第028話:灰の海でポーションが泳げない。でもゴブリンにリベンジ
三島風音:ヒロインの1人、曲がったことが嫌いな性格、刀術道場の娘
愛宮由美:双子の長女。ヒロインの1人、白雪の同類
愛宮沙耶:双子の次女。ヒロインの1人、白雪の同類
■FDSアーカイブ5:
『Throw! Throw! Throw!』
ボルテクスアーケード用のフルダイブゲーム。ギリシャ風の衣装を着た男性が剣の刃の方を持ち頭にハテナマークを浮かべているのがアイキャッチの画像。
剣?投げるものだ! 盾?投げるものだ! 銃?投げるものだ!
フィールドにある武器は全て投げて攻撃することしか出来ない、いわゆるバカゲー。持って攻撃しようとすると必ずすっぽ抜けるようになっている。
DRDの後に稼働したこともあり弾道は現実に近く再現できたが、あえて多少オーバーに反映しそれを活かして戦う形になる。
銃や手榴弾も存在するがもちろん引き金を引いたりピンを外したりすることは出来ない。ただ暴発はあり偶然弾が発射されたり爆発することもある。
馬鹿ゲーなわりに案外受けがよく、eスポーツとして認定され世界大会まで開かれたこともある。長谷川もやりこんでおり、世界大会でトップ5に入賞している。
F組の寮の玄関前でアーミージャケットを着たガスマスクの集団がたむろしている。
「あれ何?」
「いや、知らねーし」
「こえーよ」
「うわっ! こっち見た」
「ちょっ! こっちからも来た」
「ひぃっ」
「やぁ加藤君、花籠白雪アーミースタイルだ、幾万の敵を倒し、万雷の喝采を浴びようではないか!」(白雪)
「あぁ加藤達か」
「なんだ加藤か」
「納得」
「……まだ数日しかたってないのにもう認識されてるのが解せぬ」(加藤)
「初日のDRD挨拶のせいかな、第一印象ってやっぱ重要なんだなって」(皆川)
「どちらかというと花籠さんの相方という認識も」(長谷川)
「というわけで。よこしたまえ」(白雪)
白雪が手を出す。
「なにを?」(加藤)
「プレゼントだよ、プレゼント。決まっているじゃないか」(白雪)
「お前は何を言っているんだ?」
「わかってないね。いいかい、君もパーティリーダーなら知っておくべきだ、女の子の好感度は衣装ごとに別管理なのだよ! 新衣装が出たら好感度はリセット。どんなにデレ状態でもツンに戻る、常識だよ?」
「お前は何を言っているんだ? いや、いい。金が入ったらホールケーキ100個送ってやんよ」
「それは作る方も貰う方も困るからやめたまえ」
「さっさと行こうぜ。今日稼がねーとずっと飯なしだぜ」(黒田)
「そうだな。よしっ行くか」(加藤)
メンテナンスは昨日の夜には明けているので、探索者センターは一般の探索者で溢れかえっている。
「なんだあれ?」
「しらねーよ。目合わせんな」
探索者センターを14人のガスマスク、鉈を持った幼女、煙管を咥えた幼女が入ってくる。そしてそのまま何事もないようにダンジョンに向かって歩いていく。ダンジョンセンターは禁煙なので火は点いていない。
指さす人、顔を背ける人、反応はまちまちだ。
「あれはクラスメートの和田君だね」(白雪)
「やっほー和田君」(陽子)
「ちーっす」(長谷川)
声を掛けられた和田君は慌てて顔をそらして逃げていった。
「むう、恥ずかしがりやさんだね」(白雪)
「いや、仲間と思われたくないんだろう」(黒田)
「自慢できる格好だと思うが」(長谷川)
「周りの人との距離が心なしか離れてる気がするんだけど」(皆川)
「ダンジョンに入ってから被るべきでした」(千鶴)
「そんなことしたら余計目立つっすよ」(陽子)
「私はちゃんと馴染んでるよ」(小町)
「そうかなぁ?」(加藤)
「あさるとライフルが欲しいでーす」(メリッサ)
「さすがにそれは……」(須藤)
「左腕が痛いにゃ」(ミーナ)
「だからやめてって言ったのに」(七森)
ミーナの左腕上腕はギプスが着けられていた、腕にフィットするように取り付けられテープで固定されるその形だけ見るなら白い篭手のようだ。
骨折自体はとても綺麗に折られていたらしくこの程度なら探索者は1~2日もすれば治るらしい。
(最初の後ろ回し蹴りは本当に自分で躱したのか?)(ミーナ)
注視していたはずだった、叩きつけられる殺気に意識が持っていかれるのを耐えながらそれでも美々の姿を追えたのは、前世での度重なる喧嘩とDRDでの戦闘経験だろう。
1歩、2歩と間合いを図っていた時に感じた警鐘。それが考えるよりも先に頭を後ろへ逸らせた。
その眼前を美々の後ろ回し蹴りが通り過ぎる。
(!! まじ寸止めしねぇ!)
