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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第1章:転生者が多すぎる
4/84

第004話:ラスボスアーリーアクセス

 五十嵐(いがらし)(ゆう):ゲーム中の主人公。仲間思い。

 吉野(よしの)織姫(おりひめ):ヒロインの1人、世話焼き体質であり、五十嵐の幼馴染ポジ


 ■インスタントエリア:

 一時的に作られるクローンエリア。プレイヤーの集中を緩和するために作成される。


 ◇β鯖Iー91層通せんぼ事件◇

 ■事件概要:91層~95層開放初日91層の入り口付近が1人のプレイヤーによって封鎖された。


 ■首謀者:リリー(美々のDRDでの名前)


 ■事件詳細・経緯:

 DRDサービス開始から6年、ついに91~95層の実装がアナウンスされた。


 90層までの開放から実に2年前だったためプレイヤーからは絶望視されていたが、この朗報に多くのプレイヤーが沸いた。


 開放当日はα、β両サーバー共91層入口の広間は朝からお祭り状態であった。


 混雑回避のため1000人毎にインスタントエリアが作られ分割され、αサーバーで24個、β鯖で10個ものエリアが作られた。


 事件はβ鯖I(べーたさばいち)で発生する。



 開門2時間前:一部のお祭り好き(愉快犯)による祭りという名の無差別攻撃が14のインスタントエリアで発生。これについては犯行声明的な掲示板があったため予測済。


 開門1時間前:ほぼ全てのお祭り騒ぎが沈静化。死亡多数でリポップ祭りに。β鯖I含め4つのエリアで戦闘続行中。


 開門30分前:β鯖I以外のエリアが沈静化。


 開門5分前:β鯖Iの残りプレイヤー数が100人未満になる。掲示板にスレッドが乱立し始める。


 開門0分:運営より開門メッセージが報じられる。門の前にプレイヤーが集中する。大多数はまだ見ぬ光景に夢と希望に胸を膨らませ、ごく少数は地獄からの生還を求めて……。


 開門から5分:β鯖I生存者……1名。



 ■首謀者について:

 リリーは、来歴は浅いが廃プレイヤーと見られている。素手で時折狩場に現れてはそこにいるプレイヤーを皆殺しにして去っていく正体不明の1匹狼のプレイヤーキラー。


 彼女はPKでありPKKであり、PKKKでもあり全プレイヤーの敵であった。


 元々一部では名の知れたプレイヤーであったが、この偉業(?)を称え「ラスボス・アーリーアクセス」の2つ名がプレイヤー達から非公式に与えられた。


 通常PKは嫌われるものだが、彼女は高レベルプレイヤー以外襲わないことから好意的に取られる面もある。


 また容姿が幼女にしか見えないことから、以下の非公式団体が存在した。


「リリーさんに折られ隊(できれば包み込むように)」

「リリーさんに踏まれ隊(出来ればパンストで。白黒は問わない!)」


「さて、お互い自己紹介が終わったところで、今後どうしよっか? 元の世界へ帰る方法探す?」(加藤)


「う~ん、なんでか帰りたいって気がしないんだよな~、家族も友達もいるはずなんだが……」(黒田)


「自分は少し悩んでいます、悩んだ所でどうなるわけでもないのですが」(須藤)


「わしはどうでもよい。……いやこちらの方が好ましくはあるかの」(美々)


「お姉さまがいるなら私も当然います」(楓)


「ぼ、僕も……帰る気は……ないかな」(七森)


「健兄いは家族以外との付き合いが薄っぺらだからそんなこと言えるにゃ」(ミーナ)



 従妹からの容赦ないクリティカル(致命的)アタック(一撃)に胸をおさえる七森。


 

「ありがちでいえば卒業と同時に帰れるって感じだろうけど、3年も経ってから帰されたって困るよね」(白雪)


「まず行方不明扱いっす。失踪宣言されて帰ってこられると逆に困られるパティーンっす」(陽子)


「犯人がいない以上誘拐とも言えませんからね。失踪癖ととらえられたら再就職は絶望的でしょう」(千鶴)


 

「これから面接を始めます。この空白の3年間は何をやっていましたか?」(皆川)


「異世界でダンジョン攻略してました。刃物の扱いなら任せてください! キリッ」(長谷川)


「素晴らしい! ぜひわが社へ!」(皆川)


