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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第4章:1年7月中旬
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第102話:「え!?また俺らっすか?」(ゴブリン)

 東郷(とうごう)時雨(しぐれ):東郷家公爵家長女にしてシナリオのラスボス。母親は東郷美々(東郷源十郎の娘)だが東郷家の子供として扱われている。


 愛宮(まなみや)由美(ゆみ):双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 愛宮(まなみや)沙耶(さや):双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5


 日陰(ひかげ)(しのぶ):ヒロインの1人、目隠れ美少女、千鶴と同室 レベル:5

 水無瀬(みなせ)伊織(いおり):元小麦肌少女。モブキャラ、小町の同室 レベル:5


 時雨の元に白雪が寄っていく。



「やっほ~、よろしくね~」(白雪)


「……本当にいつもガスマスクをつけているんだな」(時雨)


「よく言われる」


「顔を見せてくれないか?」


「やだ」


「そうか」



 理由を聞いても答えないだろう。今の言いぶりだと明確な理由もなく、なんとなくで断っている感じだ。



「なぜ、研究結果を公開している?」(時雨)


「言わなくてもわかるでしょ? 山形県だからだ!」(白雪)


「……」



 白雪は胸を張っている。もっとも、張れるほどのものはないが。



「すまない、意味がわからない」(時雨)


「私はわかったよ、あなたとは漫才できないって」(白雪)


「私は、おまえと漫才をする気はないんだがな」(時雨)



「いいかい? まず、ボケるにあたって人名はだめだ。架空かどうかわからないし裏を考えてしまうからね」(白雪)


「かといって国名も良くない。やはり裏を考えてしまう。国名から真っ先に思い至るのは政府そのものだからね」(白雪)


「都市もだめだね、そうすると適度にはぐらかせて当たり障りのない所」(白雪)



「はぐらかす」(時雨)



「うむ。はぐらかすにもやはり礼儀は必要だ。だが宮城や愛知はだめだ! あそこは仙台と名古屋だ! 都市になってしまう。滋賀県も琵琶湖になってしまうのだ」(白雪)


「とすれば山形県しかないだろう。1秒にも満たないこの刹那でこの計算を出来た私は凄いと思わないかね?」(白雪)



「お前は、いつもそんな感じなのか?」(時雨)


「そうだよ」(白雪)



 遠藤美々とは違った厄介さだ。あちらは話したときに感じた事と、銀醸の一件を見るに、事を構えることになったら最後、話を意図的(・・・)に聞かない。初めから事を構えないように話せ、それを要求してくる。


 花籠白雪(こちら)は始めから話が通じない。



「よくパーティから追い出されないな」(時雨)


「なにを言っているかなあ? 会社に多大な利益を落とす人間を性格に難ありで辞めさせることができるかい?」(白雪)


「……」



 確かにそうだ、会社に利益を落としている時点で、仕事はこなすことがわかっている。その時点で辞めさせる理由はない。


 例えば、性格も良く、彼女より仕事ができる人間が面接に来たとしよう。


 会社はなんと答えをだすか? 彼女を辞めさせるか? その子を落とすか? 



 答えは「両方雇う」だ。どんなに性格に難があろうとも有益であるかぎり、彼女が辞めさせられることはない。


 パーティでも同じだ。不利益にならない限り外す理由はない。余裕がないパーティなら最初から新しいメンバーを募集したりしない。



「で、結局研究内容を公開している理由はなんだ?」


「言わなくてもわかってるでしょ、情報を抜き出すなんて簡単じゃない。殺さずに話を聞き出すだけでも大変なのに、私の話聞き出したってそもそもの学識がなければ理解できないし、本当か嘘かの判断もできない」


「……」


「ならどうするか? 独占できないなら敵に渡らないように殺すしかない。それなら全部公開アンド使用フリーのが安全でしょ」


「そうか……」



 まともな応答が返ってきたことに安心する。



「悪用されたらとか考えないのか?」


「やだなぁ性善説を信じてあげようよ、核だって今じゃ爆弾よりも発電に使ってるじゃないか」



 残念だが、それはあり得ない、ナイフを手に入れたとき、人はすぐにそれを人に突き刺すことを思いつく。人間とはそういうものなのだ。


 

「それにもう遅いのはわかっているだろう」(白雪)


「……」



 そう、もう遅い。スキルコピーの方法が公開された。さらに白雪のホームページでは初期魔術スキルの魔法陣が公開されている。


 なら誰だって気が付く。じゃあ自分でスキルを作れるんじゃないか?