円というより直線に近い楕円軌道。躱せたことに感動するよりも早く、足は一歩踏み出していた。
完全に死角からの一撃。だが、それには何の手ごたえも感じなかった。完全に捉えていたはずだ。
同時にすくい上げるような肘打ちがナイフに代わってミーナに迫る、胴体中央に伸びる至近からの攻撃は避けようがない。左腕を犠牲に直撃を避けるしかなかった。
思い返してみても分からない、最初の蹴りには鳴った警鐘が、2回目の肘打には鳴らなかった。
警鐘自体が第六感みたいなものだ、偶然と言われてしまえばそのままだ。
しかし、美々が殺気をコントロール出来るのであれば、最初の攻撃はわざとわかるように放たれたことになる……。
聞いた所で教えてくれないだろう。
(やっぱり、あたしなんかとは立つ次元が違えな。DRDの時に別サーバーだったのは良かったのか悪かったのか……あーくそ痛みと熱でうまく考えられねぇ)(ミーナ)
「七森よ、そうそうミーナの決意に水を差すでない。お主だって前世ではお主で決意して人生を生きてきたのであろう? それに対してミーナは何か口出ししてきたか?」(美々)
「……」(七森)
「であれば、お主も何も言うてやるな、決意に口出ししてやるな。それは例え兄妹でも許されぬことであろう?」
美々はダンジョンに入ったらすぐに煙管に火をつける。
(やっぱり遠藤さんはその筋の人なんだろうか? 楓さんとはどんな関係なんだろう? 楓さんもそっち系の人なんだろうか? それにしては雰囲気が全然違うような……?)(加藤)
「4000円程度のガスマスクでも匂いはしっかり防いでくれるんだね」(皆川)
「でしょ」(長谷川)
「カビ臭さがなくなるだけで大分雰囲気が変わるな」(加藤)
2層に着くと学生と一般探索者の流れが変わっていることに気が付く、昨日黒田がこっちと指した、3層への階段とは違う方向に向かって歩く集団がある。
手にはバケツやポリタンクと言ったものを持っている。
「なにあれ?」(加藤)
「多分魔灰じゃないかなー? 2層にあるって優子先生言っていなかったっけ?」(白雪)
「あーそういえば」(加藤)
「行ってみませんかー?」(メリッサ)
「まーまだ時間はあるしいいか」(黒田)
「えーなんかのフラグにならないっすか?」(陽子)
「この決断があんな事になるなんて」(由美)
「この時の私達は」(沙耶)
「「思いもしなかったのです」」(愛宮姉妹)
灰の海に近づくにつれ、狭苦しく薄暗い洞窟に光が差してゆく。その先にはまさに灰の海と言うべき光景が広がっていた。
昼だというのに夕暮れのようにオレンジ色に輝く空、白い砂浜には探索者が何人も歩いている。
その先には灰色の海があった、揶揄ではない。海が水ではなく灰で出来ているのだ、それは現実では絶対にあり得ない光景だった。
白い海原は波はあろうはずが無いのに風で舞い上がるからなのか動いているように見える。空の中央にある太陽とは別に地平線の先が赤く輝き白い海原にオレンジ色を刺す。
一面の灰の正体は分からない、しかし空の色を映す赤白い灰はこの世の光景とは見えず、灰を集める探索者はどこか苦しむ亡者に見え、まるで滅びの終末世界を連想させた。
その光景に誰もが目を見開き声を失うしかなかった……。
「美しい……」(メリッサ)
しかしメリッサからはそんな声が聞こえた。そんなメリッサとは逆に小町の脳裏には燃える自宅と家族の光景が思い起こされていた……。
「……先に戻ってるわ」(小町)
「自分も……」(須藤)
「あ、ちょっと」(千鶴)
2人が戻ってしまったので皆もつられるように戻っていく。
「なんか凄い光景だったな」(加藤)
「あぁ……」(黒田)
「……」(須藤)
「いったいあれは何だったんだろう?」(皆川)
「なんとも言い表せない光景だったな……」(長谷川)
「私は2度とあそこへは行きたくないわ」(小町)
