように見えるのに、軽々と根ごと引っこ抜いている。
「僕達は何処の方をやったらいいかな」(五十嵐)
「虫とか気にならないなら、食堂側の方やってくれない? こっちの広い方は俺達でやるから」(加藤)
「2年、3年の方もやるの?」(五十嵐)
「さすがにそこまではやんねーよ、自分達の部分だけだ」(黒田)
ふと寮の方から音がするので見上げて見ると、美々が壁を走って登っていた。
「外から直接って、ああいうことなの?」(五十嵐)
「ああ、スキルだな【壁走り】」(加藤)
「話ていいのか、その……」(五十嵐)
「レアスキルでも何でもなく、ゴブリンから取れるスキルだぞ」(加藤)
「そうなんだ」(五十嵐)
4月の段階でゴブリンを倒している事自体おかしいのだが、そこに気付かない当たり五十嵐達の感覚も大分狂っているようだ。
「それでも他人のスキルを大っぴらに言うものではないと思うが」(柳)
「……確かにそうだな。ごめん、今のは聞かなかったことにしてくれ」(加藤)
(周りがDRD勢だとノリがそっちに引っ張られてしまうな……)(加藤)
屋上に着いて扉の鍵を開けると、そのまま壁面に取り付き周囲の外壁と張り付いている気根を切除する。時に【壁走り】を切り己の体重で、時に紅雀で切り燃やしなが蔦を落としていく。
(だめじゃな、やはりなじまぬ。早々に売り払うとするか)(美々)
数億はする紅雀をただの蔦掃除に使うなど、その刀の価値を知る人間なら卒倒ものだろう。
「なにあの刀」(五十嵐)
「あーあれは……」(加藤)
「加藤! 優も聞くな」(柳)
「う、ごめんつい気になっちゃって」(五十嵐)
しばらく草毟りに精を出していると上級生らしい一団が話しかけてくる。
「お! 一年のくせに草毟りなんてわかってるじゃねーか。ついでにうちらの方も当然やってくれるんだろ」(2年先輩)
「……いいんですね! 本当にいいんですね!? 言質とりましたからね!」(加藤)
「はっ? 何を」(2年先輩)
「おーい、先輩の方もやってくれってよ!」(加藤)
「まじか! よっしゃーーー!!」(黒田)
加藤の対応を見ていた黒田もそれに乗る、ここら辺はDRDでの殴り愛の賜物だろう。それに皆川、長谷川も追従する。
「本当ですか!? いまから嫌だって言ってもだめですからね!」(皆川)
「しゃーーー! 先輩! あざーっす!」(長谷川)
「あ、先輩名前教えてください。何か言われてもあなたが全責任を持つって言ったというんで」(加藤)
「いや、口約束は危険だ! 紙面にして、ちゃんと署名してもらっとけ!」(黒田)
「僕大急ぎで用意してくる!」(長谷川)
「先輩すみませんちょっと待っててくださいね、いやー先輩が声かけてくれてよかった」(加藤)
軽い気持ちで声を掛けた先輩は逆に冷や汗だらだらだ、ただの草毟りのはずだ、それを頼んだだけなはずだ、自分はとんでもないことを頼んだのか? 普通なら嫌な顔をするはずだ。
だのにあの喜びようはなんだ、なんであんなに喜ぶ? 喜ぶ要素なんて一点もないはずだ、おまけに責任だと、さらに書面だと? もしかして草毟りは隠語なのか? 何か隠された意味があるんじゃないか? ありえない方向にへんな考えが周っていく。
「おい黒田! とりあえずひと毟りしちまえ、既成事実作っとこう!」(加藤)
「おう!」(黒田)
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
加藤や黒田の顔から表情が抜け落ちる。
「どうしたんですか先輩、まさか今になって辞めるとか言うんじゃないですよね?」(加藤)
「……」(黒田)
「……」(皆川)
