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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第十一章 無理難題
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無理難題【Aパート】

この作品は自分に与えられた遺伝子に不満を持たれている全ての方へ捧げます。

「トムさんともあろうお方が、随分(ずいぶん)とまぁ厄介(やっかい)な事に首を突っ込んだものだねぇ」


 紫電(しでん)玄夢(くろむ)隼一(しゅんいち)たちに加入を約束したその夜、六號(ろくごう)を『トム』と呼ぶ銀縁の眼鏡を掛けた青年が黒いパソコンチェアに座った状態のまま話し掛けた。


「流れ的に、な」


 黒いソファーに座っている六號はぶっきらぼうに答えた。


「ま、いいんじゃないの、そういうの。

 ボクは好きだよ、面白いデータが取れそうだし」


 データをセーブし終えた青年はそう言うとチェアを反転させて六號に顔を向けた。


「面白いデータ?」


「トムさんは先祖から引き継いだものだから未知数な部分が多くてね。

 一説には異星人から教えられた技術だの、人間の魂を定着させているだのっていうトンデモな事を言われてたりする。――ふふっ、ボクは信じてないけどさ。

 でもホント、キミについてはわからない事だらけなんだよ」


「しかし、最新型の身体(からだ)はあなたが与えたものだろう、鍾馗(しょうき)博士」


「『与えた』に過ぎないよ、ボクは。

 何せ、ボクの所に来た時のキミの身体(からだ)()赤樫(あかがし)()びた鉄の塊だったんだからね。良くデータが吸い出せたと思うよ、我ながら。

 ‥‥でもまあ、記憶まで完全にとはいかなかったけど」


「――先日、俺の昔の写真だと言って見せてきた転校生がいた。

 確かにこの姿と良く似ていた」


「ほーう、それはまた興味深い話だねぇ。

 何せ、トムさんの容姿は超古い設計図を元に忠実に再現したモノだから」


「特務兵器六號、転校生はその名を口にした」


 六號の言葉を耳にした鍾馗はおもむろに立ち上がり、眼鏡のブリッジをくいっと上げる。


「今度キミの授業光景を見に行く事にするよ。ついでに部活光景も、ね。

 ボクはキミの所有者なんだから当然の義務だろ?」


「初めてだな」


「何せ、博物館の館長の仕事ってヤツは地味に多くてねぇ」


 鍾馗の目的は厄斗(やくと)の聴取である事は明白である。

 だが、その事が彼の口から語られる事は無いのは六號には経験則としてわかっていた。


「学校に伝えておく必要がある。日程が決まったら教えてくれ。」


 そう言うと六號も立ち上がり、踵を返した。


「おや、もう休息かい?」


「ああ。部活というものは意外とエネルギーを使う。

 今度メンテをする時にはバッテリーの要領を大きくする事も検討して欲しい」


「ほーい。

 んじゃま、ボクも充電タイムといきますかね」


「鍾馗博士、アルコールは程々に」


「大丈夫、大丈夫。一鳥(いっとり)家は代々肝臓が強いからねぇ。

 さあ、酔鯨(すいげい)、酔鯨っと」


 そう言うと鍾馗はキッチンへと向かって行った。


 ● ● ●


 翌日の部活帰り、校門前で利治(としはる)隼一(しゅんいち)に話し掛けた。


「前に水城(みずき)くんが言っていた『もう一人』について教えてよ」


「ん? ああ、そうだな‥‥」


 そう告げると隼一は利治から目を()らした。

 他のメンツも興味津々だが、明らかに話にくそうな隼一に対してせっつけない。


「で、名前は? 学年は? 住んでる場所は?」


 が、利治はお構いなしにグイグイ来る。


「‥‥学年は俺たちと同じ二年生。住んでる場所は()しくもここ曲川(くまがわ)だ。

 ――錫木(すずき)桜花(おうか)、それが彼女の名だ」


「えっ、女子なの? 女子かぁ‥‥大丈夫かなぁ?」


「おい、アタシん時はそんな心配しなかったよなぁ、あン?」


 利治の反応を見た零美(れみ)がすかさずツッコミを入れた。


「ああ、縁生(へりうむ)さんは女子だとは思っていないから」


 ガシッ!


 刹那、利治の首にプロレス技、マネークリップがガッチリ()まった。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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