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【完結】地味顔令嬢は平穏に暮らしたい  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆


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74・アミュレットの加護

 フォスタリアの背後にいる弓騎士たちが、独り言のように囁き合う。


「クレイ、とは……」


「おそらく我が国の、クレイルド第二王子殿下のことですよね」


「竜騎士様は、殿下と親しいのか」


 彼らの言葉を聞き、ティサリアの迫力に気圧されていたフォスタリアは、上の空で繰り返す。


「クレイルド殿下と、親しい……?」


(はっ!)


 フォスタリアに言い募り、肩で息をしていたティサリアは今になって、クレイルドの愛称を連呼していたことに気付いた。


(どうしよう。この場で婚約者だって名乗ってもいいのか、よくわからない……。クレイも個人情報を「怪しい人に言わない方がいい」って心配していたし)


 黙り込んだティサリアを見て、フォスタリアは徐々に平静を取り戻してくる。


「おや、あなたは殿下とずいぶん仲が良いのですね。クレイルド殿下がマルエズ王国の伯爵令嬢に熱を上げていると、調べはついているのです。あなたですね?」


「わ、私はただの、通りすがりの竜の友達で……!」


「ごまかしても、私を騙すことなどできませんよ? しかし殿下のお気に入りが、邪竜と共に国を荒らす賊だとすれば、都合がいい!」


 フォスタリアは勝ち誇ったように高笑いを響かせた。


「我が配下の弓騎士たちよ、あなた達の心は邪竜に支配されていましたが、私の命に従えばあなたたちの家族の未来は保障しましょう。いいですか! 竜騎士を名乗るそこの不届き者に、偉大な一撃を打ち込んでやりなさい! さぁ、今です!!」


 船内へと続く出入り口の扉が、派手な音を立てて内側から吹き飛ぶ。


 その勢いのまま、金属製の扉はフォスタリアめがけて容赦なく襲いかかった。


「べぶっ!!」


 全身でその衝撃を受け取ったフォスタリアは、めりこむように硬い床へ押しつぶれる。


「よし、開いたな」


 風通しの良くなった出入口に立つ長身の男が、扉を蹴り飛ばした片足を下ろすと、独り言のように呟きながら歩み出てきた。


「扉が施錠されていたから、とりあえず自己流で開錠したけれど。何かあったのか?」


「クレイ!」


 呼びかけられたクレイルドは、兜を取って自分を見つめているその人に気づいて、目を丸くする。


「会いたくて……睡眠薬が残ったまま夢でも見てるのか、俺は」


「睡眠薬?」


「ああ。結構きついの浴びせられてね。でもティサリアとリンが守ってくれたよ」


 クレイルドは服の下のアミュレットがある胸の辺りを、拳でとんとん叩く。


「これのおかげで、丸一日は眠りこけているはずの俺が目覚めて、フォスタリア閣下は驚いているだろうけれど」


 言いながら周囲を見回していたクレイルドは、自分が壊した扉の下で、フォスタリアが白目をむいて失神していることに気づいた。


「……」


 その原因に思い当たり絶句していると、弓騎士たちが泣きつくように駆け寄る。


「「「殿下、助けに来てくださって、本当にありがとうございます!!」」」


「……なるほど。だいたいわかった」



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