3層について早々に美々は1人別行動だ。美々は頭の後ろで指を組んだいつもの格好で歩いていく。
「ではわしはゴブリンと戯れてくる。楓はそっちのパーティに在れ」(美々)
「はい。行ってらっしゃい」(楓)
「1人で行かせていいのでしょうか?」(千鶴)
「無駄ですよ、お姉さまは自分より弱い人から心配されるのを嫌いますから」(楓)
「私は今日は白雪ちゃん達の方に行くよ」(小町)
「いいよ~おいで~」(白雪)
「「私達も~」」(愛宮姉妹)
「いいよいいよ~おいで~」(白雪)
「えっ!?」(加藤)
「……なんでいるんだ?」(黒田)
「全然気づかなかった」(皆川)
「なんか多いなーとは思っていた」(長谷川)
「皆ガスマスクでしたからね」(須藤)
「ちょっ、どうすんだ、これから行く先は隠しエリアだぞ」(加藤:小声)
「別にいいじゃないか、というか今更追い返すなんて出来ないだろう? オープンにやっていこうじゃないか」(白雪:小声)
「どうやって誤魔化すんだよ」(加藤:小声)
「昨日見つけたとでも言えばいい。それに既に見つかっている可能性だって高いんだよ? 70年近く見つからない可能性の方が低いと思わないかい?」(白雪:小声)
「……」(加藤)
第3層は北西ブロックは相変わらず鍾乳石が並ぶ視界の悪いエリアだ。加藤達は昨日ゴブリンから挟撃を受けた場所に差し掛かろうとしていた。
「さて、昨日の場所に戻ってきたわけだけど、どうしよっか?」(白雪)
「う~ん、ゴブリンとリベンジしてみる?」(加藤)
「いいぜ」(黒田)
「やっといた方がいいと思うな、どの道最初のボスって同じ人型のミノタウロスだよね?」(皆川)
「そっすね」(陽子)
「ミーノータウロスだよ」(白雪)
「ミノタウロスとは別だっけ?」(皆川)
「いや、母音を伸ばすのが正式な名前」(白雪)
「そうなんだ」(皆川)
基本的に3層の北西は人気がない。ゴブリンを狩るなら東側だし、4層を目指すなら南へ直進だ。
そもそもゴブリン自体にも人気がない。狩やすさなら4層の石喰いネズミの方が上だからだ。石喰いネズミを他に奪われたパーティが仕方なく狩るくらいだ。
時期的にも一般探索者も4月から日華の民間学校へ入学するため、小ダンジョンの攻略をしている時期になる。
つまり今の時期、大ダンジョン低層は新入生達の独占状態だ。
「あ、ついでにポーション部屋覗いてもらっていいっすか?」(陽子)
「おっけー由美佐那ちゃんもいいかい?」(白雪)
「「いいよ~」」(愛宮姉妹)
しかし、全ての人が素通りするわけではない。ポーション部屋と呼ばれるポーションが確定で出る宝箱が一定間隔で出る部屋があるためだ。
ダンジョンには3種類の宝箱が存在する。
【ドロップ箱】タイプは、モンスター撃破時に稀に出現する宝箱だ。大抵はドロップするものに比べれば良い物が入っている。
【固定箱】タイプは特定の場所に出現する宝箱だ。一定時間ごとに出現するものや、条件を満たすと出現するものがある。入っている物はピンキリだ。
【イベント箱】タイプはイベント部屋の攻略報酬として出現する宝箱で、ボス部屋の報酬もこれに含まれる。固定箱タイプの一種とも言える。こちらも入っている物はピンキリである。
加藤達が向かっているのは固定箱タイプの宝箱が出現する通称『ポーション部屋』だった。
大抵の固定箱タイプに入っている物はピンキリだが、ポーション部屋の宝箱には必ずポーションが1個入っている。
* * *
3層の一角の小部屋に腕章をつけた数人の男達が陣取っていた。腕章には貴族の家紋が縫い込まれている。記章でないのは彼らが外注、いわゆるアルバイトだからだ。
スキルによるヒーリングは一般人には効果が無い。だが、ポーションは別だった。
重傷の傷や、病気による衰弱もポーションで回復できる。この効果が判明したとき、ポーションの値段は暴騰した。
