15・王族と呪い
相手の目的を探るための再会だったはずが、ティサリアは自分で墓穴を掘りまくっている気がしてくる。
情けなさに、両手で顔をおおってうなだれた。
(うわあぁ……今日の出会いからもう一度やり直したい)
「王子、博識ですね……」
「王族と呪いはセットのようなものだから、その辺については俺も自然に覚えた程度だけどね。王子は呪いにかかれば一人前みたいな風刺もあるくらいだし。あいつもこれで一人前か」
「おめでとうございます……」
「ティサリアが夜会の会場で何か施していたあいつはアレイクス、第一王子だよ。会った時にきょろきょろしていたのは、あいつが来ると思っていたから?」
「そうです。解呪の予後が気になっていたので、自分の目で確認しようと。まさか王子違いだとは思わなくて。本当に失礼しました」
自爆やら勘違いやらでいたたまれなくなり、ティサリアが真っ赤になってうつむいていると、クレイルドは意味ありげに微笑する。
「俺は嬉しかったけどね。俺に気づいて驚いたティサリアが、クレイって呼んでくれたし」
「あれも申し訳ありません。不躾な態度でした」
「そんなことないよ。クレイでいいのに」
ティサリアは飲んだ紅茶の匂いも味も分からないが、とりあえず一息ついている風を装う。
(人違いをするって、こんなに恥ずかしいんだ……)
今までされることばかりだったティサリアも、間違う側の気持ちを少しわかった気がする。
思い込んでいると、なかなか自分で修正できない。
(クレイも探している方に会いたい思いが強すぎて、盲目になっているのかも)
暴露した解呪の力を秘密にして欲しいと頼んでから、ティサリアは事情を説明して第一王子の様子を聞く。
とりあえずは体調の問題もなさそうだとわかり、ほっとした。
「ティサリアが自分の目であいつの様子を確かめたいのなら、今度王城においでよ」
(おいでって、気軽な)
「ですが私、第一王子にアルノリスタ王国からの追放を宣言されていて……」
「それはアレイの妄言と人違いだから、気にすることもない。だけどティサリアの解呪のおかげかな、アレイはもともと変な奴なんだけど、あの後は本当の婚約者のエリザベートにギチギチに締め上げられるくらい、すっかりいつも通りになったんだ。助かったよ」
(それ、助けた気がしないけれど)
ティーカップに口を寄せるだけで絵になるクレイルドの姿を見つめながら、ティサリアもようやく、今の状況について考え始める。
「ですが王子。私に個人的に会いに来たというのは、その……以前の『相談』の件もあるのでしょうか」