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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第1章:転生者が多すぎる
30/102

第030話:美々と生徒会長

 冬川真帆(ふゆかわまほ) :探索者センター センター長  初出:第20話


 ■探索者ルール:


 探索者が非探索者を攻撃するとダメージが全て自分に返る。非探索者に悪意があった場合はルール適応外となる場合もある。


 ロスト状態:


 探索者はHPが0になってもロスト状態となり生きながらえる。ロスト状態になってから3分の間は無敵かつ、モンスターも感知されなくなる。


 但し1週間探索者になる前の状態に戻り、スキルもつかえなくなる。ロスト状態で死ぬと灰のようになって本当に死亡する。



 ■メリッサ・オーランド:


 アメリカ人の父親と日本人の母親から生まれたハーフの女性。20歳のときに事故により両目の視力を失う。


 彼女の夢は翻訳の仕事をしながら日本に移住することだったが、それが絶たれることとなってしまった。


 ショックから自暴自棄になっていたが、医者から視覚に頼らずに見ることができるフルダイブシステムを紹介される。


 以降フルダイブ内で翻訳の仕事に着き完全にとはいかないが元来の明るさを取り戻す。


 またこの頃VR日本旅行というボルテクス(第026話)向けのアプリケーションが流行っており、メリッサもそれが大好きだった。


 そのせいかDRDでは戦闘そっちのけで絶景スポット探しに傾倒する。逆に傾倒しすぎてソロ戦闘技術が知らず知らずの内に上昇していた。

 

 母親はアメリカで日本語学校の先生をしているためかなり流暢に日本語が話せる。しかし、アメリカ人はカタコトで話す方が萌える! と母の教えからそれを護っている。

 東京大ダンジョン3層 加藤達がウネと戦っている頃。



「なんで私達がこんなことしなきゃいけないんですかねー?」(清美)


「能力の無い者など見捨ててしまえばいいのです」(葵)


「……そう言うな、これも生徒会長の務めだ」(宮古)



 その日ダンジョン学園の生徒会長である2年の宮古(みやこ)は同じく2年の山下(やました)清美(きよみ)河中(かわなか)(あおい)と共に3層へと降りて来ていた。


 ゴブリンは推定レベル5のモンスター、ゴブリンソルジャーもレベル8であり、既にレベル11に到達している宮古達にとって脅威ではない。



「本当にこれ生徒会長が担う務めなんですかねー? 真帆様が自分で調べればいいんですよー」(清美)


「F組など生涯小ダンジョンに潜っていれば良いのです」(葵)


「………」(宮古)



 宮古は天皇直系の血筋で皇族であり、日本(・・)の貴族である。通常貴族は日本と日華両方の国籍を持つが、天皇家は日本のみの貴族であり学園には留学という形を取っている。


 DRDではヒロインの1人でもある。なお、清美、葵はゲーム上では存在していない。

 

 また、日華共和国は日本の属国である、日華の最高責任者は公爵家であり、天皇は公爵より上の大公だ。


 天皇家の子息、息女は必ず生徒会長を務めるならわしとなっている。そのため宮古も例に漏れず1年の9月頃から生徒会長を務めている。



 そのような宮古の下に探索者センターのセンター長である冬川(ふゆかわ)真帆(まほ)から依頼が届いたのだ、初日から3層に潜ったパーティがいるからどのような意図か探ってくれというものだ。


 実際今日も3層に向かったと報告があった、しかも新しい人(愛宮姉妹)を連れて。



(なんで私がこんなことしなきゃいけないのか、これも4女の宿命ってやつなんですかね。しかも相方は北条だし。宮古様の手前あまり表には出来ませんが)(清美)

 

(やってられません、モンスターを倒すことこそ最大の役目ではないですか。しかも西城に名を連ねる者と一緒とは、とはいえ宮古様の前です、険悪な雰囲気を出すわけにはいきません)(葵)



「いったいどんな馬鹿なんですかねー? ひよっこなんて、うさぎ追ってる時期でしょうに」(清美)


「己が力を過信した馬鹿なんぞの尻ぬぐいは生徒会長の役目ではありません」(葵)


「………」(宮古)