皆川だけは笑っている、逆にその笑顔がとても怖い。ふと別の方向を見ると今までしゃがんでいて見えなかった須藤が立ち上がってこちらを向いている。
「無し! 無しだ! とにかく無し! 行くぞ!」
「もういった?」(長谷川)
手ぶらで長谷川が戻ってくる。
「うん」(皆川)
「うんじゃ再開するかー」(加藤)
「「「ほーい」」」
「……」(五十嵐)
加藤も大概白雪に毒されているなと思う五十嵐だった。
さすがにほぼ全員で掃除した結果か、2時間程度でかなり綺麗になった。地面がボコボコになっているのをレーキを使ってならしている。
「壮観だね」(長谷川)
「そうだな。最初に見たときはどこぞの廃墟かと思ったけど」(黒田)
「まぁそれでも見た目古い建物って感じは変わらないかな」(皆川)
「それでも綺麗なのは良い気持ちのいいことですな」(須藤)
「次回はペンキがけかな」(加藤)
…………………………
「あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!」
村田が大剣を横薙ぎに振るう。切れ味は悪いがその分重量があるため叩きつけるだけでダメージが狙える代物だ。
それに応えるかのように振るわれた大剣はフォレストウルフを吹き飛ばし木に叩きつける。
4層は東西に少し長い長方形の形をしており、最東端中央に3層からの入り口があり、5層への階段は入口と真反対にあたる最西端中央にある。
そのため5層を目指すのならば、入口から西を目指して一直線に進めばいい。
中央を北東から南西へと川が渡っているが、橋もマップ中央にあるためほぼ中央を走って突っ切れば30分程で5層へと辿り着けるだろう。
ハチの巣やフォレストウルフ等障害を乗り越える必要があるが。
セーフルームはMの字を書くように北辺に2つ、南辺に3つ存在する。
5層への階段が真西にあるため最寄りは南西のセーフルームとなる。川も北西から南西に向かって伸びるため南西のセーフルームは水の補給も出来る。
このような構造をしているため北西、南東のエリアは経路から外れている。だが南東にはセーフルーム及び石喰いネズミの屯所があるため訪れる人は多い。先日五十嵐達が転移柱に登録したのもこの南東のセーフルームだ。
逆に北西は屯所もなく空白地帯となっているエリアだ。昔はそこに目をつけ宝箱やレアモンスターが存在するのかと数多くの探索者が訪れ調査したが、伐採ポイントが数か所見つかっただけだった。
残念なことに伐採ポイントなら他にも有り、採れる物も同じなため、今は訪れる探索者のほとんどいない死蔵地帯となっている。
そのような場所で村田は日本刀から持ち替えた大剣を使いフォレストウルフと戦っていた。
いつも一緒にいた3人の特待生達はおらず代わりに居るのは五十嵐に敗れやけ食いしていた村田に話しかけてきた女性2人だ。
しかし、女性達は見ているだけで村田は1人で狼4匹と対峙していた。2人に対して良い格好をしようとしているようにも見えるが、それにしては様子がおかしい。
目は血走り息も荒く、焦点もどこか定まっていないように見える、おまけに筋肉が肥大し至る所で血管が浮き出ている。
前方の狼が獰猛な咆哮をあげながら村田に駆け寄る、村田もそれにつられるように人が発したとは思えない咆哮をあげ狼に駆け寄る。
間合いで言えば狼の方が不利だ、村田の持つのは大剣であり刀身の長さは1m10cmもあり、その長さに耐えられるように剣の幅も12cmとかなり幅もある。
フォレストウルフも前足が発達しているがそれでも指、爪合わせて12cm程度だ。
村田が大剣を叩きつけようとした振り上げたとき、唐突に左肩痛みと重量がかかる。
