錆びた時計
12月。体をひんやりとした空気がくすぐる。
・・・まだ起きたくない。
18時50分、カップ麺とペットボトルだらけの薄汚い部屋で、
パンツ一枚で毛布に包まる自分に動けと念じて眠気に抗う。
6勤1休10時間労働。今日も自分を無にして職場へと発つ。
寒空では星と月がワルツを踊る。
地面では生きる屍達が墓場へ行進する。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
機械が体調不良を訴える。
いつもの症状、ボタンを押して健診、治療していく。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
体に鞭打ち働く。
体に鞭打ち働く。
体に鞭打ち働く。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
オンボロ機械で商品を梱包していく。
何時間経ったのだろう。ああ、休憩の時間か。
食堂で掛け蕎麦タイムアタック。
ゴムに七味をかけてお冷やで体に流し込む。
腹を満たして〆の魔財。
体にガソリンをぶち込みエンジンを掛け直す。
ああ、今頃あいつらは何をしてるんだろう。
地元で就職して車買ったドライブ好きのアイツ。
大学進学で上京した頭の良いアイツ。
俺と同じ建築士になろうとして進学した幼馴染み。
それに比べて俺はなんだ?
薄汚い工場、薄汚い作業着に身を包み、目は底の無い暗さ。
父親の厳しい教育、仕事人間の母親、転学、伸びない成績。
鉄拳。裂ける家庭。腐っていくかすがい。離婚、、、父の死。
職場のパワハラ。制裁。軟禁。失踪。
なんで俺だけ?
込み上げる嫉妬、憤怒、絶望。
なんで俺より出来ない奴らが幸せなんだ?
あり得ない。許し難い、否、許せない。
全てを底に押し込み笑顔の仮面を被る。
明日生きる為に働く。胡麻擂り。働く。胡麻擂り。
このまま錆びて朽ちていくのだろう。
埋もれて、黒に塗りつぶされて、全て無くなってしまえばいい。
ああ、夢か。
18時50分、目が覚める。
顔を洗い、髭を剃り、眉を整える。
今日も、明日も、仕事。
だが、それでいい。
時薬で体も心も癒やされていく。
19年間を無に帰してまた1から。
時計の秒針が動き始める。
今から、これから。
薄汚い作業着で家のドアを開ける。
今日も、星が輝いている。
最後までお読み頂きありがとうございました。
明日も出勤です。