 清美の言い分も尤もである、五十嵐や加藤達が異常なだけで一般的なF組は2層の突撃ウサギがメインの獲物でありこの時期は占有していられる時期だ。


 E組も貴族ではないが彼等は貴族の従者の子息であり民間学校から小ダンジョンに入っているため最初からそれなりのレベルはある。

 

 当然葵の言うことも正しく、レベル1からゴブリンに挑むのは無謀なことだ。



 本来であれば彼等F組の生徒はまず小ダンジョンから行かせるべきだし、元々はそのような予定だった。


 貴族階級は大ダンジョン、非貴族階級は小ダンジョンそう住み分けていた、しかしそうもいかなくなった。



 事の始まりは1971年頃から始まった第2次ベビーブームだ、大ダンジョンの危険度の進行は予測を多少上回った程度だったが、小ダンジョンの発生が大きく高まった。


 小ダンジョンも(れっき)としたダンジョンであり探索者だけしか入ることは出来ず、探索者になるための水晶も当然設置されている。


 そのため監視が間に合わなくなり管理されていない探索者が複数生まれることになってしまった。


 原因としてGHQに封鎖されていた頃はダンジョンに対して恐怖と忌諱感(きいかん)があった。


 しかし、貴族が騎士団を募集する際にテレビでその活躍を無駄に華々しく放映したため、逆に憧れ(あこがれ)を持つ者が増えてしまったことが理由の1つに挙げられる。



 だが、貴族も騎士団なしでは手が足りないため難しい所でもある。いっそ全ての国民を探索者にすべきとの意見を出した学者もいたが却下されている。


 確かに探索者になればロストルールがあるため即死もなくなるし、病気とは無縁の状態にもなれる。



 しかし、探索者となりダンジョンという目の届かない所で死なれると死亡、行方不明の判断が出来なくなるため問題が起きる。

 

 保険、遺産相続、人口、税収etc。探索者以外はダンジョンに入れないという事実がそれらの担保となるのだ。



 また防衛の問題もある、探索者ルールにより探索者は非探索者に攻撃出来ない。このルールがあるおかげで他の国からの侵略を防げているのだ。


 兵器に有効無効かは分からないが、分からないからこそ侵略が出来なくなるからだ。




 話を戻そう、問題となったのは管理されていない探索者をどうするかだった、貴族にも予算というものがある、それに身辺調査も充分行われていない。


 問題が起きたときに責任を取らされるのは貴族自身だ。



 さらにそれら野良探索者と呼ばれる彼等の一部が事件を起こしたこともあり、尚の事自身の騎士団に入れることを拒んだ。


 また、探索者ルールにより人的被害は少なかったが、建設物への被害が大きい事もあり探索者が隣人であること嫌悪する人まで増えてしまった。



 この問題を解決すべく野良探索者のために民間学校を作成を許可し、彼等の受け皿にさせた。


 基本的に手が足りなくなった子ダンジョンの相手をさせ、さらにモチベーションを上げるために攻略数に応じて大ダンジョンへの挑戦権を与えるようにした。



 また、貴族としても武力を整えるためにダンジョン学園を設立する事となった。これには自身の攻略が子供達の成長値の増加に繋がることが発覚したのが大きい。


 当然の事ながら民間学校との差別化のために格を持たさなければならない。


 しかし、まだ日華として独立していなかったため、どこかの報道機関により日本の税金で貴族のための学校が建てられたと虚偽の報道がなされてしまった。


 野良探索者の事件から探索者全体に非難の目が寄せられていたこともあり公平性を保つためにF組を作らざるを得なくなった。



 だが、思った以上に民間学校への入学希望者が多く、貴族の従者のためのE組にまで小ダンジョンを与えてしまった結果、F組のための小ダンジョンが足りなくなってしまった。


 また、ベビーブームも終わり子ダンジョンの発生数も落ち着いたため現在までその状態が続いている。



「宮古様ーもう帰りましょうよー、3層なんて誰もいませんってー」(清美)


「そういうな、さすがに真帆の要請を袖にするわけにはいかないだろう」(宮古)


 

 そうは言ったものの、宮古からしても気にしすぎだと思う。今回の件は暗に探索者にも効果のある麻薬をばらまく組織の調査の一環と思われる、でなければこんなことで宮古に依頼をすることは無い。


