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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第九章 雨上りの夜空の下で
27/52

雨上りの夜空の下で【Bパート】

「あ、本当だ。確かに誤字ってるね。

 まあ、僕は見直しなんかした事ないから。牡羊座だからね」


 利治(としはる)は素直に否は認めたが反省はしなかった。


「アタシは気が(みじ)けぇんだ! 早く最強の男と闘わせろ!」


 高身長の彼女は(いら)()ちを抑えきれなくなっていた。

 場を治めるべく利治は一歩前へ出る。


「ねえ、キミ、落ち着いて。

 僕たちが求めていたのは強い肩の子、つまり強肩の子って事でさぁ」


「ショルダータックルなら負ける気しねぇし、狂犬だよ、アタシは!」


「投げたり捕ったり出来る子を――」


「レスリングも出来るんだ、アタシは!」


「それに強い打撃力もあれば――」


「キックもパンチも破壊力満点だ、アタシは!」


「パンチ力は必要だけどキック力は求めてないよ。

 あくまでもバッティングだね」


頭突き(パチキ)くらわしてボクシングで反則負けになった事もあるけど、相手はKОしたぜ!」


 どこまでも平行線だった。


「なんてわからず屋だ。それに自己主張も強いし。

 キミ、牡羊座だろ?」


「良くわかったな!」


「――なら、しょうがないか」


「いやいやいやいや、そこで納得しちゃ駄目だろ」


 すかさず隼一(しゅんいち)がツッコミを入れた。


「‥‥も、もしかして、ロミちゃん、なの?」


 今まで沈黙していた鉄弥(てつや)が割って入った。


「!? 鉄‥‥まさか、アンタがいたとはね。

 ――ちっ、シラケちまった」


 高身長の彼女はバツが悪そうに頭を掻いた。


地波(ちなみ)くんの知り合い?」


「うん、まあ‥‥ね。

 僕が訳あって、し、施設に、入った時、一緒だったん、だ」


「施設?」


 隼一が()き返した。


「‥‥その話、いつかする、から、今は‥‥ね」


「ん? あ、ああ‥‥」


 明らかに話しにくそうな鉄弥に、今度は隼一が頬を人差し指で掻いた。


「ねえ、せっかく来てくれたんだし、ちょっと遊んでいかない?」


 利治は沈みかけた空気を屈託のない笑みと声で吹き飛ばした。


「あーン?」


 ロミと呼ばれた高身長の彼女は気だるげに声を発した。


「それとも逃げちゃう? いいよ、別に」


 意地悪な挑発。


「誰にモノを言ってやがる?」


「それぐらい察してよ」


 カチンと来るロミ。


「くだらねぇ遊びだったら、頭かち()んぞ、コラ」


「退屈はしないと思うよ」


 利治は目をギラつかせているロミに対して白い歯を見せた。

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