木瀬野大和、登場
この作品は自分に与えられた遺伝子に不満を持たれている全ての方へ捧げます。
「ふぅーっ、なんとか終わったね」
利治が安堵のため息を吐いた。
時計の針は午前五時半を回っている。
「みんなで力を合わせた甲斐があったってもんだな」
隼一がやり切ったという顔で爽やかに微笑む。
「まあ、こういうのもアリだよな、にひひ」
零美がいたずらっ子のように笑う。
「しっかし、たまげたぜ。
八丈島ってのはそんなに教育が進んでいんのかよ?」
玄夢が合宿前に宿題をやり終えていた厄斗に対して尋ねた。
「本土に渡るにはそれなりの学力も必要だからな。教官から叩き込まれた」
「教官? 先生じゃなくて?」
無表情で答えた厄斗に桜花が質問を浴びせた。
「ん? 向こうではそう呼ぶ」
「そうなのですのね」
「ところで、みんなは美術の宿題は何を描いたの?
僕はあそこの時計をデッサンしたよ、面白そうだったし」
利治は得意げにA4サイズのスケッチブックを披露した。
時計は複雑で難易度が高そうな題材ではあったが、彼にとっては面白いという事の方が優先順位が高かった。
「良くそんな時間が掛かりそうな題材を選んだな。
アタシは消しゴムを描いた、あははは」
零美は照れくさそうに絵を見せた。
「俺も似たようなもんだ。鉛筆だからな」
頬をポリポリと掻きながら隼一が告げた。
「俺はティーカップだよ」
玄夢が続いた。
「私は‥‥水城くんをデッサンしましたわ」
桜花が恥ずかしそうにスケッチブックを広げた。
「う、上手ぇ‥‥」
利治、隼一、零美、玄夢が感嘆の声を上げた。
「けどよ‥‥お前まで宿題に付き合う事なかったろうに‥‥」
隼一のツッコミに桜花が顔を赤らめた。
「そ、それは‥‥時間を持て余していたもので‥‥。
何もしないでいるというのも‥‥」
桜花が目を泳がせている。
「拙者も隼一を描いた」
「えっ!?」
厄斗の発言に一同が驚いた。
「まぁ、どんな絵か見せてくださいな」
思わぬライバル出現に桜花は焦りを覚えた。
「これだ」
厄斗の絵に一同は絶句した。
「これが‥‥俺?」
「‥‥アート‥‥の範疇を超えているような‥‥」
「なんつーか、漫☆画太郎先生のよりスゴかねぇか?」
「アタシ、どっかで見た覚えが‥‥。
そうだ! 『はだしのゲン』の被爆者だ!」
「うん、気持ち悪いね。
本当に提出するの、それ?」
口々に感想を述べる一同。
「人間など一皮向けば皆同じだ。
血と便の詰まった腸詰に過ぎない」
絵に込められたメッセージ性を語る厄斗に、
「いいから、絵をしまえーっ!」
「いいから、絵をしまってよ!」
「いいから、絵をしまって下さいっ!」
思わず突っ込む一同。
(これを見せられた美術の先生に同情するよ)
隼一は心の中で呟いた。
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