 しかし、今まで尻尾はおろか毛1本捉えられていない組織だ、こんな分かりやすく無意味な事をするとは思えない。



 とりあえず2層で戦っているF組生徒に軽く聞いてみたが、やはり加藤? 花籠? を中心としたグループは目立つようだ。


 ただ、悪い噂は聞こえてこない、変な人だけど悪い人ではないという認識のようだ。


 後ろめたい人間は人づき合いを避けることが多い少なくとも積極的には関わらないだろう、やはりそんな組織とは無関係だとあらためて認識する。



 中程まで進んだ所で人影を見かける、すぐにゴブリン部屋へ消えてしまったためよく見えなかった、それでも宮古は走りだした。


 宮古は2本の槍を背負っている、小物用、閉所用の短槍、中物用の短槍より少し長い銀杏穂槍(ぎんなんほやり)だ。


 本来はさらに長い千鳥十文字槍ちどりじゅうもんじやりを背負うが今回は3層までなので2本しか持ってきていない。



「おいっ! 大丈夫か!?」(宮古)



 短槍を構えて小部屋に入る。全力疾走しながらも体勢は安定しており、すぐにでも戦闘できるよう整えているのはさすが天皇家と言えるだろう。


 しかし、彼女の目に飛び込んできた光景は小さな少女が無残に殺されている光景でも、苦戦しながらも善戦しているものでもなかった。


 蹂躙だった、赤毛の小さな少女がゴブリンソルジャー含めた5体のゴブリンを蹂躙している様だった、追いついた清美達も呆然と見ている。3分と立たずにゴブリン達は殲滅された。



「お、やっと出おったか」



 宝箱を開けながら彼女は独りごつ。



「……【壁走り】じゃと?……はて?……まぁよいか、で、おぬし達は何用じゃ?」



 予め知っていたかのように振り向いた赤毛の少女、美々が問いかける。



「あ、いや……」



 わざとらしく咳払いして、しきりなおす。



「私は宮古、ダンジョン学園の2年生であり生徒会長だ」


「わしは遠藤美々、新入生じゃの」



 生徒会長と名乗っているのに美々はどうでもよさげに手に入れたスクロールを開いたり、にぎったりしている。



「むう、覚えられん」(美々)


「見たか?」(宮古)


「……はい」(葵)



「なんでしょう、あれ?」(清美)


「彼女のこと誰か知っているか?」(宮古)


「確か、成長値20と報告があった生徒だったはずです」(葵)



 そういえばセンター長からだけでなく、先生からも報告があったなと、史上最低の成長値の生徒。要経過観察対象とも申し送りがあった。



 「それで、何用じゃ?」(美々)



 再び同じ質問が飛んでくる。大公息女、生徒会長に対して取る態度ではないが大抵の貴族は気にしていない。「平民に礼儀を求めるのは無駄なこと」という暗黙の了解があるからだ。……限度はあるが。


 だが礼儀がなってないと騎士団に入ったときに昇進の道もなくなる。昇進すれば貴族の末席として見られるため礼儀作法が必要になってくるからである。


 そうでなくても、ある程度はわきまえた方が余計なトラブルは避けられるだろう。


 

「なんか態度でかいですねー、ちなみにスキルはダンジョンカードに近づけると覚えられますよー」(清美)


「おお、こうか? 感謝するぞ。(ろく)な生まれでないことは重々承知じゃ、そもそもお主らから話しかけておいて不快もなにもあるまい」(美々)


「それもそうですねー。一本取られました」


「欲しい物……というわけでもないが成果は上がったし、わしはもう行くが?」



「ああ、ちょっとまってくれ。一人なのか?」(宮古)



 美々はその言葉を聞き、何故か何もない空間を見つつ答える。


 

「他に誰かいるように見えるか?」(美々)


「……」(宮古)

 

「最近無謀な闘いを挑むものが後を絶たなくてな、貴殿も誰かと組んだ方がいいんじゃないか?」(宮古)


「組める奴も組みたい奴もおらんな」(美々)

 

「そうか、すまないがダンジョンカードを見せてくれないか?」(宮古)


「宮古様!?」(葵)



 慌てて止めようとする葵を手で制する。もし貴族に対して同じことを言えば明確な敵対行為として取られるだろう。


 平民であっても間違いなく悪印象だ、よほどの罪を犯さなければダンジョンカードを確認するような行為には発展しない。


 つまり、ただゴブリンを狩ってただけの人に対して、『お前は犯罪の容疑者だから機密を見せろ』と解釈されても仕方ないことを言ったのだ。

 