村田は見事に狼たちの術中にはまっていた、前から駆け寄る狼が声を上げ注意を引き、その間に別の狼が後ろから静かに襲い掛かっていた。
元々逃げる獲物に追いついてかぶりつくのが肉食動物だ、村田が前方に駆けていたとしてそれに余裕で追いつくだけの速度は出せる。
後ろから村田の左肩に圧し掛かった狼がすぐに爪を食い込ませ肩にかぶりつく、勝利を確信した前方の狼も前から噛み付こうと間合いを詰める。
しかし、予想外のことが起きた、村田が全く止まらないのだ。村田は狼よりも獣のような声を上げ左肩に狼を噛み付かせたまま、痛みなど感じないがごとく前の狼の頭に向かって大剣を力の限り振り下ろした。
4層からのモンスターは銃撃が効果がほぼ無くなるに加えて、近接攻撃にも頑丈になる。要因については調査しているが良く分かってはいない。
『BPがあるのでは?』と推測が立てらてはいるが、探索者は銃撃に対して無敵ではなくダメージを負うため確定には至っていない。
要因は何であれ3層に比べて比類なく頑丈なことは確かで、最初に吹っ飛ばされた狼も、今しがた大剣を叩きつけられた狼もまだ死んではいない。
だが、切れ味は良く無いとはいえ1mを超える刀身にかなり肉厚な幅を持つ大剣の恐るべきはその重量だ、それを十全に生かして叩きつけられた攻撃は決して軽くない。
死んではいないものの狼は頭蓋を砕かれ虫の息であり戦線復帰は望めないであろう、残り3匹。
左肩を噛まれている村田に対し、自由に動ける2匹の内一方が右から村田に対し間合いを詰めるべく駆け寄る、それと同時にもう片方も木の幹に乗り上げる。
発達した前足で体重を支えて後ろ足2つで勢い良く蹴り、獰猛な咆哮を上げながら一直線に飛翔する。
しかし、上下からの同時攻撃に村田は躱す素振りもない。右腕に噛み付かれてもそんなものは気にもとめず、上から飛び掛かる狼に対して大剣を突き出す。
狼はそのまま大きく開けた口から刀身を無理に飲み込まされて内蔵を蹂躙され絶命する。
貫かれた狼の死骸をそのままに右腕を強引に振り回して噛み付いた狼を強引に振りほどくとそのまま大剣で横薙ぎにする。
さらには左肩に噛み付いていた狼を右手で鷲掴みにし己が身が引きちぎれるのを構わずに引き剥すと片手で高く振り上げ、そのまま地面に叩きつけ踏みつける。
逆手に持った大剣の先端を首に向けてその重量を落とす。先端が地面にめり込んだ大剣を引き抜くと、木に叩きつけられ、いまだ立てずにいる狼の腹を死ぬまで執拗に蹴り散らかした。
蹴られる度に狼が悲壮の鳴き声を上げられるがそんなものに耳を傾ける素振りもない。
残ったのは頭蓋が割られ死に瀕した狼の荒い呼吸音のみ。それも破砕音によってかき消され残ったのは、村田の荒い息づかいだけだった。
「いいわねーあの子αⅠ型飲むために生まれて来たような子ね」
村田のダンジョンカードでBPの減少とその回復量を見ながら微笑みを浮かべレポートを書いている。彼女の名は沢渡麗華、鵺と呼ばれる組織の一員である。
「これならβ型も効果が期待できそうね」
対するもう一方も村田の戦い方、その様子をタブレットに書いている。彼女もまた鵺の一員であり、名を根岸黒羽と言う。
彼女達はベッドの上で言葉巧みに状況を聞き出し五十嵐に負け悔しがる村田を特訓に誘ったのだ、最初訝しむ村田だったが、彼女達のサービスで籠絡されまんまと探索者カードを貸してしまった。
探索者センター内にあるダンジョン入口で探索者たちの入場記録を取っていることは探索者センターが公表している。
ダンジョンは命がけの場所であり生存確認のためにいつダンジョンに入ったのかは重要な情報だから当然だ。