ポーション部屋が発見されたときは取り合いで殺傷沙汰になったほどだ。
さすがにこれを重く見た公爵家達が沈静化に動き、現在は各公爵家が獲得枠を確保し、それを自らの派閥に分配することとなった過去がある。
アメリカでは軍がこの部屋を独占し、一般探索者の立ち入りを禁止している。しかし、娘が病気だとかなんとか理由をつけ立ち入ろうとする探索者が絶えずトラブルは日常茶飯事とのことだ。
日華では貴族が独占しているが、唯一フリーな日がある。それが昨日、一昨日のメンテナンス期間だ。村田達もこれを狙っていたというわけだ。
1人の男がポーション部屋の入口近くで欠伸をかみ殺している。ポーション待ちをしているパーティの見張り役だ。
(ふぁ~……眠む。じっとしているだけってのもある種の拷問だよな~。ゴブリンでも……)(見張り)
足音に思考を中断する……ゴブリン? いや、もっと複数だ。いつでも抜けるように剣の柄に手を掛けつつ、少し離れた所にいる仲間に無線で連絡を入れる。
『誰かが近づいてきた、一応準備しておいてくれ』
『了解』
薄暗い通路に黒い影が浮き上がる、ゆっくりとこちらに向かってくる。空気の抜けるような不気味な呼吸音を響かせながら、ゆっくりと、ゆっくりと……。
(な、なんだ!? ゴブリンじゃない、まさか新種!?)
顔全体は黒く、瞳の見えない複眼のような大きな目。鼻は無く、丸く大きな奇妙な口。それが1体、また1体と次々と闇からはい出てくる。
「ひぃぃぃぃ!!」(見張り)
「「なっなんだぁ!?」」(仲間)
悲鳴を聞いた仲間達が慌てて部屋から出てくる、そして加藤達ガスマスク隊を見て肩を震わせる。
「「「うわぁぁあ!?」」」
「な、なんなんだお前達! い、言っとくが俺達は企業から依頼を受けている。この奥に進むなら企業と揉めることになるぞ!」
「「「「…………」」」」
ガスマスク達は顔を見合わせると、無言で回れ右して帰っていった。
「……なんだったんだ、いったい?」
「って箱! 湧いてる! はやく取らないと!」
「しまった!」
出現した宝箱にあわてて走り寄ってポーションを取りだす。
ポーション部屋の宝箱は前のポーションを取得してから必ず1時間で再出現する。取り遅れると、下手すると賠償問題だ。
「ふぃ~~、時間どれくらいだ?」
「多分そんなに遅れてないと思う。前が32分くらいだったから1分も経ってないはずだ」
「ったく。へんな悲鳴あげんじゃねぇよ。遅れるところだっただろ」
「いや誰でもあれはビビるって」
「あいつら多分新入生だよな。ちらっと学園の記章らしきもの見えたし」
「なんであんな恰好してたんですかね?」
「さぁ? いかれてるんじゃねーの?」
* * *
「やっぱり人いるっすね~」(陽子)
「ゲームとかなら殴り合いだったんだけどな」(黒田)
「順番とかやっても、PVPありだったら力ずくな人が大抵いるしな」(加藤)
「クエスト一覧を見たらポーション取得ってクエストがあるね」(白雪)
「企業がどうたら言ってたのはそれか~」(加藤)
「う~ん困ったっす」(陽子)
「……」(七森)
「ポーションはどこも売ってないよ~」(由美)
「怪我とかした時用に私達もほしいんだけどねー」(沙耶)
「そういうわけでもないっすけどね……」(陽子)
陽子が取りたい【薬師見習い】の称号の開放条件は自分で薬の素材を採取すること、そしてポーション等ダンジョン由来の薬を飲むことだ。
ゲームなら簡単だ、そもそもストーリーモードはオフラインだから他にポーションを狙う人はいない。
しかし、現実ではそうもいかない、強制的にオンラインモードでライバルはいるし、購入できるオークションや購買所も存在しないためだ。