 さらに言ってしまえば宮古は日本(・・)の王族であり日華とは別の国の人間だ、いくら属国であっても無礼が過ぎるであろう。


 もしこれが別の国だったら外交問題に発展してもおかしくない。いや確実にするだろう。


 

(さて、どうでる……?)(宮古)



 慌てて誤魔化すのか、それとも食ってかかってくるのか。いずれにしても何らかの情報が得られるだろう。



「よいぞ」(美々)



 しかし当の美々は顔色1つ変えず、眉1つ動かすことなく、あっさりと了承して探索者カードを投げて渡す。


 

「あ、ああ、いいのか?」(宮古)


「自分で見せろと言っておいてなんじゃ」(美々)



 あまりにもあっさり渡されたことにあっけに取られながらもダンジョンカードを確認する。


 

 遠藤美々 レベル3 称号:― スキル:【壁走り】



 さっきは宮古の失礼な言動を咎めたのにかかわらず清美と葵もちゃっかり覗き見る。



「うわー、本当に成長値20なんだ」(清美)


「おいっ」(葵)



 清美を肘でこづく。平民は嫌いであっても何を言っても良いというものではない。

 


(やはりおかしい、レアスキルもないし、レベルも3だ。とてもじゃないがゴブリン1匹を相手にするのがやっとなはずだ)



 じっと見つめて表情ひとつ見逃すまいと美々を観察しつつ問いかける。



「なぁ、『鵺』というものを知っているか?」(宮古)



 その言葉を聞いたとき清美と葵も目つきが鋭くなり、殺気とも取れる気配を纏わせる。



「日本の妖怪……であったか? それがどうした?」(美々)



 しかし、そんな気配をぶつけられても美々は気にした素振りもなく答える。


 

「……いや、なんでもない。行ってくれ」(宮古)



 あっけに取られ、探索者カードを渡しつつ道を開ける。美々は受け取ったあと、煙管を取り出し手慣れた様子で準備をする。

 

 そのまま紫煙を出しつつ、頭の後ろで手を組みながら美々は去って行く。


 

「お、おいっ、学生の癖にタバコを吸うな!」



 あわてて注意するが、彼女は無視して去っていった。

 


「どう思う?」(宮古)


「……わかりません、真っ当な人間でないことはわかりますが、あそこまであから様な態度を取るものでしょうか? 鵺も知っていて誤魔化すような態度でもなさそうです」(葵)


「成長値20の少女がレベル3でゴブリンを瞬殺、いけないお薬でも使っていれば理解はできるのですがねー、スキルスクロールも売るのが目的ならわかるんですが、自分で使っちゃいましたしー」(清美)



 鵺の使う薬は痛覚の緩和、筋力の異常強化に加えて、酷く興奮状態にする。いわば狂戦士化する薬だ。


 探索者に効くことからダンジョンから出たものであろうが、いったいどうやって手に入れているかは判っていない。



 もし彼女が使っているのであれば、あそこまで冷静に話せるわけがないし、清美、葵の放った威圧を受ければ間違いなく飛び掛かってくるだろう。


 そうでなくとも何等かの反応を見せるはずだ。しかし、彼女は冷静で、威圧にも乗ってこなかった。



 鵺についても知っているようには見えなかった。宮古達は上位貴族だ、よほど訓練を積んでなければ嘘などすぐに看破される。


 しかし、3人の目をもってしても嘘とは思えなかった。それに、後ろ暗いものがあれば、あんなにあっさりダンジョンカードを見せるとは思えない。



 それゆえに謎は深まるばかりだ、薬もやっておらずレベルも3、しかしゴブリン4匹にゴブリンソルジャー1匹を含む部隊を素手で一蹴する戦闘力、宮古達3人でもあそこまであっさり倒すことはできないだろう。


 ダンジョンカードに嘘の情報でも表示させるスキルでもあれば別だが、そんなスキルが報告された事例も無い。



「私の存在にも気付いていましたな」(???)


 

 何もない場所から声が降ってくる。



「あー、やっぱりいましたか」(清美)


「当たり前だ、いくら3層とはいえお前達だけに任せるわけないだろう」(???)



