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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第九章 雨上りの夜空の下で
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雨上りの夜空の下で【Cパート】

「ここは鷹城(たかぎ)神社?」


 暗い神社裏に案内されたロミは辺りを見回しながら(つぶや)いた。

 雨は既に降り止んでいたが、地面はぐちゃぐちゃで足場は悪い。


(こんな中で四対一で襲われたって、このアタシが負けるはずがねぇってもんだ)


 確固たる自信。

 いや、少し弱気になっている自分を無意識に奮い立たせているのかもしれない。


 鉄弥(てつや)は性格的に(かんが)みて敵になるとは思えない。

 仁敷(にしき)と呼ばれた少年は取るに足らないだろうし、隼一(しゅんいち)と呼ばれた少年は身長や体格はあるがケンカが強いタイプではなさそうだ。

 問題はただ一人、厄斗(やくと)と呼ばれた少年だ。彼から発せられる得体の知れない何かが彼女自身に危険信号を伝えていた。


「お待たせーっ!」


 利治(としはる)の明るい声と共に照明が点いて神社裏はたちまち明るくなった。


「仁敷、これは?」


 隼一が(たず)ねる。


「お待たせーっ!」


 利治(としはる)の明るい声と共に照明が点いて神社裏はたちまち明るくなった。


仁敷(にしき)、これは?」


 隼一(しゅんいち)(たず)ねる。


「ナイターくん1号、2号、V3(ブイスリー)だよ。

 彼らはみんなノッカーくんのオプションなんだ。

 そして全て自家発電式!」


 ノッカーくんの脇でニカッと笑う利治が得意気に説明をした。


「――で、(なに)で遊ばせてくれるんだい?」


「ビニールボールさ」


 利治の手には黄色いビニールボールが握られていた。


「野球ごっこならお断りだ」


「違うよ、野球対キックボクシングの異種格闘技戦だよ。

 バットで打つ二十七球のうち、半分以上パンチやキックで撃ち落とせたらキミの勝ち。

 撃ち落とせなかったら僕らの勝ち。

 ――どう?」


「フッ、面白(おもし)れぇじゃねぇか。

 飛んでくるピンポン玉を()ける練習ならやった事があるが、撃ち落とすってのは初めてだ」


「決まりだね。

 じゃあ、このノッカーくんの真正面に立って。

 ボールはキミのウエスト辺りを中心にして左右二十cm(センチ)、上下五十cm(センチ)の範囲に飛んで行くから」


 ノッカーくんのバットは既に赤いプラスチック製のバットに差し替えられている。


「どれくらい離れりゃいい?」


「それはキミのプライドに任せるよ。

 自信がなかったら壁にへばりつくくらい離れればいいし」


 利治の返答を聞いてしまった以上、ロミはノッカーくんに近づく以外なかった。



「厄斗、お前なら出来るか?

 あの距離、三メートルも無いぞ」


 事の成り行きを見守っていた隼一(しゅんいち)が隣りの厄斗に(たず)ねた。


「避けるのは簡単だ。

 だが、迎撃となると難度は跳ね上がる。

 我が流派の体術にも至近距離の打撃技を潰す打撃技が存在するが、それは神業(かみわざ)に等しい」


 厄斗の脳裏には六號(ろくごう)の繰り出した土竜(もぐら)(つぶ)しがリピート再生されていた。



「それじゃ、始めるよ!」


「ああ、いつでも来いってんだ!」


「――ノッカーくん、始めて」


 利治の声に反応して起動を始めるノッカーくん。


 ビシッ!


 プラスチック製のバットが黄色い標的を引っ(ぱた)く音がするや否や、


 バスッ!


 ロミの左頬をかすめたボールが背後の壁に激突する音が響いた。


(このアタシが反応出来なかった‥‥)


 予想以上に速い。

 だが、ここで下がる訳にはいかない。

 下がる事はロミにとって逃げるのと同等の意味を()していた。


 ビシッ!


 容赦なく次の打球が飛んでくる。


「!?」


 咄嗟に目の前に飛んできたボールを紙一重で()けるロミ。

 当然だ。そういう訓練を積んできたのだから無意識のうちに身体(からだ)が動いてしまう。


(かわ)すんじゃねぇ、撃ち落とすんだ!)


 ロミは自分に言い聞かせた。

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