「どんな会社だよ! 絶対やばい会社だよそれ!!」(加藤)


 

「タブンですが、帰る気が薄いのはDRDの世界が現代日本だからではないでショーか」(メリッサ)


「ふむ、生活環境がほぼ同じなら転移した気がせず帰りたいという気分が起きないと」(千鶴)


「あ~なるほど、なんか納得。メリッサさんはどうなの? ホームシックになったりしてる?」(長谷川)


「No、私は盲目でしたから記憶の殆どはDRD世界しかありませーん。つまーり私にとってーはここが私の世界でーす」(メリッサ)


「あ~、うん。なるほど」(長谷川)

 

「まぁDRD挨拶が現実でも引き継がれてたらなんとしても帰ろうとしたけどね」(皆川)


「「「わかる!」」」


「あれ、社長の息子がごり押したらしいっすよ。本人的には最高に面白いらしいっす。直したかったらしいっすけど、もう修正箇所が多すぎてどうにもならなかったとか」(陽子)


「まじかよ、社長の息子最低だな」(加藤)



「まぁこの世界で2度目の人生やり直した方がいいってことね。といっても新しい生き方を選べるわけでもないし、いえ、選びたくないわね」(小町)


「私はどうすべきでしょうか、ダンジョン探索なんかせずに普通に2度目を暮らすという選択肢はあるのでしょうか?」(千鶴)



「難しいんじゃないかなぁ? この世界が本当にDRDと一緒なら一番の問題は、学費を自分で稼がないといけないことになるんだよね」(白雪)


「そうでした、その問題がありましたね」(千鶴)


「説明すると、学費を払えなかった場合『ブラック貴族』に強制就職させられてしまうというエンディングになるっす。回避するための学費総額は驚きの300万っす!」(陽子)



「さっ……!!」(小町)


「高っ!」(長谷川)


「一応救済措置はあるけどねー」(白雪)


「私立高校でも同じ程度の金額は掛かりますが高いですよね」(千鶴)



「てかブラック貴族って何? 現代日本でしょここ」(長谷川)


「日本なので貴族ではなく『華族』です」(千鶴)


「そういうこと言いたいんじゃなくて……」(長谷川)


「なんか知らないけど貴族がいて、領地の代わりに会社を経営してるって感じなんだよね」(加藤)



「なんか開発元は中世ヨーロッパ風世界でやる予定だったみたいっすけど、グラフィック担当してる会社が中世ヨーロッパの街並み再現が難航して」(陽子)


「途中で無理やりグラフィックのある現代日本にあわせてシナリオを方向転換したみたいっす」(陽子)


「元々自衛隊に訓練用素材を提供していた会社でしたっけ。実際DRDを始めたときは妙な既視感を覚えたものです」(須藤)


「自衛隊以外にも観光庁に日本の名所フルダイブ版とかも提供してたね。なんか観光庁の依頼とDRDの開発が被ったとかで素材を作ってる人が病んで辞めたとか聞いたな」(加藤)


「うわぁ」(陽子)


「フルダイブモデルの作製は大変だもんね。そういう仕事してたからよくわるよ」(長谷川)


「ダンジョンの中身はその観光庁の仕事で作成したものを改良して用意できたけど中世ヨーロッパの街並が用意出来なかったみたいなんだよね」(加藤)


「なるほどねー、確かに考えてみれば中世ヨーロッパの街並って使うことなんてないか」(長谷川)


「アミューズメントパークの仕事くらいしか思いつかないっすね」(陽子)



「話戻していいか?」(黒田)


「どぞっす」(陽子)


「当面の目標としては300万円を稼ぐことになる。それも各自がだ、全員分だとえーと」(黒田)


「4200万ですね」(千鶴)


「総額聞くとすごい額だな。家買えるわ」(加藤)



「なんかネガティブな理由デスネー。ポジティブな目標はナイですかー?」(メリッサ)


「とはいってもだね。生涯を掛けた目的を見つけられる人なんてごくわずかなものだよ。大抵の人は普通に生きて普通に死ぬものさ」(白雪)

 

「だったら最下層(100層)を目指してみるか?」(黒田)


「それいいにゃ、ゲームでは実装されなかったラスボスに会ってみたいにゃ」(ミーナ)


「ラスボスならそこに……」(皆川:小声)


「確かに最下層には行ってみたいな。6年経っていまだ未実装だったとか運営さぼりすぎ」(加藤)


