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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第十六章 天然の人たらし
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天然の人たらし【Bパート】

 コンコンコン。


 宿題を開始してから小一時間経った頃、部屋のドアが叩かれた。


「あ、はい」


 桜花(おうか)が美しく立ち上がるとドアを開けに向かう。


 ガチャ。

 ドアの向こう側には数人のメイドが立っていた。


「お嬢様、お食事をお持ちしました」


「ああ、ありがとう」


 ● ● ●


「ごちそうさま~。ふぅ、食べた食べた」


 腹をさすりながら満足気な表情の利治(としはる)


「良く他人(ひと)んちで六杯メシ食えるよな、お前」


 お代わりが一回も出来なかった良識人の玄夢(くろむ)が呆れたような物言いで利治をジト目で見た。


「だって錫木(すずき)さん、遠慮しなくていいって言ったじゃん」


「そりゃそうだけどよ。

 でも、言葉通りに受け取っていると今に痛い目に()うぞ?」


「その時はその時だよ。ねっ?」


「なんでアタシに合意を求めンだよ?」


 零美(れみ)がぶっきらぼうに問う。


「だって、四杯食べてたし」


「う、うっせえ! なに他人(ひと)の行動、観察してんだよ!?」


 頬を紅潮させる零美。


「いや、良く食べる子だなぁって。ちょっと驚いた」


 笑顔で答えた利治に零美は返す言葉を見失った。


「リチ、満腹は思考を愚鈍化(ぐどんか)させ睡魔を招く。

 腹八分‥‥いや、お前の場合は腹四分でちょうどいい」


「そうだぞ仁敷(にしき)、今日はこれからが俺たちの戦いなんだからな」


 厄斗(やくと)(たしな)めの言葉に隼一(しゅんいち)が呼応した。


「ああ、そうだったね。

 ごはんが美味(おい)しすぎてすっかり忘れてたよ」


「忘れてたって、お前‥‥そりゃ、桜花んちの料理は最高に美味(うま)いけどよ」


「隼一くん、お代わりはいかが?」


 桜花が最高の笑顔で問い掛けた。


「ああ、俺はもう。この後の勉強に差し支えるからな、あはは」


 隼一の笑い声は場の雰囲気を和ませた。

 約一名を除いて。


「あんだよ、別にテメェが作った料理じゃねぇだろ。なに得意になってんだよ?」


 零美が突然、桜花に噛みついた。


「あらあら貴方(あなた)、もしかして嫉妬しているのですか?

 んふっ、みっともなぁい」


 桜花の笑みは黒い笑みに変わった。


「嫉妬だぁ?

 ハン、言っとくけどなぁ、アタシは料理にゃちょっと自信があんだよ。

 包丁も握った事もないようなどっかのお嬢様と違ってな!」


「なっ‥‥!?」


 わなわなと震え出す桜花を見て零美は口端(くちは)を上げた。


「おいおい、ケンカはやめろって」


 玄夢が慌てて止めに入る。


「競うんだったら野球でやってくれ」


 隼一も折衷案(せっちゅうあん)を投げ掛けた。


「勉強も野球も縁生(へりうむ)さんに勝ち目ないじゃん。

 料理対決で花を持たせてあげたら?」


 利治の言葉にカチンとくる零美と桜花。


「勉強はともかく、アタシが野球で引き(こも)ってたコイツに勝てねぇってどういうこったい?」


 勢いよく立ち上がる零美。


「わ、私だって料理のひとつやふたつ‥‥」


 そして桜花もまたすっくと立ち上がる。


「経験値が全然足りないんだよねぇ」


(バッサリいった!)


 隼一と玄夢が心の中でユニゾンした。


「それは! ‥‥まあ、そうなんだけんどよぉ」


 途端にしどろもどろになる零美だったが、


「んじゃあさあ、どうやったら勝てる!?」


 すぐさま思考を切り替えて問い返す。


「うん、バッティングと走塁は捨てよう」


 利治の提案は辺りの空気を凍らせた。

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