安心できる味 【月夜譚No.249】
たとえインスタントの味噌汁でも、あるのとないのとでは全然違う。食事の合間に啜るこの温かさが、どんなにほっとすることか。
知らず知らずの内に、味噌汁が心の支えになっているとは思わなかった。食事時に脇にあるのが当たり前で、何日も口にすることがない日々など、想像もしていなかった。
しかし、今なら分かる。自分にとって、味噌汁は結構重要な位置にいたということを。
青年は一汁三菜の食事を黙々と進め、最後に少し残しておいた味噌汁を飲み干して、満足そうに息を吐いた。
昨日まで、彼は海外出張に出ていた。本来ならば数日で帰ってこられるはずだったのだが、トラブルが相次いで、結局は一ヶ月ほど帰国できないでいたのだ。
やはり母国は安心する。何より、慣れ親しんだ味はそれを更に強く印象づけた。
今度から出張に行く時は、インスタントの味噌汁を持参しよう。
青年はそう密かに決意した。