七森も【鍛冶師見習い】の称号を開放するためには自分で鉱石を採掘することが条件に含まれている、ポーション部屋に人が居るということは採掘をしている人も当然居るのでは? と考え渋い顔をしている。
「う~んどうすべきっすかね~」(陽子)
「う~ん地道にモンスターからの……、……おうふ」(白雪)
前の加藤が止まったため、白雪がその背中にぶつかる。
「出たぞ、ゴブリンだ!」(加藤)
前からゴブリンが3体歩いて来る。加藤達を見つけると他の仲間と合わせたように同時に大声で叫び威圧してくる。
「「きゃぁ!」」(愛宮姉妹)
慣れていない愛宮姉妹が悲鳴をあげしゃがみ込む。
「う~ん、マスクのおかげか、それとも慣れか最初程の衝撃はないな」(黒田)
「私はガスマスクのおかげで、落ち着いて『おうふ』と言えたよ」(白雪)
「……あ! 後ろは!?」(加藤)
「大丈夫、こっちで見張っとく」(皆川)
あんまり動じてない姿に焦れたのか、ゴブリンが真っ直ぐに突っ込んでくる。ガスマスクのグラス越しだからなのかあまり恐怖は感じない。
しっかりと盾を構えてゴブリンが飛び上がるのを待つ。グラスを挟んだためかどこかぼやけた視界はDRDでの経験を呼び起こす。
昨日は思わずスキルの【パリィ】に頼りそうになったが、そもそもスキルに頼らなくてもパリィの動きは染みついている。ゴブリンの動きだって知っている。
左右に動いてフェイントを仕掛けてくるが、動じずにゴブリンが飛びあがるのを待つ。ゴブリンが足に力を込めるために体が沈む。
それを盾ごしににらみつける、加藤の予想通りの方向に飛び上がったゴブリンは両手で上段に構えた棍棒を振り下ろしてくる。
しかし、その瞬間を狙っていたかの如く加藤は盾を棍棒の横腹に叩きつける。
空中にいるゴブリンと地面に足を付けている加藤。考えるまでもなく盾で棍棒を弾かれバランスを崩したゴブリンは落ちて転がる。
間髪いれずに剣を逆手に握りなおし、転がったゴブリンの首筋めがけて振り下ろす。剣の下でもがくゴブリンを見て、昨日の記憶が蘇り吐き気がするがそれを耐える。
そのままゴブリンが絶命するのを待ってから剣を抜き安堵の息を吐く。
(大丈夫だ、昨日よりは大分ましだ)(加藤)
ミーナも同様だ、飛び上がったゴブリンを見事な上段蹴りで文字通り蹴り飛ばすと、それを追いかけるように飛び上がり、ゴブリンの頭に全体重を掛けた剣先を突き刺した。
黒田もゴブリンに向かって走っていき、慌てたゴブリンにそのままタックルを喰らわせ、体重の軽いゴブリンを吹っ飛ばすとそのまま剣を叩きつける。
「よしよし、やっていけそうだな」(加藤)
「DRDがフルダイブで良かったな……流石にゲームでやってなければこれは無理だ」(黒田)
「……美々さんの攻撃に比べれば止まって見えるにゃん」(ミーナ)
「……」(七森)
(ミーナにおんぶだっこじゃいけないよね……僕も出来ることを頑張らないと……でも出来るかな? 全然通用しなかったらどうしよう?)(七森)
「「おお~~すご~い」」(愛宮姉妹)
「それ程でもないさ~」(白雪)
「いや、白雪は何もやってないじゃん!」(加藤)
その後、前衛を皆川、長谷川、須藤に変え、同様にゴブリン達と戦闘を何度かこなしていった。
須藤も最初は苦戦していたが元々軍人だ、すぐに戦闘する分には問題はなくなった。ただ元々の性格からか止めを刺すのはやはり躊躇してしまうようだ。
長谷川も同様に経験はないが、【ストーンブレット】を使いゴブリンを近づけさせない戦い方なら問題なくこなせるようだ。
本来ならゴブリンの動きに翻弄されそうそう当てられるものではないが、実技訓練の授業で散々試し打ちしたためか、百発百中の精度でゴブリンをまったく寄せ付けなかった。
お読みいただきありがとうございます。拙い文章ですが次話も楽しみにして頂ければ幸いです。よろしければ、ブックマーク、評価、感想なんかもお願いします。




