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DRD ~転生者が多すぎた~  作者: ふすま
第4章:1年7月中旬
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第100話:なにも聞こえなーい

 愛宮(まなみや)由美(ゆみ):双子の長女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5

 愛宮(まなみや)沙耶(さや):双子の次女。白雪の同類 ヒロインの1人 レベル:5


 嵐山(あらしやま)(さとる):D組隋一の実力者、蒔苗という病弱な義妹がいる。

 大熊(おおくま):嵐山の取り巻き。嵐山を裏で操る深谷(ふかや)恭介(きょうすけ)のスパイだった。

 島津(しまづ):嵐山の取り巻き。戦闘力だけでいえば嵐山以上


 朝、愛宮姉妹の前にチキンスープが置かれていた。


「あちらのお客様からです」(小町)



 指した方向には五十嵐がいた。



「「ありがとう! でも朝にチキンスープは少し重いかな!」」(愛宮姉妹)


「いやいや、僕何も頼んでないけど」(五十嵐)


「つまり客気取りだと、でごわす」(由美)


「寮生のくせに! ぽよん」(沙耶)


「いや、意味わからん」(五十嵐)



「正解は私でした!」(白雪)


「おまえだったのか、でごわす」(由美)


「あなただったのか、ぽよん」(沙耶)



「というわけで、それはなんとスキルを封じるスープなのです」(白雪)


「「えっ」」(愛宮姉妹)


「本当に? で、ごわす」(由美)


「本当です。太郎君を信じるのです」(白雪)



 指先で五十嵐を指す。



「「ありがとう、太郎君!!」」(愛宮姉妹)


「なんで僕を見ながらお礼を言うの!?」(五十嵐 優)


「よかったね、五十嵐太郎君」(白雪)


「そんな名前じゃないから!」(五十嵐)


「嵐山に嵐を奪われそうになるわ、白雪に太郎呼ばわりされるは、ついてないな」(加藤)


「お祓いした方がいいんじゃね?」(黒田)


「その全ての原因が、花籠さんなんだけどね……」(五十嵐)


「お祓いした方がいいんじゃないっすか?」(陽子)


「失礼だね、私は悪霊じゃないよ」(白雪)


「お祓いでなんとかなる悪霊の方がマシな気がする」(長谷川)



「あ、そうそう、封印されるスキルはランダムだから、ダンジョンへ行って他のスキルを一旦解除してから飲んでくれたまえ」(白雪)


「スープが冷めてしまう前に!」(白雪)



「どうやっても」(由美)


「冷めちゃう」(沙耶)


「「「人生は冷たい」」」(白雪・愛宮姉妹)



 それでも愛宮姉妹はダンジョンへ向かって駆けていく。



「こんなところで、人生を学ぶなんてにゃ」(ミーナ)


「人生を変える一言なんてチラシの裏にでも転がってるものサー」(メリッサ)




「で、どういうことなの?」(五十嵐)


「スキルを封じる食事についても驚きなのだが、それが彼女たちと、どう関係するんだ?」(柳)


「一般的な双子のスキルは以心伝心なのは知っているよね」(白雪)


(しん)から聞いたよ、8割はそうなんだっけ?」(五十嵐)


「一卵性双生児は特に多いと聞くな」(柳)


「彼女たちはそのせいでお互いの思考が、お互いに流れ込んでしまってね。アイデンティティの崩壊の危機だったんだよ」(白雪)



「え……それってどうなるの?」(五十嵐)


「双子といっても他人だからね。お互いの意識はお互いを侵食し、本能的恐怖から片方を排除しようとする……かもしれない」(白雪)


「それって……」(織姫)


「まぁ最悪ね。そうでなくてもお互いよくなかったみたいだからね」(白雪)



「何とかできないのか!?」(風音)


「今、それをやってるじゃないか。スキルコピーもその副産物だね」(白雪)


「む、そうだったな。じゃあ解決したのか?」(風音)


「まさか。一時的に封じることができただけさ」(白雪)


「なんで相談してくれなかったんだ」(五十嵐)


「仮に相談されたとして何かできたかい?」(白雪)


「……」(五十嵐)



「例えば『13層で薬草取ってきてくれないかい?』って言われたら何ができる?」(白雪)


「行けない……」(五十嵐)


「だろう、悪いけど質も量もこっちのパーティの方が上なんだよ」(白雪)


「……」(五十嵐)



「ま、まぁ何かあったら今度頼むよ」(加藤)


