雨上りの夜空の下で【Bパート】
「あ、本当だ。確かに誤字ってるね。
まあ、僕は見直しなんかした事ないから。牡羊座だからね」
利治は素直に否は認めたが反省はしなかった。
「アタシは気が短けぇんだ! 早く最強の男と闘わせろ!」
高身長の彼女は苛立ちを抑えきれなくなっていた。
場を治めるべく利治は一歩前へ出る。
「ねえ、キミ、落ち着いて。
僕たちが求めていたのは強い肩の子、つまり強肩の子って事でさぁ」
「ショルダータックルなら負ける気しねぇし、狂犬だよ、アタシは!」
「投げたり捕ったり出来る子を――」
「レスリングも出来るんだ、アタシは!」
「それに強い打撃力もあれば――」
「キックもパンチも破壊力満点だ、アタシは!」
「パンチ力は必要だけどキック力は求めてないよ。
あくまでもバッティングだね」
「頭突きくらわしてボクシングで反則負けになった事もあるけど、相手はKОしたぜ!」
どこまでも平行線だった。
「なんてわからず屋だ。それに自己主張も強いし。
キミ、牡羊座だろ?」
「良くわかったな!」
「――なら、しょうがないか」
「いやいやいやいや、そこで納得しちゃ駄目だろ」
すかさず隼一がツッコミを入れた。
「‥‥も、もしかして、ロミちゃん、なの?」
今まで沈黙していた鉄弥が割って入った。
「!? 鉄‥‥まさか、アンタがいたとはね。
――ちっ、シラケちまった」
高身長の彼女はバツが悪そうに頭を掻いた。
「地波くんの知り合い?」
「うん、まあ‥‥ね。
僕が訳あって、し、施設に、入った時、一緒だったん、だ」
「施設?」
隼一が訊き返した。
「‥‥その話、いつかする、から、今は‥‥ね」
「ん? あ、ああ‥‥」
明らかに話しにくそうな鉄弥に、今度は隼一が頬を人差し指で掻いた。
「ねえ、せっかく来てくれたんだし、ちょっと遊んでいかない?」
利治は沈みかけた空気を屈託のない笑みと声で吹き飛ばした。
「あーン?」
ロミと呼ばれた高身長の彼女は気だるげに声を発した。
「それとも逃げちゃう? いいよ、別に」
意地悪な挑発。
「誰にモノを言ってやがる?」
「それぐらい察してよ」
カチンと来るロミ。
「くだらねぇ遊びだったら、頭かち割んぞ、コラ」
「退屈はしないと思うよ」
利治は目をギラつかせているロミに対して白い歯を見せた。
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