 住之江(すみのえ)譲二(じょうじ)、天皇家に仕える隠密御庭番衆であり頭目だった男だ。レベル26、しかし齢60を過ぎており頭目を後進に譲り宮古の影を務めている。DRDでは存在もしていない。



「それに、あの戦い方は見た覚えはあります」(住之江)


「そうなのか……?」(宮古)



「素手を使う流派でいうなら、金剛あたりではないですかねー?」(清美)


「あれは力任せに殴っているだけではないか」(葵)


「そこの美学がわからないんですかねー?」(清美)



 探索者で素手を使う人間はいる。だが極々少数だ、格闘系の称号があることも確認されているがそれでも少ない。


 例え一時的とはいえ凶暴なモンスターに素手で挑むなど自殺行為でしかないのだから。



「東郷流というものを知っていますか?」(住之江)


「東郷流?」(宮古)


「確か東郷公爵家、家長が弟、東郷源十郎様が生み出した流派と聞いたことがあります」(葵)



 東郷流、かつて東郷源十郎が生み出し、源十郎しか使いこなせなかった欠陥流派だ。しかし当の源十郎でさえ自分でも未完成と漏らしていたという。


 現在源十郎は行方知れず、当時源十郎から教えを受けた人でも満足に使える人はいなかった。


 源十郎は公爵家の次男でありながらテレビ出演を嫌い、残っている映像もほとんどない。知っているのは住之江のように当時の源十郎を知る者か、格闘マニアくらいだろう。



「何故、そのような流派を使えるのでしょうか? 源十郎様が行方不明になったのは30年近く前ですよね?」(葵)


「そう記憶している、娘……そういえば娘も美々と言わなかったか?」(宮古)


「はい、東郷美々という娘がいましたが彼女は何者かに殺されています、加えて彼女の夫だった男も行方不明です」(住之江)


「そうだったのか!?」(宮古)



 もはや呪いとしか言いようがない事件が発生し、当時のマスコミ界隈はその事件一色だった。宮古の記憶に残ったのもそのせいだろう。



失伝(しつでん)した武術を使い、東郷源十郎の娘と同じ名を名乗る少女……」(宮古)


「関わらない方がいいでしょう、藪蛇になる恐れがあります」(住之江)


「動向を監視することもか?」(宮古)


「無理です。私の隠形にも気付いた程です、他の者でも厳しいでしょう。彼女は私に気付いても何もしようとしませんでした、こちらから仕掛けなければ牙を剥く(きばをむく)意志は無いと言いたいのでしょう」(住之江)



「自分からは何もしないが知っている人から見れば気にせざるを得ない相手……まるで釣り餌だな」(宮古)


「はい、いざ事をかまえることになったとして、私が負けることは無いでしょうが無傷で圧倒することもできません」(住之江)


「レベル3なのにか?」(宮古)


「はい、あの歳でなにをどうしたかわかりません。しかしあれは間違いなくこちら側の人間です」(住之江)


「わかった。お前達も手を出さないように」(宮古)



「りょーかい。なんか嫌ですねー、鵺だの郭公だの手一杯なのに第三の組織を匂わせる相手」(清美)


「わかりました……彼女の姉はどうしましょう?」(葵)


「何?……いや真帆からの報告にあったな」(宮古)


「はい。義理ですが楓という姉がいます。どのような仲かはわかりませんが」(葵)



「……ますますわからんな。とりあえずは妹と同じ手出し無用でいいだろう」(宮古)


「わかりました」(葵)


「では、私はこれで」(住之江)



 そのまま住之江は再び消えた。



 「はぁ……なんと報告したものか」(宮古)


 ■宮古:


 天皇は姓を賜る(与える)立場だから、自分の姓は持ち得ない。その考えが鎌倉時代から引き継がれているらしい。


 DRDでは清美も、葵も、住之江も存在しなかったため護衛も連れずに1人でダンジョンをうろついていた。何やってんの!?


 ■行方不明:


 日本では、最後の生存確認から7年間の失踪期間が満了したとき死亡したものと見なされる。


 ■失伝:


 武術や技術、伝承などが途絶えてしまうこと。わりと目にするけど辞書に載っていない俗語の一種。

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