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キャプテンは牡羊座  作者: 鳩野高嗣
第三章 格下オーラに中てられて
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格下オーラに中てられて【Dパート】

「い、いいんだよ、ニッキー。

 ‥‥そ、それより、ごめん。‥‥ぼ、僕に、もっと人望、あったら、君に心配させる事、なかったのに‥‥。このピンチも、救えたのに‥‥」


 うつむき肩を震わせる鉄哉(てつや)。その両拳は固く握り()められていた。

 しかし、言葉は続けられる。


「ぼ、僕は、平気、だから‥‥か、彼らを、チームに入れて、試合を‥‥」


 利治(としはる)を安心させるべく顔を作る鉄弥。

 だが、次の瞬間、思わぬところから横槍が入る。


「ンなワケ、ねぇだろ!」


 隼一(しゅんいち)だ。


「俺のいた学校にもいじめはあった。それで潰されたヤツを何人も知ってる。

 平気なワケないんだ、絶対!

 ――で、どんな見返りを要求されたんだ? 金か? 金銭か?」


「水城くん、お金も金銭も一緒だよ?」


 利治のツッコミに隼一は赤面した。


「‥‥お、お金とかじゃない、から。」


 鉄弥が権田たちを庇っている可能性も否定出来ないと思った隼一は、権田に歩み寄ると、問答無用で襟首を左手で掴んで引き寄せる。


「何を見返りにした!? 言ってみろ!」


 いつしか権田の足が地面から浮き上がっていた。


「わ、わかった! 言う! 言うから下ろしてくれ! 苦しい‥‥」


「おっと、悪い。力の加減、間違えた」


 隼一はそう言うと権田を地面に下ろした。


「‥‥写真だよ、ただのコスプレ写真」


 権田はポケットからスマートフォンを取り出すと、フォトとあるマークを人差し指でタッチした。


「あっ、見せちゃ、らメっ‥‥」


 慌てる鉄弥だったがもう遅い。隼一と利治の網膜にそれは焼き付いた。


「こっ、これは、メイドさんだよな!?」


「これ、本当に地波くんなの!? すっごく可愛いんだけど!」


「まだまだあるぜ」


 調子に乗った権田はアニメヒロインのコスプレを次々に見せつける。


「ところで、この衣装どうしたんだ?」


 隼一の質問を待ってましたとばかりに権田がどや顔で、


「俺が作った。

 何せ、ウチは江戸時代から続く呉服屋だからよ、ガキん頃から裁縫を教わってたんだよな」


 と、大きな腹をせり出した。


「で、どうよ、俺たちを加えるって気持ちに変わったか?」


 田沢が利治に(たず)ねる。


「変わんない。お断りだよ、べー」


 牡羊座は自分の主張を曲げる事はなかった。しかも、またしてもあっかんべー付きだ。


「に、ニッキ―、どうして、なの?」


「どんな形であれ、見返りを求めるっていう根性が気に入らないんだよね」


「おいおい、せっかく地波(ちなみ)があんな恥ずかしい思いをしてまで集めたんだぞ!

 俺なら死ぬね、あんな恰好させられたら!」


 さすがの隼一も利治に意見せざるを得ない。その脇では赤面した鉄弥が(うずくま)る。


「じゃあ、彼らがどんだけ使えるか、テストしてみよっか。」


 利治は上から目線で挑発した。


「何っ、テストだと!?」


 怒る権田一派。


「一人三球ずつ。君たちが地波くんから一球でも空振りを取れたら、その人だけチームに加えてあげるよ」


「上等だ、オラ! じゃあ、俺からでいいな!?」


 権田が真っ先に名乗りを上げた。


「地波くん、わざと空振りするのはナシだよ。いいね?」


「‥‥う、うん」


 地波は静かに(うなず)いた。


 ● ● ●


 決着はついた。

 全球とも鉄弥は打ち返した。


 赤っ恥を掻かされた権田一派は肩を落とし、グラウンドを去って()った。



「振り出しに戻ったけどよ、どうすんだ、これっから?」


 隼一が利治に(たず)ねた。


「さあ、どうすべね?」


「無策かよ!?」


 隼一のツッコミがグラウンドの静寂を駆け抜けていった。

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