通常ダンジョンに挑む際、3泊以上潜る場合は探索者センターに対し計画を提出する必要がある、これを怠ると死亡とみなされ資産が売却されてしまう。
だが、日華として国が分かれていなかった頃は個人で潜ることは認められておらず、さらに貴族達でさえ毎回探索予定書なるものが求められていた昔に比べれば大分楽になったといえるだろう。
しかし、セーフルームに入ったときにも探索者カードからログを取得しているのは秘密であり、限られた人間しか知らされていない。
だが、秘密というものはいずれ漏れるものである。鵺や郭公がここまで暗躍出来たのもこの秘密を知っているからである。
今頃村田の探索者カードを持った一員が3層あたりをうろついて偽の記録を作成していることだろう。
ダンジョンカードは探索者カードに特殊な機材で外れないように留められているが、破壊しても戻る性質を利用して無理に取り外すことが出来る。
探索者センター側も情報漏洩に薄々気付いてはいるが、どの道対処のしようが無い。
セーフルームで細かく探索者の記録を取っている事を大々的に公開するわけにはいかないし、怪しい程度で拘束するわけにもいかない。そのために宮古に頼むなどの周りくどいことをしているのだ。
「まだ焦っちゃだめよ。まずは狂戦士の称号を取らせてからね」(麗華)
「そうね、それに壊れちゃう前にもっと楽しみたいし。あの薬入ってると激しくなっていいのよねー」(黒羽)
「あなたも好きねー」(麗華)
「あなただって乗ってくると私より激しいじゃない」(黒羽)
…………………………
灰皿を下にして、持ち手で反対の手を叩いて、灰を落とす。
「すこしコクが薄いの、じゃがさっきのよりは酸味がなくてよいな」
「へー若いのになかなか言うじゃないか、じゃこっちはどうだい」
すでに2時間以上タバコ屋の婆さんと試飲しては意見を言い合い話し込んでいる、初めは美々の見た目から『ガキはさっさと帰りな』という対応だった。
しかし、煙草の銘柄の知識、年期が入った煙管の扱いから話始めてからはあーだこーだとかなりのめり込んでいる。
美々の煙草好きは口調と共に源十郎と一緒に暮らしている内にうつったものだ。吸い方の癖も源十郎に酷似している。
そんな美々を見ながらタバコ屋の婆さんも昔を思い出していた、公爵家に生まれながら貴族平民関係なく接し共にダンジョンに潜った人。
何も言わずにダンジョンに潜り戻らなかった人。
「あんたはその吸い方を誰から習ったんだい?」
「師匠じゃ」
「それは陸でもない師匠だね。普通は止めるもんさ」
「戦って死ぬことしか考えて無い阿呆じゃ、残される者の事をちっとも考えておらん。苦労したものよ」
「そいつぁ大馬鹿もんだね、私もそんな馬鹿を知ってるよ。そんな馬鹿が好きだったブレンドがあるが飲んでみるかい? まったく売れなくて残ってるんだよ」
「もらおう」
嘘だ、煙草好きのそいつが戻ってきたときのために残しておいた物だった、しかし不思議と彼女になら売ってもよいと思った。
「死ぬんじゃないよ」
そんな呟きが聞こえたかどうかは定かではないが、煙草が手に入り美々は上機嫌で帰っていく。楓は最初から最後まで美々の後ろに黙ってついていた。憑いていたように見えたかもしれない。
(さて、家に帰ったらブレンドのレシピを探さないとね。何処にしまったもんだか)
…………………………
「買い取れない、ですか?」(白雪)
「は、はい。その、ですね、あまりに高額でオークションでないと買い手がつかないんですよ」(茜)
鑑定眼鏡で真偽を判断していた茜が答える。掃除が終わり、探索者センターに向かう白雪に美々からついでに売っといてくれと投げ渡されたものだ。