* * * 



 時雨と白雪が話している対岸では、対戦相手の4人が話していた。2年C組のパーティ4人だ。



「どうする?」


「勝てないのは当然として、どうアピールするかだな」



 すでに東郷時雨の強さは知れ渡っている。



「F組の1年を狙うか?」


「さすがにそれはイメージ悪いだろう。相手はどう見ても貧弱そうだぞ」


「だよなぁ、となるとセオリー通りに囲んで戦うしかあるまい」


「わかった。取り囲んで後ろの2人で【ダブルスティング】を同時に撃つぞ、どちらかでも当たれば隙ができるはずだ」



 壇上に2組のパーティが並ぶ、片方には東郷時雨と花籠白雪、もう一方には2年C組の4人だ。


 時雨はいつもの鉄棍を持つが白雪は武器らしきものは持っていない。磯野が決闘カードを時雨に渡すと、白雪が反対側を、4人が向かいを持つ。



 戦闘が始まると作戦通りに4人が時雨を囲もうと動く。



「ほい」(白雪)



 しかし、2人の足に水と凍の魔法が直撃し、バランスを崩して滑るように転ぶ。



「は?」


「え?」


「おっとっと」(白雪)



 魔術を2つ同時に発射するのも信じられないが、しかも両方とも、相手が転ぶよう正確に軸足へ命中していた。


 呆然とする左側の男性に時雨の鉄棍による突きが突き刺さる。予備動作なく放たれた突きは相手の顔面を正確に突き飛ばしていた。


 右側の男がそれを目で追った先に鉄棍による横薙ぎが襲う、辛うじて武器を射線上に差し込めたが、その威力は差し込まれた武器を悠々と弾き飛ばし、左側面を殴打した。



「まず1人」(’時雨)



 再び左側の頭を上から下に1本の黒い線が走ると、まるでお辞儀のように相手の頭が垂れる。お辞儀と違うのは破砕音が重なったことだろう。しかし、次の瞬間には下がった頭が再び弾き上げられたことだ。


 その一瞬で、時雨は振り下ろしと振り上げを同時に叩き込んでいた。その両方に致死的な力が込められていたことはその音が証明していた。


 残った右側が慌てて距離を取ろうとするが、がくりと膝が折れて体勢を崩す。原因をさぐるように目線が動き濡れた膝を目視する。



「2人」(’時雨)



 【強打】を乗せた鉄棍があばら骨を砕き、その心臓を押しつぶした。



「馬鹿な、馬鹿な」



 スキルを出す間すら与えられず2人を崩され、哀れな程対戦相手は総崩れとなった。


 開始1分も経たずにこの有様だ。誰が予想できただろうか? 「3人」「4人」もはや消化とばかりに1人ずつ潰され、全滅をもって相手の悪夢は収束した。



 場内に静寂が訪れる。相手はC組であり、御前試合に呼ばれる程の実績を持つパーティだ。それが攻撃らしい攻撃を出来る時間も与えられずに潰された。



 だが、勝った時雨も勝利を宣言することなく白雪を見ていた。



(なんなんだ、こいつは?)


 

――――――――――――――――――――



 白雪達が戦っている頃に愛宮姉妹はF組の寮の玄関にいた。前回以降ダンジョンに潜れないでいたが、沈黙草を使った食事によって復帰することができた。



「ごめんな、一緒にやすませちゃって」(由美)


「ごめんね」(沙耶)


「ううん、いいよ。それよりも大丈夫?」((しのぶ)


「うん。効果が切れたら辛いけど、効果中は静かな時間を過ごせるから」(由美)


「気が休まる時間があるのは」(沙耶)


「「とても嬉しい」」


「そうなんだ……それで、なんで伊織(いおり)ちゃんが?」((しのぶ)



「あ、えっと……えへへ」(伊織)


「捨てられちゃったのだ」(由美)


「ちょっ」(伊織)


「このこ飼っていい~。ちゃんと餌あげるから~」(沙耶)


「ペット扱いすんな」(伊織)


「あ、うん、べつにいいけど」((しのぶ)


「いいんだ」(伊織)


「えっ、うん」((しのぶ)


「「ダンジョン行くよ~」」(愛宮姉妹)


「は~い」((しのぶ)


「あ、うん」(伊織)



 いつも通りダンジョンセンターを通って歩く。



「なんか久しぶり」(由美)


「そうだね、本当にいいの?」((しのぶ)


「私達は行かなければならない! 12層へ」(沙耶)


「遠くない!?」(伊織)


「わかってる」(由美)


「けれど」(鞘)


「自分で採取できるようになりたい」(由美)


「あのスキルを封じる草のこと?」((しのぶ)


「「うん」」(愛宮姉妹)



「あとは、料理人と、薬師の称号もほしいかな」(沙耶)


「えっと、白雪さんは、まだ研究続けるって言っていなかった?」((しのぶ)


「知ってる!」(由美)


「だからと言って何もしないなんて」(沙耶)