「現実でも未実装だったりして」(白雪)


「不吉なこと言うなよ」(加藤)



「ねね、DRDに銃とかあるの?」(長谷川)


「No、残念ですが存在しませーん。クロスボゥすらありませんでした」(メリッサ)


「まじかー」(長谷川)

 

「なんかフルダイブシステム自体が弾道計算とか苦手って話だったっすよ」(陽子)

 

「どの道魔法がある世界だとウォーターシールド一発で役立たずだしいいじゃん」(白雪)


「「……ぐう」」(長谷川・メリッサ)



 基本的な銃弾は、物体に初めて命中したときに大半のエネルギーを使ってしまうため、土壁はもちろん、水壁すら当たるとそこで威力が激減してしまう。


 さらに流体だとそこで進行方向が曲げられてしまうので、徹甲弾のように先を尖らせ、かつバトルライフル並みに重い弾が必要になってくる。


 もし魔法が使える世界で銃を相手に戦うなら水壁の奥から槍で刺そう。



「まぁ何にせよまずはレベルだな」(黒田)


「そうだな、レベルを上げないことには最下層も金稼ぎも始まらないな」(加藤)


「RPGっぽいね」(長谷川)


「RPG世界だしな」(皆川)



「とりあえずの目標はレベル5だね」(白雪)


「あ~確かレベル5でジョブが選択できるんだっけ?」(長谷川)


「そうだね」(皆川)


「DRDだと『ジョブ』じゃなくて『称号』だねジョブみたいなものだけど」(加藤)


「まぁ戦士見習いが俺の仕事とか言われてもな」(黒田)


「……万年見習い」(七森)


「また話が脱線してますよ」(千鶴)


 

「セオリー通りだと突撃ウサギからゴブリンか石喰いネズミかね?」(加藤)


「……僕、どれも無理」(七森)


「まぁ健兄いは無理にゃ、レベルも私が手伝ってたにゃ」(ミーナ)


「私も無理っす、ウネはだめっすか? その場から動かないから楽に狩れるって聞いたっすよ」(陽子)



「ウネか~存在は知ってるけど、あれ戦ったことないんだよな」(加藤)


「俺もだな。ゴブリンでちょっと上げたらそのままネズミって感じだし」(黒田)


「私としてはウネに賛成かな、他のモンスターは多分ライバルがいると思うんだよ」(白雪)


「あーそうかシナリオモードでも、マルチと同じようにライバルがいる可能性があるのか」(加藤)

 

「どゆこと?」(長谷川)



「DRDにはストーリーとマルチプレイがあって、ストーリーモードは他のプレイヤーがいないからモンスターを独り占めできたんだよ。代わりに21層までしか潜れないけど」(皆川)


「あーなるほど、現実だとこちらの人達も当然ダンジョンに潜るから、獲物の取り合いとかが発生するってことね」(長谷川)


「そうそう、でもウネ部屋は隠しエリアみたいになってるから、空いてる可能性が高いってわけだ」(皆川)


「なるほどねー」(長谷川)



「誰か詳しい行き方知ってる? 俺は大体の方角しか知らない」(加藤)



 ウネの部屋は後になって発見されたため加藤達古いプレイヤーは皆そのレベル帯を突破した後だった。



「ノープロブレム、私が知ってマース」(メリッサ)


「おお、じゃぁ第一目標はウネって感じで」(加藤)


「「「「はーい」」」」



「ストーリー関係はどうします?」(千鶴)


「どうしようもないんじゃないかな」(加藤)


「どんなストーリーか知らないけどこんだけ異世界人? がいるなら破綻(はたん)不可避だと思う」(長谷川)


 

「自分の作った武器を推しに装備してもらう夢が現実に……」(七森)


「確かに思いれのある人だとHelpしてしまいそーです」(メリッサ)


「だが五十嵐、てめーはだめだ!」(白雪)


「そこまで毛嫌いしなくても」(陽子)

 

「なんてゆーか仲間思いってなってるけど、逆にいえば信頼してないってことじゃん。あと自分より弱いって無自覚に見下してるし」(白雪)


「まぁ主人公って、おおにしてそういうもんだけどね」(皆川)

 

「まぁリアルでも同じ性格と決まったわけじゃないけど注視はしてしまうな、リアルでどんなルート進むのか気になるし」(加藤)

 

