表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第九章 雨上りの夜空の下で
26/52

雨上りの夜空の下で【Aパート】

この作品は自分に与えられた遺伝子に不満を持たれている全ての方へ捧げます。

「みんな聞いて。昨日の夜、ネットでメンバーを募集したよ!」


 四月二十六日、天気は雨という事もあり、部の練習は体育館で柔軟運動をサーキット形式で行われていた。

 そんな中で利治(としはる)が突然の発表をしてきた。


「ネットで?

 まあ、地波(ちなみ)みたいに他の中学のヤツが増えても問題はないか」


 両膝横倒しという運動をしながら隼一(しゅんいち)が答えた。


「集まる、と、いいね」


 鉄弥(てつや)が続いた。


「リチ、ネットとは何だ?

 網を張って掛かったヤツらを部活に引きずり込むのか?」


 厄斗(やくと)が真顔で(たず)ねてくる。


「あはは、もう、厄斗くんは冗談ばっかり。

 ネットって言ったらインターネットの事に決まってるじゃん」


「なるほど、インターネットの事をネットと略すのか。

 ――奥が深いな、日本語は」


「深いって程のもんじゃないけどね」


 利治は運動をヒップアップに切り替えて返した。


「で、どんな募集を掛けたんだ? 内容は?」


「今、僕たちに足りていないのは何と言ってもバッテリーだろ?

 だからね、『強い肩、大募集! 現在、我が野球部には最強の男がいます! 我こそはと思う人は曲川(くまがわ)市立扶士宮(ふじみや)中のグラウンドまで!』ってコピーで」


「おい、最強の男って、まさか俺の事じゃないだろうな?」


「そんなん、決まってんじゃん、水城(みずき)くんに。

 キミのようなオバケ肩、メジャーでもなかなかいないよ」


 そこまで言われたら隼一とて悪い気はしない。むしろ、こそばゆいくらいだ。


「‥‥ノーコンだけどな、俺は」


「リチ、メジャーとは何だ?

 巻尺で絞りつけて言う事を聞くまで拘束するのか?」


「あはは、もう、厄斗くんはホント冗談ばっかり。

 メジャーって言ったらメジャーリーグの事に決まってるじゃん」


「そうなのか。

 ――やはり奥が深いな、日本語は」


 厄斗はそう言うと、運動をハムストリングス伸ばしに切り替えた。


 ● ● ●


 体育館が使用出来る限界の十八時まで存分に筋力トレーニングに励んだ四人は制服に着替えて外へ出た。

 雨は依然降り続いている。そんな中、


「ん!?」


 何かを感じ取った厄斗が左手を広げて隼一たちを制した。


「どうした、厄斗?」


「誰かいる。しかも、凄い殺気を放って。

 テロリストかもしれない」


 厄斗が身構える。おそらく今回武器になるのは右手に差している学校指定の黒い傘であろう。


「落ち着け、厄斗。

 ここは日本だ。テロリストなんかがいる訳がないだろ」


 制する隼一。

 その声を掻き消すように、


「――で、誰だい、最強の男っつうんは?」


 ウインドウブレーカー姿の人物は暗がりから姿を現した。

 声の感じでは女性だが、身長は隼一と変わらないまでの高さがあった。


「もしかして、ネットを見て来てくれたのかな?」


 利治が歓迎ムードで声を上げる。


「ああ、そうさ。

 その最強の男を倒しにアタシは来た」


 殺気をビンビンに(みなぎ)らせながら高身長の彼女は言い放った。

 茶髪のショートボブ、大きな釣り目は見るからに気の強そうなイメージだ。


「えっ、倒す? 倒すってどういう事?

 野球部の仲間になりに来たんじゃないの?」


 利治が首を(かし)げて問う。


「仲間? ハッ、冗談は抜きだ。アタシはいつだって一匹狼なんだよ」


「話がまったく(もっ)て見えないぞ。

 仁敷(にしき)、お前の宣伝打ったヤツを見せてくれ」


 隼一が利治に問い(ただ)す。


「ちょっと待ってて。

 えーと‥‥ああ、あった。

 ――はい、これだよ」


 利治はスマートフォンを隼一に見せた。


「‥‥おい、『強い肩』の所、『強い(かた)』に誤字ってるぞ」


 これでは道場破り大募集だ。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白いねぇ、この作者さんの書かれる文章。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