「えー頼むことあるかなぁ?」(白雪)


「はいそこ! 余計なこと言わない」(加藤)




「ただいま!」(由美)


「おかえり!」(沙耶)


「私白雪!」(白雪)



「ご飯できてるわよー、手洗ってらっしゃい」(小町)


「「「はーい」」」(愛宮姉妹・白雪)



「あーあー」


「あーあー」


「「なにも聞こえない」」


「お姉ちゃんのあほー」


「なにも聞こえない!」


「沙耶のばか! もう知らないっ!」


「なにも聞こえな~い」



「いや隣にいるんだから聞こえるだろう」(加藤)


「はいそこ! やぼなつっこみ入れない」(白雪)


「「聞こえないよ~」」



 加藤のつっこみは無視して愛宮姉妹はだ抱き合って泣いていた。



……………………………………………………



 学園のホームルームで皆に紙が配られる。


 冒頭に学園探索者調査と書かれている。内容は大体のレベル、パラメーター、称号、スキル構成、到達層、どれくらいの頻度、時間でダンジョンに潜るかという内容だ。


 他に自身の入っているパーティ名を書く欄もある。



「今配ったのは、年に2回行われる調査用紙だ。大体の称号の系統やレベルの上がり具合を調べる目的だ」(平岡)


「とはいえ、知られたくない者もいるだろう。必須と書かれている項目以外は書き込まなくてもいい」


「スキルやなんかも、都度付け替える人もいるだろう。その場合自分が良く付けるスキルを書いてくれ」


「パーティメンバーについては、リーダーの場合、メンバーの名前を、リーダーではない場合リーダーの名前を書いてくれ」



 パーティとして明確に登録はしていないが、既に大体のメンバーはもう決まっている時期だ。


 スキルや称号、レベルは任意項目になっている。必須なのは、名前とダンジョンに入っている時間、パーティ項目だけだ。



「適当書いてもいいの~?」(白雪)


「嘘は書くな。その場合は空欄にしろ」(平岡)


「一応パーティメンバーだけど、別行動が多い場合はどうすればいいですか? あと欄が足りません」(加藤)


「あーそれは……とりあえずメンバーだと思っている人間書いておけ。別にパーティ組んでいるからといってどうこうすることは無いからな」(平岡)


「あと、足りない場合は欄の外にでも書いておけ」



「はーい。黒田の名前なんだっけ?」(加藤)


「加藤君って名前なんだっけ?」(小町)


「私がいつも呼んでるだろう、じゅげむじゅげむぱいぽぱいぽ――」(白雪)


「やめい。浩平だ浩平。探索者カードに載ってる」(加藤)


「じゃあなんで俺に聞いたんだよ」(黒田)


「なんとなく」(加藤)




 ダンジョン6層


 加藤達と嵐山達が、勢ぞろいしていた。



「さて、『レッサーポーションが土臭くて飲めたもんじゃねぇ、でも下手に蒸留とかすると回復しなくなっちゃう、いかに能力を落とさずに抽出できるか』の会を始めます」(白雪)


「おう」(嵐山)


「うぇーい」(陽子)


「面倒くさくね?」(加藤)


「でも味は重要じゃね?」(黒田)


「ごくごく飲むんかと言われるとなぁ」(長谷川)


「はいはい、しゃーらっぷ」(白雪)




「双子ちゃんのためにも彼には協力してもらうんだから、ちゃっちゃとやるよ」(白雪)


「へーい。で何やるの?」(加藤)



「手作りろ過装置を作るよ。嵐山君で実験したところ、中身が現代ものだと回復能力がなくなっちゃう。じゃもし全てダンジョン物だったら? というのがミソです」(白雪)


「必要なものは、小石、砂、脱脂綿、備長炭のようなものだね」(白雪)


「備長炭って作れるの?」(皆川)



「通常の炭と備長炭の違いは、微細な穴が多くて吸着能力の高い炭部分との接点が多いこと」(白雪)


「本来は、通常の炭よりも高い熱で処理したり、高温の蒸気を吹きかけて作るもんなんだけど、できなくても細かく砕いて表面積を広げてやればいいと思う」(白雪)


「なるほど」(皆川)



「ただ、七森君の【保温】スキルがあればできると思っているんだよね」(白雪)


「再三言うけど、別に泥水を真水にしたいってわけじゃないからね。そこまでこだわる必要はないと思う」(白雪)