(偽物だったら楽だったんですけどね~~~やっぱり本物だった~~~)(茜)
昨日の中継で紅雀については特に触れられていない、紅雀のドロップ報告など20年に一度かというレベルなので一般の探索者には知名度が極端に低いのだ。
逆に貴族からはF組の人間が取れるわけない、よって偽物であり、コメントすることは無いというスタンスだ。と、いうよりほとんどの貴族は偽物であると本気で思っている。
誰も反応しないためテレビ等で取り上げられることもない、奈々美はよくこのようなマイナー武器を知っていたと感心するレベルだ。
逆にマニアが騒いだところで対岸の火事だ、階層エレベーターの開放や料理人の称号に比べれば、「強い武器を誰それが持っていた」という情報は何の影響も自身に及ぼさないからだ。
もし盗まれたとする人間が居れば別だがそのように騒ぐ人もいなかった、仮にいたとて探索者は基本自己責任だし、物を盗まれるまぬけ貴族という不名誉なレッテルが貼られるだけだ。
「じゃ、オークションに出すのは?」(加藤)
「オークションに出品するためには子爵以上の爵位が必要でして……どなたか華族に知り合いはいますか?」(茜)
(遠藤美々本人が来なくて良かった~~~。元御庭番頭目のお墨付きなんて爆弾と話すようなもんじゃないですか~)(茜)
基本的にダンジョン学園の生徒は貴族と繋がりがある。A~D組はもちろん貴族の子息達だ、本人はまだにしろ親は当然爵位を持っている。
そしてE組もまた貴族家で働く人達の子息達だ、E組に入るには寄り親である貴族の身元証明書が必要となる。
混じりけ無い平民はF組だけだ。逆を言えば元貴族であってもF組になるということは、それを貴族の縁者と認めないことを意味する。
「じゃぁどうしろと? ゴミ箱?」(白雪)
「い、いえ、さすがにそれは……今までF組の生徒がそういったもの手に入れた前例が無いため指標を示すことも出来ず恐縮なのですが……」(茜)
「つまりどうしろと?」(加藤)
「可能であれば縁のある華族の方なんかに献上するのがいいと思います」(茜)
「いるのか?」(黒田)
「知らない」(加藤)
「そういや生徒会長と会ったとか言ってたね」(白雪)
「ええと、現生徒会長の宮古様は天皇家の方であるので日本、日華どちらの国民からも物を受け取ることは無いと思います」(茜)
「「「あー」」」
「まぁそのまま美々ちゃんに返せばいいでしょ、買い取ってもらえなかったって」(白雪)
「そうだね」(加藤)
「それともう一つ」(白雪)
「まだあるんですか!?」(茜)
「というかこっちが本題」(白雪)
「なんでしょうか……?」(茜)
「隠しエリア発見しちった」(白雪)
「……えーと?」
「隠しエリア」
「はぁ…………はぁ!? どこで!?」
「3層」
「はいぃ!?」
日曜午後 小ダンジョン内: (上沢、中岡、下田:村田と同じ特待生)
「おーい、こっちきてみろよ」(上沢)
「どうしたー?」(下田)
上沢の下へ行くとそこには宝箱があった。
「お、すっげー。早く開けようぜ」(下田)
「そうせかすなって、はい御開帳~」(上沢)
「お、ポーション! 3つも」(中岡)
「よっしゃ、30万ゲットー」(下田)
「村田最近付き合い悪いよなー」(上沢)
「そーそー、あの日も帰ってからなんか上の空だったし、風俗でもいったのかね?」(中岡)
「俺らも行くかー金も入ったし」(上沢)
「いいねー」(中岡)
「年齢的にいいのかよ? 断られるんじゃね?」(下田)
「煙管ふかしてるやつとか酒のんでるのいるからなー、わんちゃんいけね?」(上沢)
「確かに」(下田)
「そーそー」(中岡)




