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77・証拠は揃っていた

「……もしかして甲板の一部始終は、ラウンジ側のモニターに映し出されていたんじゃないか?」


 ザックの呟きに、クレイルドは「音声も調整すれば聞こえる」と、ラウドが言っていたことを思い出す。


 モニター越しに見えるそのラウドは、クレイルドたちが自分に気付いたことを察し、ラウンジの状況を伝えようと口を開いた。


 その直後にモニターの音声が繋がり、ラウンジの騒然とした音が甲板に溢れる。


 届いた声はラウドのものではなく、彼の背後にいる乗客たちの怒声だった。


『聞こえているのか、フォスタリア公爵! いいや、こちらの映像や音声が甲板へ届いていないとしても、ワシらはしっかり貴様の暴挙を見聞きしていたのだから、しらばっくれても無駄だぞ!』


『そうだ! 飛空船を守っている守護竜と竜騎士を射落とせだなんて! 彼らのことはもちろん、貴様は招待した私たちの命を何だと思っているんだ!』


 ラウンジに集結している招待客の面々は、フォスタリアが魔導拘束具を付けられたまま失神していることに気づいていないらしく、音声が繋がる前からそうしていたように声を張り上げる。


『フォスタリア領民は家族思いだと聞く。そんな配下である弓騎士たちに対して、家族を盾にあんな脅しをするなど……見苦しいにもほどがある!』


『上に立つ者のすることとは思えませんが、フォスタリア公爵は飛空船内の最終決定権が自分にあると宣言していましたわ。弓騎士たちに非が有る無しは別として、今回私たちの身に起こった危機的状況に関しては、彼らに押し付けるのでなく、最終決定権のある彼自身が責任を取るという意味でしょうね?』


 その後もクレイルドに睡眠薬をかけるのは国家に対する反逆とも取れることや、扱いの難しい魔弾砲を無理に使おうとして飛空船を無防備にしたこと、ティサリアに「自分のことを褒めろ」と無理難題を押し付けたことなど、招待客のダメ出しはいくらでも出てきた。


『全くもって由々しき事態だ。ワシは近々王城へ出向き、文官たちに以前から上がっていたフォスタリア公爵に関しての問題を含め、今回の件をについても厳罰処分を求める』


『私は国王陛下へ直々に進言しよう』


『そうだ。この話はアルノリスタ王国をより良い場所とするために、皆で進めようではないか』


 ラウンジにいる招待客たちがなにやら心をひとつにし始めたところで、ザックはピースサインを下ろすと、フォスタリアの胸元に手を忍ばせ、睡眠薬の入った瓶を押収する。


「まぁとりあえず、皆さんの気持ちをなだめるためにも、フォスタリア閣下は丁重に船牢へぶち込むことにしますか」


 その声にはっとして、ラウドが慌ててピースサインを隠す。


『あ、こちらの映像と音声が届くようになったのですね。では私は調整してくれている魔導技師様に、そのことを伝えてきます』


 ラウドが画面越しから消えた後、ザックはフォスタリアをせっせと台車に積むと、成り行きを見守っていたティサリアへ振り返った。


「今回の件、飛空船を助けに来てくださったティサリア様と守護竜様が、一番の被害者となってしまいましたね。命まで狙われていたのですから、飛空船にいる皆さんもティサリア様たちの意思を尊重してくださると思います。フォスタリア公爵の処遇に追加で求めることがあれば、うかがいますよ」


 人々はザックの意見に同調するように、ティサリアへ視線を向ける。


 ティサリアも思うことがあるのか、大きく頷いた。



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