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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第十三章 女同士の覚悟
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女同士の覚悟【Cパート】

 ズデ――ン!


 零美(れみ)は何度、天井を見た事だろう。

 錫木(すずき)家の敷地内にある総合体育館。

 その二階が桜花(おうか)の祖父が運営している錫木流合気道の道場になっていた。


(何なんだよ、一体‥‥!?)


 焦燥感にも勝る屈辱感。

 勝負の内容はTKОを含めたノックアウト、もしくはタップを奪う事で決着する喧嘩マッチだった。

 零美はネックスプリングで起き上がると、すかさず右の跳び蹴りを道着姿の桜花に見舞う。


(立ち技の打撃が通用しないと踏んで跳び技で来ましたか。

 しかし、そのような曲芸、真剣勝負には――)


 桜花が零美の右足を払い退()けようと出した左手が空振った。

 眉を(ひそ)める桜花、してやったりの表情を浮かべる零美。


(もらいっ! 右足はフェイクなんだよ!)


 零美は空中で本命の蹴りを左足で繰り出した。

 ――が!


 ズデ――ン!


「かはっ!」


 天上を見たのはまたしても零美だった。


「少々しつこいので、これからは当て身も入れていきます」


 そう言うと桜花は長い黒髪を手櫛で()いた。



「ロミちゃんが、ここまで、相手にならない、なんて‥‥」


 正座で観戦していた四人。そんな中、鉄弥(てつや)が重い口を開いた。

 鉄弥の手には試合を止める為の白いタオルが握り締められていた。


「桜花には元々武道の才能もあったんだ。

 俺が野球で国立(こくりつ)に行くってんで、ソフトボールを選んだんだが――」


水城(みずき)くん、それノロケ?」


 利治(としはる)が空気も読まずにニマニマ顔で冷やかすと、隼一(しゅんいち)の顔が紅潮した。


「そんなんじゃねーよ。

 俺はただ、桜花の土俵で戦っている内は縁生(へりうむ)に勝ち目がないって事をだな‥‥」


「隼一の言う通り、今のゼロミの技量ではあいつに勝てない」


 厄斗(やくと)が断言した。


「厄斗くんなら勝てる?」


「当然だ、リチ。代わってもいいなら代わるが?」


「ダーメ。この勝負は縁生さんが勝たないと意味ないからね。

 ――ああ、でも、作戦の指示を与えるとかくらいだったらいいんじゃない」


「指示‥‥か」


 厄斗は思考を巡らせた。

 自分が勝つなら簡単だ。桜花の対応よりも速く動けばいい、それだけだ。

 だが、零美に百%勝たせる策略を伝えるとなるとかなりの難問だ。

 繰り出す技の全てが見切られている。ハッキリ言って格というものが違う。

 事実、こうしている間にもカウンターで肘を当てられ続けた零美は、床にその片膝を着かされていた。


「タイムだ」


 厄斗はおもむろに立ち上がると、闘っている二人に向けて告げた。


「あンだよ、勝負に水を差しやがって」


 不機嫌な表情を浮かべながらよろよろと立ち上がる零美。

 そんな彼女に厄斗は指を三本立てて告げる。


「お前がアイツに勝てる策は三つだ」


 零美は唾を飲み込むと、桜花に視線を合わせる。


「作戦タイムでしたら、どうぞご自由に」


 桜花はツンとした態度で零美に伝えた。


「けっ、後悔すんなよ?」


 零美は笑みを作った。

 明らかな攻め疲れ、それは自身が一番良く理解していた。

 零美は少しでも多くのインターバルを取るべく厄斗の元へとゆっくり歩を進めた。

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