「「できない」」(愛宮姉妹)



 今日の目的地は3層東のゴブリン部屋だ。廊下の入り口から部屋を見る。ゴブリン4体にゴブリンソルジャー1体だ。



「ちょ、ちょっと、ちょっと、ちょっと、あれいくの?」(伊織)


「行くよ」(由美)


「レベル5でしょ、倒したことないの?」(沙耶)


「う、うん。ウネばっかりだから」(伊織)


 

「大丈夫、私達は既に経験済だ」(由美)


「やだ、伊織ちゃんの初めてもらっちゃった」(沙耶)


「「……」」(伊織・(しのぶ)



 通路から小部屋を見る。ゴブリンソルジャーと4匹のゴブリンが円形に座っている。



「「じゃ、行くよ」」


「う、うん」(伊織)



 (しのぶ)も無言で頷く。


 姉妹が滑るように後ろを向いたゴブリンとの距離を詰める。タイミングも早さもまったく同じだ。当然2本の槍が同時にゴブリンの背中を貫通する。



「や、やぁぁ!」(伊織)



 伊織も果敢にその右にいたゴブリンに切りかかる。しかし、腰が引けているのか与えた傷は薄かった。伊織が持つのは日本刀だ。「なんか映画みたいでかっこいいから」それが手に取った理由だった。


 その影から、咆哮を上げようとしていたゴブリンソルジャーの鼻先に【ウィンドボール】が直撃し、ソルジャーを大きくのけぞらせる



「グアアアアア」



 別の意味の咆哮を上げたソルジャーを無視して、伊織と同じゴブリンに切りかかる。ソルジャーの咆哮のことは前回同様習得済だ。


 その手際の良さに伊織は目をむいた。伊織と(しのぶ)は幼馴染の関係にあたる。(しのぶ)が逃げないようにとのお目付け役で一緒に東京ダンジョンへと送り込まれた。


 だが、伊織は探索者になんかなりたくなかった。親が経営しているブティックを継ぎたかった。しかし、伊織の家は(しのぶ)の家に逆らうことはできなかった。



 (しのぶ)のことが嫌いなわけでは無いが、どうしても思うことはある。別に「彼女を守れ」と言われているわけではない。それを盾に素知らぬふりを続けた。


 探索者育成カリキュラムでも落ちこぼれる(しのぶ)に見切りをつけ、一緒に東京のダンジョン学園を受験する人達のグループと仲良くなって今に至る。



 今も(しのぶ)は気にしていないだろう、伊織の方が一方的に後ろめたいだけだ。



「「やあっ!」」



 伊織と(しのぶ)がゴブリン1匹に対処している間に、姉妹はゴブリン1匹を仕留める、右下から左上に切り上げる逆袈裟斬りと、左下から右上に切り上げる左逆袈裟斬りが中心にいるゴブリンを巻き込んで綺麗にクロスした。



 ソルジャーが突撃の号令をかけるが、2匹は倒され、1匹は戦闘中、残った1体だけが従い(しのぶ)に向かい走るが、(しのぶ)は逃げながらソルジャーの足に向かって【ウィンドボール】を放ってソルジャーの突撃を阻害する。



 そして1匹空しく(しのぶ)を追うゴブリンに向かって愛宮姉妹が左右からすれ違いながら薙刀を突き刺した。



「「よっ」」



 なれた手つきでこと切れたゴブリンから薙刀を抜く。



 同時に伊織がゴブリンの右肩を切り下げられて、崩れ落ちる。



「や、やっと倒せた」(伊織)



 動かないウネに慣れた伊織にちょこまか動くゴブリンは、かなり骨が折れる相手だった。



「伊織ちゃん後ろ!」



 慌てて後ろを向いたところに自分に振り下ろされる大鉈が目に入る。



「きゃぁっ!」(伊織)


「伊織ちゃん!」((しのぶ)



 いつの間にか後ろにいたゴブリンソルジャーの振り下ろした大鉈でばっさりと肩から切られるがレベル5だけあってLPに到達するほどではなかった。



「ポーション飲んで」


「う、うん」


「とり囲むよ」


「わ、わかった」



 戸惑いながらもソルジャーを取り囲み。正面にいる人は回避に専念し、それ以外の人が攻撃を加えていく。


 姉妹と、(しのぶ)はかなり手慣れていて、ソルジャーが攻撃しようとしている所に魔術を当てて疎外するなど、かなり余裕がある戦い方だ。



「よしよし、思い出してきたぞー」


「馴染む、馴染むぞー」


「なんかみんなすごない?」


「それほどでもない」



 強敵と言われたゴブリンソルジャーを余裕さえ見せながら戦う愛宮姉妹と(しのぶ)に少しの恐ろしさと、期待を感じる伊織だった。






 

















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