「まず炭は木材がなければ始まらないから、木工持ちの千鶴ちゃんと、薬師持ちの陽子ちゃん、須藤君、長谷川君、嵐山君は木材側で4層へ行ってもらうよ」(白雪)


「砂は2層の魔砂を持ってくればいいですかネー」(メリッサ)


「石ころなんかそこら辺に転がってないっけ?」(黒田)


「いや、案外なくね?」(加藤)


「4層とか?」(皆川)


「待ちたまえ、4層の小枝とかセーフルームに持ち込めなかったからね、そこらへんの石ころじゃだめだよ」(白雪)


「なら、どうするんだ?」(加藤)


「今回は使わない方向で。あれはゴミや虫を取り除くのが目的だからね、ポーションには元々そんなもの入ってないでしょ。それに魔砂で代用できるからね」(白雪)



「脱脂綿は?」(加藤)


「羊」(白雪)


「……脱脂綿とは?」(加藤)


「便利だね羊は」(白雪)


「というわけで、他のメンバーは羊から毛皮を取って来てくれたまえ。まぁ1枚もあれば十分足りるから、一応2枚くらいあればいいよ」(白雪)


「へーい」(加藤)


「それじゃ、行動開始」(白雪)


……………………………………………………



「不思議だな、切ると木の種類が変わるなんて」(嵐山)


「まぁダンジョンだからね」(長谷川)


「この木材っすね、前炭を作るときに使ったのは」(陽子)


「ええ、それじゃ運ぼうかしら」(千鶴)


「わかりました」(須藤)


「おれも手伝う」(嵐山)



 前回炭を作るのに使った窯はそのままだったので、今回も使う。



「おかえりー、窯の整備は終わってるよ」(長谷川)


「やっぱりこっちは誰もこないっすね」(陽子)


「ですね。それじゃ、切り分けたものから【乾燥】を掛けてください」(千鶴)


「了解っす」(陽子)


「わかった」(嵐山)


「じゃ切り分けたコッチは七森君のとこへ持って行ってもいい?」(長谷川)


「ええ、お願いします」(千鶴)


「あれは?」(嵐山)


「旋盤がありますからね、おがくずにしてもらうんですよ」(千鶴)


「……おまえらの寮はどうなってるんだ?」(嵐山)



 やがて長谷川が七森と一緒に大きなゴミ袋4つにおがくずを詰めて戻って来た。一気に燃え広がらないように荒めに削ってるとのことだった。



「いやぁ注目されたね」(長谷川)


「は、恥ずかしかった」(七森)


「そいじゃ、始めましょう」(千鶴)



 既にスキルで乾燥され、ひび割れをスキルで修理された薪は既に窯の中でやぐら組されている。その中におがくずをこれでもかと放り込む。


 ほぼ全てのおがくずを入れると。いよいよ着火だ。ゆっくりと火が広がっていくのを見届けると七森が【保温】のスキルを掛けて窯は密封された。


 保温は対象の温度を保存する。つまり周りの温度が高ければスキル中は熱を吸収しつづけ、逆であれば放熱し続ける。



 天井に開けられた穴から出る煙を見ている。



「これで作業は終わりか」(嵐山)


「煙が消えたら、天井を封鎖して完了だね。出来上がりは明日かな」(長谷川)


「結構時間が掛かるんだな」(嵐山)


「しっかり時間かけて冷やさないといけないらしいからね」(長谷川)


「妹ちゃんの様子はどうっすか?」(陽子)


「おう、見違えるほど元気になってるよ」(嵐山)



 妹の話題になったとたん顔を輝かせる嵐山。


 ああ、大熊の言ってたのはこのことかと理解した彼らだった。




 翌日、天井だけ穴をあけ、再び【保温】を掛けて、冷却をさせてから木炭を取り出した。


 2日後、嵐山は上機嫌で「ペットボトルで作る手作りろ過装置」を自作して、持って帰っていった。


 実験結果としては、成功した。色々変えて試した結果、においと味だけ取り除きたければ炭だけでいいのだが、炭の粉が混入してしまう。


 なので、羊毛を束にしたものでサンドイッチしたものが一番良いことになった。こちらは色もほぼ透明にできる。魔砂はどちらでもよいが、一気に水が落ちるのを防ぐためにはあった方がいい。


 ポーションを入れる側から、魔砂、羊毛束、細かく砕いた炭、羊毛束の順に詰めたもので、ほぼ無味無臭のレッサーポーションが飲めるようだ。


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