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9・王家からの手紙

「ティサ……おっ、マイリーもいたんだね。突然やって来て、仲のいい姉妹の話を割ってすまないけれど、少々急ぎの件なんだ。ティサ、先ほど早馬に乗った伝令の使者がやって来て、君にアルノリスタ王家から手紙が送られてきたよ」


「えっ、私に?」


「ああ。どうやら第二王子が君に会いたいらしい。ティサから聞いた昨夜の夜会での出来事は、親戚との再会の話ばかりだったけれど、もしかしてアルノリスタの王子とも会ったのかい?」


 全く思い当たらず、ぽかんとしたティサリアの隣で、マイリーンが再び目をつり上げた。


「お父様! そいつはおそらく、目玉の腐った王子よ!!」


(あぁ、あの人)


 ティサリアの脳裏に、婚約破棄、追放、そして魅了の解呪が成功した時の「はぶっ!!!」という奇声を上げたまま卒倒した青年の姿と、彼に向かって人々が「殿下」と呼んでいたような、おぼろげな記憶が蘇る。


(隣国の王子だったんだ……)


 思い当たった様子のティサリアを見て、いつもは余裕のある父の笑顔に、わずかな懸念が浮かんだ。


「手紙はね、王子がティサと個人的に話したいというお誘いだったよ」


 個人的とは書いてあるが、隣国の王家からティサリアの家へ正式な申し込みのため、少々ニュアンスが変わって来る。


 すぐに思い浮かぶのは婚約者候補の可能性で、勘の鋭いマイリーンはさっとティサリアを見た。


「お姉様、腐れ目玉から受けた無礼な内容を言わなかったのは、愚かな人違い野郎に会ったことを知られて、お父様とお母様を心配させたくなかったのでしょう? だけどこんな風に付きまとわれているんだもの、もっと家族を頼ってもいいと思うわ」


 妹と父から案じるような視線を注がれていることに気づき、ティサリアははっとした。


(みんな、私が人違いにあったことに薄々勘付いていたんだ)


 おそらく両親は、ティサリアが言い出さないのならと、無理やり聞き出すことはせず知らないふりをして、逆にマイリーンは姉が明らかに隠していることを懸念して、先ほどから夜会の話をせがんでいたのだと、それぞれの思いを知る。


 ティサリアはいつものように、娘の意見を尊重しようと穏やかに待つ父を見つめた。


(人様の黒歴史を、陰で言うのは気が進まないけれど。今回の話は隠してしまうと、解決から遠のいてしまうかもしれない)


 ティサリアは昨夜の夜会での出来事について、一通り説明した。


「お父様、話すのが遅れてごめんなさい。王子との婚約破棄の一件は人違いだったし、呪いも解けたし、追放にも従ったし、終わったことだと勝手に思い込んでいたの。まさか家に連絡が来るなんて」


「ティサが気にすることは無いよ。大変な思いをしていようだし、話したくないのなら無理に言う必要もなかったんだ。ただ今回の場合は正式な申し込みが来たから。君のためにも、とりあえず話を聞いた方が良いと思ってね。困っていることがあれば、これからも相談してくれるかい?」


「ありがとう、お父様」


 いつもの父の笑顔に、ティサリアの気持ちも少しほぐれて頷いた。




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