プロローグ
――さすがに緊張してきたみたいだな。
声を掛けてきたのはアキだ。緊張を隠せずにいる俺に苦笑してやがる。
「ハルがタキシードなんて似合わねぇな」
「うるせぇ」
「いっその事、オレが代わってやっても良いんだぜ?」
「冗談じゃねぇ。おまえなんかに琴音をやる訳ねぇだろ」
「昔もそんな事を言ってたな。でもまぁ、その調子なら大丈夫みたいだな」
「琴音は? 桑原さんが着付けしてるんだっけ?」
「向こうも順調だ。それにしても――」
「ん?」
「親父さんたち、良く認めてくれたよな」
「まぁ、付き合うなら最後まで責任持てみたいな事は言われたからな」
親父と玲香さんも再婚同士。さすがに「俺たち付き合ってる」と言った時は驚いてたし、正直、反対されると思った。
だが、親父たちから言われたのは「お互いを大切にしろ」とただそれだけ。それ以上は口出し一つせずに割と自由にさせてくれた。就職を機に家を出て二人で暮らすと決めた時も、形だけだが結婚の挨拶した時も俺たちの意思を尊重してくれた。
「こうなる事をある程度分かっていたのかもな」
「そうなのか?」
「たぶん、だけどな」
「まぁ、親が再婚同士ならあり得ない話でもないか」
「それでも本当に付き合って、結婚するなんてあの頃は思っていなかったけどな」
思えばあいつと出会って10年が過ぎようとしていた。
最初の頃は変に意識しあって妙な距離感があったし、互いの気持ちに気付いてからも親父たちの事もあり気疲れする事が多かった。
「なぁ、ハル。今更だけどさ、琴音ちゃんの何処が良かったんだ」
「さぁなー」
「は?」
「あいつがうちに来た頃はちょっと苦手意識があったからなぁ」
今更こいつに惚気話をしても面白くない。適当に誤魔化す事に決めた俺は琴音と付き合う少し前、高校2年の秋を思い出した。