「とりま今後の方針は、レベルを上げつつ五十嵐君を影から観察する感じで~」(白雪)


「「「「は~い」」」」



「やることはあってるけど言い方がなぁ……そういえば特待生なんてシナリオにあった?」(加藤)


「あ~さっきの村田だっけ?」(白雪)


「そうそれ」(加藤)


「失礼な奴にゃん!」(ミーナ)


「多分無いと思う。自称特待生でお仲間(プレイヤー)かもと思ったけど、たとえ転生者であってもあれとは付き合いたくないね」(白雪)



 こくこくと頷く七森と陽子。

 

 その後雑談に花が咲く。やはり皆もいつ、何故DRDに転移したかは誰もわからなかった。


 全員正確に日付を覚えている人はおらず、昨日何食べたか思い出せないみたいでもやもやすると言っていた。「いや文字通り昨日食べたものも思い出せないっす」(陽子)


 

「うんじゃ、自己紹介も済んだことだし帰るか」(加藤)


「「「おっけ~」」」

 

「……ところで俺ら金もってる?」(黒田)


「あ……」(加藤)



 あわてて服をまさぐると各自むき出しで1万円札を1枚だけもっていた。



「あぶねぇ、開始早々無銭飲食とかまじ笑えないところだった……」(黒田)



 冷や汗をかきつつも会計を済ませて寮へ向かって移動する。


 

「結構色々あるな~スーパーに、ショッピングモールにあれは……スーパー銭湯ってやつか」(皆川)


「でも見た感じは同じだな」(黒田)


「同じ時代の日本だしな~」(加藤)


「弁当百貨店……ってなんすか?」(陽子)


「そのままじゃね? 多分」(黒田)


「道行く人もあんまり変わんないな。もっとフルアーマーの人とか魔法使い~って感じの人とかいると思ったけど」(長谷川)


「でも帯剣している人は多いね」(加藤)


「や~この恰好は目立かもって思ったけどそんなことなかったね~」(白雪)


「「「……」」」



 白雪の恰好は帯剣なんかより、よほど怪しいと思うのだが、体質によるもので好きでやっている恰好ではないため、突っ込みずらい。

 

 本人の性格上好きでやりそうではあるが。


 

「ダンジョンはいつからあるのでしょうか? 昔からあるのならもっと変わっていてもいいのですが……」(千鶴)


「設定だと1950年っす」(陽子)


「戦後すぐですか……ダンジョンの素材はそんなに影響を起こさなかった、ということでしょうか?」(千鶴)



「よくある設定だとダンジョンから未知のエネルギー原が~とかありそうなんだけど、ないんだ」(長谷川)


「モンスターが共通でドロップする中に魔石とかあるんだけど、エネルギーとしては使えなかったのかな?」(皆川)

 

「というかそこまで考えてないと思うっす、元々中世ヨーロッパ風世界でやる予定だったすから。電気とかないっす」(陽子)


「あったとしても採集は人力でしょ、それで日本の電力賄えるとかナンセンスだよ。最低でも核燃料の数千倍の効率は必要だろうね」(白雪)


 

 話をしながら歩いていくと一際大きな建物が目に入る。



 「あれが探索者センターか」(加藤)


 ■PK:

 プレイヤーキラー。モンスターでなくプレイヤーを殺すことを目的としたプレイヤー。プレイヤーを殺すため基本的に一般のプレイヤーより装備等が良い。

 

 ■PKK:

 プレイヤーキラーキラー。PKを殺すことを目的とした賞金稼ぎ的なプレイヤー。PKが強いのでそれ以上の装備等で挑むプレイヤー、いわゆる正義の味方。


 ■PKKK:

 プレイヤーキラーキラーキラー。PKKを殺すことを目的としたプレイヤー、いわゆる俺より強い奴に会いに行く。基本PKはしない。また、PKKKK以降は存在しない、PKKと同じだから。


 ■レベル、経験値:

 RPGの用語。モンスターを倒すと経験値というポイントを貰え、経験値の値が一定を超えるとレベルが上がる。レベルが上がると身体能力が強化される。ちなみにDRDは身体能力が徐々に上がり一定水準を超えるとレベルが上がる。 



 お読みいただきありがとうございます。拙い文章ですが次話も楽しみにして頂ければ幸いです。よろしければ、ブックマーク、評価、感想なんかもお願いします。

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