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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第七章 六號VS厄斗
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六號VS厄斗【Bパート】

「ちょっ、ちょっと待て! 落ち着け、厄斗(やくと)


 慌てたのは隼一(しゅんいち)だ。


「これは一宿二飯の恩義の範疇(はんちゅう)ではない。

 ()いて言うならば利害の一致だ」


(何の利害だ!?)


 クラス全員が心の中でツッコんだ。


(忍者の任務の事なんだろうけど、そんなの公言する訳にはいかないだろうしな)


 隼一は右手の指先で後頭部を掻いた後、手を差し出した。


「よろしく頼む、厄斗」


「これが握手というものか」


 厄斗がそれに応じる。


「今年の転校生はヤバいのばっかりだな、ったく」


 先程、厄斗に忠告した男子が小声でぼやく。

 その次の瞬間、厄斗が彼の背後を取る。

 その男子の喉元には鉛筆の尖った芯先が突きつけられている。


「ひいっ!」


 ビビりまくる男子の耳元で厄斗は語り掛ける。


「言いたい事があるならば直接言う事だ。

 これが拙者からの忠告だ」


(こ、コイツのヤバさ、ハンパねぇっ!)


 クラス全員が厄斗に戦慄を覚えた。


 ● ● ●


 その日の放課後、グラウンドにはいつもの三人の他に顧問の六號(ろくごう)と新入部員の厄斗がいた。


「今日からこの部の顧問になった扶士宮(ふじみや)中の日本史教師、(わたり)六號(ろくごう)だ。

 初対面の生徒もいるので言っておくが、俺はロボットだ。

 手を抜けない性格なので、お前らをしごきまくるからそのつもりで覚悟しろ。よろしく頼む。

 ――では、キャプテンの仁敷(にしき)から挨拶だ」


 六號は挨拶を終えると、バトンを利治(としはる)に渡した。


「僕はこの部のキャプテンをしている仁敷利治。

 目的は野球部を復活させて、全国大会に出て優勝する事。

 ポジションはサード。特技は守備範囲に来たどんな打球も真正面で捕る事。

 好物はバナナとローストビーフ。性格は負けず嫌いでワガママな牡羊座。

 よろしく!」


 この辺りブレがない。

 もっとも、牡羊座が全員ワガママだとは言い切れないだろうが。


「――はい、次は地波(ちなみ)くんね」


「え‥‥えと‥‥大俵(おおたわら)中の、地波(ちなみ)鉄弥(てつや)、です。

 ポ、ポジションは‥‥まだ、未定です。

 え、えと‥‥よろしく」


 鉄弥はジャージの裾をギュッと掴んだまま挨拶を終えた。


「じゃあ、次は水城(みずき)くん、よろしく!」


(いつからお前が司会進行になったんだ?)


 隼一が心の中でツッコミを入れた。

 そして、咳払いを一つ。


「この四月からここの中学に来た水城隼一。

 ポジションはセンター。特技は遠投‥‥つっても、どこへ飛んで行くかは保証しないけど。

 よろしく」


「最後はキミだよ、バッチリ()めてね」


 利治から無茶振りが来た。


「拙者の名は(ベリリウム)厄斗(やくと)

 野球の経験はないが、諸事情から『部活』とやらに参加する事にした。

 命の恩人である隼一の為に義を尽くす所存だ。

 特技はあらゆる物を武器にする事。――以上だ」


(何だ、その特技は!?

 素早い身のこなしぐらいにしておけよ、自己紹介ぐらい。

 ――引くぞ)


 再び頭の中でツッコミを入れる隼一。


「ベリリウムくんって、中米の人っぽい顔しているね」


 空気を読まない牡羊座が思った事を口にした。


「そうか? だが、拙者は日本人という設定だ。

 証拠なら――」


 だから何だよ、設定って。


「ま、まあ、いいじゃないか。

 八丈島にゃ、こういう顔もいるんだろうしさ」


 また巻物の家系図を取り出されると長くなりそうな気配を察した隼一が場を納めた。


「一通り挨拶も済んだな。

 何か質問はあるか? なければ――」


 六號がそこまで言った所で厄斗が挙手をした。

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